[↓1997年][↑1999年]

1998年に観た映画の一覧です

今年の標語: コツコツ観よう、珠玉の邦画。

Best10です。(旧作は含んでいません。ただし日本初公開作は新作扱い)

  1. #16「フェイス/オフ」呉宇森/1998/米
  2. #33「ムトゥ・踊るマハラジャ」K.S.ラヴィクマール/1995/インド
  3. #29「アサシンズ」マチュー・カソヴィッツ/1997/仏
  4. #27「ジャッキー・ブラウン」クエンティン・タランティーノ/1997/米
  5. #64「7本のキャンドル」アボルファズル・ジャリリ/1994/イラン
  6. #52「ホールド・ユー・タイト」關錦鵬/1997/香港
  7. #3「チュンと家族」張作驥/1996/台湾
  8. #44「スウィートヒアアフター」アトム・エゴヤン/1997/加
  9. #38「Jam」陳以文/1998/台湾
  10. #54「がんばっていきまっしょい」磯村一路/1998/東映

星の見方(以前観たものには付いてません)
★★…おーっ、生きててよかったっ!
★…なかなかやるじゃん。
無印…どーってことなし。
▽…金返せーっ!
凡例
#通し番号「邦題」監督/製作年/製作国/鑑賞日/会場[星]

#67「賭侠1999」 王晶/1998/香港/Dec. 28/金聲(香港)
1998年のトリは、大不況の香港映画界でひとり大儲けしている王晶作品。 主演は劉徳華だが、準主役として朱茵がクレジットされており、 それで観に行くことにした。 (ツレは不満気であった) 日本では朱茵出演作品がほとんどかからないので、香港に来たときくらい、ちゃんと観ないとね。 ストーリーは、プロのギャンブラー劉徳華がマカオ・マンなる大物に挑戦するもので、朱茵は劉徳華の恋人役。 マカオ・マンを侯孝賢作品でお馴染みの台湾俳優・高捷が演じているのが驚き。 つなぎなどの整合性はまったく無視の大胆な編集で、王晶が年にすごい数の映画を公開する秘訣を垣間見た。
#66「アンナ・マデリーナ」ハイ・チョンマン/1998/香港/Dec. 20/シネ・アミューズEAST▽
日頃から、香港映画というだけでとりあえず予定に入れるという姿勢には疑問を抱いていたが、 こりゃ大ハズレですよ、オクサン。 まず、名の知れぬ監督であること。 次に、金城武はともかく、陳慧琳、郭富城という主演陣。 そして、UFOという甘ったるい作品作りでは定評のある製作元。 映画鑑賞におけるリスク管理の重要性を痛感させた一本でありました。 豪華ゲスト出演のみがいささかの光明か。
#65「かさぶた」アボルファズル・ジャリリ/1987/イラン/Dec. 13/シネ・ラ・セット
ひきつづいて、反政府のビラを所持していた罪で少年院に送られる少年のお話。 舞台はほとんどが少年院の中である。 出演しているのは本当の入所者とのことで、ということはこの映画の中のできごととかって、 かなり真実に近いということか。 幸か不幸かいまだ少年院というものの中を実際に見たことがないのだが、 マンガや映画で垣間見るそこでの暮らしは娑婆よりも大変な印象を受ける。 あんなところで、少年が更生できるのだろうか? ラストシーンで少年が裁判官に問いかける「いつ自由になれるんでしょうか?」という言葉は、重い。
#64「7本のキャンドル」アボルファズル・ジャリリ/1994/イラン/Dec. 13/シネ・ラ・セット★
東京国際映画祭で注目を集めたジャリリの旧作が同時公開。 二本立てかと思ったら入れ替え制で、それぞれ(前売が)1,500円は高い、と入る前に憤慨。 しかし、この作品は極上のペルシャ絨毯でありました。 ドヤで労働者の世話仕事をして生計をたてている少年の、 母親の死のショックから全身麻痺状態になってしまった妹を なんとしても回復させようとすべてを捧げるさまが、あくまでも冷静な目で描かれる。 あらゆる手を尽くした後、さて妹は回復するのか… イランの労働者階級の、決して裕福ではないけれど充実した日々が目の前にあった。
#63「ラブ・ゴーゴー」 陳玉勲/1997/台湾/Dec. 12/ユーロスペース2★
去年の東京国際映画祭で気に入った作品が一般公開。 去年は「こういう作品は面白くても2度は観ない」と書いてますけど、 観に行ってしまいました。 ロケをやっていた台北動物園にこないだの旅行で行ったので、 その確認ということで。 旅行ではリリーが待ち合わせするのがどの動物だったか思い出せずにふたりで悩み、 結局「キリンだ」という話でまとまったのですが…、 正解は象でした。 (去年の発言を翻して)何度観ても、この作品はいいですね。 やはり唐娜がすばらしい。 正月映画でイチ押しです。
#62「その夜の妻」小津安二郎/1930/松竹蒲田/Dec. 11/丸の内松竹
『世界の小津安二郎シンポジウム』なるものが、小津の命日の前夜、丸の内松竹にて開催された。 進行は、TRONの坂村健。 『ディジタル小津安二郎展』を開催中の東大ディジタル・ミュージアムの館長さんである。 シンポジウムの前半は、あの蓮實総長さん司会によるパネルディスカッションで、パネラーは侯孝賢やジャン・ドゥーシェなどのデラックスな面子。 久し振りに聞いたハスミ節でありました。 後半は、小津の前期作品上映。 サイレントなのだが、なぜだか坂本龍一が音楽つけてサウンド版となっていた。 このシンポジウム、協賛に当社の名前が。 聞けば来年、小津作品をDVDで出すそうな。 そりゃ、おめでたい。
