出来ごころで紳士録

第9位 桜 むつ子 さくら むつこ

出演作 (製作年) 役名
東京物語 (1953) おでん屋・お加代の女将
東京暮色 (1957) バー・ガーベラの女給
彼岸花 (1958) バー・ルナのマダム
お早よう (1959) おでん屋・うき世の女将
浮草 (1959) ちゃぶ屋・梅廼家の女・おかつ
秋日和 (1960) すし屋・芳ずしの女将

この人は『秋日和』を除いてすべて、主役が家族から離れて憂さを晴らしたい飲み屋で、女将〜マダムを演じている。 だいたいどれも同じような性格と役柄だが、どうやら美人という設定らしい。 これは僕には違和感がある。

美人だろうが、不美人だろうが、彼女がニュートラルで好感のもてるキャラクターであることは異論がないだろう。 “小津映画には悪人が出てこない”といわれるが、そんな中でもドラマ中のオアシスとなる場所を提供してくれるのが桜むつ子だ。 同じような役回りには浦辺粂子がいるが、残念ながらあの人には色気がない。

『秋日和』の桜むつ子には家庭がある。三輪アヤ子(司葉子)の親友・百合子(岡田茉莉子)の義母・佐々木ひさがその役だ。せっかく旦那さんをもらったのに、それがオナラおじさんの竹田法一じゃあなあ…。そういえば『お早よう』のおでん屋でも旦那がいたな。あれは島村俊雄だ。『東京暮色』でもおでん屋やってたオヤジだ。あいつでもなあ…。どうやら桜さんには男運がないようである。

桜むつ子を受け継いだのは、『秋刀魚の味』の岸田今日子か。その後からは想像できない、さわやかな印象を残している。

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Last update: 2/4/2002

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