[↓2016年][↑2018年]

2017年に観た映画の一覧です

星の見方(以前観たものには付いてません)
★★…生きててよかった。
★…なかなかやるじゃん。
○…観て損はないね。
無印…観なくてもよかったな。
▽…お金を返してください。
凡例
#通し番号「邦題」監督/製作年/製作国/鑑賞日/会場[星]

#100「Velaikkaran」Mohan Raja/2017/インド/Dec. 25/INOX: Garuda Mall○
Sivakarthikeyan主演の労働者礼賛映画。なぜメーデーでなく年末に公開なのかが謎。相手役がNayanthara。予想以上に出番が少なく、悲しい。でも贅肉が少しもないきりっとした顔が拝めて、嬉しい。本篇に入る前の“Smoking kills”も彼女だった。ラジオジョッキーだったSivakarthikeyanが食品会社に転職し、マーケティングに傾倒しながら、消費者をだますマーケティングに嫌気がさして、消費者本位の、労働者が誇りに思えるしごとをすべく立ち上がる、というDhanushがやりそうなお話。その食品会社で最初Sivakarthikeyanを採用しマーケティングを教えた後敵に回るのはNazriyaちゃんのダンナFahadh Faasilである。悪役をやるのを初めて見たが、予想通り、なかなかようやりよる。Prakash RajがSivakarthikeyanの住むチェンナイのスラムを仕切っているやくざの親分を演じていて、昔に回帰したみたい。こちらは最初は悪役、最後はいい人というFahadh Faasilとは逆パターンだった。字幕がなかった。最近のGaruda Mallはだめだ。
#99「Tiger Zinda Hai」Ali Abbas Zafar/2017/インド/Dec. 25/INOX Lido
『タイガーは生きている』というなかなかナイスな題名のSalman Khanのクリスマス新作は『Ek Tha Tiger』(2012; 未見)の続篇で、ランボー的Salmanの再来。『Take Off』と同じ背景設定と聞いて悪い予感がした。『Take Off』が悪いというのではなく、それにSalman Khanが関わることにより単純な剛腕ヒーローものに変化することを恐れたのであるが、事態はまったくその通りであった。Katrina KaifがTiger (Salman Khan)の奥さんで、子供までいる設定。彼女のアクションは悪くなかった。物語が物語なだけにItem Numberはなく、エンディングロールでダンスを披露するだけだった。唯一面白かったのは、ISを敵としてインドとパキスタンの工作員が協力するところで、珍しくパキスタン人に下まぶたのアイラインがなかった。そんなところでも看護師を救って凱旋する際に車に掲げた両国の国旗の大きさが著しく違う(もちろんインドのが大きい)ことにがっかりしたのではあるが。無人爆撃機、ICBMと同じくらい恐い非道な武器だな。
#98「Railway Children」Prithvi Konanur/2016/インド/Dec. 24/PVR: Forum Mall★
家出少年を使って鉄道でインチキボトルウォータービジネスを営む“Solution Gang”と呼ばれるグループで働くJolluとRajuを中心とした日常、あるいは非日常を描いた作品。知り得ないインドの裏社会を垣間見ることができる。まったく予想していなかった結末にヤラレたので星ひとつ。Solutionというのはシンナー(接着剤)と思われる。Solutionを吸うことで安眠を得る少年たち。ボトルウォーターはインチキでないか確認した方がいいとインドに来たてのころよく言われたけど、これまでインチキに当たったことはなく、そんなものがあるのかと疑っていたのだけど、現実にはあるらしい。でも、列車の乗客が商品を見もせずにボトルを10ルピー札と交換するのでやはりそういうことはレアなのだろうな。出演者のほとんどは素人とのこと。それであれだけの演技を見せるのは、素材がいいのか、監督の腕なのか。元々Mumbai International Film Festivalで上映されたこともあって、安心の英語字幕付だった。
#97「希望のかなた」アキ・カウリスマキ/2017/フィンランド/Dec. 17/ユーロスペース○
安心して観ることのできる監督のひとり、カウリスマキの新作35mm上映最終日にかけつけた。画面のノイズがなんだか嬉しい。主人公は、爆撃により家と家族をなくしてアレッポを脱出し、途中で妹とはぐれながらヘルシンキに流れてきた青年。一方、妻と別れ洋服やを畳んでレストラン経営を始めるおじさんがいて、青年がこのレストランで働き始め、なんとか妹を捜し出そうとする。難民ものは普通に作ればメッセージ性が高くなるものだと思うけど、普通にカウリスマキ節である。そういう意味でもきわめて小津的な監督だ。曲がり角を脚と手を揃え、並んで曲がるふたりなんて笑っちゃうよ。シーン内で歌い演奏するように設定されたたくさんの音楽もあいかわらず、いい。ただ、寿司ネタはいかん。あそこは日本人は白けるし、外国人が見ても意味わからないだろう。青年が、相手を同郷というか中近東出身者とみると“サラーム”、“シュクリヤ”と自然に話しかけるのがなぜだか嬉しかった。
#96「Richie」Gautham Ramachandran/2017/インド/Dec. 10/Cinepolis: Binnypet Mall
撃沈したカンナダ映画『Ulidavaru Kandanthe』のリメイクで、Nivin Paulyのタミル映画デビュー作。今回も字幕なしで撃沈、チーン。オリジナルでRakshit Shettyが演じていた役がもちろんNivin Pauly。Rowdyとして堂に入っていた。印象の薄かった女性記者役はカンナダ映画界からShraddha Srinathを起用。存在感はあったけど、彼女である必然性がまったく感じられない。タミル映画なのにいろいろ俳優を輸入しているのはなぜだろうな? シナリオはほぼオリジナルを踏襲していると思われるのだが、いかんせん撃沈した作品ゆえ、ゼロから出発、そしてまた撃沈と相成ったわけである。ストーリー&会話理解はともかく、映像はよかった。火力発電所が印象的だったし、Nivin Paulyの背後の夕焼け(?)とかブリリアント。Sri Krishna Janmashtamiの虎ダンスの描写も迫力あった。Nivin Paulyのダンスもね。そういえばPrakash Rajが出てたけど、最近出番少ないね。『Ulidavaru Kandanthe』はうちにDVDがあるので、あとで観る。
#95「Mufti」Narthan/2017/インド/Dec. 9/INOX: Garuda Mall○
SrimuraliとShiva Rajkumarが共演。“Roaring Star”なのかSrimurali。相変わらず睨む顔がかっこいいし、アクションもよかった。一方で前半に挿入される、インド映画ではよくある大勢が踊る前を歩くだけのダンス(?)シーンはトホホ。でも、もっとトホホなのはおなじみのChikkannaとSadhu Kokila、そしてShanvi Srivastavaが出てくるコメディーシーンで、ない方が締まるのになあと思ってしまう。この辺りは新人監督の未熟さかな、と思ったが、彼らが出てくるシーンをすべて削除しても何の支障もないつくりになっているので、もしかしたら意図的かもしれない。Mangaloreを舞台にした、犯罪組織に潜入するCBI捜査官(Srimulari)が組織のボス(Shiva Rajkumar)に徐々に共感するようになる展開は悪くない。Shanvi Srivastavaは『Tarak』での印象と同じでハイテンションな苦手タイプ。同作に善人で出てたDevarajが悪役。Prakash Belawadiがいい役だった。Srimulari、髪の毛やばそう。字幕ないのがつらかった。ほうだー。  
#94「Thiruttuppayale 2」Susi Ganeshan/2017/インド/Dec. 3/PVR: Forum Mall○
Amala PaulがBobby Simhaとラブラブの夫婦を演じる、でも映画の内容はサスペンス。このラブラブが巷のサイバー犯罪ものとは一線を画す要素。Bobby Simhaは上司の特命で電話通話を盗聴するSpyderみたいな警官役で、プリンスと違うのは得た情報を私腹を肥やすのに使っていること。しかも奥さんには内緒である。その奥さんはFaceBookに夢中で、セルフィーをバンバン投稿。“お友達”と親しくなってしまい、この友達(Prasanna)がダイレクトメッセージのやり取りを元にAmala Paulを脅し始め、それを盗聴で察知したBobby Simhaが奥さんを守るためPrasannaとサイバー、リアル両面で戦い始める。ちょっと長すぎる気はするものの、期待を裏切る面白さだった。Bobby Simhaを手伝う若い男がNayantharaのファンで、彼女に会わせてもらおうとPrasannaのシステムのクラッキングを試みるのが微笑ましい。Amala Paulはスマホ持ちなのに、なぜかFBはパソコンでしかやらない。変でしょ。字幕あった。最近のタミル映画は優秀である。
#93「時はどこへ?」Walter Salles, Aleksey Fedorchenko, Madhur Bhandarkar, Jahmil X.T. Qubeka, 賈樟柯/2017/ブラジル=ロシア=インド=南アフリカ=中国/Nov. 26/有楽町朝日ホール(FILMeX)○
賈樟柯プロデュースのBRICSオムニバス。この順序でやるのかと思いきや、ちゃっかりCがトリだった。賈樟柯パートがもちろん最注目なのだけどWalter Sallesにも期待していた。が、ランチで飲んだビールが災いし、この最初のパートはところどころ見逃してしまった。津波ならぬダムの決壊で街が壊滅し夫を亡くす女性は魅力的だったのだけど…。ロシア篇からは覚醒。これと南アのは不思議な感覚の映像で結構惹かれた。旧炭田かなんかの隔絶された小屋に住む『動くな、死ね、蘇れ!』の二人が大きくなったような男女。南アのは『ブレードランナー』の影響大だが、オチは懐かしいSF小説の香り。一方、インド居住者としてはインド篇にも触れねばならないが、ルフトハンザ航空のCFを僕には思い出させる、たわいもない出来であった。で、賈樟柯。冒頭の胡金銓的アクションで血がざわめく。その後、おなじみの趙濤。彼女のファニーフェイスが前向きな表情をつくると革命劇っぽいといつも思う。わざとかな? 映像もさすがの美しさで満足。
#92「暗きは夜」Adolfo Alix Jr./2017/フィリピン/Nov. 26/有楽町朝日ホール(FILMeX)○
ドゥテルテ大統領が始めた麻薬戦争の中で、元売人夫婦を含む麻薬組織に拘わる人間たちが自らが犠牲になるのを避けるために仁義なき戦いを始める、限りなくリアルタイムな生々しいフィクション。結局、無実(?)の一人息子は殺され、組織とグルの警官により夫婦も消され、さらし者にされる。無実の人が誤って断罪されることがないよう守るのが法律であり、これが保証されない超法規的な殺人などどいうものが許されるはずがない。のであるが、一定の(あるいはそれ以上の)支持を現政権が得ているのが恐ろしい。そんな無法な国には絶対に行かないぞ。映画では、麻薬問題のほか外国人誘拐・身代金強奪・人質殺害の問題にも触れているのだが、日本人の夫をもつという謎の女が“Sugiyama〜”と殺されたらしい夫に錯乱する様子は全体からすると浮いていたように思う。上映後のQ&Aでは当然のように製作、上映に対する圧力について質問が出た。主演俳優は大統領の友人だそうだ。へー。でも、国内上映には困難がありそうな様子。健闘を祈る。
#91「青春の氣流」伏見修/1942/東宝/Nov. 23/フィルムセンター○
