[↓2015年][↑2017年]

2016年に観た映画の一覧です

星の見方(以前観たものには付いてません)
★★…生きててよかった。
★…なかなかやるじゃん。
○…観て損はないね。
無印…観なくてもよかったな。
▽…お金を返してください。
凡例
#通し番号「邦題」監督/製作年/製作国/鑑賞日/会場[星]

#93「長城」張藝謀/2016/中=米/Dec. 31/Capitol Theatre (Singapore)
中国のハリウッド進出(による文化工作)は最近著しく『The Martian』はその一端だったが、主演のMatt Demonがまた同類の中国資本映画に出た。監督はなんと張藝謀。題名からして古装片だろうくらいの認識しかなかったが、始まってすぐに異様な空気を察知した。なんと饕餮(Taotie; 字幕では“Tao tei”だったかな?)と呼ばれる人食い化け物の大群と人間が戦う中国版SFだったのだ。長城は饕餮に対する防御壁というわけで、奇想天外な武器を使った荒唐無稽な戦いが展開する。Matt Demonはこの戦いとは無関係で、中国にあるといわれる“Black powder”(火薬)を入手しに来た西洋人なのだが、饕餮を知ってしまい朝廷軍に確保されてしまい、最初は抵抗するが将軍の景甜の美貌ゆえに(?)協力して饕餮に立ち向かい最後には勝利する。Matt Demonが活躍するのはもちろんだが、結局勝利をもたらしたのは中国の“発明”である火薬というわけだ。文化工作はどうでもいいけど、張藝謀の作品であることを深く憂慮するシンガポールでのひとときであった。
#92「Vangaveeti」Ram Gopal Varma/2016/インド/Dec. 25/PVR: Forum○
“Bad Cow Films”というプロダクション名が出て観客大爆笑で始まった血なまぐさいA-rated作品。実話らしい。1970〜80年台のVijayawadaが舞台で主人公のVangaveetiはCongressの政治家。邪魔者、気に入らない者をつぎつぎに惨殺してのし上がっていく。こういうのが大物政治家になっているのがインド。とにかく殺し方がむごい。グループで襲撃しめった刺し。血がドバー。うるさい音楽。なんでこんな映画に子供連れてくるかね。一方、撮影にはおおいにみるものがあった。不穏にみえる坂の街。地を這うようなカメラワーク。仰角。ドローンを使った俯瞰。政治活動に必須のアンバサダーの台数に驚いたよ。あれだけいま揃えるのは大変だろうし、CGを使っているのかな? 本作も字幕がなく、話を追うのにおおいに困った。Naina Gangulyという美人が主人公の奥さん役で出てた。鼻からあごのラインは完璧だな。でも僕の苦手系。ホンモノは夫の死後政治家になったらしい。ホンモノも美人かな?
#91「Kaththi Sandai」Suraj/2016/インド/Dec. 25/PVR: Forum○
Times of Indiaの評価がとても低かった、Vishal主演作品。悪くなかったけどな。Vishalにはキャッチフレーズないの? 共演にインド人とは思えない色白Tamannaah。相変わらず顔の産毛が気になる。たるみのないお腹も気になる。Tamannaahの父親で悪徳Deputy Commissioner役に渋いJagapati Babu。トラックに積まれた大量の現金をめぐり、VishalがCBI捜査官になったり泥棒になったり、なかなか目まぐるしい展開。最後のオチはどこかで見たパターンだったけど、まあ丸く収まってよかったんじゃないかな。とはいえ、字幕なしで話を追うのはなかなか大変である。Demonetizationで駆逐された1000ルピー札が出てくるたびに、客席からは笑い声が。VishalとTamannaahのItem number多数あり。見慣れない風景はどこの国だろうか。脇に、いつものSooriのほかに謎のコメディアンVadiveluってのが出てきた。周りは笑ってたから有名なんだろうな。例によって、こっちにはまったくおもしろくなかった。
#90「Kahi」Arvind Sastry/2016/インド/Dec. 18/Suchitra○
ここはバンガロールのイメージフォーラム?(ただし、掘っ立て小屋) 太っ腹の無料上映。WindowsでVLCを使ってmp4ファイルを再生していた。監督を招いての上映会なので、まあ問題はない、たぶん。最近のカンナダ映画はいい線いっているが、これもその一端といってよかろう。ヤク売人、レイプ犯、盗み癖のあるダンサー、結婚3年で子供のない美人妻(Krishi Thapanda)。それぞれに起こる日常とは呼べないイベントを淡々と綴っていき、そのうち4人は細い線でつながるという流れ。ドラマチックでない(&結末もない)ので万人向けではないが、その落ち着いた絵作りには好感がもてた。そんな映画の上映中にどんどん観客が増えてきて、終映時には超満員になった。さすがバンガロール、知識人多し。ディスカッションをパスして出てきたのは僕らだけだった。どんな白熱したディスカッションだったのか、興味あるなあ。カンナダ語でやるっぽかったので、残ってもチンプンカンプンだったろうけどね。
#89「Double Feluda」Sandip Ray/2016/インド/Dec. 17/INOX: Garuda Mall
撃沈。字幕さえあれば○付けたのに。あのサタジット・レイが生み出したという私立探偵Fludaへのオマージュ作品というか誕生50年記念作品らしい。監督はサタジット・レイの息子。主役のFludaにテレビシリーズで彼を演じたSabyasachi Chakrabortyを招聘し、他の出演陣もベンガル映画界の俳優を総動員した豪華版である。映画は2話構成で、シンプルな推理ものなのだが、話が会話主体で進み、犯人が突然指摘されるため、さっぱりわからなかった。無念である。舞台はもちろんコルカタだがあまり情緒的なところは出てこない。アンバサダー・キャブがよく出てきたのはよかったけど。最も特徴的だったのは、ひとりも女優が出ていなかったこと。どういうつもりだろうか。おかげでベンガル映画といえばのJune Maliaが見られなかった。(別に見なくてもいいんだけど、出ないと淋しい。) ひとの訪問時、お茶とお菓子を出すのがインドの流儀。これを律儀に描写していたのには感心した。
#88「Befikre」Aditya Chopra/2016/インド/Dec. 11/INOX: Garuda Mall○
Ranveer SinghとVaani Kapoor主演の全篇パリロケ映画。Vaani Kapoorって知らんと思ったら『Shuddh Desi Romance』のヒロインの一人だった。あのKapoorファミリーとは関係ないようだ。お腹が割れたスリムスタイルでRanveer SinghのSix packに対抗していたけど、顔がね、いまひとつだね。話はパリで知り合い恋人になった二人が喧嘩別れするも友達として寄りを戻し、それぞれが婚約して…、という一種の紋切り。要はどこで予定調和、というか破綻が訪れるかを見守っていればよいのだった。出ずっぱりのパリを見るのは楽しかったけど、細部は社会的にかなり問題なエピソードの連続で感情移入しにくかった。一方、タイトルバックのも含め、おフランスの香りのする音楽は結構よかった。映画自体がおフランスぽっくならないのはしかたない。エンディングではサクレクール寺院のところでボリウッドダンス。ばりっばりのボリウッドに仕上がっている。そいや、Vaani Kapoorのスーツケースが無印良品のだったよ。
#87「Dhruva」Surender Reddy/2016/インド/Dec. 11/INOX: Garuda Mall○
Thani Oruvan』のテルグ語リメイクは“Mega Power Star” Ram Charan主演に変わったが、ストーリーはほぼオリジナルを踏襲、敵役のArvind SwamyやNassarもそのままである。ヒーローの相手役はRakul Preet Singhに変更。これがNayantharaのままだったらとても豪華な作品になったのに…、残念である。舞台はもちろんHyderabadに変更。CharminarやHussain Sagarなどおなじみのところが出てくる。Nayanthara不在のほかでオリジナルとの大きな違いは、Ram Charanがやたらと上半身裸で筋肉ムキムキを見せる点とダンスシーンが多いこと。彼のファンはそんなにSix packが見たいのか? さて本作はタミル生まれだけあってテルグ色はかなり薄い。つまりファミリーの話がないどころか、Arvind Swamyは実の父親(Posani Krishna Muraliが好演)を殺してしまう(実際には未遂だが)のだからテルグ的にはあり得ない。よほどオリジナルの評価が高いのだろうな。英語字幕付だったけど、“チャンペスタ”だけテルグ語が聞き取れたよ。えへん。
#86「俠女」胡金銓/1971/台湾/Nov. 27/有楽町朝日ホール(FILMeX)○
竹林での戦いが著名な、胡金銓の代表作のひとつ。前回いつ観たのか忘れてしまっていて(検索しても出ないので、ビデオだったか?)、お化け屋敷のようなところに住んでいる徐楓の姿だけが頭の片隅にあった。改めて観ると、他の作品のような京劇的動きはないが、武侠物としてさすがのデキである。間抜け顔の石雋とハンサムな白鷹の(勝手な)対比も楽しいし、多勢に無勢で工夫して戦う『七人の侍』的要素も悪くない。ところがだ。後半の山岳地帯への逃避行で映画のカラーは一変する。これは単に山寺の主・喬宏の怪しさに起因するものだ。喬宏演じる坊主が神がかり的で、なにやらトンデモ的な様相を呈してくる。最たるのは、あるカットでフィルムが裏表に使われることで、こういう技術的なトンデモさが加わって観る者は頭を抱えるのである。喬宏のお供に洪金寶がいた。まだデブゴンまでには時間がかかりそう。そうそう、肝腎の竹林の出番はあまり多くなく、少し拍子抜けだった。
#85「タイペイ・ストーリー」楊徳昌/1985/台湾/Nov. 27/有楽町朝日ホール(FILMeX)○
ディジタルリマスターされたのは喜ばしい。2007年の追悼特集以来の鑑賞。侯孝賢と蔡琴主演で脇に呉念眞とか柯一正の友人、あとは林秀玲とか梅芳とか陳淑芳といった台湾電影ではお馴染みの俳優陣。いま見ると、みんなほんと若い。特に呉念眞の若さにはびっくりする。1980年台の台北の街はまだ台湾の街で、(現在の)東京的なところが何もないのがいい。そういう古い台北に暮らす若者のどん詰まり感と中華的な家族のつながりのしがらみが生み出す静かなドラマに、楊徳昌の好きな(?)ナイフ殺傷事件がとどめを刺す。侯孝賢の店が迪化街にあることは今回観て初めて気づいた。結構しつこく街の建築を撮影していたんだな。有名どころは外していたけど。元野球少年の侯孝賢のテレビにはカープの試合。おお、高橋慶彦だ。まさか楊徳昌、カープファンだったか? テーマ曲となっている『湯の町エレジー』も印象的な、いたるところで懐かしさを感じる作品だった。楊徳昌よ、永遠に。
#84「仁義なき戦い 完結篇」深作欣二/1974/東映/Nov. 26/新文芸坐○
完結篇にしていよいよ天政会(つまり共政会)が始動。これは当時としてはリアルタイムのできごとであり、映画化にあたってはいろいろ悶着があったようだ。北大路欣也が演じた山田久とか、子供だった僕でも知ってた名前だもんな。『刑事くん』の桜木健一が出演しているが、役どころは人気俳優とは思えないようなトホホ。お姉さんが中原早苗でよかったね。また、本作にはアキラとジョーの共演という日活アクションファンには本来嬉しい面がある。ところが、第2作のチバちゃんを引き継いだ宍戸錠は単なる老いぼれたやくざにしか見えず残念だった。一方、金子信雄演じる山守は単なるエロじじいになっていてますます元気。これは秀逸だった。前作では上田組組長だったはずの曽根晴美は、なぜか旅人として登場。天津敏も出てきた、なかなかオールスターな出演陣が楽しい作品。事務所で出てきたサンドイッチに付いているパセリをつまむ山城新伍がおかしかったな。ありゃ演技かね。
#83「仁義なき戦い 頂上作戦」深作欣二/1974/東映/Nov. 26/新文芸坐○
代理戦争の続きといえる本4作目にして監督は、奥さんである中原早苗をいよいよ投入。役はこともあろうにあの打本の情婦である。アキラの奥さんにしてあげればいいのに。また、前作の梅宮辰夫につづき、松方弘樹も蘇生。本作のキーパーソン・小池朝雄の組の若頭となった。打本会=明石組対山守組=神和会抗争の激化に伴って一般市民の反発が大きくなり、頂上作戦なる各組トップの逮捕作戦が繰り広げられる。これにより、広能も武田も山守も打本もムショ行き。打本は廃業。広能と武田の自分たちの時代は終わったという会話は物語の終焉を語っていた。とはいえ工作で山守だけ刑期が短いことにも言及し、山守だけはしぶとくこの先も生きていきそうで、なんともやるせない気にさせられる。シリーズで一番いやらしい男・槇原(田中邦衛)が本作でもいやらしく、小池朝雄の暗殺に暗躍し、図太さを見せていた。いやあ、ここまでやくざ群像劇を描ききった笠原和夫の脚本は素晴らしいね、ほんと。
#82「仁義なき戦い 代理戦争」深作欣二/1973/東映/Nov. 26/新文芸坐○
明石組(つまり山口組)と神和会が登場して、いよいよ話が大型化。の割にはせこいやつらがちょろちょろする面白い作品。せこいやつの筆頭はタクシー会社を経営する打本組組長(加藤武)である。丹波哲朗(明石組組長つまり田岡一雄だ)から直盃をもらおうとしてコソコソ。山守も真っ青の、しかたのないやつだ。明石組の面子に凄味がある。遠藤辰雄はともかく、ギョロ目の山本燐一に、眉毛を剃り別人として蘇った梅宮辰夫。おーこわ。あと、忘れちゃならないのは、小林旭の登場である。本格的な活躍は『完結篇』までお預けであるが、そのインテリやくざぶりはさすがの堂々ぶりである。話は明石組対神和会の代理戦争が広島で勃発するというもので、まさにアメリカとソ連がヴェトナムで間接的に戦っていた時代と重なるんだな。山守も広能もあまり出てこないけど要所を占めている。特に広能の人的ネットワークは優秀。山守の奥さんはいつでも存在感があるな。木村俊恵ね。
#81「仁義なき戦い 広島死闘篇」深作欣二/1973/東映/Nov. 26/新文芸坐○
