古都・鎌倉は、小津安二郎(1903-1963)のほか、彼の作品に欠かせない名優・笠智衆(1904-1993)や原節子(1920-)が住み、『晩春』(1949),『麦秋』(1951)が撮影された聖地です。
『朗かに歩め』(1930),『父ありき』(1942)でも鎌倉が登場しますが、どちらもほんの一瞬ですね。
|
お寺や季節の花木巡りもいいですが、一度、“小津”をキーワードに鎌倉を歩き、名作の世界に浸ってみませんか。本コーナーでは、じんちーお勧めの鎌倉おづ漬お散歩コースを紹介します。
“お散歩”と呼ぶにはいささかハードかもしれません。
|
ビデオなどで2作品をいまいちど見直しておくと、この散歩がより愉しくなること請け合いです。
このコーナーの題名“鎌倉よいとこ”というのは、小津安二郎のトーキー第1作『一人息子』(1936)の元々の題名『東京よいとこ』からのイタダキです。『東京よいとこ』は1935年に撮影途中で延期され、そのままお蔵入りしたサイレント作品で、トーキーとして復活したのが『一人息子』です。ちなみに『一人息子』の前作も『大学よいとこ』(1936)という題名でした。この頃のお気に入りワードだったのかもしれません。英題の“Mahoroba”は『麦秋』からで、大和のおじいちゃん・高堂国典が弟夫婦に大和へ隠居するよう勧めるときの大和の宣伝文句からいただきました。鎌倉もええぞ、まほろばじゃ。
|
小津ゆかりポイント
お散歩コースとして、小津にゆかりの場所を16ヶ所あげてみました。一応番号が推奨順路を示しています。一日ですべて廻るのは大変なのと、各ポイントの魅力度、興味などを考えて適当に飛ばすのがよいと思います。まずは1から順番に読んでみて、ご自分で計画をたててください。
地図上の数字か下の数字をクリックすると、そのゆかりポイントをご案内します。
|
小津ぐるめポイント(おまけ)
残っている小津の日記には、たくさんの飲食店名が出てきます。もちろん鎌倉のものもあります。そこで、小津の親しんだ味を僕らも味わいたいと思うのが自然なのですが、残念ながら多くがすでになくなっているのです。ここでは、うれしいことにまだ営業しているお店をご紹介します。散歩の合間にいかがですか?
名前 | 種類 | 場所 | 最寄りのゆかりポイント | コメント |
光泉 |
いなりずし |
山ノ内501 |
JR北鎌倉駅 |
1953年4月26日の日記に「光泉から稲荷すしをとつて麦酒をのむ」とある。すぐに売り切れるので北鎌倉に着いたら真っ先に行って予約するのがよい。 |
鉢の木 |
懐石料理 |
山ノ内7 |
円覚寺 |
1960年9月28日の日記に「原(節子) 司(葉子)と〈鉢の木〉で会食する」とある。ランチは3,000円から。 |
好々亭 |
懐石料理 |
山ノ内605 |
好々亭 |
1952年2月11日の日記に「北鎌倉に売家ある由(中略)好々亭で昼めしをくひ 皆で月ヶ瀬にゆく」とある。これは『晩春』よりあと。 |
ひろみ |
天ぷら |
小町1-6-13 |
JR鎌倉駅 |
1960年1月25日の日記に「ひろみ天婦羅屋によつて帰る」とある。揚るのに時間がかかるので、余裕のあるときに行きたい。2003年、小津丼(3,500円)登場。 |
権五郎鮨 |
寿司 |
小町1-7-1 |
JR鎌倉駅 |
1954年10月16日の日記に「市民座で恐怖の報酬をみる 権五郎にてすし」とある。同じお店かどうかは未確認。 |
扉 |
甘味 |
小町1-6-20 |
JR鎌倉駅 |
1955年6月7日の日記に「新川屋によつて駅前扉にゆく 開店也」とある。開店早々に行ったらしい。 |
パティスリー チモト |
喫茶 |
御成2-15 |
JR鎌倉駅 |
1954年10月16日の日記に「権五郎にてすし」に続いて「ちもとにて志るこ」とある。この店と関連があるかどうかは未確認。 |
浅羽屋 |
日本料理 |
長谷3-10-31 |
高徳院 |
1955年6月21日の日記に「長谷の浅羽屋にゆき 柳川をくふ」とある。 |
華正楼 |
中国料理 |
長谷3-1-14 |
高徳院 |
日記に頻出。鎌倉会の例会が開かれていたし、俳優たちともよく来ていた様子。監督会での吉田喜重との対決でも有名。 |
井川 |
喫茶 |
小町1-10-23 |
JR鎌倉駅 |
ここは小津が行った店ではなく、小津映画に出演経験のある元女優・井川邦子さん経営の喫茶店。本人がコーヒーをドリップしてくれる。 |
Last update: 1/4/2004
Copyright © 2002-2004 Jinqi, All Rights Reserved.