こちらも原節子選集の一篇。戦時色が強くなっている。主演の大日方傳演じる航空機設計エンジニアに恋心を抱く、専務(新藤英太郎)の娘が原節子。大日方の同僚のテストパイロットに藤田進。真面目な大日方傳はお嬢様の原節子のアプローチに動じることなく、想い続けた庶民の山根壽子を選ぶという、よくあるパターンのお話である。原節子は令嬢特有のわがままさを発揮しながらも引き際は潔く、『東京の女性』のまだ自由を残した空気から男尊女卑の軍国主義的な世相への変化が感じられる。新型旅客機が製作されていく過程をかなりマニアックに描写しているのが興味深いが、この辺りは助監督の黒澤明の影響かもしれない。大日方の設計した旅客機の初飛行試験はどこかの空港という設定だが、建物は明らかに川奈ホテルだった。それにしても、最も美しい時期が戦前〜戦中に重なった悲劇の女優・原節子。なんとも惜しいことだ。大日方傳出演作はこれまで何本も観ているはずだけど、まったく顔が憶えられない。顎の瑕が頼りだな。
#90「東京の女性」伏見修/1939/東宝東京/Nov. 23/フィルムセンター○
超久しぶりにフィルムセンターに見参。老人臭に圧倒されながら原節子選集を。原節子は主演(なぜか他の出演陣はしょぼい、というか知っているのが一人もいなかった)で、自動車販売会社に勤めるタイピスト。恋人は同僚のセールスマン。お金の必要性から自分もセールスマンに転向することを決意する。普通の女性からばりばりのキャリアウーマンに変身するさまをカメラは追う。戦後作品で見せるようなワンピースからジャケットにネクタイ姿への変身はなかなか斬新。大日本自動車は数寄屋橋交差点に面したソニービルがあった場所に建っていたようだ。朝日新聞や東芝ビルがよく見えた。恋人との散歩時には第一生命ビルも。箱根へのドライブもあってなかなか楽しい。しかし、同じ会社内でセールスマン同士が陰湿に顧客争奪戦をする状況は本当にあったのだろうか。ちょっと僕には想像ができない。最後はちょいとハラハラしたけど、笑顔で終了。音楽担当は服部良一。『節子の歌』とか『處女の歌』とか挿入歌あり。ダンスはなかった。
#89「密偵」キム・ジウン/2016/韓国/Nov. 18/シネマート新宿○
韓国映画はあいかわらず元気がいい。併合後の 京城(ソウル)で生き延びるため警官になったソン・ガンホが、再独立を目論む義烈団に(表?向き)消極的に協力する二重スパイもの。男優陣は豪華で、ソン・ガンホのほか、『Train to Busan』のコン・ユ、誰でも知ってるイ・ビョンホンなど。また、鶴見辰吾が渋く残酷な総督府の警務部長を演じている。物語上女優の出番はなかったが、紅一点のチェ・ユファはなかなかよかった。舞台は途中から上海に移り、さらに安東発京城行きの列車へ。この列車内のサスペンスがスリリングだった。おむつ替えシーンのリアルさにも冷や汗かいた。時代背景から登場人物がオフィシャルには日本語を喋る。ソン・ガンホ、うまい。さすが俳優。日本に対する抵抗、反撃というナショナリズムをベースラインにしながらも、その空気はやや希薄で、エンターテイメント性が勝っているように感じた。朝鮮総督府の建物(映画内はもちろんCG)は台湾総督府のそれ(現総統府)よりかっこいいね。
#88「Qarib Qarib Singlle」Tanuja Chandra/2017/インド/Nov. 12/INOX: Mantri Square○
Parvathyもボリウッドに進出。『Take Off』に続く主演作で、実力派Irrfanとの共演である。35歳の未亡人(失礼な呼び方だな)キャリアウーマン(なんかこれも失礼)が友人の言葉に不安になり、出会い系サイトに登録、ちゃらちゃらしたIrrfanと会う。でなんでかわからない(ここ無念)けど二人でいきなり旅に出る。国内の有名どころ(?)を何ヶ所かインシデントを重ね巡りながらふたりの間が徐々に詰まってくる、というお話。会話は追えないが、ふたりの個性がうまく出ていていい感じのラブコメ(といっていいと思う)に仕上がっている。Parvathy、ヒンディー語うまい(別に誉める必要もないか)。彼女は美人ではないしぼちゃぼちゃしてるけど、なかなか魅力的。メガネを外すようになってから特によくなった。アップにした顔は若い。まあ実際にはまだ29歳だもんな。それにしても、Irrfanの過去を追っているのであろう旅先でのエピソード、どれも意味不明だった。それに、例えばSikkimとか見せられても全然行きたいと思えなかったなあ。
#87「Aramm」Minjur Gopi/2017/インド/Nov. 11/INOX Lido○
二度も公開延期になってやきもきしていた“Lady Superstar” Nayantharaの新作。バンガロールでも無事公開されてよかったよー。Nayanのしかめっ面に釘付けの2時間である。ポニーテールに地味なサリー姿のDistrict Collectorが地方で起こった少女の井戸落下事故で救出作戦の指揮を執る。笑顔まったくなし。クールだ。最後に少女が救出され、泣き顔になる。ヒューマンだ。井戸に落ちた少女の兄ふたりは『Kaaka Muttai』の実ちゃん、勇ちゃんだったらしい。成長したね、って、ちょっと待て。ならば母親役はAishwarya Rajeshでないといかん。ま、今回の母親役(Sunu Lakshmi)も悪くなかったけどね。しかし、字幕があったら、評判のよい台詞も堪能できたのに。そして、ロケットの発射と井戸からの少女救出の対比はインド最先端の発展と取り残された地方の実態の格差を示すものだろうが、その意味も明確にわかっただろうに。残念だ。そうそう、タミル映画恒例の“Smoking causes cancer. Smoking kills. Drinking is injurious to health.”もNayanだった。
#86「Ittefaq」Abhay Chopra/2017/インド/Nov. 5/PVR: Forum○
『世界の果てまでイッテFAQ』ではない。“इत्तिफाक़”は偶然という意味らしい。殺人推理物。経験上このジャンルの作品は字幕がないと皆目話がわからないので、Wikiで予習して行った。これがまちがい。ばりばりネタバレだったため、観ていて面白みがない。最後のどんでん返しとか、“え、そうなの?”という驚きがほしいところだが、そういうのがまったくなくトホホである(自己責任)。主演は、Sidharth Malhotra(容疑者)、Sonakshi Sinha(容疑者)、Akshaye Khanna(捜査官)の3人。Akshaye Khannaは『Mom』につづく刑事役で、今回もなかなかよかった。Sonakshi Sinhaはセクシーな格好をしているのにお色気がなかった。出番は少なかったけど刑事の奥さんを演じたMandira Bediの方がよかったかな。Sidharth Malhotraが作家というのが肝だが、あそこまでできれば作家というより役者。彼がロンドンに向け旅立つのはJet Airways。定刻出発はないので、本来ならそこで捕まるはずである。でもフィクションだからしかたないね。
#85「Mersal」Atlee/2017/インド/Nov. 4/PVR: Forum○
VijayのDiwali映画。人気俳優だから予算も大きく、よって女優はKajal Aggarwal、Samantha、Nithya Menenという一線級3人投入の豪華版である。内容はインドの医療システムを痛烈に批判するもので単なる娯楽作品に終わらせない意欲が見られる。女優が3人なのでVijayもむりやり3役。うち兄弟は歳が結構違うはずなのに背格好もヘアスタイルもひげも同じといういい加減さ。なことも含め、シリアスなテーマにもかかわらず楽しめ、3時間近い長尺を感じさせない。ダンスシーンもふんだん。もちろん、ルンギ、サリーで踊るタミルダンスだ。気になるのはタミル礼賛のメッセージが強い点。Kannadigaは怒り出しそう(カンナダ主義者はタミル映画なんか観ないか)。Vijayを追及する刑事は“Kattappa” Sathyarajだった。女優3人の中での注目はやはりNithyaちゃんで、出産前と出産後の違いがよくわからない。『Iru Mugan』と撮影時期が近いのかな。Madurai(という設定)のアールデコな映画館が渋かった。実在するんだろうか? 英語字幕あった。
#84「Tarak」Prakash/2017/インド/Nov. 1/INOX: Garuda Mall○
『Mersal』も気になったが、Kannada Rajyotsavaなのでカンナダ映画をチョイス。思い入れがないのか本人がつぶやかないのですっかりout of scopeだったSruthi Hariharan出演作。主演は“Challenging Star” Darshanである。Sruthiのほかにもうひとり相手役がいてShanvi Srivastava(初見)が演じていた。ほとんど悪者が出ないテルグ映画みたいなファミリーもので、前半の舞台はDarshanの住む欧州(イタリアとかスイス)、後半は祖父に会いに行くバンガロールだった。でもDarshan、アメフトやってたな。イタリアでもやるのかな。タッチダウンのときボールを地面に着けてた。ラグビーじゃないよ。Darshanの家族がMysore出身だと聞いて“Mylari Dose”、Bangaloreに移ったと聞いて“CTR Dose”とすぐさま反応するShanvi Srivastavaがおかしい。このはじけ役、当初はRashmika Mandannaが予定されていたらしい。彼女だと違うキャラになっていたと思う。Darshanは伊吹吾郎に似てるな。Sruthi Hariharanは相変わらずきれいで満足だ。
#83「ヤスミンさん」楊毅恆/2017/マレーシア/Oct. 28/TOHOシネマズ六本木ヒルズ(TIFF)○
脂ののりきった時期にこの世を去ってしまったヤスミン・アフマドを追想するドキュメンタリー。元々は行定勲の『鳩 Pigeon』のメイキング・フィルムだったはずのものが、こうなった、というおもしろい製作経緯があるらしい。なのに、監督がヤスミン・アフマド作品を3本しか観ていないというのも笑える。『鳩』の製作風景に加え、彼女の生前の動画がときどき挿入され、『鳩』に出演した、ヤスミン・アフマド映画のミューズあるいは彼女の分身、シャリファ・アマニなどへのインタビューが行われる。撮影場所はペナン。懐かしい風景が見られる。『鳩』観てないけど、機会があれば鑑賞したいな。上映後に監督、行定勲監督、シャリファ・アマニを迎えてのQ&Aあり。監督はその辺にいそうなやや太った陽気なあんちゃん。いま何歳か知らないけど、シャリファ・アマニがとてもお茶目だった。失ったものは大きいけど、残された作品は至宝だよ。行定監督の言うとおり、ディジタル化が望まれる。
#82「サムライ」ジャン=ピエール・メルヴィル/1967/仏=伊/Oct. 28/TOHOシネマズ六本木ヒルズ(TIFF)★
フレンチ・ノワールといえばメルヴィル。本作ではアラン・ドロンがクールな殺し屋を演じる。ナイトクラブで起こる殺人。妖しいピアニスト。犯人を追う警察。依頼人とのかけひき。まさにサムライのような死に様。シンプルにかっこいい。香港ノワールへの影響はさもありなんだし、同時代の鈴木清順、石井輝男などとも共鳴する。めしは炊かないが。アラン・ドロンが警察の追跡から逃れるために使うパリ・メトロの描写がいやにマニアック。50年後のいまでもその足跡を辿ることが可能だ。1960年代にはもう動く歩道があったんだな。というか、すでに長い乗り換え時間を要するほどのメトロネットワークができあがっていたということだ。警察が使うハイテク機器が実用化されていたのかにも興味があるところ。アラン・ドロンの恋人役は当時奥さんだったナタリー・ドロン。ファム・ファタル的にきれい。僕にとってアラン・ドロンから連想するものといえば太田裕美。最近見ないけどお元気でしょうか?