舞台を広島市に移した二作目は、北大路欣也と千葉真一にフォーカス。その分、主役だったはずの菅原文太の出番は少ない。山守(金子信雄)組と縁を切った広能(菅原文太)組にはお金がなく、節約志向の子分たちが菅原文太に野良犬の焼き肉を喰わせる。“喰わんのう” これはシリーズ一のブラックユーモアエピソード。で、なんといっても北大路欣也と一緒になる梶芽衣子が美しい。これだけで観る価値がある、シリーズ一の美人。話の本筋では、千葉ちゃん演じる大友のクレイジーさが光る。ギラギラした北大路欣也のキャラクターと合わせて、シリーズ一のコテコテ感。とシリーズ一揃いの作品なのだけど、結末ではまたまた金子信雄のせこさ、陰湿さが勝利し、全体としても歯がゆい作品になっているのであった。しかし、こんな映画観ちゃうと確かに広島を見る目が変わりそう。競輪場ってどこにあったっけ…、宇品か。そうそう、どこかの組に金正日がいたぞ。ちょっと笑っちゃうほど似てた。
#80「仁義なき戦い」深作欣二/1973/東映/Nov. 26/新文芸坐○
一日で全5作一気観企画。文芸坐は相変わらずアグレッシブだ。館内のしつこいアナウンスも相変わらずアグレッシブ。まずはシリーズ一本目にして最高傑作のこれ。呉を舞台に菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫チーム対金子信雄、田中邦衛チームの陰湿な内部抗争が繰り広げられる東映実録路線の金字塔である。指を詰めたら飛んじゃって、それを犬が咥えて逃げちゃうみたいな笑い要素もふんだんにあるのがいい。三上真一郎、曽根晴美、川地民夫などの豪華な顔ぶれが見られるよ。みんな死んじゃうけどね。みなさん広島弁の勉強、ご苦労さんです。実際、観客のどれくらいが完璧に台詞を追えているだろうか。“いびせい”とか“いたしい”とか、知らないとわからないだろう。“タマはまだ残っとるがよ”の名セリフを吐く菅原文太は超かっこいいが、大局的には金子信雄の勝ちというオトナの映画である。菅原文太は鯉の入墨をしてた。これはカープが結成される前から鯉は広島のシンボルだったということかな。朝日ソーラーじゃけん。
#79「華麗なるリベンジ」イ・イルヒョン/2016/韓国/Nov. 23/シネマート新宿○
英題は『A Violent Prosecutor』で邦題とはえらく違うのだけど、原題はどちらに近いんだろう? ファン・ジョンミン演じる暴力検事が、取調中の殺人罪に問われ服役。きっかけとなったデモに参加していた結婚詐欺師カン・ドンウォンを獄中で発見、自分の冤罪を証明し嵌めた元上司イ・ソンミンに復讐するため彼を釈放させリモートコントロールする。当然復讐に成功するわけだけど、その過程がなかなか見応えあった。リアリティーはないけれどもエンタメとしては一級である。最後のオチが僕には理解できなかった。悔しい。法律に詳しい検事が刑務所に入るとどうなるかという点は興味深いね。刑務所ってところはどの国でもいつの時代でもあまり変わって見えない(映画で見るかぎりは)。あんな不潔なところは耐えられそうにないので、絶対に行かないようにしないとな。ほとんど女っ気のない硬派な作品にひとりだけシン・ソユルという女優がカン・ドンウォンの被害者として華を添えていた。
#78「Kodi」R. S. Durai Senthilkumar/2016/インド/Nov. 13/PVR: Forum○
久しぶりのタミル映画。Nayantharaの『Kaashmora』も観たいけど時間が合わず。これはDhanushの新作ということでキレのいいダンスとストーリーを期待していたが、やや期待外れに終わった。Dhanushは一卵性双生児として二役を演じていて、まあこういうCG合成ものはたいしたことにはならないものだ。政治家の兄Kodiの相手役に『Thoongaa Vanam』以来のTrisha、大学教師の弟Anbuの相手役にまたまた多髪テロリストAnupama Parameswaran。水俣病絡みの政治闘争を描いていて、DhanushとTrishaは異なる政党に属している。残念ながら英語字幕がなかったので詳細は不明だけども、Trishaが自分の権力欲のためDhanushを背中から刺すなどかなりえげつない。片割れをなくした弟は兄の性格を吸収し強くなっていき最後には仇を討つ、と思いきや、寸前でストップ。中途半端。キレはいまひとつだったけど、タミルダンスは堪能できたのでよしとするか。水銀とか、重金属怖いなあ。インドの水、大丈夫かなあ。
#77「Aanandam」Ganesh Raj/2016/インド/Nov. 12/PVR: Forum○
邦画や台湾映画なら高校を舞台にするようなストーリー。Keralaのエンジニアリングカレッジのクラスが4日間のIndustrial Visit(修学旅行といってよかろう)に出かける、旅先での無邪気な青春賛歌である。行き先は、Mysore、Hampi、Goa。悪くはないけれど、随所が惜しい。監督が新人なら出演陣の大半も新人らしいのでしかたないのか、才能の問題か。ちょっと薄っぺらすぎる。絵を描くのが趣味らしいおとなしい女子学生が語り手、というのは最後にわかるのだけど、彼女(Anarkali Marikar)はよかった。主人公の恋人になるSiddhi Mahajankattiは確かに美人かもしれないけど、ああいうタイプは僕にはピンとこない。カルナータカ州が誇る世界遺産Hampi。行ったことはない。映像を見るかぎり、確かに壮大。これで、行った気になった。New Year Partyでの天燈。台湾のも実際には見たことないけど、確かにきれいそう。火事が起こらないのか心配。Nivin Paulyが終盤でカメオ出演。もう貫禄さえ感じるよ。
#76「手紙は憶えている」アトム・エゴヤン/2016/加=独/Nov. 5/TOHOシネマズシャンテ○
Zevが養老院を抜け出した時点で、彼の記憶がMaxによってつくられたものであることは予想がついた。そこで、どの方向に結末をもっていくのか興味を持って観た。結果として、あの結末への納得感は80%くらいだ。とはいえ、Egoyan作品は安定した面白さだね。認知症を患い、睡眠をとるたびに記憶を失い、亡くした妻を呼ぶ主人公(Zev; Christopher Plummer)。これだけで震えが来るが、よぼよぼの彼が自分たちの家族をアウシュビッツで殺したナチの男Rudy Kurlanderを殺すため一人旅に出る。候補は4人いて、もちろん4人目が真犯人であるが、3人目までのエピソードもいい。特に3人目のエピソードが強烈(本人はすでに死んでいたのだが)。ただ、1人目のRudy KurlanderがBruno Ganzであることに気づかず。不覚である。目覚めるごとにメモ(Maxからの手紙)を読んで自分の記憶を再構成する。どんな気分だろう。“ああ、そうだった”と思うのか“そうだっけ?”と思うのか。なんだか他人事と思えないよ。
#75「ブルカの中の口紅」アランクリター・シュリーワースタウ/2016/インド/Oct. 30/TOHOシネマズ 六本木ヒルズ(TIFF)○
国内で一般公開できなさそうなインド映画。おそらく最初から海外あるいは映画祭狙いだろう。Prakash Jha、金持ちだな。Plabita Borthakurという女優が演じるBhopalに住むムスリムの女子大生は家を出るときはブルカを身に付け、途中で渋谷の女子高生(失礼)のごとく、いまどきのファッションに着替えて大学へ通う。必要なものは万引き。自分の境遇から解放される、根拠のない望みをもっている。この子のほか3人の女性が女性ゆえの窮屈さと戦いながら、最後に社会の重圧に屈するも精神的には強くなっておしまい。内容的に『Parched』と比較せざるを得ないが、負けている。でも、Ratna Pathak Shahの演技は特筆もの。ハーレクインロマンスを愛読書とし、年甲斐もなく若い水泳コーチにのめり込み、派手な水着を密かに買って教室に通いながら、夜には若い女性を装ってコーチに電話をかける。『Khoobsurat』での気品は微塵もない体当たり演技。あんたは東山千栄子か。いやあ、素晴らしかったです。
#74「あなた自身とあなたのこと」ホン・サンス/2015/韓国/Oct. 30/TOHOシネマズ 六本木ヒルズ(TIFF)○
サンス、サンス、ホンサーンス♪(いつもこの唄) 待望のホン・サンスである。イ・ユヨンという女優演じるミンジョンが男をつぎつぎと弄ぶ、初期のホン・サンスに回帰した感じの作品でとても面白かった。現恋人のヨンス役キム・ジュヒョクも見るのは初めてだが、脇はユ・ジュンサンなど常連でしっかり固めて、最初から最後までホン・サンス節が炸裂していた。イ・ユヨンは美人ではないが日本人にもウケそうな比較的地味な顔立ちで、確かに魔性の女っぽい。元カレにあっても“どなたでしたっけ”としらばっくれ、男が途方に暮れながら食い下がる様は笑える。とはいえ、ミンジョンの記憶は男と別れるたびに本当に消えているのかもしれないと考えると、別の楽しみ方ができるよね。毎回初対面のふりをして会えばいいのである。あはは、金井克子か(古すぎ?)。ところで、冒頭でヨンスがお母さんが危篤で云々という話はどうなったのかな?そういう細かいことに拘らないのがホン・サンスの正しい楽しみ方ではあるが、気になる。
#73「永い言い訳」西川美和/2016/『…』製作委員会/Oct. 29/TOHOシネマズ渋谷○
ふかっちゃん出演。なれば、内容も確認せずに観に行かねばならぬのだ。主人公は小説家・本木雅弘。バスの事故で、妻である美容師・ふかっちゃんを亡くしてしまう。物語はそこから始まるので、ふかっちゃんの出番は多くはない。(笠智衆の声で)わしゃ不満じゃ。妻を亡くした後に開いた穴がいかに大きく、生前の接し方をいかに後悔しているかといった紋切りの話ではなく、ふかっちゃんが残す残酷なメール下書きに対する動揺や、これまで作り上げた文化人としての地位の揺らぎ、ふかっちゃんと共に死んだ友人の残された家族との交流を微妙な距離感で描いていく。友人の夫ももっくんの昔の友人だったらしいのだが、竹原ピストル(誰?)演じるこの長距離トラック運転手との距離が地球と月くらいあってドラマを生んでいる。格差社会のどうしようもなさが、インドのそれよりも悲観的に見えるのはなぜだろう。ああ、僕もふかっちゃんに髪を切ってもらえたらなあ。シャンプーとか、最高だよね。(妄想モード)
#72「Rama Rama Re」D Satya Prakash/2016/インド/Oct. 23/PVR: Market City★
Sandalwoodの評価を上げる作品がまた出てきた。やや説教クサイのが難だが、あとはとてもいい。話の中味に合わせた音楽は常にかかっているのにまったくうるさく感じないし、ときおり挿入される固定カメラやロングショットがデカン高原の荒涼さを魅力的に見せる。話自体はコメディー。といってもいつものコメディアンが出てきてしょうもないギャグをかますわけではまったくない。英語字幕があったのでフォローできたわけだけど、脱走死刑囚を自分のジープにたまたま乗せてしまった死刑執行人の向かう先、駆け落ちしたカースト違いカップルや、兵士の妻でもうじき生まれそうな妊婦が絡んできて、お互いの気持ちが変化していき、最後には(想像どおりの結末)、という話。カップルの男はよく喋ったなあ。誰が見ても絶対にダメ男だけど最後にはいいひとになる。いや、ムリだろう。こいつと結婚してはいかん。その将来不幸になる女性は南インド美人だったよ。Bimbashri Ninasamという女優。ちょいとAishwarya Rajesh似で。
#71「Train To Busan」Yeon Sang-ho/2016/韓国/Oct. 23/PVR: Market City○
なんだかしらないけど韓国映画の広告が新聞に載ってて、面白そうだから観に行った。ゾンビものとは知らず。英語吹き替えとも知らず。でねー、シンプルでとっても面白かった。あるバイオ企業のミスで、ゾンビに噛まれるとゾンビになる伝染病が発生。ソウル発釜山行きの特急列車に一人の患者が転がり込むと、列車内でのパンデミックが始まる。果たして釜山まで行けるのか。それだけ。乗客には例によっていろいろなひとがいる。主人公は娘を離婚した妻の許へ届ける最中だ。風変わりな夫と一緒のチョン・ユミ(鄭有美の方)は妊娠していてご機嫌ななめ。高校生野球チームや、超利己的なサラリーマンなどがいて、ひとりひとり感染していくのだ。生き残る乗客はどんどんギスギスしてくるのだけど、そんな中で主人公だけはいいひとになっていく。釜山で防衛線を張っている陸軍は銃を使っていて、どうやらゾンビは撃たれると“死ぬ”らしい。そりゃおかしいだろう。ってことに何人が気がついたかな。
#70「Zulfiqar」 Srijit Mukherji/2016/インド/Oct. 16/INOX: Garuda Mall○
シェイクスピア作品がモティーフになっているベンガル版『仁義なき戦い』あるいは『エグザイル/絆』。題名は主人公の名前で、Caesarに相当するらしい。コルカタの麻薬取引シンジケートの内部抗争をクールに描く。登場人物がそれぞれ個性的なのがいい。最後にはみんな死ぬ。そんなところは『県警対組織暴力』も想起させるが、彼らの話をしていたらしい警官も、画面には出てこないが死んだらしいので、そこは梅宮辰夫のようにはいかなかったようだ。さあ、きょうも元気に体操をしよう。シェイクスピア作品でもみんな死ぬのかな? 改めてモティーフとなった話を読む気はしないので、永遠の謎となろう。ベンガル映画では珍しく俳優陣はほとんど知らないひとだったが、お約束のJune Maliaはしっかり出てた。撮影がいまひとつだったのは残念。ベンガル語はヒンディー語にしか僕には聞こえない。やはりかなり似ているらしくバンガロール市民は何の苦もなく鑑賞しているのがうらやましかった。
#69「Idolle Ramayana」Prakash Rai/2016/インド/Oct. 16/PVR: Regalia○
Oggarane』以来のPrakash Raj監督・主演作品。これはマラヤラム映画のリメイク。オリジナルも他のリメイクも観ていないので比較はできない。題名にあるように超有名な叙事詩『ラーマーヤナ』が背景にあるらしいのだが、やたらとハヌマーンが出てくる以外関連がよくわからず、反省。なんらかの教訓を与える意図はなさそうだし、かといってコメディーとして観るとオチがないので物足りない。いや、もしかしたら終盤に娼婦Priyamaniが駅で映画監督Achyuth Kumarと会って話をする内容にオチがあったのかもしれない。なぜこの二人がつながるのか、カンナダ語がわからないとまったくお手上げである。人間ハヌマーン、つまりオートの運転手を演じていたAravind Kuplikarはなかなか味があった。ハヌマーンなのになぜシヴァという名前なのかはわからなかったが。全体としてやさしい画面で、特に朝の街の風景の描写がよかったなあ。字幕付きで観直したいものだ。Priyamaniの左足第5指は爪水虫に見えた。インド人にもあるの?