#61「キッスで殺せ<ディレクターズ・カット>」ロバート・アルドリッチ/1955/米/Nov. 14/シネセゾン渋谷
去年、映画祭で字幕なしの《完全版》というのを観たのだが、夜の上映でウトウトしてしまい、何がなんだか分からないまま、核爆発して終わったのを憶えている。 今回、《ディレクターズ・カット》なるものがかかるというので、観に行ったのだが… レイトショーで、やはりウトウト。 両者の違いも良く分からず、前回よりも多少理解できたものの、あいかわらず全貌は鉛の箱の中。 こりゃ、ビデオでも観て補完するしかないかな。
#60「TOKYO EYES」ジャン=ピエール・リモザン/1998/日=仏/Nov. 14/シネスイッチ銀座
以前、『夜の天使』などで注目していた監督が、東京を舞台に撮ったというので、どれどれ。 出演は、吉川ひなの、武田真治、杉本哲太、北野武。 監督はおそらく日本語がわからないと思う。 吉川、北野は演技してない。そのままじゃ。 ライティングなしで高感度フィルムを使った手持ちカメラによる映像は、ビデオっぽくて、吉川の独特の声とマッチしてキッチュな印象を全体にかもし出してて、なかなか気に入りました。
#59「 ダンス・オブ・ダスト」アボルファズル・ジャリリ/ 1998/イラン/Nov. 3/渋谷エルミタージュ(TIFF)
東京国際映画祭はこの週末まで続くんだけど、僕の鑑賞はこの作品で おしまい。この監督の作品は2年前 の映画祭で観たので、これが2本目かな? 乾季ににぎわう煉瓦工場村での人々の生活を、ある少年と少女の触れ合 いを中心に淡々と描く。せりふはなし。 夜も遅い上映だったので、後半ついうとうとしてしまった。 不覚。うちに帰って寝たのは1時半。きょうは眠いです。
#58「 戦争の後の美しい夕べ」リティー・パニュ/ 1998/仏/Nov. 3/渋谷エルミタージュ(TIFF)
監督はカンボジア人で、舞台は内戦終了後のプノンペン。 戦争で何もかも失った元兵士と、父親を亡くしたために身売りされたバー で働く女性とのメロドラマ。 なんとも感情移入しにくい行動をふたりがとる。 このような映画はやはり、温室育ちの日本人には理解しにくいのかな。 冒頭のシーンで、列車が田園地帯を走るのだが、カンボジアって むちゃくちゃいいところみたい、地雷さえなければ… 観客は白人が多かった。
#57「枕の上の葉」 ガリン・ヌグロホ/1998/印尼/Nov. 3/オーチャードホール(TIFF)
インドネシアの本物のストリートチルドレンを起用して制作された、 ストリートチルドレン問題提起作品。 3人の子供たちが、順次無惨に死んでいく。 ジョグジャカルタの風景はセットなのかロケなのか。 主演でプロデューサーでもある女優のクリスティーン・ハキムさんが ティーチインにてこの社会問題について熱弁をふるううち、時間切れ。 次の会場に走りました。
#56 「踊る大捜査線 THE MOVIE」本広克行/ 1998/東宝/Nov. 2/横浜東宝
お気に入りの女優はたくさんいるけれど、 現役で一等は間違いなくふかっちゃん(深津絵里)。 人気テレビドラマの映画化で、このドラマでは彼女、 準主役なので必然的に映画でも出番多し。 純粋に娯楽作として楽しめたし、きょんきょんもゲスト出演 (PowerBook G3使い!)で、お得な一本でした。 しかし、休みに挟まれているとはいえ、きょうは平日のはず。 なんで、こんなにこーこーせーがいるわけ? 彼ら/彼女らは学校行かないのか?
#55「超級公民」 萬仁/1998/台湾/Nov. 1/渋谷ジョイシネマ(TIFF)
これは重い。まともな人間なら誰でも一度ならず考えるであろう、 死や死後の世界。監督はこれに正面に向き合い、 政治活動に燃え尽きた中年タクシードライバーと、 殺人罪で死刑となった先住民族の青年の亡霊との心の交流を通して、 生きることの目的や縁というものを観客に問いかける。 まだ台湾では公開されていないようだが、まず公開されないでしょう。 上映後のティーチ・インで、監督、主演の蔡振南さん、通訳の方、 45分も舞台上で立ちっぱなし。お疲れ様でした。 椅子くらい用意しろ、事務局。
#54 「がんばっていきまっしょい」磯村一路/ 1998/東映/Nov. 1/新宿東映パラス2★
地上波放送を見なくなってタレントとかアイドルとかに疎くなったが、 JRを利用するので、この子は知っている。ファニーフェイスである。 舞台は瀬戸内海を臨む松山の高校。 その主人公の女の子が女子ボート部を結成し、 短い高校生活をボートにかける。と書くとスポ根ドラマみたいだが、 映画はそうではなく、あくまでスポーツをメディアとした青春の輝き みたいなものを瑞々しく描いていて秀逸。 くだらないことをいちいち種明かししないところがよい。 製作に周防正行が絡んでいる関係で、 大杉漣などの常連や桜むつ子まで出演。 忘れるとこでしたが、件の女の子は田中麗奈です。
#53「りんご」 サミラ・マフマルバフ/1998/イラン/Nov. 1/渋谷ジョイシネマ(TIFF)
イランの巨匠モフセン・マフマルバフの18歳の娘だという監督。 イラン映画には、ドキュメンタリーなんだか演技なんだか やらせなんだかよくわからない作品が多いが、 これもそんな性格をもつ一品。 双子の娘が、盲目と弱視の両親によっていわれのない理由で 生まれてからずっとうちに監禁されていたのを、 福祉事務所の介入を受けて解放され、親の心も次第に変わっていく、 というお話。クレジットを見る限り、実話の本人が出演しているようだ。