#81「ニッポン無責任時代」古澤憲吾/1962/東宝/Oct. 23/神保町シアター○
クレージーキャッツというか植木等主演第一作。おなじみのスーダラ節とか青島幸男作詞の歌が盛り込まれた能天気なコメディー。明らかにどこかのステージで歌い踊っているのに、終わってみればそれは割烹のお座敷芸だったという大胆な演出。サラリーマン平均(たいらひとし;植木等)のお相手はお姐ちゃんトリオと当時呼ばれた中島そのみ、重山規子、団令子の3人。下宿の奥さんに中北千枝子。舞台の大平洋酒の乗っ取りが物語の軸だが、そこで労働組合が結成されるなど時代背景を反映したエピソードがある。社長ハナ肇の奥さんは久慈あさみ、息子に峰岸徹(若い)。峰岸徹の披露宴が磯子の横浜プリンスホテル(旧館)で行われていた。貴賓館ってまだあるんだな。この建物のほか、東京オリンピック前の東京の街並みが興味深い。『喧嘩太郎』でも見られる恵比寿駅がまた出てた。植木等といえば、僕にとってはクレージーというよりTV『ハングマン』のエロ坊主。あれもよかったが全盛期の植木等もぶっ飛んでいるな。
#80「ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ」メアリー・マクガキアン/2015/ベルギー=アイルランド/Oct. 21/ル・シネマ
Le Corbusierが有名な日本で客を呼ぶため変な邦題が付けられているが、本作の主人公はEileen Gray。最近一般公開になったコートダジュールのE.1027の建築をめぐるEileen Grayと恋人Jean Badoviciの関係、そしてLe Corbusierとの確執が、奇妙な演出で語られる。監督はアイルランドのひとでEileen Grayの出身地だから題材に選んだのだろう。カメラに向かい独白するコルビュジエにウンザリ。それでも最後まで観続けられるのは、ちゃんと本物のE.1027で撮影されているからだ。映画そのものについてこれ以上記すことはないが、虐げられた女性建築家を中心において、コルビュジエはとことんいやなやつに描かれている。実際そうだったのかもしれない。それでもコルビュジエが卓越した建築家だったことはまちがいない。独自のスタイルをもっていた。僕はスタイルに惹かれる。小津安二郎も然り。E.1027を訪れる機会はくるだろうか。ユニテ・ダビタシオンと一緒に見に行きたいなあ。フランス映画のSanjay Mishra、Dominique Pinonを久しぶりに見た。
#79「パターソン」ジム・ジャームッシュ/2016/米=独=仏/Oct. 21/角川シネマ新宿★
Jarmuschの新作が観られたのは今回の日本出張の一番の収穫。『ストレンジャー・ザン・パラダイス』から33年かあ。スタイルは変わらない。反復とズレ。市バスの運転手Paterson (Adam Driver)の日常。朝のベッド。シリアルの朝食。毎日が最悪のインド人の同僚。一日一詩。一日一双生児。愛する妻(Golshifteh Farahani)はモノトーンな丸模様が好きでカップケーキ作りが得意でカントリー歌手に憧れる不思議ちゃん。がつくる不思議な夕食。カンヌでパルム・ドールじゃなくてパルム・ドッグを獲ったという愛犬ブルドッグMarvinとの夜散歩。行きつけのバーでビールとマスターとの会話。滝の見える公園。23系統バスで走るPatersonの街。乗客同士の会話。何も起こらない、あるいはささやかなできごと。大切な詩の創作ノートをMarvinがめちゃめちゃにしてPatersonの心がざわついても、『ミステリー・トレイン』の永瀬正敏がやってくれば、新しいノートでまたいつもの生活が、一週間が始まるのである。A-ha。至福。
#78「Solo」Bejoy Nambiar/2017/インド/Oct. 8/PVR: VR, Bengaluru○
4話構成のオムニバス。水、風、火、土がテーマ。火のパートにSruthi Hariharan、土のパートにNeha Sharmaが出演している(ので観に来た)。主演はDulquer Salmaan。要はこの人気俳優の独壇場なわけだが、オムニバスとはいえ全体としてまとまりを欠いていたように思う。水のパートのヒロインDhansikaは『Kabali』でRajiniの娘をやってた女優だな。火のパートはSivaとVishnuの対決という僕のような神話素人でもわかる構図で、VishnuをPrakash Belawadiが演じていた。SruthiはSivaの愛人かなんか。出番は少なく、声は吹き替えのようだったが、きれいだったよ。で、土のパート。南インドに来たNeha Sharmaが何語を喋るのか興味があったのだが、英語メインで、1/4程度がマラヤラム語。ここが吹き替えかどうか判断できないくらい自然に聞こえた。演技も演技じゃない普段の、つまりInstagramで見るNeha Sharmaのように見えた。主人公の、話を混乱させるどうしようもない父親役にNassar。この話のオチは笑えた。
#77「Blade Runner 2049」Denis Villeneuve/2017/米/Oct. 7/INOX: Mantri Square★
LDを確か3枚もっていた、記憶に関する傑作『Blade Runner』の35年後の続篇は、期待に応える出来だった。舞台はLA, San Diego, Las Vegas。前作の“特撮”時代と異なりCGバリバリ。カオスな街のキッチュさは減少(30年経ってカオスさが薄れた?)したが、日本語、中国語、韓国語、ヒンディー語など多言語が混在する。“2つで十分ですよ”のおじさんはいなくなり、すべて自動販売機になった。話は、DeckardとRachaelの間に子供ができていたというところから、Replicantの自己増殖を恐れる人間と、自分の子供がほしいReplicant製造会社のボス(Replicant)と、Replicantの解放を企てる地下組織の間で、LAPDに勤めるBrade RunnerであるReplicant Joe (Ryan Gosling)と、Las Vegasに隠れていたDeckard (Harrison Ford)が動き、Joeの記憶の秘密が明かされていく。10月6日がキーワード。Replicant Joeのホログラム恋人(こういうの作れそう) Joi (Ana de Armas)がとても可愛かった。製作会社SONYの映画内宣伝が露骨。IMAX 3D。字幕なかった。
#76「Spyder」AR Murugadoss/2017/インド/Oct. 1/PVR: Phoenix Market City, Pune○
世の平和を守るため事件を未然に防ぐという使命感のもとに、月4万ルピーの給料で警察に勤め市民のケータイ通話を盗聴するプリンス。きわめて危険な思想である。という現実からの拒絶反応はさておき、怪獣特撮あるいは超人ヒーローものだと思えば結構楽しめる、テルグ臭バリバリ(とはいえファミリー要素は控えめ)の作品。Wonderlaのジェットコースターとか、巨岩が街を遅う映像とか(摩擦はないのか?)、なんでMahesh Babuがいつものへらへら顔と普段着で対峙できるのか、もう笑っちゃうしかないのである。プリンスMaheshの相手役はRakul Preet Singh。先日インド人とお気に入り女優の話で盛り上がってたら出てきた名前だ。悪くないけど(僕の好みじゃないし)どこまで伸びるか。物語の軸は、無差別殺人犯との攻防。墓場で遺族の泣き声を聞きながら育ち、ひとの悲しむ姿を愉しむためにひとを殺すいやな奴である。なぜ人殺しはいけないのか、という根源的な問いへの答はなかったが、これが吹っ切れてかつ権力のあるやつは恐い。
#75「Bhoomi」Omung Kumar/2017/インド/Sep. 23/PVR: Market City○
レイプに対する復讐という、悲しいことに社会的背景からインドでは最近よくある枠組だが、父と娘の関係にフォーカスしたという点では新しい作品。インドのAudrey Hepburn、Aditi Rao Hydariが娘Bhoomi、出所したSanjay Duttが父。荒々しい父親が剛腕でレイプ犯を倒すのかと思いきや、もう歳だからかSanjay Duttのアクションは限られていて、その分娘も一緒に働いて復讐を果たしていく。裁判シーンが話を中弛みさせているように感じたが、終盤の復讐シークエンスはなかなか見応えがあった。言及するまでもないが、Aditi Rao Hydariは相変わらずきれいで、ダンスはうまいし、歌も唄うよ。か細さがないところはインド人だな。ダンスといえば、またSunny Leoneが出て踊ってた。あれで結構ギャラもらってるんだろうな。舞台はAgraでSanjay Duttは靴屋を営んでいた。背景としてもちろんTaj Mahalが何度も出てくる。ラストシーンの巨大な階段井戸が圧巻だったけどあそこもAgraだろうか?