#68「Premam」Chandoo Mondeti/2016/インド/Oct. 15/PVR: Forum○
それまでDulquer Salmaanの後塵を拝していたNivin Paulyを一気にトップスターにしたマラヤラム語作品のテルグ語リメイク。主役はNaga ChaitanyaというTollywood俳優に代わったが、多髪テロリストAnupama Parameswaranとお多福Madonna Sebastianはそのまま出演。製作発表時にSai Pallavi役をShruti Haasanが演じるという話を聞いて、そりゃムリと思った。で公開されたいま、どんなものかと観に行った次第。結果としては意外によかった。Shurti Haasanが3人の中では突出した美人でバランス悪いし、ダンスはやはりSai Pallaviには敵わなかったけどね。物語はかなりオリジナルに忠実。雰囲気がテルグ映画っぽくなったのは舞台がAP州に代わったからだけでなない。Item Numberシーンで突然北欧にジャンプってのもテルグ的。Naga Chaitanyaは髭に黒シャツでNivin Paulyを意識していたが、やはりドーティーじゃないとね、と思っていたら終盤にドーティー姿になったのは、監督わかってるねって感じだった。
#67「M.S. Dhoni: The Untold Story」Neeraj Pandey/2016/インド/Oct. 1/INOX Lido○
インドのNo.1人気スポーツ、クリケット。そのナショナルチームの現役キャプテンM.S.Dhoniの伝記映画。ヒットは必然。だけど、インド人でもクリケットをやらない、見ないひとはいる。そういうひとに、インド映画にも珍しい3時間超の長尺作品はどう映るんだろう。かなりの部分がプレイ場面だし。Dhoniがティーンの頃からSushant Singh Rajputが演じるのだけど(Dhoni役にはハンサムすぎないか?)、コンピュータ合成が不自然で笑った。一方、後の記録映像への合成はうまくできていた。で、どのあたりがUntoldなのか。Shraddha Kapoor似の恋人がテルグ映画っぽい交通事故で亡くなってしまうエピソードだろうか。これは確かに悲しいできごとだが、全体としては子供の頃から優等生で順当な人生を送ってきているようで、あまりドラマティックではないという印象。あくまでファン、クリケット好きのための映画かな。おい、隣のガキんちょ集団、シートをガタガタ揺らすんじゃない、それに、バター・ポップコーンが臭いんだよ。
#66「Doddmane Hudga」Duniya Soori/2016/インド/Sep. 30/PVR: Forum
ネットにつながらないiPhoneを抱えたまま臨んだ、RajkumarファミリーのPuneeth Rajkumar第25作目。一部の観客で盛り上がっていたが、僕は前半の後半、寝てしまい撃沈チーン。でも『Kendasampige』と同じ監督とは思えない(というかあれが特異点だったか)、いかにもSandalwoodな作品で、覚醒してても着いていけなかっただろう。敵役はP. Ravi Shankar。いつもと違って、なんだかモダーンな格好してた。まあともかくPuneeth Rajkumar強すぎ。柔軟性のかけらもない剛腕でチンピラを片っ端から一撃で倒していく。nandiniのミルク飲み過ぎじゃないの? 相手役はRadhika Pandit。Puneethが演技指導なんてちゃんちゃらおかしいぜっ。彼女自身は可もなく不可もなくって感じだ。映画には、Puneeth Rajkumarがバンガロール市内で行った屋外イベントの映像が挿入されていた。動員がかかっているだろうことを想定してももの凄い人出で、もしかしたら本当にPower Starなのか、と認識を新たにした。
#65「Parched」Leena Yadav/2015/インド/Sep. 25/INOX: Garuda Mall★
Ajay Devgan(Devgn)プロデュース、新人監督による女性万歳映画。インドのいづみさま、Tannishtha Chatterjee主演である。共演に最近絶好調のRadhika Apte。本作は去年のTIFF(東京ではなくトロント)でかかっているため、英語字幕付。最初から海外を狙っていたのだろう、かなり大胆な描写で、はだけたRadhika Apteの胸にはぼかしが入った。Rajasthanの砂漠の村が舞台。男(あるいは家族)の所有物のように扱われる女性の姿は、どこまでインドに一般化していいのかわからないが、新聞で似たような事件の記事を見かけるので、これが現実なのだと想像。最後にすべてを振り切って村を出る三人にはカタルシスを憶えるものの、これですべてが解決するわけではまったくないことを思えば憂鬱である。Tannishtha ChatterjeeのDVの記憶と夫の“事故”死が深みを増す。インド女性にはウケルだろうが、映画中に出てくるような男性はそもそも観ないだろう。観たら観たで、逆ギレして暴れそう。怖い国、インド。
#64「The Magnificent Seven」Antoine Fuqua/2016/米/Sep. 24/PVR: Pepsi IMAX, Koramangala○
英語字幕が出た、ラッキーと思ったら“SMOKING KILLS”でがっかりした、『荒野の七人』のリメイク。西部劇に字幕なしは辛い。オリジナルの鑑賞記録が見あたらないのだけど、数段劣るな。当然『七人の侍』に対しても。舞台をアメリカの炭坑町に置き換えたストーリーは平板だし、決戦での工夫も乏しい。ダイナマイトをぶっ放すだけじゃね。とはいえIMAXの大迫力でアクション、爆音は楽しめた。キャストはよかった。多様性を意識しすぎているのには少々笑ったが。七人のリーダーはDenzel Washington。この人『マルコムX』の頃からも変わった気がしない。見どころはイ・ビョンホン。凄腕で、James Coburn、つまり宮口精二の役柄。かっこよかった。じーさんになったEthan Hawkeは強いていえば千秋実役かな。なかなか渋かった。夫を敵に撃たれ七人を雇う、スラブ系美人のHaley Bennettが魅力的だった。誰でも知っているElmer Bernsteinのテーマ曲はエンディングクレジットで出てきた。久しぶりに『ワイルドバンチ』が観たくなった。
#63「Sipaayi」Rajath Mayee/2016/インド/Sep. 24/PVR: Forum○
普通の映画(マサラムービー)に出てるSruthi Hariharanを観に行った。コメディーあり、ダンスありでこれまでとは違う彼女が見られたことはよかったのだけど、ちょっぴり残念感。新聞記事か何かで、食べていくには商業映画にも出ないといけないみたいなことを語っていたけど、まあこれがそうなんだろうな。とはいえ、コメディーシーンのSruthi Hariharanもかわいかった。主演俳優はSiddharth Maheshという新人。体は細いがアクションはなかなかよかった。話は、麻薬取引がはびこるバンガロールを世直しするため、テレビレポーター(Siddharth Mahesh)が黒社会に潜入し、組織を殲滅する。記憶喪失になる必要が感じられないなど、シナリオ、演出にはクエスチョンマークが。監督はPawan Kumar組じゃないのかな。父親役のAchyuth Kumarの前髪が異常に長いのが笑えたな。映画館に入るときにボディーチェックのあんちゃんに“カンナダ語わかるのか、Sir?”って聞かれた。“No, but no problem”と答えたけど、英語字幕付でほんとに没問題だった。
#62「Pink」Aniruddha Roy Chowdhury/2016/インド/Sep. 18/INOX Lido○
殺人未遂で起訴されたTaapsee Pannuを弁護人Amitabh Bachchanが弁護する裁判もの。この地ではヒンディー語作品=字幕なしが普通であり、論争がメインの裁判ものは観る前からチーンなのであるが、面白そうなので観に行った。(というか、ほかに観るものがなかった。) 懸念は的中し、細かいところがまったくわからない。が、“NO”と言ったらNOなのだ、という最近よく聞く真っ当な理屈で被告の無罪を勝ち取るという重要ポイントは把握した。最初はただの老いぼれのBig Bが、裁判が進行するにつれ凄味を増してくるのが見どころ。検察(?)のPiyush Mishraはタジタジである。字幕付でもう一度観たい。Taapsee Pannuの同居人のひとりAndrea Tariangは、インド人らしからぬ、つまり東北(Shillong)出身らしいのだけど、松澤千晶みたいな容姿でなかなかよかった。舞台のDelhiは、映画としてはどこでもない場所だったな。あいや、Big Bが外出時に大気汚染を避けるため高地訓練用(N95?)マスクをしていたのがそれっぽかったか。
#61「Eagoler Chokh」Arindam Sil/2016/インド/Sep. 11/PVR: Market City○
またSaswata Chatterjee。またJune Malia。ベンガル映画の俳優はいつも同じだ。まあバンガロールで上映されるベンガル映画は選りすぐりの作品だろうから、そういうことも起こりえるか。バンガロールで上映されるベンガル映画のいいところは、必ず英語字幕が付いていること。おかげで会話まで追える。話は、バンガロールで上映されるベンガル映画によくある犯罪サスペンスなのだけど、本作は必要以上にシナリオと人間関係が複雑に感じた。ところで、バンガロールで上映されるベンガル映画にはいつもちょっぴりお色気が入る。ベンガル料理はノンベジのイメージだし、インドの他の地域とは違うね。Chief Ministerさんもアレだしね。というわけで、バンガロールで上映されるベンガル映画が、ベンガル映画の典型なのかどうなのか知りたいものである。ハウラーブリッジが出てくるのは典型なのは間違いないけど。バンガロールの新しい呼称ベンガルールとベンガルは関係ないのかな?
