すきやきすきやきは小津作品では3作に登場する。 『麦秋』,『東京物語』,それに続く『早春』だ。 『麦秋』と『東京物語』との間には『お茶漬の味』というあっさりしたタイトルの作品があるが、これには残念ながらすきやきは出てこない。
『早春』でのすきやきの理由は“たまには贅沢”である。 栄はお客さんというよりは昌子にとっては、アイロンをかけてくれる身内なのだ。(戦後まもなくの問題作『風の中の牝鶏』でも、親友のうちでアイロンをかける田中絹代が見られる。) 不可解に腹を立てて出ていった夫はそっちのけで、親友とたまの贅沢を味わう妻。 夫婦仲の極北である。 ちなみに、正二は仲間の部屋で麻雀しながら出前のラーメンを喰う。 『麦秋』には、すきやき鍋を皆で囲むシーンがある。 といっても宴はほぼ終わりに近く、いさむちゃん(城沢勇夫)は立ち上がってどこかに行こうとする。史子(三宅邦子)が
「いさむちゃん、どこ行くの?」 一同爆笑のうちに家族は離散する。 さて、僕が興味があるのは『東京物語』で供されるすきやきは関東式なのか関西式なのかという点だ。 関東式すきやきというのは、文字通りまず肉を焼いて割り下を注いで食べるやつで、焼きながら食べるので鍋が小さい。 それに対して関西式は、あらかじめ材料を鍋にぶっ込んでおいて上から砂糖をふりかけ醤油などをかけたものを火にかけ煮る。 『麦秋』ではちゃんと鍋が写っているのでそれが関東式ということがわかるのだが、『東京物語』には食事のシーンがないのでわからない。 ポイントは、幸一や志げは尾道(いうまでもなく西日本)で生まれ育ったということと、文子は関東出身である(どこにも明示はされていないがそう考えるのが自然である)ことのどちらを採用するか、というところか…。 もちろん、老夫婦がすきやきを食べ慣れているとすれば、それはおそらく関西式だろう。 これも考慮すべきか。 で、僕の出した結論はずばり“関東式”である。 理由は、小津が関西式を知らない、あるいは嫌いではないかと思うから。 自分の嫌いなものは出さないのが小津である。 すきやきといえば関東式しか知らないというのはちと怪しいが、知っていたとしても、関東式と関西式では関東式が好きだったではないか。 うまく表現できないが、彼は食べ物も形のはっきりしたものが好きで、ごった煮のようなものは嫌いだったと思う。 そう思いませんか? スキヤキソングは第二の国歌になれるか?すきやきは僕も好き。 といっても高いのでなかなか食べられないです。 いつかは今半に入ってみたいが、いまはせいぜい年に一度か二度浅草の米久で牛鍋をつつくくらい。 関東式は肉いのちなので、安いのだとおいしくない。 つらいとこです。 自宅の食卓でも同じこと。 そういうことを考えれば、関西式は捨てたものではない。 ごった煮だから肉の重要性が一歩後退するのだ。 財布の中身が淋しいときにはオージービーフで関西式すきやきといきませう。 すきやきとは直接関係ないが、『上を向いて歩こう』つまりスキヤキソングを日本の第二国歌にしようという運動(?)がありますね。 『君が代』はちょっと…、という諸兄に受けているようです。 サーチエンジンで調べると火元は村上朝日堂(残念ながらサイト閉鎖)以外にもいくつかあるみたいだけど、僕もそのアイデアはいいと思う。 悲しいけど前向きな歌詞で。 国民投票でもしてみればいいのに。 Copyright © 2000-2002 Jinqi, All Rights Reserved. |