#52 「ホールド・ユー・タイト」關錦鵬/ 1997/香港/Oct. 31/渋谷エルミタージュ(TIFF)★
おー、これは素晴らしい。 東京国際映画祭シネマ・プリズムのオープニングを飾ったのは關錦鵬。 チケットの発売が平日に延期され、当日、打ち合わせで夜遅くまで 会社にいた関係で前売券が入手できず、やくなく当日券の列に 2時間半並んだのだが、その価値はあった。とにかくナチュラルな演出、 思いきった省略の技法。 出演者ひとりひとりの心情がすすーっと伝わってきます。 ティーチ・インで監督に失礼な質問をした、あなた、 残念ながら修行が足りません。もっと映画を観てからにしましょう。 火鍋屋で小津シーンあり。
#51 「リプレイスメント・キラー」 アントワ・フークア/1998/米/Oct. 31/有楽町スバル座
全世界待望の周潤發ハリウッド進出第一作。全編、アメリカ人のもつ イメージそのままの彼がスクリーンいっぱいに活躍する、 3年間も待たされたファンにとってはまず満足の出来。 あまり痩せてはいなかったが、前作 よりははるかに動きが軽く(スタント?)、派手なガンアクションと共に、 往年の周潤發の面影が蘇る。さすがに楊子はくわえてなかったが。 呉宇森監督作品への出演は2作先とか。
#50「アイス・ストーム 」李安/1997/米/Oct. 18/銀座テアトル西友★
よわせてぇくださいぃもおすこしぃ♪ ではなくて、これは李安の新作。 いままでの作品はどこかほのぼのしていたが、今回は正反対。 それぞれがその真実をわかっていながらも、外目には幸せそうな家族の、 ついにガラガラと仮面が剥がれていく様を絶望的に描く。 こないだ《超級星期天》にゲストで出ていたけど、 あの笑顔でこんな作品を撮れるなんて、李安、脱帽。
#49「フラワーズ・オブ・ シャンハイ」侯孝賢/1998/台湾=日本/Oct. 18/渋谷シネパレス
公開2日目なんだけど、劇場はガラガラ。 これはまずいんでないかな、市山さん(松竹のプロデューサー)。 19世紀の魔都上海の置屋内部の人間模様を描いたこの作品は、 完全な室内劇。 ランプの灯、阿片の煙、ゆったりと移動するキャメラ。 しかし、ここには『 憂鬱な楽園』での阿里山山中バイクツーリングの長廻しで満喫した 陶酔感はない。 どうやらこの監督、かなり悩んでいる様子だ。 調度品や衣装がいかに豪華でも、梁朝偉などのスターを出しても、 結局は映画は演出です。 奥山和由とも切れたはずだし、次回作は期待してますよ。
#48「渡り鳥いつまた帰る 」斎藤武市/1960/日活/Oct. 1/フィルムセンター★
小林旭の《渡り鳥》シリーズ第3作。 冒頭は、馬に乗った小林旭が、馬車に乗った浅丘ルリ子と 島津雅彦(いさむちゃん)に逢う、どこかで観たようなシーン。 でも、本作の舞台は佐渡。 宍戸錠は《ジョー》じゃないし、踊るのは白木マリじゃないし、 若干レギュラーから外れているけれど、いや楽しみました。 今度《渡り鳥》LDBOXが出るみたいだけど、やはり買うしかないかなぁ。 小津の戦前作品LDBOXも出るので、お金がないんだけれどね。
#47「女を忘れろ」 舛田利雄/1959/日活/Oct. 1/フィルムセンター★
昔ボクサー、いまキャバレーのドラマーで、年上のホステス・南田洋子 と同棲している小林旭と、ブルジョアのお嬢様で、 父を亡くして悪い不動産屋・安部徹にお屋敷を買い叩かれる浅丘ルリ子 の純愛もの。金子信雄が例によってやくざの役で出てくるが、 本作ではいい奴だ。安部徹を脅して浅丘ルリ子を助ける。 しかし、その見返りとして小林旭は諜報員(なんで諜報員なんだろう? )として外国へ向かう。 こういう作品を観ていると、林海象の《濱マイク》シリーズなんかが、 日活アクションの影響甚大というのがよくわかりますね。
#46「愛を乞う人」 平山秀幸/1998/東宝/Sep. 26/新宿コマ東宝
幼い頃から母親に虐待され、逃げ出した過去をもつ女性が、 不明になっている父親の遺骨を探しながら、 憎いはずの母親をどこかで求めている。 この女性と母親の2役で原田美枝子様ご主演。 出演ごとに演技が冴えてきて、いまや大女優ですねえ。 昔は『青春の殺人者』なんかで観て、 グラマーな人だなあ、と思ったくらいなんですけど。 父親は台湾人という設定で、遺骨探しの一環に台湾ロケがあります。 九[イ分]も出てくるし(いまや台湾ロケのお約束?)、 集集線も出てくるので、台湾ファンには嬉しいです。 『さよなら再見』のお父さんが タクシードライバー役で出演。 えーと、演出はクド過ぎかな、と思いました。 僕ならもっとバシバシ端折る。
#45「アルファビル」 J=L・ゴダール/1965/仏/Sep. 19/ACT・SEIGEI・THEATER★
ごだーるでござーる。以前観たのはレイトショー 。ただでさえゴダールなのに、寝るのは必然だったといえよう。 土曜、『裏町の聖者』を観に行こう、と連れがいったのだが、 あれは香港で観たし、別にもう一度観るもんでもない。 それで、ひとりで池袋に出かけてこのゴダール・リターンマッチとあいなった わけでございます。 聖書といえば辞書を指す、論理が支配する異星の街、アルファビル。 すべての人間は、プログラミング能力をもったコンピュータ、アルファ60の命 令により動いていた…。 異星なのに(地球から?)車で行けるとか、フランス語が通じるとか、この感覚が いい。 Oui, tres bien, merci. アンナ・カリーナの化粧はこはい。