#74「Kingsman: The Golden Circle」Matthew Vaughn/2017/英=米/Sep. 23/PVR: Pepsi IMAX, Koramangala○
Country road, take me home♪ で始まって、あれれ?と思ったら、今回の舞台はアメリカ、そしてイタリアへ。英国内のKingsman組織は序盤で壊滅してしまうが、Colin Firthは復活。Kingsmanエージェントの女の子、可愛かったのにさっさと死んじゃって残念。でもアメリカのStatesman組織のMalcolm Xみたいなメガネの女性もきれいだったよ。というわけで、KingsmanはStatesmanと姉妹関係。世界の麻薬販売を牛耳るJulianne Mooreに挑む。Julianne Moore(怪演)はファンキーで、アジトが60年代アメリカンドリーム+ハイテク満載。で、脅迫されるアメリカ大統領も狂ってる。露骨なやり方は避けながらもDonald Trumpを感じさせる演出だった。Julianne MooreはElton John(ホンモノ)を拉致し、アジトの劇場で演奏させるというぜいたくぶり。原作コミックがあるのか。どいうことで、次作もありそう。面白いので『007』と並ぶ人気シリーズになれると思うよ。せっかくのIMAXだったけど、効果は低め。英語・米語字幕あった。
#73「Lucknow Central」Ranjit Tiwari/2017/インド/Sep. 17/PVR: Forum○
刑務所でバンドといえば『Qaidi Band』が気になっていたのだけど、公開時の優先度が低かったため観ていない。で、今度はこれ。これまた優先度は高くなかったのだけど、他にいいのがないこともあって、これを観た。安定のFarhan Akhtar主演。共演に『Happy Bhag Jayegi』のDiana Penty。殺人の冤罪でLucknowの刑務所に入れられたミュージシャン志望のFarhan Akhtarが、刑務所対抗で行われる受刑者バンドを結成する。刑務所ものではおなじみの主によるリンチや看守による差別に遭いながらも、徐々に仲間を増やしていきクライマックス(コンテスト)を迎える、そして脱獄も絡むこちらもおなじみの展開。というわけで、あるレベルは押さえた普通の映画。字幕ないゆえ、Diana Pentyがなぜバンドを支援しているのかが残念ながらわからずじまい。最後は冤罪が晴れたFarhan Akhtarと結ばれるというありきたりの予想も外れた。あ、そうそう、LloydのUnisex washing machineのCFに出てるおっちゃんが端役で出てた。
#72「Thupparivaalan」Mysskin/2017/インド/Sep. 17/PVR: Forum○
タミル若手俳優ではDhanushと並んでなかなかいいVishalの新作。探偵ものである。暑かろうに、常にハンチングにスカーフという気障な格好で、アメリカのビッグITプロジェクトの入札に絡んだ大がかりな殺人事件に挑む。犯人グループの残忍さがエグい。よかったのはこのグループのひとりAndrea Jeremiah。黒レザーのボディコンスーツに身を包んだクールな殺し屋が似合ってた。いつものサブヒロインよりこういう役がいいんじゃないかな。さらによかったのは、Vishalにつかまるスリで彼に雇われてメイドになるAnu Emmanuel。誰これ?美人である。そのうちビッグになりそう。中華レストランRed Dragonでの戦いは、香港電影というか成龍式のアクションそのものだった。それにしてもVishal、脚長い。舞台はChennaiだが、終盤はアンダマンへ。なんかわざわざ行って撮る意味がよくわからないシーンだったな。Keralaのバックウォーターで済ませばよかったんじゃない? 期待してもいなかったけど、やはり字幕なかった。
#71「Simran」Hansal Mehta/2017/インド/Sep. 16/INOX: Garuda Mall○
Kangana Ranaut主演、US舞台のクライム・コメディー。Atlanta Hiltonでルームサービススタッフとして働くNRIのPraf(Kangana Ranaut)が、たまたま出かけたLas VegasでBeginner's Luckからギャンブルにはまり、やくざに金を借りて返せなくなり、銀行強盗“Lipstick Bandit”になる、というめちゃくちゃなストーリー。破滅に向かうのかと思いきや、話は意外な方向に。実話に基づいているらしい。このめちゃくちゃなヒロインを演じられるのは現在のボリウッドには彼女しかいない。弾けてて、うまい。アメリカらしく、カーチェイスシーンがあった。そして、インドらしいオチがあった。『Tanu Weds Manu Returns』でも思ったけど、Kangana Ranautはなぜいつもソバージュなんだろう? ストレートヘアにすると、とてもかわいくなるのに。わざとそう見えないようにしてんのかな? ちなみに、彼女の走り方はヘンだ。アスリート役は無理だな。Atlanta、25年前に行ったな。泊まったのはTravelodgeだったけど。
#70「Sahaj Paather Gappo」Manas Mukul Pal/2017/インド/Sep. 10/PVR: Market City○
ベンガルの田舎に住む貧しく幼い兄弟のpulao食べたい大作戦物語である。同じくNational Film Awardを獲ったAishwarya Rajeshの『Kaaka Muttai』と比較せざるを得ない、損な映画。こちらのお母さんは影が薄くてしかも恐いのも損。Chhotu(勇)ちゃんとGopal(実)ちゃんはお父さんが交通事故に遭って働けないためひもじいのだけど、ふたりで遊ぶことで空腹を紛らわせている。そんなときに近所のお屋敷でJanamasthamiのお祝いでpulaoなどのごちそうがふるまわれるとの噂を聞く。Pulaoを食べたことのないChhotuはこれを食べたくて夢にまで見る。ところが、貧乏な(おそらくカーストも下)ふたりの家には招待が来ない。さて、どうする、勇ちゃん…。子供の世界はいつでも無邪気であって、これを見る大人もそんな世界(自分の過去)に憧れを持つのである。ベンガルの自然も美しかった。なのに、2列前の女の子3人組は国歌のときにはスマホの写真見てるし、始まったらひとりがスマホでスクリーンを数回撮ってたし、ちょっとハラハラした。
#69「Daddy」Ashim Ahluwalia/2017/インド/Sep. 10/INOX: Garuda Mall○
われらがAishwarya Rajeshがボリウッド・デビュー。主人公である実在の元やくざ政治家Arun Gawliの妻Ashaという大役である。ヒンディー語も地声で堂々と演じていた。でも、こうしてボリウッドで見るとやはり南インドの女優って感じだね。やはりタミル映画で活躍してほしい。さて、のし上がっていく手段がえげつない主人公を演じていたのはArjun Rampal。イメージを覆す汚れ役はなかなか堂に入っていた。彼を執拗に追う警官にはNishikant Kamatという知らない俳優。この警官というか警察がArun Gawliを追い込もうとする手段がまた卑劣で、これが現実だったと思うと恐ろしくなる。敵を次々と葬り自分は政治家に収まる、まさに東映実録ものであるな。実在の本人はいま無期懲役で刑務所にいて上告しているらしい。本人もこの映画、塀の中で観るんだろうか。Farhan Akhtarのカメオ出演はちょっぴり(だからカメオなのだろうけど)。もう少し活躍してほしかった。それにしても、ボリウッドにも英語字幕が欲しいとつくづく思う。
#68「Mission China」Zubeen Garg/2017/インド/Sep. 9/Cinepolis: Binnypet Mall○
誘拐された少女の救出作戦。監督・主演はミュージシャンのZubeen Garg。期待を裏切って字幕がなかったので細部がよくわからないが、アッサム語だけじゃなくてヒンディー語やら英語が混じっており、それらの断片を追ういつもの鑑賞環境となった。人質が囚われている中国国境に近づくと中国人ゲリラ(?)も出てきて“你是誰?”とか訛った発音で言ってた。言語問題はともかく、映画自体はまあ予想通り、ナルシストな主人公が仲間を伴ってズンズンと敵地に乗り込み、ドンパチ、ドッカーンと敵Lamaを倒し、人質を奪還する。途中のロマンスやギャグはしょうもない。戦闘シーンは、石井輝男のごとく手を飛ばしたり首をちょん切ったりカルトな世界が展開。Zubeen Gargは人気があるらしく、狭いながらも劇場は満席状態でワイワイ盛り上がっていた(みんながAssameseには見えなかったけど、言語問題はないのだろうか…)。序盤、終盤の舞台はGuwahati。行ったの何年前だっけ? 雰囲気は、記憶とほぼ同じだったな。
#67「Njandukalude Naattil Oridavela」Althaf Salim/2017/インド/Sep. 3/INOX: Garuda Mall○
Nivin Pauly主演・プロデュースのOnam映画。Cochinを舞台に、母親(Shanthi Krishna)の乳がん発病をきっかけにした家族の動揺を描く。重いテーマにもかかわらず、鑑賞後なんとなくハッピーになれる。抗がん治療のために病院に付きそうNivin Paulyが、父親ががんの女性(Aishwarya Lekshmi)に出会って恋に落ちるとか、暗い話と並行してこういうことが起こるのが現実というものである。Nivin Paulyの妹を演じていたAhaana KrishnaはNazriya Nazimをきつくしたような顔で、血縁はなさそうだけど仲はよさそうである。このきつさ加減は僕にはつらく、やはりNazriyaちゃんの復帰を切に願うのであった。抗がん治療で髪が抜けてそれを心配する家族が次々に担当医に電話をかけるシーンで、担当医がニュートンの第三法則(作用・反作用の法則)を持ち出して説明するのがおかしい。またCochinのCinepolisが出てきたけど、あの街にはここしかシネコンないのかな? 英語字幕がなかったのは納得いかん。
#66「Baadshaho」Milan Luthria/2017/インド/Sep. 3/PVR: Forum○
政敵が操る軍に隠し財宝を奪われたマハラニ(Ileana D'Cruz)がボディガード(Ajay Devgn)に奪還を依頼し、それを受けたボディガードは3人の仲間(Emraan Hashmi, Esha Gupta, Sanjay Mishra)を呼びつけ作戦を開始する。突出したスタアひとりではなく、それなりのひとを何人も集めてなんとなく豪華。Emraan Hashmiの登場シーンにはSunny Leoneもカメオ出演するが、70年代ファッションに身を包んだEsha GuptaがセクシーさでSunny Leoneに勝っていた。本作でよかったのはそれくらいかな。特に残念なのはシナリオで、ヒンディーを解さない僕の理解が足りないのかもしれないが、重要なIleana D'Cruzの裏切りの描き方に鮮やかさが見られなかった。登場人物は事実を知っているのに、それを観客に知らせた時点ではじめて物語の展開が変わるのはおかしかろう。舞台は全篇Rajasthan。マハラニの宮殿をはじめとして、異国(?)情緒満載。特に後半の白い砂漠(塩田?石灰岩?)での戦いが圧巻かつ美しかった。
#65「An Inconvenient Sequel: Truth To Power」Bonni Cohen, Jon Shenk/2017/米/Aug. 26/PVR: Forum○
不都合な真実』の11年後に製作された続篇。やはり地球温暖化対策に奔走するAl Goreを追ったドキュメンタリー(というか啓蒙映画)である。当時の予想がいま現実になっていることを示し、COP21でパリ協定が結ばれてよかったよかった、とはならず、アメリカにTrump政権が誕生して協定を破棄する宣言を出すまでを描いている。流石に10年以上経っていると政治色は薄く、環境アクティビストの重鎮としてのAl Goreが老いても精力的に信念を貫くさまは万人を動かす(少なくとも考えさせる)ものがある。COP21で注目されたインドの対応が大きく取り上げられており、この国を動かすためにAl Goreが大きく貢献したという宣伝も怠りない(このあたりやSolarCity社との関係に反発するひとはいそう)。Donald Trumpを直接非難するような表現は避けていたが、メッセージは明確だ。字幕はなかったけどAl Goreの英語は、さすが元政治家、とてもわかりやすくて助かった。NaMoの英語には触れずにおこう。
