とんかつ僕の大好物・とんかつは小津の大好物でもあったらしく、彼の日記を繰ると“蓬莱屋”の文字をよく見かける。 そして、嬉しいことに作品にも多数登場する。
とんかつは貧困でもなく富裕でもない庶民〜プチブル階級の代表的食事であり、戦後作品には欠かせない料理のひとつとして扱われている。 じんちー独断による東京のとんかつ屋御三家
『秋日和』で話題に上る“松坂屋の裏のとんかつ屋”で、小津安二郎が実際に通った老舗。 レジの横っちょに彼の贈った色紙が飾られている。 1階はカウンター席のみ。 『秋刀魚の味』のとんかつ屋は、ここの2階の座敷席のイメージだろう。 メニューはいたってシンプルで、カツレツ(※1)と一口カツの2種類のみ。 ※1:2004年になってからか、名称が“ひれかつ”に変更された。その方がわかりやすいから? 構成もきわめてオーソドックス。 白い皿の上は、ヒレかつのほかはキャベツだけ。 香の物は、きゅうりのきゅうちゃんみたいなやつ。 汁物は合わせ味噌の味噌汁で、具はインゲンのみ。 蕎麦猪口に入っているのが変わっている。 かつの味は、流石2,900円もすることはある。 薄いがしっかりした衣は濃いきつね色で、2度揚げしていることが窺える。 パン粉の目も細かい。 が、なんといっても肉自体の質が高い。 贅沢の一言。 ところが、とんかつに期待する歯ごたえに欠ける気が僕はしている。 常食とするには自分がちょいと若すぎる(※2)のだと思う。 ※2:だいぶ美味しさがわかるようになってしまいました。(2004年2月加筆)
潔癖なカウンター席を囲んで、順番待ちの客がいつ行っても絶えない人気店。 待ち客の顔を憶えているのか、どこに座っていても順番を間違えずに席に案内してくれるおじさんを始めとして、店員の接客態度が非常に気持ち良い。 1階はこのカウンター席だが、2階はテーブル席。 メニューは、ひれかつ、ロースかつ、一口かつ、串かつ。 お薦めはひれ。 見るからにカラッと揚がったかつの衣は、歯ごたえが最高。 刻みキャベツにパセリが添えられるオーソドックスな皿である。 香の物は沢庵ときゅうり。 汁物は豚汁。正統派だ。 これで1,650円は安い。 とんかつはいうに及ばず、接客と清潔さを併せ、他店を圧倒的に引き離す超越した存在である。 目黒以外に支店が何軒かあるようだ。 (自由ケ丘店のみ行ったことあります。) とんきの素晴らしいところをまとめておく。(2004年2月加筆)
元は渋い店構えで知る人ぞ知る存在だったが、1999年に建物を改築し小奇麗な雰囲気で誰でも入れるお店に変容した。 器も変わってしまったが、さいわい味は変わらない。 なぜかインディアンカレーにサンドイッチもあるが、とんかつはロースと串かつのみ。 ここのロースはわらじ状ではなく、ひれのように丸太状である。 ソースが独特。添えられたキャベツにはマヨネーズが載っている。 香の物は“王ろじ漬”なる大根の粕漬。これがうまい。 汁は豚汁。これまた独特の風味で、おなかがさほど空いていなくてもついついセット(かつ+豚汁+王ろじ漬+ごはんで1,650円)を頼んでしまう。 おばちゃんが元気。土地柄か、店員さんに中国人もいたりして、新宿に出たら必ず行きたい店のひとつである。 Copyright © 2000-2004 Jinqi, All Rights Reserved. |