#44「スウィート ヒアアフター」 アトム・エゴヤン/1997/加/Sep. 6/シネマライズ★
ある田舎町で起こったスクールバス転落事故。 子供を失った被害者達は事故として諦めかけていたとき、 ひとりの弁護士がやってきて、訴訟をおこすことを説得していく。 弁護士の言葉の巧みさに、皆徐々にその気になっていくが… いわゆる群像劇。閉ざされた環境をうまく利用した脚本と演出がうまい。 題名通りの結末にホッとするも、心のどこかにシコリが残る。
#43「夢翔る人 色情男女」 爾冬陞/1996/香港/Sep. 6/シネマミラノ
以前香港に行ったとき、“近日上映”のポスターが貼ってあったのに 結局帰国までに公開されず、観られずに終わった作品がやっと来日。 爾冬陞が三級に挑む。 仕事の来ない映画監督(張國榮)にやっと回ってきたのは、ポルノ。 黒社会のスポンサーの情婦(舒[シ其])を主役にするのが条件。 まったくやる気なし、ポルノなのに脱がない、演技くそ下手、 という彼女を徐々に本気にしていき、 映画はついに完成したかに思えたが… 『Shall We ダンス?』などで すっかり香港でも人気の周防正行のデビュー作にして傑作 『変態家族・兄貴の嫁さん』が 敬意をもって引用される。
#42「ゴダールのリア王」 J=L・ゴダール/1987/米/Aug. 22/三百人劇場
ゴダールだ。シネフィルたる者、ゴダールくらいちょちょいのちょい で解読できなくてはならない。 なーんて、そんな人、世の中に存在するのか? 本作品にはシェークスピアの超有名な作品の題名がついているが、 ケネス・ブラナーの映画のようにストレートなものでもなければ、 黒沢のような翻案でもなく、なんだろなー。 シェークスピア5世を名乗る男が、 先祖の作品(つまりリア王)を復元しようとする話で、 寝ながら観たこともあって、これ以上は解説できません。 ジュリー・デルピーが若い。 製作年からいって『汚れた血』 の頃だから、かわいいのは当たり前だ。 最近は横に延びちゃって、観る影も少ししかないのは残念至極。
#41「ボンベイ」 マニラトナム/1995/印/Aug. 14/銀座テアトル西友
インド映画ブーム爆発寸前の昨今、お盆でも劇場は満席です。 ヒンドゥー教徒の男性がイスラム教徒の女性に恋するお話で、 『ムトゥ・踊るマハラジャ』 のような完全娯楽映画ではないですが、歌とダンスがきちんと入ります。 1992〜93年あたりにボンベイで起ったらしい(すみません、よく知りません) ヒンドゥー教徒とイスラム教徒間の抗争を絡めて、 宗教を超えてインド人全体が仲良くしなければならない、 というのがメッセージ。 (インド国内だけでなく、パキスタンとも仲良くしてもらいたいものですが。) 音楽はA.R.ラフマーン。『ムトゥ』もこの人です。 こないだ、ついにCDを2枚も購入してしまいました。 (ハマッたら恐いなあ… ^^;)
#40「」 蔡明亮/1997/台湾/Aug. 14/ユーロスペース2
すでに去年の東京国際映画祭で観た んですが、こないだ台湾に行ったので何か発見があるかと思い、 また観に行っちゃいました。 案の定、出るわ出るわ、《あ、あれあそこだ》、 《お、ここは通ったじゃないか》。 なんというタイミングの悪い上映なんでしょうか。 ともかく、事件は台北の西門町界隈で起ります。 相変わらず全く音楽を使わない演出は、緊張感がいっぱい。
#39「恋するシャンソン」 アラン・レネ/1997/仏=スイス=英/Aug. 8/ル・シネマ
席取りのあとでトイレに行った。 帰って来たら、隣に老夫婦がいた。 げっ。 僕は映画館では未成年カップルや老夫婦の近くには座らないように心がけている。 彼らは上映中に喋ったりしてうるさい確率が高いのだ。 案の定、ばーさんがじーさんに内容について話しかける。 しかし、その量は、まあ許容範囲だった。 ところが。 じーさん、胃が悪いのか息が臭い。 もーれつだ。 映画はミュージカル・コメディだったので、随所に笑うポイントがあった。 じーさんも笑う。 そのたびに鼻がよじれそうな悪臭が周りに噴射されるため、僕は笑うこともできずひたすら息を止め、顔を背けていた。 映画はとても面白かったのに、残念な2時間だった。
#38「Jam」 陳以文/1998/台湾/Jul. 11/テアトル新宿★
楊徳昌の片腕で『 エドワードヤンの恋愛時代』などでは出演もしている 陳以文の初監督作品。 複数の人物を軸に、それぞれのエピソードを時間を前後して 重ねあわせるというタランティーノみたいな手法は、 なかなかよくできました、という感じ。 あと、あれっと思わせるような画面を出しておいて、 それを説明してくれるシーンをタイミングよくあとから見せるやり方も テクニシャン。 ストーリーの展開にはちょいと破綻した部分もあるけど、 ドンマイドンマイです。 今後も期待できそう。 主役の2人のうち、女の子はふたりっ子の岩崎ひろみに似てました。 終電に間に合ってよかった。
#37「プルガサリ 伝説の大怪獣」 チョン・ゴンジョ/1985/北朝鮮/Jul. 11/キネカ大森2