#64「Vivegam」Siva/2017/インド/Aug. 26/PVR: Pepsi IMAX, Koramangala○
Ajithデビュー25周年記念作品。Sloveniaに本部を置くテロ対策国際組織の一員で、相手が何人いようとひとりで倒してしまう無敵戦士AK (Ajay KumarでAjithではない。どうせならAkshayにすればよかったのに)である。ここまで強いと面白みがない。ときどき挿入される歌&ダンスシーンも見ていて楽しくない。Koramangalaのハイソな(?)観客は冷めた様子だった。Chennaiで観れば印象は変わったかもしれない。奥さん役はKajal Aggarwal。こういう映画では普通ただの添え物であるが、本作ではかなり重要な位置づけかつ役割を担っていた。添え物だったのはAkshara Haasanで、大量破壊兵器を操ることのできる凄腕の国際的ハッカーを序盤に演じているのだが、途中でただの女の子になって死んでしまい、その後はまったく言及なし。SloveniaのほかSerbiaなどの東欧が舞台だったけど、その意味合いは撮影隊が行きたいから、以外に考えられないな。非IMAX作品でもIMAXシアターで観ると画面が大きくていい。英語字幕あった。
#63「Vetri Vizha」Prathap K. Pothan/1989/インド/Aug. 6/Sampige Digital 2K Cinema: Malleshwaram○
Matt Damon版より10年以上早いインド(タミル)版『The Bourne Identity』。28年前の作品がディジタル化されリバイバルである。主演はKamal Haasan (役名はJasonでなくVetri)。当時は大ヒットしたということだが、さて。さすがにノイズはほとんどないが映像(発色)の不安定さは如何ともしがたく、元映像の問題か画像にシャープさが欠けていたのは残念。気候の問題か、保存は大変そうである。ま、それよりも当時の映画がどのようなものだったのかに興味があったのだが、明らかに香港映画の影響を受けたアクションシーンとか、ちょいとクサいダンスシーンとか、なかなか楽しめた。若いKamal HaasanはPrakash Rajに似ていて、かっこいいとは言い難い。空手の使い手だからか胸に“必勝”と書かれた日の丸Tシャツを着ていてヘンだった。女優陣(3人くらい登場; Amala, Sasikala, Kushboo)は結構あか抜けていてBollywoodかと思ったよ。舞台はMadras、Goa。Goaでは観光地総ナメ。Aguada Fortは草ぼうぼう。なんでみんなタミル語喋ってるんだよー。
#62「Operation Alamelamma」Simple Suni/2017/インド/Aug. 5/PVR: Forum○
Shraddha SrinathとAnushka Sharmaのどっちが好きと問われたら迷わずAnushka SharmaなのだがSRKものは観る気がまったくしない。かといってIndependence Day Week Endを来週に控えて、今週末は面白そうな公開もない。そこで、巷の評判もいいし、予告篇には目をつむってこれを観ることにした次第。3週目でもそこそこ人が入っていて、確かに面白かった。予告篇から本篇が予測できないのはよくあることだけど、予告篇に惹かれないのに本篇がいいのはあまり経験がない気がするな。話は『Beautiful Manasugalu』に誘拐事件を絡ませた感じ。主人公のManish Rishi(PummyじゃなくてPurmy)とShraddha Srinathのやり取りより、彼と彼女のお母さんの関係がよかった。大筋の誘拐事件もいいんだけど、シナリオにはちょいと無理があったように思う。GoProかなんかで撮ったらしいアクションは悪くなかった。舞台はバンガロールばりばりで、Om Made CafeやらMadivara Marketやらご近所も出てきた。CinepolisはRoyal Meenakshi Mallのに見えた。
#61「Nibunan」Arun Vaidyanathan/2017/インド/Jul. 30/Mukunda Dolby Atmos○
本日Arjunデー。こっちはタミルの“Action King” Arjun (といっても本人はKannadigaらしいが)の150作目でコップものである。チームを組むのはPrasannaとVaralaxmi。Varalaxmiは『Vikram Vedha』で見たばかりだが、こっちは洋装のため太ってるのがよくわかる。のはどうでもよくて、Arjunの奥さんがSruthi Hariharanなんだな。というわけでもないだろうが本作にはカンナダ語版『Vismaya』もあってそっちなら近所でもやっていたのだけど、せっかくなのでタミル語版を求めて初めての映画館に赴いたのだった。『Vismaya』のためでもなかろうがChennaiと思われるシーンにBangaloreも出ていた。話は、連続猟奇殺人で、犯人を追うArjunが途中でパーキンソン病を発症し苦しみながらも解決に至るというもの。ま、Sruthi Hariharanを見たからいいや。このローカル劇場、Dolby Atmosを謳いながらプロジェクタがちゃんと調整されていないし、音もそんなによくなかったよ(それは映画の問題かもしれないけど)。
#60「Mubarakan」Anees Bazmee/2017/インド/Jul. 30/INOX Lido○
たまにはBollywoodの賑やかなやつを観ようと選んだのがこれ。Neha Sharmaが出るからね(特別出演)。Sonam Kapoorのお父さんAnil Kapoorが主役。『Dil Dhadakne Do』もよかったし、確かに本作でもターバン姿がかっこよかった。ただし、話はいつもぼーっとしてるArjun Kapoor演じる一卵性双生児KaranとCharanが中心で動く。Neha SharmaはCharanの恋人役でムスリム。他の登場人物はみんなシーク教徒なので、うまくいかないというわけだ。舞台はLondonとChandigarhなのに、Londonでもターバンなんだな(容姿で識別するためにKaranはターバンなし。陳腐な技だ)。Karanの恋人はIleana D'Cruzで、Charanの乗換先がよっ四角い顔Athiya Shetty。なんでNeha Sharmaから目移りするのか理解不能である。というわけで、話は双子の結婚を巡るドタバタでたわいもない(わかっちゃいたけど)。Neha Sharma以外の見どころはChandigarhロケで、コルビュジエ作品が2件も出てくるよ〜(街を入れれば3件か)。行ったとき泊まったホテルも出てきた。
#59「Dunkirk」Christopher Nolan/2017/英=米=仏=蘭/Jul. 29/PVR: Pepsi IMAX, Koramangala○
周りがどよめいている『ダンケルク』である。IMAX好きだし、ちょいと観に行ってきた。第二次大戦でナチがフランスに侵攻しダンケルクに雪隠詰めになったイギリス軍の脱出作戦を、脱出しようとする海岸の兵士たち、脱出を手伝うためドーバーを渡る民間船、脱出を援護するイギリス空軍の空中戦という3つの視点で描写。家族愛とか恋愛とかこれっぽちもない超硬派な演出がいい。かといって、ありがちな軍隊内の理不尽さもない。脱出作戦を指揮していた中佐(しているようには見えなかったが)の俳優の名前を忘れていたけど、エンドクレジットでそれがKenneth Branaghであることを確認した。そうそう。どうも物忘れが…。IMAXの効果は抜群で、臨場感が素晴らしく(特に空中戦は圧巻)、自分が戦場にいる気に本当になって気持ちが悪いくらいだった。で、何よりよかったのは、無事イギリスに帰っても、そこにユニオンジャックがはためいて皆が涙しながら国歌を唄うなんてことがなかったところだな。英語映画に英語字幕あった。
#58「Vikram Vedha」Pushkar, Gayathri/2017/インド/Jul. 23/PVR: Forum○
今週末はShraddha Srinath出演作が2本公開だったのだが、ファンじゃないし『Operation Alamelamma』は評判いいみたいだけど予告篇が嫌いだったので無視。もう一方はR. MadhavanとVijay Sethupathiの大型対決。チェンナイ版『県警対組織暴力』である(ウソ)。地元やくざのVijay Sethupathiを葬ろうとする警察特殊部隊のリーダーがR. Madhavanでその妻がShraddha Srinath。彼女は弁護士で、自首してきたVijay Sethupathiの弁護をする、というだけで面白いのだけど、警察内部の歪み(やっぱり『県警対組織暴力』だ)が絡んで、話がどんどん深くなっていく。Mr. SandalwoodのAchyuth Kumarがわざわざチェンナイに出張して出演、重要な役割を演じていた。とにかく大型対決だからして、両方をたてる終わり方をしないといけない。どうやるんだろう、と映画を愉しみながらも心配してたら、ほぼ想像通りの展開で観客みんな満足である。終映時には拍手が起きた。想定外の英語字幕にも拍手。
#57「Shab」Onil/2017/インド/Jul. 16/INOX: Garuda Mall○
オトナの映画。ああ言えば上祐似の(たぶん)東北からデリーにやってきたムキムキ青年Afzarがひとときの華やかかつ酸っぱい一年を過ごし故郷に帰っていくのを軸に、幾人かの心に傷のある男女が静かな物語を織りなすインド映画らしからぬ作品。実際、カフェで働くArpita Chatterjee(ベンガル語を喋る)はなかなかよかったのだが、彼女をはじめ登場人物がなんとなくおフランスぽく(ひとりは本当にフランス人だったが)、デリーの街までパリに錯覚しそうになる。ただし、四季をSummer, Monsoon, Autumn, Winterで表現するのはインドならでは。おフランスっぽいので、男と女、あるいは男と男がくっついたり離れたりする。後者のパターンの描写があっさりしているのは検閲が厳しいからだろうけど、昨今の世界的傾向からすると逆であるな。出てくるホテルがWestinなのはまあいい。でも、飛行機がAir Indiaなのはどうなんだろう。ここはやはりAir Franceにしてほしかった。舞台のカフェは実在かな。名前忘れたので行けないけど。
#56「Gemini Ganeshanum Suruli Raajanum」Odam Ilavarasu/2017/インド/Jul. 15/PVR: Forum○
Atharvaaという若いのが演じるIT技術者(役名Gemini)が与太者のSoori(役名Suruli)に会いに行くところから始まるのだが、最後までなぜ会いに行ったのかわからず。題名は『GeminiとSuruli』らしいので『ジャコ萬と鉄』みたいなもんかな。という冗談はさておき、このGeminiが実は女たらしというか詐欺師で、Regina Cassandra、Aaditi Pohankar(ここまで舞台はMaduraiで以降Ootyに移動)、Pranitha Subhashという中堅タミル女優を次々と騙し、最後にわれらがAishwarya Rajeshと結婚してハッピーエンド?というお話。Sooriの役回りは何だったのだろう。タミル語がわからないとさっぱり、というよくあるパターンにまたまた嵌ってしまった。Aishはもちろん4人の女性の中でピカイチ。メガネ女子で知的で美しい。ということで、万事は丸くおさまった。Sooriの相棒はスキンヘッドのRajendran(役名Sultan)で、『Baahubali』のKattappaの顔真似で髭をたくわえSooriにも“Kattappa”と呼ばれていたのがおかしかった。
#55「Mom」Ravi Udyawar/2017/インド/Jul. 9/PVR: VR Bengaluru○
元祖Lady SuperstarらしいSridevi主演の復讐劇。義理の娘Sajal Aliがギャングレイプの被害を受け、犯人グループは捕まるものの裏金を使って無罪となったのを、ひとりひとりハングする。復讐の手口が決してあざやかとはいえないのがリアリティを与える。Srideviは(おばさんとはいえ)さすがの美しさ。南インド出身とは思えない色白だし。出色はNawazuddin Siddiqui。竹村健一にしか見えない風貌で、Srideviの復讐に加担する私立探偵を怪演。美人の妻と娘。彼女らが彼のヘアスタイルをなぜどうこう言わないのか疑問だ。最初はレイプ犯を捕らえ、後半はSrideviとNawazuddin Siddiquiを疑う刑事Akshaye Khannaも悪くなかった。渋くもないが…。継母(実は学校の先生)を認められずケータイにも“Ma'am”で登録しているのが最後に“Mom”と呼ぶ人情ドラマ部分は個人的にはいささか安易に感じた。父親役は田中春男だった。パキスタンから呼んだSajal AliはKareena Kapoor似で、どうにも生理的に苦手だな。さてそろそろ現Lady Superstarを観たいものだ。
