りんご小津でりんごといえば『晩春』の最後のシーンが有名だ。 紀子(原節子)を嫁にやった晩、父親・周吉(笠智衆)は酔っぱらって帰宅。 ふらつきながら椅子に腰をおろし、ふとそこにあったりんごを剥き始める。 不器用に途中まで剥くが、手を止め、がっくり頭をたれる。 ここで終わり。 娘をなくした淋しさがよく表れているという好評もあれば、頭をたれた笠の様子が眠っているようだという悪評もある。 確かに笠の演技は朴訥でお世辞にも大変うまいとは云いがたい。 これは亡くなるまで変わらなかったと思う。 しかし、このシーンについて笠を弁護させてもらうと、うまい演技とはいえないものの、流石に寝ているようには見えない。 小津がOKを出したテイクなのだ。 問答無用である。 ◇◇◇ 制作順からいうと逆だが『風の中の牝鶏』にもりんごの話題がある。 時子(田中絹代)の夫・修一(佐野周二)は敗戦からだいぶたっても復員して来ない。 彼女はタンスの中身を処分しながら息子・浩を抱えて細々と食いつないでいる。 ある日も着物を処分した帰り、買い物をして間借りしている家に帰ってきた。 大家から頼まれた買い物を届けた去り際、田中は大家に買い物カゴからりんごをひとつ取り出して見せる。 「これ、三つ100円ですって。」 あまり高いので息子のためにひとつだけ買ってきたという。(現代なら安いんだけどねぇ。) その夜、息子は高熱を出し、入院費に困った田中は体を売ることになる。 ◇◇◇ 時代はさらに遡って、1941年の『戸田家の兄妹』。老父が亡くなり、長兄・進一郎(斎藤達雄)の家に老母(葛城文子)と共に身を寄せた節子(高峰三枝子)。嫂・和子(三宅邦子)に煙たがられ、いびられる毎日にうんざりしている。 ある日、三宅の友人がやってくるというので一日家を追い出され、おまけに銀座で果物やらサンドイッチやらを注文して届けさせるようにいいつかる。 友人・時子(桑野通子)に会ったりして時間を潰し、もういいだろうと夜もふけて帰ってみると、まだ友人はいた。 やっと帰っていき、老母と一緒にテーブルを片づける。まるで女中である。 この途中、下げようとした食べ残しのりんごを老母に示して言う。
「まあ、お上品なお召し上がり方。」 “お上品なお召し上がり方”というのはこんな感じである。
この作品では、高峰がりんごを剥こうかと老父に尋ねるシーンもある。 ◇◇◇ りんごネタで一番好きなのは『秋日和』だ。 秋子(原節子)の娘・アヤ子(司葉子)を嫁にやるため、原まで再婚させようとする(なんというおせっかい)極悪中年三人組の間宮(佐分利信),田口(中村伸郎),平山(北竜二)。 北が再婚相手に立候補し、中村がそれを原のとこに伝えに行かされる。 報告会場のバー・ルナで、当の北が遅れてくる間に、佐分利が中村から報告を聞く。 中村は再婚話は全くできず、亡夫とののろけ話を聞いてきただけだという。
「それでね、俺にりんご剥いてくれたりしてね、あの白い手で。」 中村はパイプまでおまけにもらってきており、佐分利の嫉妬を買う。 それにつけても、かわいそうな北。 このお詫びとして、北は『秋刀魚の味』で娘と3つしか違わない若い後妻(環三千世)をもらって嬉しそうだった。 ところで、原は白い手でりんごを剥いたというが、『秋日和』における原の手こそ、僕にとって小津作品最大の謎である。 これについては、別途じっくり考察する。 Welcome to My Macintoshりんごといえばアップル。マックです。 僕のマック歴はたいしたことなくて、最初に購入したのが1992年。 PowerBook 170というノートタイプでした。 System7.1が載ってましたね。 いま考えてみれば分厚くて重かった。 でも、キーボードは打ちやすかったし、トラックボールも快調、TFT液晶(モノクロ2階調)も見やすかったです。 ノートはそれからIBM ThinkPad 535,東芝 Libretto 50(これはいまも現役)と浮気しましたが、その間にLC 575というデスクトップ・マックを買いました。 トリニトロンのディスプレイがくっきり見やすくて好きだったのですが、そのうちにパワー不足,画面の狭さが気になってきました。 アップルも低調で、マック新製品にはロクなものがないので、そろそろ見切りを付けてVAIOのデスクトップでも買おうか、と思っていたところ… iMacのうわさが流れてきました。“hello (again)”です。 聞けばスペックもかなりのもの。 コンピュータも、速いだけじゃだめなんです。 安くてカッコよくなきゃ。 なわけで1998年8月29日、ソフマップ横浜店まで行列を作りに行きました。 以来、おうちではもっぱらiMacを使ってます。 最近のアップルの様子だと、次もマックが買えそうですね。 ◇◇◇ 2002年2月27日追記。おにぎりiMac発売から3年半後、電気スタンドiMac発表。すかさず購入。OSもついにOS Xへ。 Copyright © 2000-2002 Jinqi, All Rights Reserved. |