映画として何一つ光るものがない、 でも観ること自体に意味のある北朝鮮映画。 日本からゴジラの特撮スタッフを招いて作った怪獣ものの珍品で、 一貫してトホホでローテクな画面が続く。 しかし、それだけに結構笑えた。 主役(?)のプルガサリは、 ご飯粒を練って作られた人形に生命が吹き込まれたもので、食べ物は鉄。 剣とか鍬とか鍋をばりばり食ってぐんぐん成長する。 そして悪政に苦しむ農民達のために政府軍をやっつけるのだ。 いけいけ、プリガサリっ。US版ゴジラ公開初日だったが、 客席数68のキネカ大森2も満席で次の回は立ち見も出ていた。
#36「不夜城」 李志毅/1998/東映/Jul. 4/新宿東急
先週はカネシロの舞台挨拶のせいで観そびれたが、 一週間たってみると客席は1/3程度の入り。 裏切りの連続には少々うんざりだが、本物の黒社会もこんなものかな。 曾志偉の北京語吹替えが違和感あり。 僕はもともとこの監督をそんなに買っていないので 大して期待していなかったが、 それにしても(日本ロケで勝手が違うからか、) 演出にキレを欠いていたように思う。 キレといえば、かつてNHKの中国語会話にも出ていた修建。 彼はいいです。これから大物になります。 ところでこの作品はれっきとした日本(角川)映画。 監督の本拠地香港とか金城武の故郷台湾では上映されるのだろうか、 気になるところだ。 (人間関係が難解なので、おそらく大衆には受けない→上映はなし、 が僕の予想。)
#35「華麗なる賭け」 ノーマン・ジュイソン/1968/米/Jun. 20/シネマ・カリテ3
高校時代、マカロニ・ウエスタンで有名なジュリアノ・ジェンマを 好きな奴がいて、僕に「おまえは誰が好きだ?」と聞くから、 その名前のかっこよさから出任せに「スティーヴ・マックィーン」と 答えたことを思い出した。 述懐すれば、彼の作品をスクリーンで観るのは初めてだ。 ミシェル・ルグランの心地好いスコアと、 スタイリッシュな画面が印象的。 つまり《渋谷系》映画ということで、そういう客層が予想されていたが、 行ってみるとガラガラ。 座っているのは、どう見ても「昔観て、懐かしいからまた観に来ました」 という風情の中年カップルだけでした。
#34「小原庄助さん」 清水宏/1949/新東宝/Jun. 19/フィルムセンター★
これは以前から観たくてしかたなかった作品。 「朝寝、朝酒、朝湯が大好きで♪」の唄で有名な小原庄助さんを モチーフにした人情喜劇。 清水作品特有ののほほ〜んとした空気が漂う幸せな映画。 洋裁の先生役の清川虹子の若さにブッ飛ぶ。 小津の現存する作品をすべて見てしまった今、ターゲットは《天才》 清水の作品だ。 次は『ありがたうさん』でお願いします、フィルムセンター殿。
#33「ムトゥ・踊るマハラジャ」K.S.ラヴィクマール/1995/インド/Jun. 14/シネマライズ★★
タイトルクレジットでまず“SUPER STAR”とでっかく、 主役のラジニカーントを紹介して、 この映画が有無を言わさぬスター映画であることを通知。 そして冒頭、主役が馬車に乗っているシーン。 アップになると、いきなりカメラ目線。おいおい…。 インド映画を観るのは『 ラジュー出世する』以来。 あのときもベタ賞めした記憶があるが、この作品の方がパワーが数段上。 まさに、おそるべしインド映画である。 歌、踊り、李小龍のパクリアクション、ロマンス、すれ違い、 陰謀とヒーローの活躍。 すべては必然であり、 必然が約3時間の長丁場(インド映画では短い方)を忘れさせる。
#32「「A」」森達也 /1998/安岡卓治/Jun. 8/BOX東中野
マスコミといえば正義を旗に、歪曲と誇張を常套手段とし、 ときには嘘までつくインチキ集団であることは、トリクロロエチレン問題 なんかで実感すること。 本作品はオウム真理教の荒木広報副部長を追ったドキュメンタリーで、 全くの第3者的立場から教団とマスコミ、公安、市民のぶつかり合いを 淡々と記録した貴重な記録。 マスコミに限らず、警察のきたないやり方や、一般市民の論理ムチャク チャの感情に対して懸命に対応するA氏は、世を捨てるために 出家したあとで、社会にどっぷり接することになる皮肉な結果に 困惑した様子。 教団(の一部)が起こしたアノ事件が正当化できるわけがないが、 残された(まじめな)信者には人権があるでしょう。
#31「東宮西宮」張元 /1997/中国/Jun. 7/キネカ大森1
普通、ゲイ物となるとなんだか暑苦しい画面を想像するし、 実際そうだと思っていたが、 この作品はうまく水を利用してクールな画面を一貫して提供している のが好印象。 中国国内では上映禁止、カンヌに出そうと思っても妨害を受けたという いわくつきの作品だが、 ロシア古典映画を思い出させるような演出の意図が不明。 (単なる監督の持ち味か? でも『北京バスターズ』も 『広場』もそんなではなかったような…)
#30「初恋」葛民輝/1997/香港/May 30/シネ・アミューズ
王家衛の息がかかった監督が 自分でシナリオを書いて映画を撮るという設定で、 シナリオを書き直すたびに劇中劇(といってもその境界があいまい)で その内容を見せる、かなりハイテンションかつアバンギャルドな作品。 主題歌が、朱茵の いまチャート入りしている新曲の元唄(?)でびっくり。 出演は葛民輝自身、金城武、莫文蔚、李維維。 カネシロファン(?)の女の子が多くて混んでおり席が最前列になってしまったのだが、撮影が杜可風なので観ていてクラクラした。 ロケ地巡りに来てね、といわんばかりの撮影場所の説明に苦笑い。^^;