#54「Tiyaan」Jiyen Krishnakumar/2017/インド/Jul. 9/PVR: Market City★
町を潰そうとするグルをスキンヘッドで演じたMurali Gopyが書いた脚本が斬新で気に入った。イメージに合う荒涼とした土地がケララにはないからなのか、舞台はUP。町のブラミンIndrajith SukumaranがMurali Gopyに目をつけられ幼い娘を殺される。謎の男Prithviraj Sukumaranから力を与えられ、対決する。ヒンドゥーとムスリムが混在し、ムスリムであるPrithviraj Sukumaranが昔サドゥーに助けられ悟りを開くもののムスリムに留まるところとか、なかなか興味深い。Prithviraj Sukumaranは、むちゃ強い。彼に力をもらうIndrajith Sukumaranも無敵である。とエンタメ性もある。エンタメといえばMurali Gopyが自分と自分のセクトを讃える歌とダンスをやるのだが、これも怪し楽しい。Indrajith SukumaranとPrithviraj Sukumaranが共に古代の戦いの夢を見、どうやら彼らは昔戦友だったらしいという輪廻思想は納得いかないけどね。半分ヒンディー語でその部分にはマラヤラム語字幕が付いていた。そんなもんより英語字幕付けろ。
#53「Ondu Motteya Kathe」Raj B Shetty/2017/インド/Jul. 8/INOX: Garuda Mall○
Dr. Rajkumarをアイドルとするカンナダ語教師の若ハゲ(Egg head)男のお嫁さん探し。監督が主演している。いろいろあった末に太った女性とハッピーエンドとなるのだが、男性の若ハゲと女性の肥満はインド人にありがちな特徴であり、これを彼ら自身すんなりとは受け入れていないのだなあ、と確認できる映画だった。見た目じゃないよ心だよ、みんな自信を持とうよ、というわけである。オーソドックスなエピソードの組み合わせにDr. Rajkumarの歌や台詞を絡ませてうまくまとめてあり、Kannadiga以外にはピンとこないと思われるが、十分楽しめる。物語に出てくるお相手候補は3人。うち、主人公の同僚で経済学の先生はなかなかかわいかったのだけど、主人公のお母さんがおばさんではあるが先生を上回っていたように思う。序盤に若ハゲを憂うオフビートで謎なダンスシーンあり。この劇場、シートはいまひとつだけど、英語字幕が付く可能性が割と高くてとても助かるよ。
#52「Ivan Thanthiran」R. Kannan/2017/インド/Jul. 2/PVR: Forum
よくわからない工学系大学生礼賛映画。友人とふたりで小さなエレクトロニクスショップを営む青年Gautham Karthikが、工学系大学を食いものにしている政治家に挑む。相手役のShraddha Srinathの部屋はなぜかSrinivasa Theatreの横にあって、監督のむりやりな意図を感じる。上映中の作品は成龍。これも監督の趣味かな。主人公の青年はやたらとデキる奴なのだが、これだけできればそもそもこんな商売はしないと思うぞ。小型カメラを積んだ蝿型ドローンとか、100ルピー札に埋め込まれたチップでGPSを使った追跡をするとか、SFじゃないんだからもう少し現実的にしたらどうだろう。で、なぜ工学系大学生を讃えているのか、そのココロがわからない。もしかしてタミルナドゥ州では理系はバカにされるんだろうか。タミル語がわかればそんな誤解も解消するんだろうな。一応(つまりルンギやサリーなしの)、タミル的ダンスシーンあり。またまたタミル映画に出演のShraddha Srinathは、まあ美人なんだろうけど、目と目の間が狭い苦手系。
#51「Aake」K. M. Chaitanya/2017/インド/Jul. 1/INOX Lido○
並行する2つのプロットがどう合流するかは想像がついたが、シナリオはよくできていた。エンディングでの一捻りも含めて。Nayanthara主演のタミル語ホラー『Maya』(未見)のカンナダ語リメイク。その印にAchyuth Kumarが出ていた。主演の二人はあまり印象に残らないが、映画監督Prakash Belawadiのアシスタントでかつヒロインの友人を演じていたSneha Acharyaのファニーフェイスがよかった。残念ながら英語字幕がなかったため細かいところまでは把握できていないけど、題名が何を意味するのかは英語台詞で説明してくれた。親切だね。舞台はロンドンとバンガロール。以前はインド映画といえばスイスロケ(で歌って踊る)、と思っていたけど最近はロンドン(では踊らない)がやたらと出てくるな。結果的に結構楽しめたとはいえ、ホラーは疲れる。面白そうな映画が他にないからといってお気に入り女優も出ていないのにこのジャンルを選ぶのはもうやめようと思う。そういう意味では『Maya』は観てみてもいい。
#50「Thondan」Samuthirakani/2017/インド/Jun. 17/Everest Theatre○
Kadhalum Kadanthu Pogum』でVijay SethupathiのライバルやくざだったSamuthirakani主演・監督作品。主人公が救急車の運転手という設定がユニーク。救命した殺人被害者にとどめを刺したいやくざとのカーチェイスなどいい発想なんだけど、残念ながら謎のギャグ(Sunainaが白装束で夜道を走るなど)の存在が全体としての質を落としている。延々と語る主人公を3分程度かけてクローズアップする長廻しは、言葉がわかっても閉口したと思う。相棒にGanja Karuppu、Vijayの従兄弟Vikranth、悪役にG. Gnanasambandam (インドのハナ肇)とNamo Narayana (インドの林雪)。終盤になってSooriやらThambi Ramaiah (インドの曾志偉)もわらわら出てきて、デラックス(?)モード。ただし、Sunaina、Arthana (ちょいとVidya Balan似)の女優陣はしょぼかった。どうでもいいけど、主人公のバイクのナンバーが500で、彼のものではないBMWかなんかのナンバーも500だった。偶然? トンタン、トンタン♪ 頑張れ、トンタン。行かないけど。
#49「Dobaara: See Your Evil」Prawaal Raman/2017/インド/Jun. 4/PVR: Forum○
“No Problem Na”姐さんHuma Qureshiとその実弟Saqib Saleem主演のサイコホラー。舞台はイギリス。魔女狩りで処刑された女の霊が囚われた鏡が必要なのでイギリスなんである。イギリスの魔女がなぜヒンディー語喋るんだよー、と心が叫ぶ。10年前だかに父親のAdil Hussainを殺した容疑で収監されていた弟が娑婆に帰ってくる。彼は、どこかにあった鏡を自宅に戻し父親殺し事件の背後にいる魔女と戦うしかけを作る姉の言動が理解できないが、徐々に自分も…、というお話。超常現象を捉えようとするビデオ機材はオカルトの正体を曝く理性的な存在である。魔女には生きづらい世の中だ。って、思ってたら、最後には10年前と同じことの繰り返し。この終わり方は悪くなかったな。しかし、魔女の狙いがわからない。現代で、魔女狩りにはなんの関わりもないあの父親を誘惑する必要がある? 米映画のリメイクでさらに原作もあることを思うと、本作を責めるのは筋違いなのだろう。インド人はホラー好きだと思ったけど、場内ガラガラだった。
#48「A Death In The Gunj」Konkona Sen Sharma/2016/インド/Jun. 3/PVR: Forum○
ブルカの中の口紅』主演のひとりKonkona Sen Sharma監督作品。欧州の香りでいっぱい。Biharの田舎町がイル・ド・フランスに見える。インドとはいえ時節は新年なので、花や新緑でいっぱいというわけにはいかないけど。田舎に集まった家族の賑やかな談笑に混じる物静かな従兄弟Vikrant Massey(こいつも『ブルカの中の口紅』に出てた)が、結婚したばかりのRanvir Shorey(Ajay Devgn似。監督のダンナらしい)らにからかわれ、好意を持っていたKalki Koechlin(Ranvir Shoreyとオトナの関係; 吹き替えが残念)にも冷たくされ、自殺する。家の主Om Puriは渋いというより、装填されたライフルを甥に渡してしまうやや老害の入ったじいさんだった。先日観たばかりの『Hindi Medium』に出てたTillotama Shomeがまた出てて、このひとどこで観たんだっけ、とずっと考えてた。俳優の趣味仕事ではないしっかりした作品だったけど、映画の構成として、導入部(物語全体のラッパー)が必要かどうかは議論点かな。霧の映像がきれいだったからいいけどね。
#47「BB5」Janardhan N/2017/インド/May 28/Cinepolis: Binnypet Mall○
コーヒーをソーサーに注ぎ、そこにチャトニを投入し、混ぜ混ぜして食べる。本作一番の衝撃映像。ホラーシーンよりびっくりした。というのはともかく、Sandalwoodに面白そうな監督がまた出てきた。なんだこの脚本は。まるでシナリオのケララパラータや〜。何重にもネストしたシナリオは、いま自分がどのループにいるのかわからなくなってくる。映画界をネタにするというのは、劇中劇の境目をあいまいにするにはもってこいだな。いいけど、監督、次作はどうするの?と本作が終わらないうちから心配してしまった。『U Turn』に出てたRadhika Chetan以外は知らない俳優たち。主役の脚本家志望Poornachandra Mysoreと著名監督Rajesh Natarangaの騙し合いは、先が読めずおもしろかった。ローバジェットで、演出も詰めが甘い気がしたけど、ま、いいんじゃない。誰かがリメイクするかもね。イドリをコーヒーに浸けて食べるのは、冒頭のコーヒー+チャトニよりマシな気がするな。題名の『Balcony B5』の意味わからず。英語字幕あった。
#46「Saab Bahadar」Amrit/2017/インド/May 27/PVR: Market City
Mukhtiar Chadha』を観たときは“パンジャビはヒンディーにしか聞こえない”と書いたようだが、2年経ってさすがにヒンディーにはまったく聞こえなかった。ま、理解できないのは変化ない。映画の前にしこたまクラフトビールを呑んでしまって、前半はほぼ寝ていたようだ。Ammy VirkというRanveer Singhがターバン巻いたような俳優が主演のコップもの。連続殺人事件の捜査がストーリーなのだが、肝腎の事件を見ておらず、目が覚めてからもストーリーが追えずに困った。警官を含む登場人物の大半がターバン。女性はホンモノのパンジャビドレス。パンジャブである。マンゴーを食べるシーンがあるのだが、丸ごと囓ったり、皮ごとチュウチュウしたり、これが本来の食べ方だろうか。ターバンって帽子のように被るようには見えないので、いちいち巻くのかな。みんなきれいに巻いてるよな。映画だからなのか、誰でもそうなのか。と、本篇には無関係なことしか書けないのが情けない。字幕以前の問題。
#45「Hindi Medium」Saket Chaudhary/2017/インド/May 21/INOX: Garuda Mall○
Irrfan Khanとパキスタンの女優Saba Qamar主演のお受験騒動記。元々マラヤラム作品で、ベンガリ版もあってのヒンディー語版らしい。舞台はDelhi。Chandni Chowkの仕立て屋で財をなしたIrrfan Khanが、奥さんの意向を汲んであの手この手で娘を名門校に入れようとするがうまくいかないというシニカルなコメディー。字幕がなかったのでよくわからないのだけど、親も含め英語を喋らないといけなくてバタバタするとか、高級住宅に引っ越してたのになぜかまた下町に身を潜めたり、話が目まぐるしく展開。うー、ヒンディーがわかればなあ、結構面白そうだったのに。インドでのし上がるには英語が必須っていう現実は確かだな。Language Imperialism、なるほど。最後はインド映画が好きな演説になったのは残念。Saba QamarはSonam Kapoorを濃くしたような顔。どういう経緯でボリウッドに出ることになったのかな? 鼻の穴が僕の5倍くらい大きかった。パキスタン人ってヒンディー喋るの普通? ウルドゥー喋れれば簡単なのかな。