#60「Sully」Clint Eastwood/2016/米/Sep. 10/PVR: Pepsi IMAX★
2009年1月に起きたUS AirwaysのA320によるハドソン川不時着事故、いわゆる“ハドソン川の奇跡”を起こした機長のChesley "Sully" Sullenbergerを主人公とした、事故調査委員会とのやりとりを綴った硬派な作品。“硬派”になったのは監督のEastwoodゆえ。冬の暗く寒いトーンを背景に機長が調査委員会のゆさぶりにもぶれずに自己の判断を正しいと確信し最後には調査委員会もそれを認める、まっすぐな映画である(おそらく事実なのだろう)。この機長Sullyを演じるのはTom Hanks。軍人あがりの飛行機オタク熟練パイロットを見事に自分のものにしている。世の中のパイロットがすべてこんなならいいのに。保険の都合か、なんとか機長のミスを見つけようとする調査委員会。ある意味、Bird strikeよりずっと怖い。オープニングで彼が見る悪夢の意味は何だろう。単に観客を惑わすしかけではないはず。IMAXカメラで撮ったというのでIMAXで観たが、こういう映画にIMAXはいいね。
#59「Freaky Ali」Sohail Khan/2016/インド/Sep. 10/INOX: Mantri Square○
Nawazuddin Siddiqui主演のコメディー。なんとナワちゃんがプロゴルファーに。まったく芸達者な俳優である。アメリカ映画のリメイクらしい。クリケットでは抜群のバットコントロール能力をもつ下着屋のナワちゃんが、ひょんなことからゴルファーの道を選ぶ。その一因は、ナワちゃんをバカにしたトッププロのマネージャーをしていたAmy Jackson。ナワちゃんを擁護したためクビになりそのまま彼のマネージャーになる。彼女、まあいいんだけど、どの作品でも存在感は薄い。話は順調にプロテストに受かりプロゴルフツアーでもトッププロを負かすという捻りのないものだったのでこれ以上書くことはない。ただ、興味深かったのは宗教。主人公たちの宗教はイスラム教。なのだけど、サイババも出てくるし、主人公はまったくイスラム教徒らしからぬ格好をしていて、関係がよくわからなかった。何でもありなのかインド? パキスタンでも上映されるようなので問題ないらしい。誰かが着てた“Six packs coming soon”Tシャツ欲しい。
#58「シン・ゴジラ」樋口真嗣/2016/東宝映画=シネバザール/Sep. 3/TOHOシネマズ日劇○
踊る大捜査線』に近い雰囲気をまとったゴジラ映画。元祖ゴジラの核兵器開発への警鐘というメッセージを継承しかつ原発推進へのアンチテーゼとなっている。最後にゴジラを凍結させるのはイチエフを否が応でも連想させる。このゴジラ、変態した。陸地を這いずり回る滑稽な姿から見慣れた怪獣になるまで4段階に成長する。その過程にミニラの姿はない。東京湾に出現し一旦姿を消した後、こともあろうに鎌倉に再上陸する。由比ガ浜海浜公園から由比ガ浜大通りを跨ぎ扇ヶ谷を抜け鶴岡八幡宮を破壊してから横浜へ抜け、東京を再び目指す。大仏を無視していくとは。まあ高さでいえば1/10くらいだろうから相手にならないか。話自体の面白さはやはりゴジラの出現に右往左往する政府内の動き。ガチガチの官僚機構と頼りない閣僚による問題対処能力の低さはリアルだ。防衛大臣の余貴美子もリアルで(現東京都知事に似てて)こわかった。主人公が“にほんじん”と言ってたのが好印象。
#57「Kotigobba 2」K. S. Ravikumar/2016/インド/Aug. 28/PVR: Forum
Sudeep主演。敵役にP. Ravi Shankar、父親役にPrakash RajとSandalwood渋声三人衆揃い踏み。Sudeepの相手役はDeepika Padukoneと並んで(?)Bangaloreが誇るNithya Menenである。まあ端的に言ってつまらなかった。同じ監督なら『Lingaa』の方がいいや。二役のSudeep、暴れん坊将軍じゃないんだから、特に恋人なんだからNithyaちゃんにはバレバレのはずである。プロットに無理がありすぎ。ひとも車もクルクル回りすぎ。序盤に例によってSadhu Kokilaが出てきて騒いでいたが後半には出てこなくなったのは幸いであった。ロケにSri Nandi Templeと思われるところが出てきた。柱や壁にバンバンぶち当てて格闘するところはセットなんだろうな、きっと。文化財だからね。今回もPrakash Rajはいい役。悪役は卒業したんだろうか。Nithyaちゃんは顔はいいのだけどね、ちょっとふくよかすぎる。いつかスマートになったら、Sruthi Hariharanも入れて、Bangalore 3人娘でCharlie's Anglesか何かやって欲しい。
#56「Happy Bhag Jayegi」Mudassar Aziz/2016/インド/Aug. 21/INOX: Mantri Square○
婚約者のパーティーから抜け出したら思いがけなくパキスタンはラホールまで連れて行かれて帰れなくなってどうしよう、というある種紋切り型のコメディー。Diana Pentyという元気な女優は初めて見た。まだ2作目なのか。ラホールで彼女の面倒を見る政治家二世にAbhay Deol、パーティーからの抜け出しを計画した恋人役にAli Fazal、ピエロ的な婚約者役にJimmy Shergillという布陣。コメディーで字幕がないと途方に暮れることが結構多いのだけど、これは最後までいけました。両国間のカルチャーギャップを強調するわけではなく、コメディー要素がそこに依存していないところが高得点の理由かな。Abhay Deolの婚約者はMomal Sheikhというパキスタン女優が演じていた。やや歳をとっていそうだけどとてもきれいだった。(なんか最近は女優がきれいだ、ということばかり書いてるな…) 本作のパキスタンでの上映は遅れているみたいだけど、こうやって印パの文化交流が進むといいね。
#55「Dharmadurai」Seenu Ramasamy/2016/インド/Aug. 21/INOX: Mantri Square○
Vijay Sethupathi主演のどうジャンル分けしていいかわからないドラマ。おもしろいシナリオで、演出の詰めは甘かったものの全体としてはとても楽しめた。会話に頻繁に英語を挟むVijay Sethupathi演じる主人公の医師Dharmaduraiがアル中になるいきさつは、なかなか奇想天外。Madurai Medical College学生時代の描写が結構長いのだが、彼はひげを剃っているだけでそのまんまだし。問題は同級生で相手役の(といってよかろう)Tamannaah。後年Dharmaduraiの後妻となるわけだが、なんとあごにひげが…。産毛を剃っていたら濃くなったんだろうけど、女優なんだし、撮影前には念入りに手入れしたらどうだろうか。それに気づいてからはそれだけが目について、ああ。一方、Dharmaduraiの最初の奥さん役の『Kaaka Muttai』のAishwarya Rajeshは今回もよかったな。大物になる予感。主人公の母親役だったタミル映画のおっかさん女優Raadhika Sarathkumarはきょう誕生日だったらしい。生日快樂。
#54「UnIndian」Anupam Sharma/2015/豪/Aug. 20/PVR: Forum○
どことなくいづみさまを思い出させる顔でお気に入りのTannishtha Chatterjee主演のオーストラリア映画。共演は元クリケッターのBrett Leeで、舞台は全篇シドニー。要はBrett LeeがTannishtha Chatterjeeに一目惚れしてカルチャーギャップの壁を破ってゴールするまでのラブコメである。悪くない。ひさしぶりにオーストラリア英語を聞いたよ。グッダイッ。以前インドでPunjabやKKRに在籍したこともあるらしいBrett Leeは、オーストラリアにやってきた外国人向け英語教師。歯の感じがジャック・タチみたいでなんだかヘンなのだけど、演技は悪くなかったと思う。Tannishtha Chatterjeeは派手さはないのだけどきれいだ。ちょっぴり太め、というか華奢な感じではないのが惜しい。しかし、インド女優ってことごとく長髪で、これでもかとうねらせたゴージャスなヘアスタイルを好むよね。って、本人よりインド人全体が好んでいるのだろうけど。あ、本作では髪が風になびいていなかったよ。インド映画じゃないもんね。
#53「Thirunaal」P. S. Ramnath/2016/インド/Aug. 6/PVR: Forum○
Nayanthara出演作品、という理由だけで観に行った。映画そのものは予想通りアキマヘンでした。Nayan、出演作品はちゃんと選んだ方がいいと思う。主演はJiivaというあんちゃんで、やくざ。親分に尽くす一方で、取引相手の娘Nayantharaとくっついてしまったことで破門。なんだかんだでNayantharaとは結婚するが、最後に元親分を殺る。返り血を浴びたドーティーを着け、インドの刀(先が鎌みたいなやつ)を引きずり、通行人の注目を浴びながら疲れ果てて通りを歩く姿は、健さんのようだった。こう書くとなんだかよさそうだけど、繰り返すが、映画はアキマヘン。カットつなぎがダメダメ。ただし、ルンギとサリーによるタミルダンスは相変わらずご機嫌。で、Nayanthara。本作では小学校の先生で、ずっとサリー着用。なんと、サリーで縄跳びまでしちゃう。眼周り以外はナチュラルメイクで、相変わらず美しい。コメディエンヌなので、最高のしかめっ面は拝めず。お見合い相手がVijayそっくりさんだった。
#52「White」Uday Ananthan/2016/インド/Jul. 31/Innovative Multiplex: Marathahalli
Mammootty主演のなんだかわからないドラマ。相手役はBollywoodから招いた『D-Day』のHuma Qureshi。海外赴任でLondonにやってきた彼女がMammoottyに出会い、ミステリアスかつ強引なこの男に次第に惹かれていくが、Mammoottyが彼女に近づいたのには訳があった。で、この訳はわからんでもないのだけど、物語を駆動できていない。台詞がわかっても印象が変わるとは思えない。おそらく、この映画はLondonという街が主役なのだ。全般に、ロンドンっていいよねー、という感じで街を撮りまくっていた。僕はロンドンをあまり知らないのでPiccadilly Circusくらいしかわからなかったけど。他の撮影地としては、ちょっぴりBangalore、Kochi。WikiによるとBudapestでも(Londonとして?)撮影したようだ。いつ見てもMammoottyって、どこがいいのかさっぱりわからない。むかしはかっこよかったのかな? Huma QureshiはやはりIsabelle Adjaniにちょい似だ。別に興味ないけど。No problem na?
#51「Madaari」Nishikant Kamat/2016/インド/Jul. 24/INOX: Garuda Mall○
ラジニ新作公開に堂々とぶつけて来た硬派な作品。政治の腐敗が元で起こった事故によって息子を亡くしたITエンジニア(?)のIrrfan KhanがHome Ministerの息子を用意周到に誘拐、捜査の網をかいくぐり、ICT、ソーシャルメディア、マスメディアを活用しながら、息子が死んだ事故の責任を曝く。という話なのだけど残念なことに英語字幕がなく、漏れ聞く英語とわずかなヒンディー語を手がかりにストーリーを追ったのが真相。いたはずの奥さんがどうなったのか本人が出てくるまでわからず(いや、出てきても何でアメリカにいるのかはっきりせず)。そんな状況でもIrrfan Khanの相変わらずの巧さは十分に伝わってきた。誘拐事件を担当するインスペクターJimmy Shergillはあまり活躍はしていなかったように見えたが、かっこよかった。劇場は結構混んでいた。ラジニ・フィーバーに辟易しているひとたちなんだろうか。Arvind Kejriwalも“must watch”と誉めているしね。ぜひ、現実の政治でやっておくれ。
#50「Kabali」Pa. Ranjith/2016/インド/Jul. 23/INOX: Garuda Mall○
“SUPERSTAR RAJNI”、お馴染みのスタート。前作『Lingaa』よりよかった。『Madras』の監督だからね。とはいえ、『Madras』と比較するとシナリオが甘く、もしかしたらスーパースターに配慮せざるを得なかったのかもしれない。エンディングで踏みとどまったって感じかな。見どころはカツラの競演で、軍配は悪役である趙文瑄の25年前にあがった。これが一番笑えたな。Rajinikanthの今回の相手(妻)役はRadhika Apte。25年経ってもまったく容姿が変わらない奇跡の役である。Rajinikanthと趙文瑄の最後の戦いでは、羽毛が舞う中でのラジニの二丁拳銃が見られる。今回のラジニは北京語を喋ったよ。“謝謝”だけだけど。趙文瑄のタミル語も聞ける。主な舞台は最近よく観るKL。あまり観光モードではなかった。2年ぶりの新作でバンガロールは大騒ぎだけど、公開直後でとにかく上映が多いのでコアなファンに当たる確率が低く、会場はややおとなしかった。笑いまで解説してくれるおせっかいな英語字幕。絵文字まで入れなくていいよ。
#49「Nanna Ninna Prema Kathe」Shivu Jamkhandi/2016/インド/Jul. 16/PVR: Market City
新人監督による旧来のカンナダ映画。チープな映像、魅力のない役者、大げさな演技、そしてカースト跨がりの恋。『Ugramm』のSri Muraliの兄貴、Vijay Raghavendra主演。弟にある凄味がまったく欠けている。相手役にNidhi Subbaiahというおばさん、脇役にいつものChikkanna(いい役)とTilak Shekar(悪い役)。目新しいのは、舞台がBijapurという北カルナータカの町であること。雰囲気がGulbargaに似てた。観光客誘致か、執拗に砦などの観光名所を映す。最近多いドローン撮影、画面に影が映り込むのが難点。それにしてもキャメラワークが変だった。加藤泰ばりのローアングルとか、妙な移動とか。スイーツ屋での会話シーンたるや、開いた口がふさがらず。あと、どこかの福祉施設での歌シーンでサイババの頻繁などアップ…。開映前に海軍のショートフィルムあり。国歌を流すので起立せいという表示を無視。一番前にいたので他の観客の様子は見えなかったが、物音から誰も立っていないように感じた。Independence Day以外はこんなものか。
#48「Shajahanum Pareekuttiyum」Boban Samuel/2016/インド/Jul. 9/PVR: Forum○
ケララ美人Amala Paul主演の、何と呼んでいいのかわからないコメディー。英語字幕もなかったし、おもしろくなかった。が、元々Amala Paulを見ることが目的なのでKoi Baat Nahi。洋服(ごくたまにインド服)を取っ替えひっかえ、七変化が楽しめる。Amala Paulって眼が横にでっかいよね。スタイルもいいよ。いまの南インドではNayantharaに次ぐNo.2である(その次がSruthi Hariharan)。一応ストーリーに言及しておくと、交通事故で記憶喪失になったAmala Paulに恋人と称する男がふたり接近してくる。どちらの言うことが正しいのか、というミステリー仕立て。これに、フィアンセのAju Varghese(またこいつか)と私立探偵のコメディアンが絡んできてしょうもなくややこしい。で、話は意外な方向に収束するのだけど、納得感がまったくない。おもな舞台は高原だけど、ダンスシーンにFort Kochiらしい場所あり。たまに妙なキャメラワークが見られた。『Yagavarayinum Naa Kaakka』のNikki Galraniがカメオ出演。別に嬉しくない。
#47「Sultan」Ali Abbas Zafar/2016/インド/Jul. 6/PVR: Forum○
Salman Khanの今年のEid作品は、“最後に愛は勝つ”格闘技もの。相も変わらず単細胞。これがインド人が求めるSalman Khan像なのだろうな。とにかく絶大な人気で、朝8時からの上映でもほぼ満席で大盛り上がり。終映時には出口にマスコミが2,3組いて、観客がカメラに向かって大騒ぎだった。先日の問題発言など何処吹く風である。格闘技世界戦がインドで開催されるという何度も繰り返されるモチーフに最初白けたのだが、確かに面白く、楽しめた。相手役はAnushka Sharma。知的に見えるこの女優は、芯の強い役をやらせるとピカイチ。もちろん、Salman Khanより脚が長く背が高い。そして、Randeep Hoodaが元レスリング選手Salman Khanを格闘家に仕上げるグルとして登場。『Do Lafzon Ki Kahani』よりずっとかっこよかったぞ。その分、変態度が足りなかったけど。Salman Khanのダンス、いつも似たようなものだし、いつかマスターしたい。そういや英語字幕が付いていた。PVRも変わってきたな。
#46「Raman Raghav 2.0」Anurag Kashyap/2016/インド/Jun. 26/INOX: Garuda Mall○
Bollywoodの変態、もとい性格俳優といえば、Randeep Hoodaとこの人Nawazuddin Siddiqui。最近よく出るなあ。本作も変態度95%。ムンバイのスラムに生息するシリアル・キラーRamanをふつーに演じている。これに対するのがヤク中InspectorのVicky Kaushal。名前はRaghav。Raman Raghavというのは1960年台に実在したシリアル・キラーらしく、今回のふたり合わせてバージョン2というわけだ。冒頭Raman Raghavの紹介をしたあと“これは彼の物語ではない”なんて、洒落ているじゃないか。兄弟だろうが子供だろうがバールのようなもので冷徹にたたき殺すとんでもない野郎(たち)で、ここまでやられると終いには爽快感さえ感じてしまいそうになった。台詞がわかったらまた印象は変わるかもしれない。ムンバイのスラムというのはよく映画の舞台になるが、僕は踏み込んだことはまだなく、ムンバイに飛行機で行くときに着陸時に眼下に広がるスラムを見ていつも驚愕するのみである。地図はあるんだろうか、ゼンリンさん?
