ラーメン

庶民のジャンクフードの代名詞・ラーメンは小津作品にもたくさん出てくる。 さて、どれから始めるか…。

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お品書きのコメントは、ラーメンを食べる俳優に繰り返し喋らせている次のセリフからいただいた。

「ラーメンはね、おつゆがうまいんですよ。」

このセリフのある作品は『一人息子』と『お茶漬の味』だ。 前者では、“一人息子”の日守新一が、上京してきた老母(飯田蝶子)を東京見物に連れて廻った夜、屋台のラーメンを食べながらいう。 後者では、ノンちゃん(鶴田浩二)が、お見合いをすっぽかした節子(津島恵子)をラーメン屋に連れて行き、渡辺はま子が流れる店内でラーメンを食べながら津島に説く。 そのとき、こうも言う。

「こういうものはね、うまいだけじゃいけないんだ。安くなくちゃ。」

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『お茶漬』の二人は壁に向かうカウンターで並んでラーメンをすすっている。 店の名前は“三来元”。 この店は『お茶漬』の後、『早春』と『秋日和』に再登場する。

『早春』では、杉山(池部良)と“金魚”(岸恵子)が鶴田らと同じカウンターに座って中華まんじゅうを食べる。 一方『秋日和』では、後藤(佐田啓二)とアヤ子(司葉子)が、やはりカウンターでラーメンを並んで食べる。 司の不味そうな食べ方が印象的である。 カラーになった『秋日和』では店を改装したのか、以前は入口のとこにあったカウンターが店の奥に移動している。

ところでこの三来元のカウンターは、細かぁいことを気にしてどんどん話を膨らませるのが得意な総長先生にも注目されている。 彼は著書『監督 小津安二郎』で、この奥行きのないカウンターの場面が「最も抑圧から遠い小津の自由な映画的感性が露呈している」と指摘している。 そうですかねぇ?うーん、そうかもしれねえなぁ。 (加東大助の声で読んでください。) 小津が人物を撮るとき、背景はできるだけ奥行きがなく抽象的な方がよかった。 (背景よりも手前の小物を気にする傾向がある。) 背景として、忙しくする店員が写るカウンター越しの厨房よりは、ただの壁の方がずっと好ましかったに違いない。 そのために壁に向かうカウンターをわざわざ設置し、二人を配置した。 この、あえて不自然さを平気で取り入れるところを“自由な映画的感性”と呼ぶのだろう。

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ラーメン屋には、あと『東京暮色』,『彼岸花』の珍々軒、『秋刀魚の味』の燕来軒がある。

『暮色』の珍々軒と『彼岸花』のそれはどうやら別の店らしい。 前者は五反田の踏切そばで藤原釜足が細々やっている、どちらかというと後述する燕来軒に近いひなびた店だが、後者は有楽町にあるなかなか繁盛する店だ。 藤原が五反田の店で儲けて銀座に進出したとは思えない。

ちなみに『彼岸花』の珍々軒は、例のカウンターのとこがテーブル席に変わっているところを除けば『秋日和』の三来元に間取りがそっくりだ。 『秋日和』の三来元は実は支店で、『彼岸花』の珍々軒を買い取り改装して開店したのかもしれない。

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燕来軒は、元漢文教師の“ひょうたん”(東野英治郎)が定年退職後、食っていくために始めたらしい。 「つい便利に使うてしもうて」嫁に行きそびれた娘(杉村春子)が手伝っている。 常連の坂本(加東大介)によれば…

「ここあんまりうまくないんです。な、親父」

であることからも、東野の腕が確かでないことがわかる。 加東はここにチャーシューメンを食べに来て、かつての上官・平山(笠智衆)に出会う。 笠は東野の教え子。 戦争では海軍兵学校に入り駆逐艦の艦長になり、戦後はどこかの会社の監査役に収まっている、いってみれば人生の成功者で東野とは好対照をなしている。 しかし映画が進んでいくうち、笠と東野が似た境遇にあることがわかり、自分の行く末を見た気がする笠が娘を嫁にやろうと焦るのだ。 やはり岩下志麻が杉村春子になるのは困るよな。