#44「Posto」Shiboprosad Mukherjee, Nandita Roy/2017/インド/May 20/INOX: Garuda Mall○
ポスターでみんなシェフの格好をしているので食にまつわる話かと思ったらまったく違ってたベンガル映画。Postoという少年の養育権を巡り、実父(母)と実祖父(母)が裁判まで起こして対決する。おじいさんはお馴染みのSoumitra Chatterjeeで、彼を弁護するのもお馴染みのParan Bandopadhyay。おばあさんはLily Chakravartyという東山千栄子みたいな女優。お父さんがJisshu Sengupta、お母さんがMimi Chakraborty。このMimi Chakrabortyという女優がきれい。ベンガル映画界には美人が潜んでいるぞ。日常における父子の対立を描く前半は退屈。ときどき挿入される歌のシーンは観ていて恥ずかしい。カメラワークが変。後半で裁判になるとまあまあ面白くなってきた。結末はまあ予想通りのハッピーエンド。序盤、ホタルが舞うシーンでJisshu SenguptaがPostoに“fireflyを日本語でどう言うか知っているか”と突然言い出し、びっくりした。“ホタル”の発音が日本語だったのでさらにびっくり。終映10時はつらい。もう夜の部は引退したい。
#43「The Sense of An Ending」Ritesh Batra/2017/英=米/May 20/PVR: Forum○
しばらく前PVRにCharlotte Ramplingが写った大きな立て看板があって何だろうと思っていた作品が限定公開。『The Lunchbox』の監督だからインドでの上映が実現したようだ。Londonの街角で小さなカメラ屋を営む初老の男(Jim Broadbent)が、ある日受け取った手紙をきっかけに40年前の大学時代に起こったことを振り返る話。人間の記憶のあいまいさ(あるいは独善性)や真実を知ることの困難さをテーマにしていて、原作を読んでみたくなった。題名がいいよね。男の元ガールフレンドとしてCharlotte Ramplingが登場。もうおばあちゃんだけど面影は昔のままだ。彼女の学生時代(カメラ女子)を演じていたFreya Mavor(そばかすいっぱい)も悪くなかったけどその母親役Emily Mortimerが60年代的なさわやかなお色気を発散させていてよかった(これが物語の鍵なわけだが)。舞台のLondonにはしばらく行っていないけど、街並みやパブを見るとまた行きたくなった。タップから注がれるピルスナーやスタウト…、じゅるる。
#42「Meri Pyaari Bindu」Akshay Roy/2017/インド/May 14/INOX: Garuda Mall○
ファンではないけど好感をもっているParineeti Chopraという女優は、お転婆ぶりがチャームポイント。ライバルはおそらくAlia Bhattあたりだろうが、現状では旗色がよくない。そんな中、彼女の魅力を全開にしたアイドル映画の登場である。相手役はAyushmann Khurran。このひと俳優だったのか。この幼なじみの二人が大人になっていく姿を描いていて、映画的にはなんてことはないが、まあ観ていて普通に楽しい。故郷がKolkataという設定で、他の舞台はMumbai、Goa、Bangalore、そしてオーストラリア。Ayushmann Khurranが(IMC?で)学ぶBangaloreは実際にロケはしてないっぽい。Kolkataでは、Howrah Bridgeと同じくらいお約束のJune Malia登場で満足である。彼女はParineeti Chopraの母親で交通事故で死んでしまうのだけど、そのダンナ(つまり父親)はPrakash Belawadiであった。Parineeti Chopraはいろいろしごとをするのだけど、そのうちのひとつが南インド映画の吹き替え。仕事場のシーンでは(おそらく)Puneethの映画がかかってた。
#41「Sarkar 3」Ram Gopal Varma/2017/インド/May 13/PVR: Forum
Govind-Govind-Govind-Govind... 頭の中がこの歌に占領される、Amitabh Bachchan主演の政争(というよりやくざ抗争)もの。1も2も観てないし、予習もしておらず、当然字幕なしで撃沈。直接の政敵はManoj Bajpayee (Govind)なのだが途中で殺されてしまい、あれれ?と思っているうちに、それまでDubaiで遊んでいたJackie ShroffがMumbaiに戻ってきて、ABのところにノコノコ行き、殺される。このDubaiでの“遊び”がトホホなことこの上ない。他のインド人観客からも失笑が漏れていたので、安心した。さて話の軸にはABの孫としてAmit Sadh、その恋人としてYami Gautamが出ていた。まあプロットがわからないながらもこの二人が本当は“いいやつ”であろうことは想像がついた。ABの暮らす暗い部屋、その床を這うように移動するカメラ、自分で淹れたお茶を皿から飲むAB。まあ印象的ではあるが、取り付く島は僕にはなかったな。映画にまったく興味のない幼い姉妹が僕の横でずっと遊んでたし、後ろの坊やは僕のシートを小突いてたし。
#40「CIA - Comrade in America」Amal Neerad/2017/インド/May 7/PVR: Soul Spirit Bellandur○
Mollywoodはときどきこういう挑戦的な作品を出してくるので目が離せない。題名からしてアメリカをおちょくっているし、終盤には“トランプを大統領にさせるな”という台詞まである。これでトップスターDulquer Salmaan主演。彼女が突然アメリカに行ってしまい追おうとするが、ビザが下りそうにないのでメキシコからの密入国を企てて運良く成功し、彼女に会えたと思ったらあえなく振られてインドに帰って行くコミュニストの男は、まあいつものように硬派に爽やかである。自身はKerala Congress党員なのに息子がコミュニストであることを容認する懐の深い父親もよかった。しかし、夢の中とはいえ、マルクス、レーニン、チェ・ゲバラ、スターリンまで登場する豪華さはなんだ。しかもみんなマラヤラム語を喋るぞ、ウラーッ。アメリカへの密入国ツアー(?)の面々は、スリランカ人や中国人のほかにパキスタン人もいて、描き方も対等。そんなインド映画、初めて観た。ニカラグアからテキサスまでの陸路、実際にはどこで撮ったのかね。
#39「Marali Manege」Yogesh Master/2017/インド/May 6/PVR: Forum○
親を思う子と、子を思う親と。ある意味すべての大人の観客に刺さるテーマで、うまく作ればヒットすると思うが、本作は微妙。題名は“Coming Home”という意味らしい。親・家族を離れた子が戻ってくる、戻ってこないという話。微妙な点1は、主人公の男が怪しくて感情移入できない。この男は親と喧嘩してうちを飛び出し、別の村でホテルの給仕をしているのだが、近所の女性をストーカー。途中からその女性の伯母さんにかわいがられるようになり、故郷の親を思い出す。微妙な点2は、長年行方不明だった伯母さんの息子が帰ってくる話。これはありきたりの展開。女優の熱演は光るが、それに比例した感動はない。面白いと思ったのは、主人公の男が最後まで女性と結ばれないところ。普通に話せるようにはなったのだけど。ま、映画のテーマじゃないからね。監督自身がグルみたいな役で出演。セピア画面、部分モノクロ、固定キャメラ、一部長廻しなど、いろいろなテクニックを使ってはいるが、成果はいまひとつであった。字幕なし。
#38「Happy New Year」Pannaga Bharana/2017/インド/May 6/PVR: Forum○
題名の通りおめでたいお正月映画。なぜこの時期の公開なのか皆目見当が付かないが、そもそもインドでは新年がたくさんあるし、いつでもいいといえばそれまで。(ま、映像を見れば西暦の1月1日とわかるが) 劇場を出るときにハッピーになりたいひとには期待通りの結末が待っている。Something newを期待するひとには、何もない。新年を挟んで5つのエピソードが並行して語られる。それぞれ悪くはないけど、5つは正直欲張りすぎ。Radio Mirchiの番組でこれらをつなごうとするのだけど、編集が残念な分、全体としてのまとまりもいまひとつである。そのRadio Mirchiの番組のRJの恋人が難病を患うSruthi Hariharan。顔色がまったく悪くないのだけど、演技はよかったよ。でも、やりがいのある役でもないな。どのエピソードが好きかと問われると、やはりBBのやつかな。新入社員(Rajshri Ponnappa)の無邪気なお色気に舞い上がるおっさんの話。音楽は悪くなかった。冒頭でRaghu Dixitが街頭ライブをやるシーンもあった。
#37「Noor」Sunhil Sippy/2017/インド/Apr. 30/Eros Theatre○
Baahubali旋風の中、それ以外を上映する小屋でSonakshi Sinhaを観る。というかEros Theatreに一度入ってみたかった。『Rangoon』で見たとおりのホールがそこにあった。埃っぽかったけど。Sonakshi Sinhaを観るのは何年ぶりだろうか。『Akira』など近作は予定が合わず観逃していた。本作は現代物で彼女は父親と二人暮らしのジャーナリスト。愛車はTata Nano。おっちょこちょいのメガネっ子である。なかなかかわいい。でも、体重計に乗ったら“6x kg”とか出てきて驚愕。そんなに背高かったっけ。話は、そんな彼女がドジを踏みながらも友人にも支えられ、ある事件を題材にしたYouTube投稿によりオピニオンリーダーとなり、ついでに彼もゲットしてハッピーという、従来の女の子夢実現物語の紋切りである。舞台はムンバイとロンドン。ああ、ロンドンのパブ、いいなあ。と思いながらも、訪れている最中の街があちこち観られるのはこれはこれで楽しい体験だった。Sunny Leoneが本人役でカメオ出演。いまだに主演作を観たことないな。
#36「Baahubali 2: The Conclusion」S. S. Rajamouli/2017/インド/Apr. 29/Liberty Cinema: Marine Lines○
大ヒットした『Baahubali』、全インド待望の続篇。KattappaによるBaahubaliの思い出話である。元々ファンタジーな上に思い出話だから荒唐無稽さも前作を超えている。なんだあの山中湖には入らなそうな白鳥の船は。城を巡る攻防の奇想天外さは自然と『長城』を想起させるのだけど、本作の方が断然よかった。続篇にきてTollywoodっぽさを増し、話の骨格は王朝ファミリー内の確執。そうこなくっちゃね。PrabhasやRana Daggubatiの印象は変わらないが、本作で光ったのはあのAnushka Shettyである。むちむちした部分はすっぽり覆い、アクションやダンスをしっかりこなしていた。終盤、長〜いKattappaの話が終わって、ようやくTamannaahが出てくる。台詞なし。でもやはりさっきまで感心して見てたAnushka Shettyがやはり太っていたことを彼女が教えてくれた。ちなみに、オリジナルのテルグ語版を本来なら観るべきなのだけど、事情によりヒンディー語吹き替え版。ま、どっちでも情報量はほとんど変わらないけどね。字幕なかったし。
#35「Kaatru Veliyidai」Mani Ratnam/2017/インド/Apr. 9/PVR: Forum○
O Kadhal Kanmani』の監督の新作。『Madras』のKarthiと『Wazir』のAditi Rao Hydariのラブストーリー、インド版『浮雲』である(言い過ぎ)。空軍の飛行士(Karthi)がKargil warで捕虜になり、パキスタンの刑務所を脱獄してインドに帰ってくるというプロットは国旗・国歌で安易に愛国化されるのがインド映画ではお決まりのパターンだが、本作はさにあらず。二人のラブストーリーに固執する姿勢が立派。Karthiのいやな男ぶりが森雅之を連想するかどうかはともかく、ボリウッドから借りてきたAditi Rao Hydariは間違いなくデコちゃんよりきれいだ。というか、カシミールを背景に超絶美しい。Karthi目線で彼女を正面から撮影したりして、Mani Ratnam監督、憎い演出である。僕定義のインド三大美女のひとりである彼女だが、インド人にはまったく見えない。色白だし(インドでは禁句か)。かわいそうなのは特別出演のShraddha Srinath。なんでタミル映画に出ることになったのかしらないけど、もう少しいい役がよかったのでは?