#45「Dhanak」Nagesh Kukunoor/2016/インド/Jun. 19/INOX: Garuda Mall○
Rajasthanの砂漠に住む幼い姉弟が、Shah Rukh Khanに会うため旅に出る。Salman Khan推しの弟は盲目。ふたりは何人ものおとなに助けられながら旅を続けるが、なかなかSRKには会えない。字幕が欲しかった。それがないので、ふたりの家出に両親がなぜ騒がないのか、なぜ弟も行く必要があるのか、などという基本的なことがわからず。なので弟が突然手術を受けるのには驚いた。ロードムーヴィーには違いないが、たいしたピンチもなく、風景も絶景とまではいかず、もちろん色恋もあるわけがなく、繰り返される移動とおとなたちとの交流と甘いもの。いつまでも汚れないふたりの服はこれがおとぎ話であることの証左であったろう。子供映画だと思えば(実際そうだが)なかなかいい作品である。誘拐されそうになった姉弟を短銃で救う女性がきれいだった。姉役の子はきれいではないがキュートだったよ。で、ベンツにSRKは乗っていたのだろうか。観客に家族連れ多し。つまり、うるさかった。
#44「Udta Punjab」Abhishek Chaubey/2016/インド/Jun. 18/INOX: Garuda Mall○
ぎりぎりまで検閲でもめた話題作。結局コンサートで観客にかけるおしっこシーンがカットされたのみで上映可能に。Punjabがドラッグでそんなに深刻な状況であることを初めて知った(どこまで本当かわからないけど、総じて想像以上なのがインド)。『Haider』につづきクレイジーな役のShahid Kapoor、農園で働き大量のヘロインを手にして身を持ち崩すAlia Bhatt(そばかす顔)はとてもよかった。Punjab芸能界のスターDiljit Dosanjhは前観た『Mukhtiar Chadha』のコメディアンから一変し、ドラッグ追放を望むシリアスな警官役で悪くなかった。彼とともにドラッグ取引の黒幕である政治家を告発するための準備を終え、これが済んだらCCDでコーヒーを一緒にどう?と誘うKareena Kapoor。僕ならお断りである。全体としてはドラッグをなくそうという啓蒙が明確な目的となっており、普通につくると説教臭くなるところを過激な表現を満載することで、娯楽作としてうまく収拾していると思う。伏せ字だらけの英語字幕がありがたかった。
#43「Do Lafzon Ki Kahani」Deepak Tijori/2016/インド/Jun. 12/PVR: Forum○
今週末は韓国映画リメイク特集。本作は『Always』(2011)がオリジナル。格闘家Randeep Hoodaと盲目の看護師Kajal Aggarwalの運命的な恋。この二人の顔合わせがまず不思議。舞台がマレーシアはKLというのも異色。Randeep Hoodaがマレー語を(ときどき)喋るのだ。Kajal Aggarwalのヒンディー語もあまり聞き慣れないけど、彼女としてはこれが母語(マラーティ?)。彼女が盲目かつ孤児になった原因が実はRandeep Hoodaがトラウマにしている事件だったといういかにもコリアンなシナリオは、最後がハッピーエンドなこともあって、評判ほど悪いとは感じなかった。なんでRandeep Hoodaなんだろうと考えてみたが、ムキムキの俳優が必要だったということ以外に理由を思いつけない。クローズアップに耐えられるモチモチのKajal Aggarwal、クローズアップで見える鼻毛が悲しいRandeep Hooda。KLにはずいぶんとごぶさたしてる。まあ、KLに行くくらいならペナンとかマラッカとかバトパハがやっぱりいいけど。
#42「Te3n」Ribhu Dasgupta/2016/インド/Jun. 11/PVR: Forum○
Kolkataが舞台でAmitabh Bachchan主演とくると『Piku』が想起されるが、これはミステリー。同作とは異なり、建築を堪能というよりKolkata観光の趣濃厚だった。という割に、自分はHowrah Bridgeくらいしかわからなかったというのは秘密。食べ物が出てこなかったのは残念。韓国映画『Montage』(2013)のリメイクとのこと。そういう意味ではシナリオはしっかりしていた。過去の誘拐事件で孫を亡くした祖父Big Bが犯人を同じ手口で追い詰める。前誘拐事件で担当インスペクターだったNawazuddin Siddiquiがなぜかいまは神父なのだが、現誘拐事件担当の太ったVidya Balanと一緒に、なぜか現職警官みたいに捜査現場にいる。Nawaちゃんだけに、実は悪いやつなんじゃないかと観客に疑わせるように仕向けられていて、僕も途中までひっかかっていた。Prakash Belawadiがちょい役で出てた。ところで、レコードじゃないんだから、テープが緩くったって同じところを繰り返し再生したりしないよ。確信犯?
#41「A Aa」Trivikram Srinivas/2016/インド/Jun. 5/PVR: Forum
字幕なしで撃沈。世間がいうほど面白くなかった(負け惜しみじゃないぞ)。主役はNithinとSamantha。ひさしぶりにSamanthaのお腹がたぷっとしてた。話は、貧富の差の激しい家庭のふたりが恋するもの、といってもどちらかがダリットというわけではなく、片方(Nithin)は中流、片方(Samantha)は大金持ちという組み合わせ。序盤はSamanthaの世間離れしたお嬢様ぶりが笑いどころなれども、たいして笑えない。よかったのは(歌と)ダンス。Nithinの田舎Kalavapudi (Hyderabadから350km)などを背景に、タミル的なゆるいダンスが見られる。ダンサーがルンギだったりサリーだったりね。変なオブジェも気になった。あ、Nithinの許嫁が『Premam』の多髪女Anupama Parameshwaranだった。Tollywoodにも出るんだ。ところでTollywoodの松方弘樹(Ajay)はコメディーをやらせると田中春男に見えるな。そう、本作はコメディーだったわけだが、アレ以外はテルグコメディアン総出だった。それにしてもボリウッド以外で字幕がないと損した気分。
#40「Godhi Banna Sadharana Mykattu」Hemanth Rao/2016/インド/Jun. 4/PVR: Market City★
シナリオに唸る。Sruthi Hariharanの美しさに唸る。思いがけなく出てくるタンタン本に驚喜。アルツハイマーを患った父(Anant Nag)とその息子(Rakshit Shetty)、失踪した父を息子と一緒に捜す担当医師(Sruthi Hariharan)、父に息子と思い込まれる殺人の後処理を指令されたチンピラ(Vasishta N. Simha)、これら3つの関係がうまくひとつの映画に練り込まれている。父の亡妻に対する恋話などややセンチメンタルな面はあるが(うるさい音楽がそれを助長)、それもうまくエンディングにつながっている。予告篇ではわからないVasishta N. Simhaのパートがノワール的でいいし、そのカウンターとしてのAchyuth Kumarが担当するコメディーパートもバランスが取れている。それぞれの演技にも満足。最近のSandalwoodは盛り上がっているぞ。舞台は大方Bangaloreらしいが、看板の見えたBangalore City Station以外は皆目わからず。Bangalore市民失格。尋ね人の貼り紙はやはりすべて剥がしてあるんだろうな。街中に残しておくといいのに。
#39「Idhu Namma Aalu」Pandiraj/2016/インド/May 28/INOX Lido○
最近僕の脳内でインド人女優人気ランキングの上位に至った、鼻下ビンディーのNayanthara出演のラブコメ。Simbuという俳優の相手役である。なんと、元カレらしい。しかもこの男、Dhanushの奥さん(つまりラジニの娘)も元カノらしい。とんでもないやつだ。ふたりの結婚を巡るラブラブ話や家族同士の諍いはしようもなさ過ぎて言及する気も起きないし、字幕がなかったので細部まで突っ込めない。スマホを駆使する現代の恋愛で、SimbuのスマホのNayantharaの登録名が、関係が進展するのに伴って変わっていくのは面白かった。Nayantharaはいつ見てもとてもきれい。特にしかめっ面がいい。超長いつけまつげなど目の周りのメイクが厚いのだが、ナチュラルでも十分にきれいなはず。映画のスポンサーのひとつにめずらしくFIAT。で、結婚祝いにPuntoが贈られていた。ひさしぶりにMadhusudhan Raoを見た。しかもSooriと揃い踏み。しようもないコメディーの傍証。Injurious to health。Nayantharaで中和。
#38「U Turn」Pawan Kumar/2016/インド/May 22/PVR: Orion Mall○
Lucia』の監督、待望の新作はオカルトの顔をした説教映画だった。舞台はバンガロールで、中心となるのはRichmond CircleのとこのFlyover。ここで中央分離帯のブロックをどけてUターンした者が謎の自殺を次々とする。この謎解きだと期待していたら、オカルト。そりゃないよ。まだ夢オチの方がマシだよ。主人公の女性Shraddha Srinathの恋人Dilip Rajが怪しく、でもそういうわかりやすいシナリオじゃないよなあ、と思っていたのに。クレジットをよく見てないけど、Traffic Police推薦だったりして。交通監視システムを宣伝してたし、エンドロールでそのシステムの本物画像らしきものを見せてたしな。でも、Shraddha Srinathの訴えを理解する警官Roger Narayanが交通監視センターに飛び込んでいくときセキュリティなしでバーンと扉を開けてたぞ。そういう甘さを露呈していいのか? 細部はともかく、全体としては到底納得のいかない作品。でも、インドの交通マナーはよくなってもらいたいと切に願うひとりである。
#37「Thithi」Raam Reddy/2015/インド/May 22/PVR: Orion Mall○
やっと観た、ロカルノで受賞したSandalwood版『お葬式』。Thithiというのはヒンドゥー教の初七日みたいなものらしい。Century Gowdaと呼ばれた長寿のじいさんが亡くなり、遺産の土地を手に入れるため長男の息子が小原庄助さん化した父を“殺そう”とする話。Gowdaというこの州では由緒ある名前のほかはカーストの匂いがしなかったのは不思議。まあ、確かにおもしろかったし、よくできていた。インド映画として、という限定付きで。おそらくこの監督はシネフィル。世界のアート系作品は観まくっている。演出の端々にそれを感じることができる。言い換えれれば、どこかで観たようなシーン、カットの組み合わせで作品が構成されているように思われた。でも、素人だという出演陣はとてもよかったし、この監督には次作も期待しているよ。この州にも遊牧民がいるんだね。勉強になった。冒頭、Cinemascopeで投影が始まり焦ったが、誰かがクレームして5分ほどでヴィスタになり、無事英語字幕を確保。
#36「Sarbjit」Omung Kumar/2016/インド/May 21/PVR: Forum Mall
間違ってパキスタンに入り、テロリスト容疑で捕まってラホールの拘置所(刑務所?)から一生出られなかった男(Randeep Hooda)の話だと思っていたら、その姉(妹?; Aishwarya Rai)が弟(兄?)の救出に印パを奔走する話だった。なんで観に来たかというと『Masaan』のRicha Chaddhaが妻役で出ていたからなんだけど、妻なんだからもっと前面に出てきてもよさそうなのに、あまり目立っていなかった。というかAishwarya Raiが目立ちすぎ。二人が同じ画面にいるときも、ライトは彼女だけに当てられていた。Randeep Hoodaは相変わらず変態的芸達者ぶりを存分に発揮して、独房に入れられた容疑者(受刑者?)を演じていた。政治の取引に使われるこうした囚われの人たち(印パ双方にたくさんいるらしい)はやり切れないな。で、Richa Chaddhaって『Lucia』のShruthi Hariharan (上映前に『Godhi Banna Sadharana Mykattu』の予告篇に出てた)にちょいと似てる。Shruthi Hariharanの方がいいけど。最近英語字幕に慣れてきて字幕なしが辛く感じる。
#35「24」Vikram Kumar/2016/インド/May 14/PVR: Market City
Suriyaがプロデュースし、自身で3役を演じるタイムトラベルもの。実はそうとは知らずに単に話題作なので観に行ったのだが、実際このジャンルで面白かったものは『ターミネーター』以外皆無なので、開映後、しまったと思った。(『ターミネーター』は単にシュワちゃんが未来からやってくるだけなのでタイムトラベルものとはいいにくい。) しかも妙なコメディー調がしっくりこない。ハリウッドを真似たのだろう、わざとらしくクラシックを装ったハイテクも気に入らない。それでもNithiya MenenとSamanthaが出てくるので、なんとかこの長時間上映を乗り切った次第。時間を±24h動かせる、時間を止めることさえできる腕時計、そんなものがあったら、すべてのものの存在はないも同じである。おお、タイムパラドックス。母親役のSaranya Ponvannan、若い頃のシーンでもまったくいまと同じにしか見えないのもタイムパラドックスかな? ラストシーンからすると、明らかに続篇が用意されているようだ。たぶん観に行かない(断言はできないが)。
#34「Sairat」Nagraj Manjule/2016/インド/May 14/PVR: Market City○
全国公開になっているらしいマラーティ映画。簡単にいうとカースト跨がりの激しい恋と逃避行。ハッピーエンドでないところが大衆ウケしないはずなのに、どんどん上映館が増えているらしい。主役の娘が美人ではないところも興味深い(インド人は美人と思っているのかもと訝っていたら、そうでないとの確証を得た)。家族に追われ、低カーストの青年と辿り着くのはHyderabad。こないだ行ったところがちらほら。というのはさておき、スラムに住み安定した生活をなんとか始めるものの募るホームシック。最終的にはそれがもたらす悲劇。スローモーションを使ったときめきの表現はなかなかよかった。ラストシーンでは、赤ちゃんの演技がすばらしい。あれは本当に演技だろうか。まさかSFX…。悲劇的な結末を見ながら、隣にいたインド人のねえちゃんが連れに“That's reality”と話した。そう、“現実的”というより“現実”であるところがインドだよな。それはそれとしてねえちゃん、上映中に喋んないでくれる?