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ラーメンはその他、『お早よう』で家を飛びだした実・勇兄弟が英語の先生・福井(佐田啓二)におごってもらうとか、『早春』で池部が帰宅したら夕食ができてなかったのでふてくされて飛び出し友人宅で麻雀をしながら出前を食べるとか、登場の仕方が些細なので以下は割愛する。

じんちーの麺は世界だ

ラーメンは好きです。 昔は新宿・桂花とか渋谷・喜楽とか恵比寿・香月に通ったものですが、現在は「ラーメンならここ」といえるほどの贔屓もないし、さあ何を食べようか、というときラーメンが筆頭候補になることも稀です。

枠を拡げて、ラーメン→パスタという目でみると、いくつかあるので、これを紹介しましょう。

台湾
台湾に行ったとき、だいたいいつも食べる麺は担仔麺,陽春麺,牛肉麺の3種類だ。このうち担仔麺は日本でも台南担仔麺として有名。その名の通り本場は台南で、その中でも度小月という店がきわめつけとされる。屋台料理なのできちんとしたレストランでは食べられない。小ぶりな碗で、肉のそぼろが入っているのが特徴。 担仔麺
香港
香港という街は実はあまり好きではない。というのは一般的にいわれるように食べ物がおいしいとは、僕には思えないからだ。海鮮の嫌いな者には用のない場所なのかもしれない。それでもむりやり香港の麺をあげるとすれば雲呑麺だろうか。割と歯ごたえのある黄色い麺が清湯の入った小ぶりの碗に雲呑と一緒に浮かぶ。その辺の店で食べられるものだが、灣仔のなんとかという店が有名だ。
マレイシア
なんといっても福建麺(ホッケンミー)が有名だが、海鮮たっぷりのこの料理は僕は苦手。じゃラクサはどう?ということになると、独特のすっぱいスープがいささか鼻につく。残るはミー・ゴレン(炒麺)。これは具に貝とかが入っていなければ没問題である。そんなわけで、マレイシアではあまり麺はいただかない。
タイ・ヴェトナム
この2国を一緒にするのは申し訳ないのだが、どちらもいまだに行ったことがないので大手をふって独立項目にしにくい。タイの麺ならパァッタイかな?やきそばですね。日本のタイ料理屋で食すわけですが、なかなかいけます。麺は平らなビーフン。出てきた皿にナンプラ,酢,とうがらしをドバッとかけて。ヴェトナム料理屋では、フォー(牛肉麺)を頼みます。こちらもビーフンだが、汁物。台湾の牛肉麺のスープは茶色いけど、こちらは無色。
イタリア
イタリアも行ったことない。でも、麺を語るときにはイタリアン・パスタは外せない。ペペロンチーノやアラビアータといったシンプルなのが好き。こういうのがうまいのがいいリストランテだと思う。イタリア料理屋はいろいろ探しているけど、なかなかここというところがない。だいたいどうしてどこもパスタをあんなに固くゆでるのか。アルデンテってそういうもの? そんな中で鎌倉のア・リッチョーネは素晴らしい。パスタのゆで具合もいいし、備長炭の釜で焼くピザや魚の香草焼もそんなに高くもない。店長の愛想が悪いのが玉に瑕だ。
日本
日本の麺といえば蕎麦を筆頭として、うどん,そうめん,冷や麦などいろいろ種類があるけど、あまり食べない。どうも麺よりごはんの方が好きみたい。現在食べたいと思っているのは、生醤油をかけて食べるという本物の讃岐うどんだ。四国に旅行したら食べるぞ。

こう書き連ねてみると、僕にとって麺とは積極的に食べる料理ではないみたい。イタリアンは例外ですけど。

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Last update: 2/17/2005

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