#29「アサシンズ」 マチュー・カソヴィッツ/1997/仏/May 17/シネマ・カリテ1★
この作品は映画的にとても興味深い。 まず、プロット。 (監督が演じている)主人公のモノローグで物語は始まる。 タランティーノばりの時間のバックトラックのあと、主人公が、 ミシェル・セロー演じる老いた殺し屋に弟子入りして教育を受ける過程 が、非常理な殺人とともに淡々と語られる。ところが…、主人公は途中 でセローに殺されてしまう。 ここで、観客は呆然とするしかない。 この後は、カソヴィッツの友だちの弟とセローの物語となるのだ。 それから、音。どこからか心理的に動揺を誘うノイズが聞こえてくる、 と思っているうち、 それは自然の音(列車の過ぎる音とか)であるとわかり、 そのまま次のシーンへオーバーラップする。 あと、TV。しばしば登場人物はTVを背景に語る。 キャメラはズームを始め、TV画面は背景を埋めつくし、 語り手はTV画面に嵌め込まれていく。 最後に、この作品が《TV番組だったという通告》を目撃するにおよんで 「あぁ、やはり」と観る者は絶望と安堵を覚えるに違いない。 『憎しみ』のカソヴィッツ、 デプレシャンとともに 現在のフランス映画で最も注目すべき監督のひとりだ。
#28「BE MY BOY」舒[王其]/1997/香港/May 1/キネカ大森3
普通の監督と普通の俳優によるゲイ映画。 主人公2人のうち、陳小春は自分がゲイであることを隠さないが、林子祥は何かと世間体など気にするタイプ。 (中略) 最終的に林子祥がカミングアウトしてハッピーエンド。 多彩なゲスト出演が楽しい。 観客にひとりで来るおじさんが多いのが気になった。 単に仕事中の暇つぶしなのか、それとも…。
#27「ジャッキー・ブラウン」クエンティン・タランティーノ/1997/米/May 1/川崎チネチッタ2★★
映画はいまだに東京で観ることにしているのだけれど、今回はスケジュールの関係でやむなく川崎に。 そしたら神奈川県の映画の日で得した。 これぞ、パルプ・フィクションがそのまま映画になったようなB級映画の本流をいく作品。 トホホな役のロバート・デニーロが印象的。 タランティーノの才能は当分涸れそうにない。
#26「離婚のあとに」王瑞/1996/中国/Apr. 30/中野武蔵野ホール
妻に愛想つかされて離婚した売れない作家が、元妻の妹と同居することになる。 派手な暮らしをする妹に最初は閉口していた作家だが…。 妹役の張延がなかなかよいです。
#25「ロンドンの月」張澤鳴/1995/香港/Apr. 30/中野武蔵野ホール
音楽留学のために中国からロンドンにやってきた女の子が体験するタフな人生。 妻子を中国に残してロンドンに来ている男を頼るうちに好きになってしまう。 良識ある男も、彼女と一緒にいるうちに自分の気持ちをごまかしきれなくなっていく。 悲しい道をそれぞれ選択して映画は幕。
#24「望郷」徐小明/1997/台湾/Apr. 25/BOX東中野
いけません、いけませんねぇ、BOX東中野。 回数券を複数人同時に使わせないなんて。 せこいにもほどがある。 おかげで…、寝てしまったではないか。 台湾に出稼ぎに来ている他国人を追ったドキュメンタリーで、なかなか面白そうだったのに。 お昼にビールも呑まずに臨んだのに。 久しぶりの映画だったのに。;_;
#23「ドーベルマン」ヤン・クーネン/1997/仏/Apr. 11/シネセゾン渋谷
強盗グループのひとりが運河かどこかにうんちする場面、彼はその場に落ちていたカイエ・デュ・シネマをちぎって尻を拭く。 監督のスタンスを確認する瞬間だ。 画は漫画調。ときにはコマ割りまで入る。 内容は超ハードバイオレンスで、これ、アメリカでも上映されるのか興味あるなぁ。 されれば若い連中には受けるでしょう(でもNC17間違いなし)。 タランティーノみたいなのを期待して行ったのだが、僕の好みではなかった。 局所的には唸らせる演出も何度かあったけど…。 刑事のひとりがタンタン風だったのが(^^)。 今後も注目すべきかどうなのかよくわからん。
#22「南京1937」呉子牛/1995/中国=香港/Mar. 28/文京区シビックホール
抗日戦争勝利50周年記念映画。 日本で受けるわけがないテーマなのでロードショーなどされず、 これは現代中国映画上映会の企画。 プロデュースがあの呉宇森だからか、帝国軍が南京に攻め込むシーンの火薬の量が尋常ではないが、もちろんこの映画はエンターテインメントではない。 平時には大人しい普通の人間が、一握りの馬鹿人間の欲望から人為的に始められる戦争で殺人兵器と化し、罪のない人民が意味もなく殺される、この異常さ、愚かさを訴えている。 僕はメッセージ性の強い映画や音楽は嫌いだけど、こういう映画はみんなに観てほしいと思う。 たとえ、主演の早乙女愛(from日本)がどうしようもない大根で、映画のできがイマサンくらいだとしても。 『青春のつぶやき』の劉若英 (from台湾)が出演してるしね。
#21「FISHING WITH JOHN [episode 4-6]」ジョン・ルーリー /1997/日=米/Mar. 14/ユーロスペース2