#33「路邊野餐」畢贛/2015/中国/May 4/光點華山電影館○
この監督のデビュー作品。初期の賈樟柯や章明作品と共通の独特の大陸の匂いがする。舞台は南部。凱里という貴州省の街。苗族が住んでいる。『Kaili Blues』という英題はぴったりだな。ここから、売られた甥を捜しに向かう田舎町での『トムとジェリー』の追いかけっこを見ているような40分の長廻しが圧巻。マルチシーン・ワンカットである。自由に動き回るキャメラ、ときたま起こる対象人物のスイッチ。タイミングの取り方がとてもむずかしいと思うが、リハーサルを綿密にやったのか、あるいはハイテク機器を駆使しているのか。撮影現場を想像すると楽しい。ときどき主人公(実際には監督)の詩が挿入される。これを味わえるほど中国語がわからないのは無念。多彩な音楽は林強だった。かなり睡魔と戦いながらの鑑賞(長廻しだけは全部観た)だったので、もう一度ちゃんと観たい。台湾で大陸映画を観るのもまったく違和感がなくなってきたな。その逆はどうなんだろう?大陸にはご無沙汰である。
#32「Theri」Atlee/2016/インド/Apr. 17/PVR: Forum Mall○
前作がコケたとっちゃん坊やVijay主演、Amy Jackson、Samanthaの二股共演のタミル語作品。Forum Mallなのに英語字幕が付いていた。舞台は基本ケララのどこかのようだったけど、序盤とかゴアも見られる。話の骨格はよくある悪の政治家に対するリベンジもの。背景に、昨今とにかく深刻な女性に対するレイプ事件をおき、社会面でもアピール(これでU Ratingを勝ち取ったと想像)。幽霊に見せかけて悪を次々と吊し上げ、しまいにはハングマンみたいな存在になっていく。前半はコメディーなのでダンスもたくさん。ただし、いつものタミルダンスではなく、バックダンサーのコスチュームは統一され、のほほん感はほとんどなし。Samanthaのお腹が、驚くことにシェイプアップされてた。ビッグバジェット(J&Kロケとかに使ったのか?)の割にCGを多用してて、その点は幻滅。Samanthaのお腹はCGじゃないと思う。Amy Jacksonのカツラもね。インターミッションが異常に短かった。あれなら、なくてもいいのに。
#31「Jacobinte Swargarajyam」Sameer Thahir/2016/インド/Apr. 10/PVR: Market City○
ケララ人は働き者、ケララ人最高、がメッセージなのか。個人的に知っている人物の実話を映画にしたら、こうなっちゃった、って感じ。Dubaiに住むケララ人富裕家族の栄光と挫折、そして再浮上を描くDubaiロケ作品。鉄鋼取引で一代で財をなした父親が、リーマン・ショックをきっかけに騙され多額の借金を抱えるが、これを長男(Nivin Pauly)が返済していく。前半の前向きパートが気持ち悪い。後半でも挫折することはほとんどなくやはり基本前向き。キヤノンの銀塩カメラに家族写真と、最近聞いたようなエピソード。マラヤラム映画だけではないと思うけど、他州や海外に行っても必ずそこにはケララ人が偶然いてマラヤラム語で会話する、というのが目に付くな。この家族はクリスチャンだけど、ちゃんとオーナムを祝っていた。変だろう。でも、ケララ人に聞いた話では、これが普通だそうだ。日本人みたいに柔軟だな。このケララ人最高だ映画、他州人の感想を聞きたいものだ。
#30「Kali」Sameer Thahir/2016/インド/Apr. 3/PVR: Forum Mall○
Premam』のSai PallaviがMollywoodのSRK(?)、Dulquer Salmaanの奥さんを演じるコメディー、かと思ったら後半はスリラーだった。カーリーといえば『Angry Indian Goddesses』のように女性だが、本作で怒り狂うのはDulquer Salmaanの方。といっても短気な喧嘩太郎銀行マンで、スーパーヒーロー的なアクションはない。彼の短気がさまざまいざこざを起こすのだが、最後にドキドキするような大きな災いがやってくる。Sai Pallaviって顔はお多福だけど、動いている全身像は魅力的。二作目にして流暢な英語も激しいダンスも封印し演技で頑張っていた。Chemban Vinod JoseがSai Pallaviを狙うならず者トラック運転手。堂に入った怖〜い演技を見せてくれる。前半のコメディーパートで出てくる銀行の同僚はSoubin Shahir。この人もよく出るね。ま、インドは短気なひとが住むべき場所じゃないのは確か。心を僕のように広〜く持つことが肝要、長生きのコツである。KochiのCentre Square Mall出てきた。Kerala Paratha喰わせろ。
#29「Kapoor & Sons (Since 1921)」Shakun Batra/2016/インド/Apr. 2/INOX Lido○
Coimbatore近くのCoonorに住む、南インド人らしからぬ家族の肖像。アンカーあるいは狂言廻しを演じるのはRishi Kapoor。90歳にもかかわらず超元気でお茶目なじいさん役である。それだけでも中村雁治郎を思い出させるが、物語が家族写真がキーになっている点も小津を連想させる。Alia Bhattが団令子か。優等生の兄(Fawad Afzal Khan)と兄を親がかわいがるのにいじける弟(Sidharth Malhotra)の組み合わせは紋切りといってよい。件の親はRajat KapoorとRatna Pathakの組み合わせ。Fawad Afzal KhanとRatna Pathakが同時に出てくると『Khoobsurat』が頭に浮かんで高貴に見えるね。どこにもありそうな家族内の駆け引きは、結構意外な終盤(死ぬ真似を繰り返すRishi Kapoorは結局死なない)と併せ、観るものを惹きつける。エンターテイメントとして一級である。繰り返すが、この家族は南インド人に見えない。この点が気になった。片言でもいいからタミル語を喋ってほしかったなあ。最初に出てきた空港はChennaiのに見えたけど、Coimbatore?
#28「Darvinte Parinamam」Jijo Antony/2016/インド/Mar. 20/PVR: VR Bengaluru○
アクションなんだかコメディーなんだか謎のMollywood作品。字幕なしで観たからだけとは思えない、シーンのつながりの不明さが、途中から眠気を吹き飛ばした。主演は『Picket 43』のPrithviraj Sukumaran、題名にも出てくるDarwin役は『Charlie』にも出てたChemban Vinod Jose。舞台はKochi。Fort Kochiの街並みやVasco Da Gama Churchが見られるのでかろうじて○付けた。田舎からKochiに引っ越した普通の夫婦が、妊娠中の妻がチェーンスナッチャーの被害に遭い流産。この復讐に乗り出した夫が次第にやくざな世界に関わっていき最後にはKochiの大物になる、というストーリーなのだが、エピソードがよくわからない。夢なのか現実なのかもわからないシーンがある。Prithviraj Sukumaran、普通のひとにしては強すぎだし。あと、妻役のChandini Sreedharanに魅力がまったくないのが残念だった。女優なら顔のうぶ毛くらい剃ったらどうかなあ。ま、たまにはこういう映画もあるさ。ふたりで600ルピー+UBER往復500ルピーはもったいなかった?
#27「Kadhalum Kadanthu Pogum」Nalan Kumarasamy/2016/インド/Mar. 19/Cinepolis: Bannerghatta Road○
韓国映画『私のチンピラな彼氏』のタミル語リメイク。パク・チュンフンがVijay Sethupathiに、チョン・ユミがMadonna Sebastianにそれぞれ置き換わっている。らしいのだけど、オリジナルを未見なので、あ、そうなの、という程度。『Sethupathi』ではおっさんに見えたVijay Sethupathiは本作ではそこそこ若いにいちゃんで、こっちの方がずっといい。『Premam』でデビューしたMadonnaは2作目(?)にしてもうKollywoodへ遠征。本作ではアイラインがインドチックで前作よりもファニーフェイスに見えた。映画は雨が印象的。実際に撮影中によく降ったのだろう。それもあってか、原作の雰囲気を踏襲してか、期待していたタミルダンスはたった1曲しかなかった。しかもMadonnaは踊らない(踊れない?)。前半にVijay Sethupathiが入るバーで『花樣的年華』(?)がかかっていたのはなぜ? オリジナルにあるとか、監督の趣味とか? 唐突だよな。刑務所仕込みのビリヤニはおいしそうだったな。刑務所に行くとみんな習うんだろうか。
#26「Simpallag Innondh Love Story」Simple Suni/2016/インド/Mar. 13/PVR: Forum Mall
Simpallag Ond Love Story』の監督が再び撮ったラブストーリー。主演はPraveenとMeghana Gaonkar。ちょいとSonakshi Sinha似かな。こっちの方がずっと胸大きいけど。新感覚のラブストーリーらしいのだけど、古いひとだからかこの感覚には付いていけなかった。PraveenがコメディアンのディーラーからだましとったVolvo V40を駆り、ゴアでのお見合いに向かうMeghana Gaonkarをその車で送るというロード・ムーヴィー。VolvoじゃなくてTATA Nanoにすればよかったのに。このふたりと、見合い相手の三人が実は同日同病院で生まれたというエピソードが冒頭に出るのだけど、何の意味もない。途中に出てくる妙なユニフォームを着た強盗団とのエピソードもナンセンス。ふたりの行程に一緒だった子役はなかなかよくやっていたな。Praveenはどこがいいのかわからないけど、運動能力は高そうだった。随所にタイアップしている洗剤がカメラ目線で出てきたのが日活っぽくてよかった。
#25「Jai Gangaajal」Prakash Jha/2016/インド/Mar. 13/PVR: Forum Mall○
たらこ唇Priyanka Chopraのコップもの。彼女はSPで、Bihar州のどこか、発電所の建設プロジェクトで陰謀渦巻く町に着任する。当然、やくざと紙一重の政治家とそれに癒着した警官が牛耳る町なのだが、ここで描かれるのは、インド社会によくある集団リンチ。抑圧された民衆が悪に対し天誅を下していく。もちろん法を犯しているわけで、これを是としないPriyanka SPが世直しするわけだ。なかなか複雑で、観客がどこまで共感するのかわからなかったが、警官姿のPriyankaはかっこよかった。癒着警官のひとりにPrakash Jha監督本人。Priyankaより目立ってたぞ。ナルシストだろうか、途中から改心し、正義の側につく。スーパーマン的など派手アクションはない。ダンスもない。Priyankaに色気も恋話もない。そういう点はある意味よかったが、物足りない面があったのも確かである。それにしても、新聞でたまにリンチの記事とか出ているだけに、こういう劇映画にリアリティーがあるのがインドだな。
#24「Aligarh」Hansal Mehta/2016/インド/Feb. 28/INOX: Forum Value Mall○
インドでは人名とか地名とかの固有名詞映画タイトルが多い印象。本作もUP州の同名都市をタイトルとする実話ベースのドラマ。同性愛を理由にAligarh Muslim Universityを追われたProf. Shrinivas Ramchandra Sirasの話である。カツラの(失礼、これまでそういう印象)Manoj Bajpaiが、独り者の初老大学教授を笠智衆のごとく渋く演じている。ウイスキーをちびちび呑むのがいいんだなあ。彼をごく自然にサポートするのがIndian Post(だったかな?)紙の記者Rajkummar Rao。架空の人物らしいが、映画内での位置づけもくどくないし、こちらも好演。裁判で教授の弁護人を務めていたのはAshish Vidyarthi。このおっさんも芸域が広いね。映像は、落ち着いた、固定(あるいはゆっくりパンする)キャメラで撮られたシーンがよかった。ボートに乗ってるとことか。めずらしく政治家や警官が出しゃばってこないのは実話だから? まあ、LGBTを支援してもインドじゃまだ票やお金にはつながらないかもな。
#23「Game」A. M. R. Ramesh/2016/インド/Feb. 28/INOX: Forum Value Mall○
Arjun Sarja主演の有り体なリベンジもの。序盤に謎のサービス・シャワーシーンがあり、Arjun Sarjaのムキムキが披露される。誰か喜ぶのかな。ジャンルとしてはホラーかな。金持ちの中年女Manisha Koiralaと結婚した医学者Shaamが、心臓発作で死んだ妻の殺人容疑をかけられ、妻の亡霊に怯える。Shaamには恋人Aqsa Bhattがいて、殺しの動機は大いにある。InspectorであるArjun Sarjaが背景を探り、Shaamの逮捕に踏み切り…。事件の裏は途中から推測できるようになるが、オチがねえ、ちょっと唐突すぎる。唐突といえば、Item Numberもびっくりするくらい唐突で、しかも途中にカエルとかの拡大映像が映し出されてシュール。証拠隠滅のために便器に棄てた紙が流れないのでしかたなく拾って食べてしまうShaamもシュール。レストランで出てきたどこかのヴィンテージ・ワインがSula Satoriだったのに笑った。いやあ、やっぱり呑んだら乗るな、乗るなら呑むな、です。iPhoneのホーム画面を見せたままで通話シーンを撮影するな。
