ビール

日本人の食事にはお酒(アルコール)が付き物である。 (アジアの国で食堂に入り、ビールを飲みながら食事している東洋人を見かければ、それは大抵日本人だ。) 酒好きの小津の食事シーンにも必ず登場する。 小津作品に出てくるお酒はだいたい以下の4種類しかない。

  • ビール
  • 日本酒
  • ウィスキー
  • 焼酎
これらにははっきりとではないが社会的序列がある。序列については最下位のチュウ(焼酎)のコラムに譲ることにする。(いつできるか知らないけれど。)

さて、ビールである。 ビール、しかもその瓶は小津映画を特徴づける小道具の代表的なもののひとつだ。 フレームの隅に(これ見よがしに)置いて、画面を引き締める役割をもっている。

最も頻繁に見ることができるのは、食事をしている人物たちの会話を例によって正面バストショットの切り返しで進めるシーンである。人物の前のテーブルにビール瓶があるのは自然といえば自然だが、それがどの人物にも現れるとなるといささか不自然に思えてくる。

『浮草』の冒頭ショットの不思議さはあまりにも有名だ。 これは食事シーンではない。 映画の舞台を示すものとして、南紀の小さな港町にある灯台が写されるのだが、その右に灯台と相似形をなすようにビール瓶が唐突に置かれている。 確かにないよりはある方が画面が引き締まるとは思う。 思うが、ビール瓶でなくてもよいし、他の画面設計を行うことも可能だったろう。 それなのに、あのような画面にしてしまうのは、まさしく小津の趣味なのだ。


こんな感じ

話が逸れそうだ。ビールに戻る。 小津作品のビールといえば赤い星のラベルがすぐに思い浮かんで、ビールといえばサッポロ、と思いがちである。(僕だけ?) ところが注意深く見ているとそうでもないことがわかる。 表にまとめてみた。

銘柄 登場する作品
キリン 父ありき,麦秋,お茶漬の味,東京物語,小早川家の秋
サッポロ 早春,秋日和,秋刀魚の味
アサヒ 彼岸花,お早よう
不明(ラベルが一度も見えない) 東京暮色

驚くことに、キリンの方がサッポロより多かった。 そういえば『浮草』の冒頭も、撫で肩のキリン型瓶(※1)だ。(ただし同作品の登場人物はビールを飲まない。)

※1:『秋刀魚の味』のサッポロビールは撫で肩瓶でした。ということはこれもサッポロの可能性が残されますね。

だいたいにおいてラベルがよく見えるように撮っているが、別にメーカーからリベートをもらっていたわけではないらしい。 してみると、キリンの『麦秋』〜『東京物語』、アサヒの『彼岸花』〜『お早よう』にはそれぞれ制作の連続性があるので、小津の嗜好の変化に連動して使用する銘柄が変遷したのかもしれない。

じんちーのビールはアジアンだ

あまり強いほうではないが僕もビール大好きで、毎晩ちびちび飲む。 アジアの旅にはまってからは、もっぱらアジア系の輸入ビールを通販で買ってストックし、常に冷蔵庫に冷やしてある。 (ちなみに買っているのはSLワールドさんです。代金引換なので安心。)

現地ではぬるいビールに氷を入れたりするが、自宅ではもちろん冷蔵庫で十分冷やし、グラスもフリーザーで凍らせておいたものを使う。 アジアのビールはどれもピルスナータイプ。 いろいろ飲んだが、お気に入りは以下の4+1種類。 どれもすっきりした喉越しだ。

銘柄 生産国 コメント
台湾ビール 台湾 台湾の専売公社が作っているもので、台湾唯一の国産ビール。瓶を5,6本並べると、詰めてある量が一本一本違うのが分かるのがご愛嬌だ。ややアメ色がかっている。
タイガービール シンガポール シンガポールなんだからマーライオンビールなんてものがあってもよさそうだが、なぜか虎だ。これぞ南国のビールで、淡い琥珀色。オープンエアの店先で大瓶をぐびぐびいきたい。日本では小瓶で我慢。
アンカービール シンガポール これもシンガポール産。タイガーと共にマレイシアでもメジャーなビール。どちらかというとタイガーに押され気味だが、なんのなんの味は負けてはいない。色はタイガーよりかなり濃いめ。
シンハビール タイ 僕はいまだにタイに行ったことがないが、タイ料理は大好きなのでタイビールもよくいただく。代表的なのがこのシンハ。独特の風味がナンプラとプリッキヌーの効いた料理によく合って何本でも喉が欲しがる。(単に辛いだけ?) ライトビールのシンハゴールドは映画を観る前のお昼に最適。
エビスビール 日本 国産の量産ビールなら迷わずこれを選ぶ。100%麦芽はやはり口当たりが違うぞ。

ちなみに上の写真中のビールはQuilmes。 アルゼンチン産。1リットルの特大瓶が普通。こいつもさっぱりした味わいで好きなのだが、残念ながら日本では手に入らない。

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Last update: 9/11/2002

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