というわけで、こちらはレイト・ショーで観た後半。第4話のゲストは、 ウィリアム・デフォー。メイン州の凍てつく湖に掘っ立て小屋を建てて、 獲物を狙うが、10日たっても何も取れず、ついに…。 第5,6話は続き物でゲストはデニス・ホッパー。 タイに巨大イカを釣りに行くという酔狂な企画。 “巨大イカの催眠能力”により少し寝てしまったが、満足の一日でした。 アンダマン・シー、アンダマン・シー…。
#20「FISHING WITH JOHN [episode 1-3]」ジョン・ルーリー /1997/日=米/Mar. 14/ユーロスペース2
シネフィルなら誰でも知ってる『 ストレンジャー・ザン・パラダイス』のジョン・ルーリー、初監督作品。 TV番組仕立ての短編を並べたもので、彼がホストになってゲストと一緒 に世界中で釣りをするというもの。 第1話のゲストはジム・ジャームッシュで、ロングアイランドに鮫を釣 りに行く。 釣りはともかく、ゲストとジョンのやり取りがやたらとおかしい。 全6話なのだが、これを3話ずつモーニング・ショーとレイト・ショーに わけて、それぞれ別料金を取るのがせこいぞ、ユーロスペース。
#19「新・欲望の街II/ '97古惑仔<こわくちゃい>最終章」劉偉強 /1997/香港/Mar. 7/ACT・SEIGEI・THEATER
あー、ついにタイトルに“最終章”が入ったぞ。 観終わった感触からすれば、このシリーズはまだまだ続きそうなんだけ ど…。日本の配給会社は何を考えているのかまったくわからん。 前作で死んだ黎姿の後釜は李嘉欣(最近化粧品 のCFで活躍)、任達華の後釜のボスは弟という設定で萬梓良。 …どうみても弟には見えないぞ、貫禄付きすぎ。 映画のあとで、久しぶりに三宝飯食べてしあわせ。
#18「新・欲望の街I/ 古惑仔<こわくちゃい>疾風、再び」劉偉強 /1996/香港/Mar. 7/ACT・SEIGEI・THEATER
香港の劇画を原作とするチンピラもの、シリーズ第3作。 今回は、サイ(黎姿)とかチェン(任達華)とかのレギュラーが殺されてし まい、次回からどうすんだ、という展開。 監督自ら悪役でいい味出してます。 ところで、この作品、日本に来たときになぜか“新”が付いてしまった。 前作と流れはまったく一緒なのに。 これは『男たちの挽歌』 シリーズの二の舞では…。
#17「HANA-BI」北野武 /1997/オフィス北野=ヘラルド/Feb. 28/テアトル新宿★
ヴェネチアで金獅子賞を獲った話題作。 北野作品を見るのはまだ2作目なのですが、固定ショットを主体とした 絵作りは、この人が映画をよく観ていることを如実に表しています。 とにかく観ていて安心。 元刑事の主人公と白血病で余命いくばくもない妻の声によらないコミュニケーション、「見せない」ことで観客にものごとを伝えるテクニック。 脱帽です。 ただ全編にわたって流れる久石譲の音楽は五月蝿い以外の何者でもなく、監督がこののぼせ上がった音楽監督を拒否できないのは何故なのか理解に苦しむところです。
#16「フェイス/オフ」 呉宇森(ジョン・ウー)/1998/米/Feb. 28/渋谷パンテオン★★
待ちに待った呉宇森の新作。 ハリウッドの金をもらって呉宇森美学炸裂。 ジョン・トラボルタとニコラス・ケイジの顔が入れ換わるというアイデ アは(いまのところ)荒唐無稽だが、そんなことは関係ない。 SFXをほとんど使わないとこもすばらしい。 あえてケチをつけるとすれば、飛行機のチェイスシーンとボートのチェ イスシーンがあまりにハリウッド的なことと、主人公2人の交流があま り深くないところかな。 次回作はいよいよ周潤發主演だ。 できればトラボルタと共演させたいがー。
#15「風が踊る」侯孝賢/1981/台湾/Feb. 15/ユーロスペース1
デビュー作『ステキな彼女』の主役、鍾鎭濤と鳳飛飛をふたたび起用した、アイドル恋愛もの。 冒頭が澎湖島の風櫃でびっくりした。 そうか、『風櫃の少年』の前にも、こういう作品があったのか。 メインの舞台は台北。 交通事故で目が見えなくなった青年と、カメラマンの女の子のふれあいで、話自体はたわいもない。
#14「あひるを飼う家」李行/1963/台湾/Feb. 15/三百人劇場
海辺の女たち』の、ヒロインだけ置き換えてあとは同じキャストで撮ったような同年作品。 ヒロインがかわいい分、できはこちらが数段いい。 というのは冗談としても、登場人物の心理描写も細やかでさすが《名作》の一本に数えられるだけのことはある。 これで昨年末から続いていた台湾映画祭はおしまい。
#13「赤い柿」王童/1996/台湾/Feb. 15/三百人劇場
王童の自伝的作品。 国民党軍の司令官を主(あるじ)とする家庭が、台湾へ逃れ、商売をしながらたくましく生きていく。 「一年で帰れますから」と説得されて付いて来たおばあちゃんは、結局、台北郊外で死んでいく。 話は、外省人と内省人との確執とかが取り上げられるような社会的な ものではなく、あくまで監督の少年時代への懐かしさみたいなもので溢 れているプライベートなものだ。侯孝賢の自伝的作品『 童年往事-時の流れ-』と見比べると面白い。
#12「海辺の女たち」李行/1963/台湾/Feb. 14/三百人劇場
チラシによれば本作は台湾初のカラーシネマスコープ作品。 内容は、片田舎の漁村で、男が漁から帰ってくるのをけなげに待つ海女が、村のやくざにちょっかい出されたりする、日本にも掃いて捨てるほどある紋切り。 健康的ではあるが、お色気もあり、この時代の台湾は結構開放的だったのか?とさえ思わせる。
#11「バナナ・パラダイス」王童/1989/台湾/Feb. 14/三百人劇場★★