#22「Carol」Todd Haynes/2015/英=米/Feb. 27/PVR: Orion Mall○
カンヌのコンペに出て、オスカーレースでも健闘中。主演のCate Blanchett (Carol)の演技がすばらしい。Lauren Bacallを意識しているのかな? 相手がボギーじゃなくて女性だというところが今風。その相手を演じているのはRooney Mara (Therese)で、こちらもセミショートヘアがAudrey Hepburnみたいに可愛かった。時は1952〜1953年。時代の雰囲気もよく再現されていた。(って、まるで知ってるみたいだが。) 始まりがクリスマスなところはキャロルに引っかけているのだろうか? > 原作。途中から女ふたりのロード・ムーヴィーになる。車はパッカード。思わずアキラを口ずさんじゃうよ。CarolがThereseに贈るカメラがキヤノンだったのには驚いた。いつから輸出しているのかいまだに不明だけど、1933年からカメラを製造しているとは知らなかったよ。さて、ここはインド。やはりベッドシーンはばっちりカット。輸入映画に勝手に入れるインターミッションについては字幕で“For your convenience”と説明あり。別に要らないんだけどな。
#21「Sethupathi」S.U Arun Kumar/2016/インド/Feb. 21/INOX Lido
カーキもの。Vijay Sethupathi主演でタイトルがコレということは、相当このおっさんを売り出したいのだな。巷の評価はそこそこいいらしいけど、僕のは厳しい。オープニングが警察ご苦労さんエピソードのコラージュなのはまあいいとして、Inspectorである主人公のやることは、警察としてはあるまじき行為であり、これを賞賛するようなことがあってはならん。企みに引っかかったのだとしても自分が少年を撃ち殺しておいて、身の潔白の証拠探しに暮れるって、少しは心が痛んでいる姿を見せてもよさそうなものだ。結末もいかん。いくら悪人だからといって、私刑で焼き討ちにするのはひどい。なんでこいつがヒーローになれようか。家族4人、ノーヘルでバイクに乗るのも御法度だよ(あ、タミル・ナドゥ州はまだいいのか)。タミル映画の必需品であるタミル・ダンスがないのも、僕の機嫌を損ねた。奥さんとのらぶらぶシーンがちりばめてあるのは『Dabangg』を意識しているのかな。舞台はMadurai。ミナクシー寺院出てきた。
#20「Neerja」Ram Madhvani/2016/インド/Feb. 20/PVR: VR Bengaluru○
Bollywoodの原節子、Sonam Kapoorの待望の主演作。彼女は抜群にきれいなのだけど、正直なところ演技はいまひとつ、というのがこれまでの評価。本作でそれが変わったかと問われると、そうでもない。が、これまでのどの作品よりもよく見えるのは、どうやらNeerja Bhanotという国民的ヒロインを重ねてみてしまうためらしい。作品は1986年にカラチ空港で起こったパンナム機ハイジャック事件が緊張の中で悲劇的に終結するさまを淡々と描写していてよかった。おかげで上映時間は2時間余り。終盤の母親演説シーンがなければ、もっとよかった。そうすれば2時間切ってたな。B-747の実物大ハリボテを作って撮影したらしいが、さすがに飛行シーンは合成だな。テロリストの会話シーンでは英語字幕が出て何語だろうと思っていたらアラビア語だった。そりゃそうか。途中で出てきた『あいうえおの唄(仮称)』はインドではスタンダードな歌なんだろうか? あれを憶えるとデーヴァナーガリーを忘れないようになりそう。
#19「Puthiya Niyamam」A. K. Sajan/2016/インド/Feb. 14/INOX: Garuda Mall○
最近Parvathyとともにお気に入りのNayanthara出演マラヤラム語作品。スリラーだったのか。ホラーだからと『Maya』は避けたのに、これではまったかな、と思うのは杞憂だった。カタカリダンサー兼主婦のNayantharaが同じマンションに住むドラッグジャンキーらにレイプされるが、“Takotsubo”作戦により復讐(=合法的?殺人)する。共演のMammoottyがダンナ。彼の家庭はブラミンで結婚はカースト跨ぎだったので義母にNayantharaは蔑まれてきたらしい、というエピソードはそれほどストーリーには絡まない。この復讐劇の裏側に大きくMammoottyが関わっていたというのがオチになっている。伝統舞踊に関わりかつ主婦ということで、ずっとNayantharaはサリー着用。笑わない彼女はこわいけどきれいだよ。今回わかったのは、Nayantharaの左手は6本指だということ。おぉ、神々しい。やはりこの劇場だと英語字幕つきの確率が高いな。ヒンディー語映画以外はできるだけPVR Forum Mallを避けた方がよさそうだ。
#18「Fitoor」Abhishek Kapoor/2016/インド/Feb. 14/INOX: Garuda Mall○
舞台をKashmir、Delhi、Londonに据えた、ディケンズの『大いなる遺産』の映画化。恥ずかしながら原作も読んでいないし他の映画化作品も未見のため新鮮といえば新鮮だったが、ヒンディー語で字幕なしゆえ、細部を推し量ることは叶わず。印象は主人公のAditya Roy Kapurと身分違いのKatrina Kaifとの恋話というより、金持ちでKatrina Kaifの母親のTabuの大河ドラマだった。彼女の若い頃を演じていたのは『Wazir』のAditi Rao Hydariで、僕には納得の美貌連携。舞台をKashmirに設定する必然性はないと思うのだが、風景の美しさとかが他のインドとは異質なのと政治的に不安定な分ドラマティックなので好まれるのだろうな。Ajay Devganが、少年時代の主人公が助けた犯罪者として渋く特別出演してた。この劇場にはどこがカットされたかを示す掲示板があるのがいい。本作では“Haramzade”, “Harami”, “Gand”がミュートあるいは別の言葉に吹き替えられていたようだ。
#17「Bangalore Naatkal」Bommarillu Bhaskar/2016/インド/Feb. 7/INOX Lido○
Nazriyaちゃんがとても恋しくなる『Bangalore Days』のタミル語版リメイク。いとこ3人の故郷がタミルナドゥ(Vellore?)に変わり、言語がタミル語になった以外はほぼ同じ台本だと思われる。演出まで似てて唖然。ただし冒頭の結婚式前日の大騒ぎのダンスはタミル映画式だったし、Bangalore内のロケーションも異なる。RJ Sarahを演じるのはオリジナルと同じParvathy。FM局はRadio Mirchiに変わったが、彼女の演技はまったく同じである。なぜこの役を引き受けたのか興味あるね。前回の演技に悔いがあってやり直したかったのだろうか? Nazriyaちゃんがいない分(といっては失礼だけれども)、Parvathyのかわいさを再認識できる。Nithya MenonはSamanthaに置き換わった。お腹のプルプル度は同等だな。とにかく、ここまでの劣化コピー作品をつくる意図がよくわからなかったけど、結構楽しませてもらった。誰かが弾いてたギターのブランドが“Givson”だったよ。インドのブランドか?
#16「Visaaranai」Vetrimaaran/2016/インド/Feb. 7/INOX Lido○
ダンスなし、ギャグなし、救いなし。インド警察がますます怖くなるコリウッド作品。上層部あるいは自分たちの都合で無実の人間を連行し、拷問の限りを尽くし、犯人をでっちあげて自分たちの功績とする。とても架空の話とは思えないところがインド。アンドラプラディシュ州で働くタミル人がこれにはめられ、タミル警察の手で助けられたと思ったら、タミル・ナドゥ州に帰ってから同様の状況に陥る。正直、あるいは正義が虚しい。ここまで人命というものが軽んぜられることに愕然とする。ある意味戦場より怖い。やっぱり言葉が通じないところで医者と警察はいやだよなあ。わかるよ。冤罪を訴えるハンスト後に騙されて食べるビリヤニとパラータがおいしそうだった。映画自体とても面白かったのだけど、思いがけずAnandhiが出てたのが大収穫。彼女、インド的美少女って感じ。タイプというわけではないのだけど。Dhanushプロデュース作品にはいまのところハズレがないな。
#15「Devara Nadalli」B. Suresha/2016/インド/Feb. 6/Cinepolis: ETA Mall★
カルナータカ州西海岸の町を舞台にしたブラックコメディー。ある大学で起きた爆弾事件の犯人捜しなのだが、滅法面白かった。自分の選挙のことばかり考えているCM(州知事)、その周囲のSEZ開発を狙う(やくざの)ビジネスマンとブラミンでムスリムを常に敵視するヒンドゥー原理主義者、共産主義を嫌悪する教師、ビジネスマンの息子で思い切りが悪く粘着質の金満大学生、ヒンドゥー原理主義者の息子の同級生、SEZ反対を訴える共産主義者とその息子である同級生、ムスリムの真面目な同級生、そして金満大学生が恋する低カーストの同級生という、カースト的にも政治的にも混沌としたインドの縮図の登場人物たち。材料は揃った。これを料理する正義の刑事はPrakash Raj、だったのだけど、色々な力が作用し、出てきた答えは、これまたインドの縮図なのであった。惜しいのは音楽が最低だったことだな。いま喋っているのが何語か(実際カンナダ語以外に6言語くらいあった)まで解説してくれる英語字幕はとても親切で助かった。
#14「Viraat」H. Vasu/2016/インド/Jan. 31/INOX: Mantri Square
Darshanという前頭部やばい俳優主演のアクション。お相手の女優が3人というデラックス版。Isha Chawla、Vidisha Shrivastav、Chaitra Chandranath、って誰も知らね。Darshanは建設会社の社長かなんかで、悪役顔のお手本P. Ravi Shankarと競った末、州知事に認められ火力発電所の建設プロジェクトをゲットする。鋼鉄の腕なのか非現実的に滅法強い。で、いつのまにか3人の女性に迫られ、(理由がよくわからなかったけど)最終的にひとり(Isha Chawla)を選ぶ。なんじゃそりゃ。スイスロケのアイテムナンバーがふんだん。長すぎ。またSadhu Kokilaが出てきてしょうもないギャグをかます。長すぎ。後ろのガキんちょは僕のシートの背を蹴りまくるし、得るものはほとんどなかった。インド人の子供って見た目はほんとにかわいいけど、やることは憎たらしい。サンダルウッドでは珍しく、知っているところ(Brigade Gateway)が出てきた。Darshanもそうだけど、インド人って耳の外側に毛が生えてるよね。あれってインド人だけなのかな?
#13「Saala Khadoos」Sudha Kongara/2016/インド/Jan. 30/INOX: Mantri Square○
インドボクシング協会(仮称)の上層部に睨まれてチェンナイに左遷されたコーチ(R. Madhavan)が彼の地で才能ある女の子(Ritika Singh)を見出しトレーニング、デリーに凱旋し世界チャンプにまでなる、という紋切りストーリーのスポ根もの。紋切りではあるのだけど、主役のふたりが魅力的で結構ハマる。Ritika Singhは本職のキックボクサーらしいが、プロスポーツ選手にしてはグラマーだな。元気溌剌でよかったよ。一方のR. Madhavan、『Tanu Weds Manu Returns』のManuだということにまったく気がつかないほど雰囲気が違うワイルドな元ボクサーを演じきっていた。例によって、オリンピックでもないのに全国が注目してテレビ中継が行われみんなが観るという不思議な設定と、どうしても主人公にインドという国を背負わせたがる、インド映画の悪い癖がここでも残念な空気を漂わせていた(インド人観客はそうは思わないのだろうな)。タミル語版『Irudhi Suttru』との違いが少し気になる。
#12「Ricky」Rishab Shetty/2016/インド/Jan. 26/PVR: Forum Mall○
SEZとNaxalがキーワードの、なかなか勉強になる興味深いSandalwood作品。山間部の田舎に住む幼なじみの男女が男のBangaloreでの就学で別れ別れになりながらも大人になって婚約するが、男がしごとでカシミールに行っている間に女の家がSEZ(Special Economic Zone)開発で接収されこれに絡んで両親も亡くなり女は失踪する。男が帰ってきて女を捜した結果、女は西ゴート山脈で活動する共産ゲリラNaxalの同志となっていて、それを連れ戻そうとする。というお話。男(おとな)は『Ulidavaru Kandante』のRakshit Shetty、女(おとな)は『Ugramm』のHariprriya。メロドラマの部分はベタでなかなかよかった。Sadhu Kokilaが出てくるギャグのシーンはベタでどうしようもなかった。Naxalを抑え込むためにその活動地域にSEZを設ける戦略は実際にやられ、それによってか現在ではカルナータカ州はNaxalの活動地域ではなくなっているらしい。ゲバラ本を読み、“Lal Salaam”と叫ぶ。そういう人は共産主義の本場、ケララ州にはいないのかな?