正直、この映画には動揺した。 うわべはコメディじたてだが、実は壮絶なストーリー。 大陸で革命が起きたときに台湾に逃げ込んだ人を外省人と呼ぶが、そのうちの下層の人々に焦点をあて、新天地であるはずの場所での激動の約40年が綴られる。 スクリーンで語られる不幸な時代のある衝撃的な事実は、圧倒的な勢 いで客席を呑み込む。 『風櫃の少年』の2人が6年後に本作でまた共演。
#10「桜桃の味」 アッバス・キアロスタミ/1997/イラン/Feb. 8/ユーロスペース2
去年の映画祭で寝てしまった キアロスタミの新作がいよいよロードショー。 ……また、寝てしまいました。-_-; 前回は後半、今回は前半に寝たので両者を合体するとかなりの部分が復 元できるはずなのですが、じいさんが《桜桃の味》の話をする肝心な部 分が抜けてるんだなぁ。 また、観るか…。
#9「チャイニーズ ・ボックス」王頴/1997/英=香港/Feb. 8/シネスイッチ銀座
恋する惑星』の影響を受けていることは明らかな、 王頴の香港返還もの。 まず、主演のジェレミー・アイアンズがエスカレーター横のアパートに 住んでいる。 つぎに、張曼玉が王菲みたいな格好をさせられている。 (憶測だが、この役は最初王菲にオファーがいって、彼女が断ったので はないか? 張曼玉にこの役は似合わない。) 極めつけは、占い師の役で《ミッドナイト・エキスプレス》のおっさん (実は照明係)が出ていることだ。 内容はおいとくが、ジェレミー・アイアンズにはいささかうんざりだ。
#8「ステキな彼女」 侯孝賢/1980/台湾/Feb. 7/ユーロスペース1
同監督のデビュー作。 これはいわゆるアイドル映画で、主演の鍾鎭濤らが唄う歌謡曲をバックに明るい 純情恋物語が展開する。 スクリーンはシネマスコープで、セリフもアフレコと吹き替えという興 行的セッティング(意味不明)とはいえ、この頃からすでに子供を生き生きと描写し ていて、後の才能開花を十分予感させます。
#7「さよなら・再見」 葉金勝/1986/台湾/Feb. 7/三百人劇場
まったく、観ていて情けなくなる映画。 元帝国軍兵士から構成される“千人斬りクラブ”の台湾売春ツアー。 全編にわたる、戦争責任を忘れた日本人への痛烈な批判と、日本人へ の恨みを忘れて金儲けのために日本人に媚びる台湾人への嘲笑。 こういうのを自民党をはじめとする《先生》方はどうお感じになるんで しょうか?
#6「ワイルドバンチ /オリジナル・ディレクターズ・カット」 サム・ペキンパー/1969/米/Feb. 1/シネセゾン渋谷★★
かつてハリウッドにペキンパーあり。 ペキンパーの死後、香港に呉宇森現わる。 そして呉宇森はペキンパーの後を継ぐべく、ハリウッドへ。 (ほんまかいな?) 本作はペキンパーの金字塔。 問答無用。観てない人は劇場へ“Let's go.”“Why not?”
#5「侠女・下集」 胡金銓/1971/台湾/Feb. 1/三百人劇場
上集』は主人公たちと東厰の死闘がコメ ディを混ぜながら繰り広げられる大活劇だったが、一転してこいつは、 なにやら宗教めいた???な雰囲気。 いやあ、やっぱり胡金銓は謎の演出家だ。 映画では、喬宏演じる大師が強い強い。 若き日の洪金寶なんぞ敵ではない。
#4「侠女・上集」 胡金銓/1970/台湾/Feb. 1/三百人劇場★
『A Touch of Zen』という英題で知られる、胡金銓の代表作のひとつ。 相変わらず、歪んだ画面、これでもかこれでもかと続くパン、ティルト、 ズームアップは観る者(少なくとも僕)をうんざりさせる。 が、ストーリーがとても面白いため、ぐんぐん引き込まれる。 上映前に主演したシー・チュン氏の舞台挨拶あり。
#3「チュンと家族」張作驥/1996/台湾/Jan. 25/三百人劇場★
この邦題なんとかならないかなぁ。 原題は『忠仔』でどこにも「家族」なんて入ってこないんだけど。 でも邦題とは無関係に、できはかなりいい。 どちらかといえば不幸な家庭に育った若者の閉塞感。 伝統舞踊(?)のエネルギー。 兄貴分の死、祖父の死。 なんとなく侯孝賢の『風櫃の少年』を連想した。(実際、製作に侯孝賢が絡んでいるらしい。) 新人監督らしいので、今後が楽しみ。
#2「娃娃と仔豚」柯一正/1991/台湾/Jan. 24/三百人劇場
藍月』の監督の子供映画。 全編にわたって台湾映画独特の歌謡曲調音楽が流れるほのぼのコメディだ。 両親を亡くした女の子が母親の親友に引き取られ、田舎からペットの子豚と一緒に台北にやってくる。 これでドタバタが起らないわけがない。 引き取った先の父親が『憂鬱な楽園』などのやくざ役で印象深い高捷が演じているのが目ん玉飛び出しもの。
#1「無言の丘」王童/1992/台湾/Jan. 24/三百人劇場
台湾ニューウェイヴ以前の巨匠だが、観るのは恥ずかしながら初めて。 日本統治時代、金瓜石あたりの金山で生きる人々を描写した作品。 夫を金山で亡くし、体を売ったりしながらひとりで子供を育て生きるむちゃくちゃたくましい女性を『愛情萬歳』の楊貴媚が演じて素晴らしい。 鉱山日本人経営者(藤田組だ)の冷酷さに民衆が苦しむ内容は観ていてつらい。 映画はかなりの部分がロケで、旅行で実際に見た景色がいくつも出てきて、その意味では楽しいのだけれど。

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