#11「2 Penkuttikal」Jeo Baby/2016/インド/Jan. 24/PVR: Forum Mall
始まったら『2 Countries』じゃなくて焦った、というのは嘘で、Amala Paulがちょっぴりしか出てこなくて怒った、というのが正解。マラヤラム語わかりませーん、なので話がよくわかりませーん。でも舞台がKochiだというのは速攻理解した。映像は強し。近所に住むあまりデキのよくない仲良し少女ふたりが学校に行くと見せかけて家出。お巡りさんに見つかり強制送還。貧乏(あるいはカーストが下?)の子は転校させられ、ふたりは離ればなれになる。という話が現在(と言っても背景に『Kill/Dil』のポスターが見えたので2014年だ)で、それを大人になったふたりが再会する話でサンドイッチした構造(話、わかってるじゃん)。ということはこれは10年は先の未来だ。あの毛深い子がAmala Paulになるとは…。終盤の、Amala Paulが住んでいるという設定の舞台はKolkata。“Howrah”という文字が見えたのでこれも一発でわかった。えらいな→自分。 “Evaporation” と “Condensation”も憶えたね。
#10「The Hateful Eight」Quentin Tarantino/2015/インド/Jan. 24/PVR: Soul Spirit★
猛吹雪の中の西部劇。Tarantinoはやはりおもしろい。デラックスな6頭立て馬車を捕らえるロングショット長廻しのタイトルバックに被さる音楽はEnnio Morricone。泣かせるね。主役はSamuel L Jacksonかと思いきやタイトル通りの群像劇だった。序盤は馬車。雪に倒れる手錠でつながったふたり(Kurt RussellとJennifer Jason Leigh)、って『網走番外地』ですか。中盤から舞台をロッジ内に移し、お互いが信用できない者たちの駆け引きが始まる。Michael Madsenを見るのはひさしぶりだ。話は途中からミステリー仕立て。巧いなあ。血だらけの快作であった。オリジナルは70mmだそうで、それが観たかったな。で、インド公開版について。字幕までは検閲されないのか、“fuck”とか“son of a bitch”とかは音声ミュートがかかるのに英語字幕はそのままだった。そもそも回数が多すぎるからか音声ミュートも完璧ではなかったけどね。一方で、囚人Daisyの兄が殺されるまでのシーンが結構長くカットされていた。残虐だったか。後で腕がもげるが。
#9「Airlift」Raja Krishna Menon/2016/インド/Jan. 23/INOX: Garuda Mall○
Republic Day向け愛国心昂揚作品。そんなもの日本人には通じないし、インド人に響いたかもやや怪しい。1990年、イラクに侵攻されたクウェートに住んでいたインド人を戦地から母国に返すため尽力した民間人をAkshay Kumarが演じる。やくざでもない民間人ゆえ、アクションはほとんどなく、話自体も硬派ではない。それならそれでいいけど、最後まで散漫な印象で終わった。最初のパーティーシーンだけがいつものAkshay Kumarだったな。奥さんは『The Lunchbox』のNimrat Kaur。きれいだ。Akshay Kumarにいろいろ文句をつける、クラッチバッグをいつも抱えた避難民のおっさんにPrakash Belawadi。とほほな役だ。ほかにも知っている顔が避難民中にちらほら見えた。船による移送は失敗し、最後はイラクを陸路縦断しヨルダンから飛行機で帰国する。わざとらしく掲揚されるインド国旗。終盤はエア・インディアの宣伝みたいになってしまった。帰国する機内のアテンダントは若くてきれいだったけど、ダウトである。
#8「Monchora」Sandip Ray/2016/インド/Jan. 17/INOX: Garuda Mall○
2週連続でベンガル映画。しかも主演がまたも鼻毛俳優Abir Chatterjeeである。監督はSatyajit Rayの息子で『Chaar』以来の鑑賞。96分の(印度的に)短篇は、ちょいとクサイが面白かった。鼻毛くんのほか、June Malia、Saswata Chatterjeeといったベンガル映画常連(?)や、『Chaar』に出てたParan Bandopadhyayも出てきて、ベンガル映画界もマラヤラム映画界と同じような状況なのかと想像。ヒロインはRaima Senという、『Buno Haansh』に出てたMoon Moon Senの娘で、自宅に侵入した泥棒の鼻毛くんを匿い、父親の秘書として雇い、ありていにいえば恋に落ちる。ヒロインの兄(Saswata…)がペテン師(June Malia)に家宝のルビーを狙われるストーリーは日活的だな。June Maliaは毒々しさはよく出ていたが、男を虜にするにはやや痛々しい老け具合。英語字幕からわかった会話によればRayという苗字はブラミンらしい。インド人の社会的背景は結構苗字でわかるようだ。だからカーストはなくならない。
#7「Nannaku Prematho」Sukumar/2016/インド/Jan. 16/PVR: Forum Mall○
どんどん、ぱんぱん、どんぱんぱん♪『Srimanthudu』以降テルグ映画は避けていたのだけど、“Young Tiger” Jr. NTRの第25回出演記念作品ということで気合いが入っていそうなので、どんなもんかと観に行った。舞台はロンドンとスペインのどこか(+ハイデラバッドのスタジオ)。デラックスである。しかも海外なので例のコメディアンが出てこない。すばらしい。先読みが得意な若い実業家のNTRが、昔無一文にされた父親の恨みを晴らすため敵のダンディーJagapathi Babuに仕返しする話。Jagapathi Babuの娘がRakul Preet Singhという女優で、NTRがアプローチするのが前半。ハイソというか金満の設定ってテルグ映画大好きだよね。後半がお約束の復讐モード。アクションちょっぴりで基本頭脳勝負である。もちろん最後にNTRが勝つ。シナリオはわかるんだけど、残念ながら弱いな。インド頭のNTR (配下の二人もインド頭)、ロンドンでは目立つよ。そういえば蝶が何度も出てきたけれど、意味不明だった。テルグ語がわかればなあ(ってこればっかり)。
#6「Kathakali」Pandiraj/2016/インド/Jan. 15/INOX Lido○
Paayum Puli』のVishal主演作品。なかなか凝ったシナリオでおもしろいのだけど、凝った分モヤモヤ成分も多かった。前半は『Madras』のCatherine Tresaとのラブコメ仕立て。話はたわいもないが、例によってタミル映画の見どころ、ダンスシーンがよかった。ルンギ姿の太ったおじさんやサリー姿の普通のおばさんが踊るのだ。しょうもないギャグがなかったのもよかった。Vishalがデートに米西海岸ルック(?)で現れるのだが、それにはあまり違和感を感じなかった。インド人だとなに気取ってんのって感じに見えるのかな。で、後半は思わぬことから殺人犯として追われるノワールな一夜。Pondicherryも出てくる。こちらはアクションシーンがあまりないところが好印象で、Vishalのひきしまったアクションが際立っていた。さて、問題は題名のカタカリとの関係がよくわからないことだ。Vishalの立ち回りがカタカリ的なんだと想像するのだが、カタカリの話を知らないのとタミル語がわからないのが致命的だった。とほほ。
#5「Chauranga」Bikas Ranjan Mishra/2016/インド/Jan. 10/PVR: MSR Elements Regalia Mall○
列車の止まらない小さな村に住むダリットの少年を主人公に、インドに根強く残るカースト制度の現実を直接見据えた作品。映画としても、冒頭からロングショットで魅せる。横移動もよかったな。描かれるのは、ダリット(不可触民)に対する差別の理不尽。ダリットの子供を井戸に落としても、心配するのは井戸のこと。地元有力者にあいさつするため足に触ろうとすると、足を引かれたり、蹴飛ばされたり。教育も受けられず、人間扱いされていない。インドではいまだにこれが現実なのか。宗教とはかくにもおそろしい。地元有力者のもとで働きながら彼と性的関係をもつ母親役は、お気に入りのTannishtha Chatterjee。少年は幼く見えるのでまだ小学生程度かと思っていたら14歳だった。道理で腋毛がもじゃもじゃ生えているわけだ。映画はダリット差別のほか、女性差別にも目を配っている。父親の娘に対する冷遇と無理解や、ブラミンのじいさんの、娘への視線(盲目だけど)。エンディングで見せるかすかな希望が叶うといいが…。
#4「Har Har Byomkesh」Arindam Sil/2015/インド/Jan. 9/INOX: Garuda Mall○
Detective Byomkesh Bakshy!』ですっかりおなじみになった(?) Byomkesh Bakshiもの。本作でこの探偵を演じるのはAbir Chatterjeeというベンガル俳優で、どうやらシリーズものの一本らしい。舞台はカルカッタではなくバラナシ。カルカッタの暴動から逃れて休暇に来たという設定で、ガンジス川のほとりにある宮殿で起こる殺人事件の謎解きをするという展開。プロットは結構チープで(とはいえ英語字幕がなかったら路頭に迷っていたと思うが)、犯人も途中から観客に気づかせるようになっていた。そんなことより気になったのはByomkesh Bakshi夫妻というかそれを演じるふたりの俳優の鼻毛。お色気シーン(?)も結構あり、ふたりの顔のどアップを見せられるのだが、ふたりとも鼻毛が伸びていてハラハラした。そういうことはインド映画では女優のすね毛同様気にしないのかね。重鎮のDeepankar Deがしっかり登場してたし、『Sesh Anka』で共演していたJune Maliaも出ててベンガル気分を満喫した。で、“Har Har”ってなんだろ?
#3「Wazir」Bejoy Nambiar/2016/インド/Jan. 9/PVR: Forum Mall○
各シーンは結構いいのだが頭の中でストーリーがつながらず悶々とした、Amitabh Bachchan主演作。Webでネタバレプロットを読んでようやく全容がわかった。なぜAmitabh Bachchanの膝から下がないのかも含めて。が、それでもFarhan AkhtarがあそこまでAmitabh Bachchanを助けることにした動機にいささか合点がいかない。チェスが絡んでくる点も、自分がチェスを知らないからか、弱く感じられおもしろくなかった。主な舞台はDelhiだけど、New DelhiやConnaught Place。Ghaziabad, Srinagarも出てくるけど情景としての重要性はない。とはいえ、Farhan Akhtar夫婦もムスリムだったし、Srinagarももちろんムスリムの街で、宗教的な背景としては重要である。John Abrahamが特別出演でFarhan Akhtarを助ける謎の工作員を演じていた。Farhan Akhtarの奥さんを演じていたのは『Khoobsurat』に出てたAditi Rao Hydari。この人、きれいだね。Wikiを読んでたらFarhan Akhtarの子供の名前がAkiraと書いてあった。へー。
#2「Killing Veerappan」Ram Gopal Varma/2016/インド/Jan. 4/PVR: Forum Mall○
2004年10月18日に決行されたOperation Cocoonで殺された山賊Veerappan。Tamil Nadu、Karnataka、Keralaのジャングルをベースに象牙やサンダルウッドを違法に売って儲けたり、あのDr. Rajkumarを誘拐したり、元Karnataka州CMを殺したりしたらしい実在の人物。彼を追うSpecial Task Forceの警官をDr. Shivarajkumarが演じた、かなりハードな作品。残念なことに字幕がなかったため細部がわからないのだけど、Dr. Shivarajkumarの取り憑いたような演技は迫力あり。一方、妙にホワイトバランスを崩した画面など撮影がまったく趣味でなく、えげつない描写と相まってあまり映画に没入はできなかった。Veerappanがとても欲しがっていたAK-47。一瞬アップになるのだけど、どうみても木で作った贋物だった。象がいたり、コブラがいたり、虎がいたりの南インドのジャングルでサバイバル修行したら強くなれそうな気がするな。ところでPVR KoramangalaはPVR Forum Mallに名前を変えたようだ。Koramangalaに別の小屋ができるのだろうか?
#1「Charlie」Martin Prakkat/2015/インド/Jan. 2/Cinepolis VIP Centre Square Mall: Kochi○
2016年はKochiで撮られた映画をKochiで観るというしあわせなスタート。例によってDulquer Salmaan主演。相手役は『Bangalore Days』でも共演したParvathy。Fort Kochiで撮られているのは主に前半。ちょうど歩いたばかりの風景がスクリーンに展開するのはワクワクものである。New Year Carnivalのシーンもあり、見なかったことをちょっぴり悔やんだ。Fort Kochiの、ある部屋に暮らすことになった女の子Tessa(Parvathy)がその部屋に惹かれ、オーナー(?)のCharlie(Dulquer Salmaan)を探すストーリーは紋切り感バリバリ。Charlieの性格付けも、“ワイルドでいい奴”感が鼻につくほど紋切り感。まあそういうアイドル映画なんだろうし、例えばMaheshではこんな作品は撮れないと思うのでいいんじゃないかな。脇はマラヤラム映画常連で固めてあった。さて、Parvathy(ってSiva神の奥さんだね)、こうしてみると悪くない。伊達らしいメガネも似合ってる。残念ながら色気不足で、Item Numberはかなりハズした感じだったけどね。

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Updated: 1/8/2017

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