#34「Ghost In The Shell」Rupert Sanders/2017/米/Apr. 8/PVR: Pepsi IMAX○
『攻殻機動隊』のハリウッド実写版。原作や過去のアニメ映画に思い入れはないのだけど、予告篇の映像が『ブレードランナー』を思い出させてワクワクしたのでIMAX 3D版に大枚はたいた。主人公・草薙素子がScarlett Johansson、ってサイボーグだからって白人にしなくてもいいようなものだが、ハリウッド作品だからしかたない。公安9課のボスはビートたけし。あれ?なんで日本語なの?ECCの成果は?母親役の桃井かおりはちゃんと英語喋ってて立派だったのに。しかし、考えてみればScarlett Johanssonが日本語を喋るべきだな。Juliette Binocheは『Godzilla』に続いてこういうのに出てるわけだ。話は『ブレラン』と同じサイボーグ(レプリカント)の自分探し。香港らしき街の描写はやはり『ブレラン』を彷彿とさせる、未来と現在が入り交じった混沌としたもので悪くなかった。クレジットにはまた上海電影集団。もうハリウッドは中国のものなのか?そして、いつ見てもIMAX 3Dは最初のカウントダウンが一番よくできている。
#33「Kavan」K. V. Anand/2017/インド/Apr. 2/PVR: Market City○
ワナッカム。ニュースの時間です。Madonna Sebastianが踊れるようになりました。Vijay Sethupathi主演のマスメディア告発もの。いまの日本にも通じる、人気が出るなら何でもアリのマスメディアのデタラメに内部からメスを入れる若きジャーナリストがVijay Sethupathiで、その大学からの恋人がMadonna Sebastianである。この二人は『Kadhalum Kadanthu Pogum』につづく共演となった。マスメディアの政治および警察と結託した腐敗に加え、女性差別、宗教差別、環境汚染問題への正義を訴えているのだが、そういった作品にありがちなウンザリ感はなく、Vijay Sethupathiが悪を成敗するのを観ながら、観客は皆スカッとしたのであった。おもしろいのは、Social Mediaが会話では出てくるものの、実際に利用されたりしなかったこと。いまやテレビよりよほど影響力があると思うけど。この点で少々時代遅れ感を禁じ得なかった。Powerstar、インパクトあった。プニートだけじゃないんだ。英語字幕あった。
#32「Dora」Doss Ramasamy/2017/インド/Apr. 1/INOX Lido○
Lady Superstar Nayanthara主演。映画としては微妙な線だが、全国1千万人のNayanファン(僕か)には必見の、Nayan出ずっぱり作品。Doraというのはドラえもんではなくて、犬の名前。殺された少女の愛犬で、これがNayantharaが購入する1967年式Austin Cambridgeに取り憑き、復讐を果たす、というのがあらすじ。実は車は少女の家の元愛車で、かつこの殺された少女の心臓を移植されたのがNayantharaという背景で、これが前半は明らかでないためもあって、客観的にみると結構たるい。お父さん役のThambi Ramaiahは結構うざい。Nayanのお見合い相手でかつ事件を追いかけるInspector役のHarish Uthamanは、本作では髪も多くて結構かっこよかった。後半の復讐劇はなかなか面白かった。Nayantharaの魅力はその美貌、スタイルのよさに加えて、しかめっ面とコメディエンヌぶりなのだけど、本作でのコメディエンヌぶりはまた際立っていた。スーパースターなのにね。Nayan自らアフレコしているので、肉声が聞けるのも得点高い一品。
#31「Baashha」Suresh Krissna/1995/インド/Mar. 26/Nataraj Theatre○
スーパースターRajinikanthの代表作のひとつがディジタルリマスターでリヴァイバル。旅先のテレビでやってるのをチョロッと見ただけなので、改めてタミル映画専門館に赴いた。外はラジニのカットアウトやポスターで賑やか。上映開始後の劇場内も賑やか。ダンスシーンではスクリーン前に数人が出てきて一緒に踊るし、こういうのも楽しいね。映画自体はなるほどラジニの全盛期だけあってオーラ全開。オーラといえば出てくるオートリキシャー全部にOLAのマークが。20年以上前からOLAあったんだと新発見。携帯電話がまだない時代だけど、やくざの車には電話が付いてた。赤い受話器のヘンなの。それにしても過去のムンバイ黒社会のドンがチェンナイでオートの運転手をやるという設定が奇想天外。ムリでしょ。ま、そんなことに拘る必要はない。黄色いタオルをブンブン回せば、みんなしあわせである。しかし、エアコンのない劇場はしんどい。来週末のNayanはシネコンで観るぞ。やっぱり字幕なしかなあ。
#30「Take Off」Mahesh Narayan/2017/インド/Mar. 25/PVR: Forum○
マラヤラム語版『Airlift』というのは言い過ぎだけど、Prakash Belawadiが出ていたからかそんな気がしたParvathy主演作品。彼女はバツイチの看護婦でこれまでのどの作品よりも年増の役。イラクに赴いたインド人医療チームがISに囚われた2014年の事件がベースで、彼女は駐イラク・インド大使(Fahadh Fazil)と協力してイラクからみなを脱出させようとするリーダー格である。エンディング・クレジットでホンモノとParvathyが会ったときの写真が出てきたけど、まったく似てなかった。また実話に基づいているとはいえ、彼女がずっと妊娠中だったことがドラマに影響しないことに違和感を覚えた。撮影はDubaiで行われたよう。IS侵攻による恐怖の雰囲気がよく伝わってきた。脱出に成功したとき、お決まりの国旗と国歌。ああまたかと思ったのだが、きわめてアッサリで拍子抜けした。音楽がうざかった。英語字幕あり。アラビア語にはマラヤラム語字幕が付いて、なぜか英語字幕がその上に重なり、読みにくいことこの上なかった。
#29「Urvi」B. S. Pradeep Varma/2017/インド/Mar. 19/PVR: Orion○
Shuddhi』と同時公開の、同じくKaliもの。こちらの主演はわれらがSruthi Hariharanでおおいに期待して臨んだのだけど、残念ながら『Shuddhi』の方がよかった。とはいえ、見応えはあった。前半のSruthi Hariharanがハメられていくさまは『結婚相談』のいづみさまの生き写しである。後半のリベンジパートでKaliと化した彼女がガンをぶっ放すところはスカッとする。シナリオはいまひとつ。特に終盤の展開には首をひねらざるを得ない。娼館主のBobbyを演じた沢村貞子、じゃなくてBhavani Prakashは迫真の演技。エロ爺のAchyuth Kumarもよかった。本作も同じだが、インド人はスローな展開が嫌いらしく、レビューで評価が低い作品には必ずといっていいほど“Too slow”とか書いてある。歩くのは遅いくせに、不思議な人たちである。ところで巷にあふれるポスターではShraddha Srinathの胸の大きさがどうしても気になる。で本篇で確認したけど、やっぱりあれはフォトショだな。英語字幕あった。
#28「Shuddhi」Adarsh Eshwarappa/2017/インド/Mar. 19/PVR: Orion★
インドにおける女性蔑視、レイプ事件多発問題に真っ向から挑み、かつエンターテイメント化した佳作。Lauren Spartano演じるアメリカ人女性が過去の忌まわしい事件のリベンジを、梶芽衣子のごとく冷徹に遂行する。ガンをぶっ放す様はかっこいい。彼女のほかの主要な登場人物はメディアで働く2人の女性。その一人Nivedhithaはどこかで見た顔だけど、思い出せないな。SyskaのCMに出てくるTamannaahのごとく横に引き伸ばされてた。レイプへの反対をストレートかつハードに描くストーリーはミステリー仕立てで、ふたつのスレッドが実はまったく異なる時制で進行していたことが終盤で明らかになるなど、憎い演出。Lauren Spartanoが最後に死なないのもいい。舞台がよく見慣れたバンガロールというのは、カンナダ映画では意外にも結構貴重。といいながら、Artville Cafeには行ったことがないのだけど。その他、MysoreやMangaloreが出てくる。英語字幕あり。英語台詞のときも付いてた。
#27「Trapped」Vikramaditya Motwane/2017/インド/Mar. 18/INOX Lido○
プロデューサーとして良作を連発しているこの人、久しぶりの監督作はかなり実験的。Rajkummar Raoが無人高層アパートの一室に閉じ込められ『The Martian』のMatt Demonのごとく渋とく生き延び地上に帰ってくるサバイバルもの。鑑賞前は犯罪ものかと想像していたのだけど違ってた。ジュガードなアイデア満載なところは楽しい。でも高所恐怖症持ちとしては、ベランダの鉄柵を切断し外壁をつたって地上へ向かうシーンでは手に冷や汗かいた。電気も水も食料もない部屋でベジタリアンを捨て手作りパチンコで捕獲した鳩を焼いて喰う。美味しかったんじゃないかな。さすがにねずみやゴキブリには手を出さなかったけど、自分のおしっこを飲むシーンあり。二組の観客が退場したものの、他は大騒ぎして観ていた。この話、火星よりよほどリアリティーがあるよ。100分余りの短さで、なんと正式にインターミッションがなかった。なくてもむりやり入れるのがインドの映画館なのにね。INOXの国歌はポップソングのように軽やかだな。
#26「Maanagaram」Lokesh Kanagaraj/2017/インド/Mar. 12/Cinepolis: ETA Mall○
IT企業に勤める人事部の女性、その企業を志望する二人の青年、そしてその企業をお客とする(従業員の通勤サービス)タクシー会社に就職したおじさんの4人に黒社会が絡む、ITとはまったく関係のない物語。偶然が重なりすぎている不自然さを感じさせないシナリオが巧い。歯がゆいすれ違いの連続。エンディングもかっこいい。男2人+女1人なのに有り体な三角関係にならないのも好印象。青年のひとりSandeepはVarun Dhawanに似てた。ヒロインのRegina CassandraはKarina Kapoor似の苦手系。今週は女優が不作だ。コメディアンのRamdossはいつもと同じなのだけど本作は結構好印象。妙なギャグはなく、ごく自然に少々不運な組織の人間を演じていた。しかし現在のチェンナイが舞台で、こないだ行ったばかりだし、少しは場所がわかるかなー、と期待したのに、まったくわからなかったよ。チェンナイ、広いんだなあ。細かいエピソードや人間関係を明確にするため、ぜひ字幕つきで観たい。
#25「Bengaluru Underworld」P N Satya/2017/インド/Mar. 12/Cinepolis: ETA Mall○
バンガロール黒社会の実録物かと期待したけど、普通のフィクションだった。Jr. NTR似のAdithyaが自分で仕組んだ襲撃でバンガロールのボスを救い、瞬く間に片腕にのし上がる。冒頭の、相棒になる男との出会いではBunとChaiを奢ってもらったくせに、すぐに偉そうな口をきくのが変だ。バンガロール黒社会には仁義というものはないのか。実際、仁義のない殺伐とした争いが続く。レイプあり、ドラッグあり、誘拐あり、殺人あり。アクションシーンはカットを多用してローコストでいい出来に仕上がっている。ありがちな、覆面警官ものじゃないところがいい。エンディングも悪くない。一応、歌とダンスもある。相手役のPaayal Radhakrishnaという新人女優はいまみっつくらい。鼻が好みじゃないな。主人公の敵であることが判明する警官のDaniel Balajiがインドに帰国する便がANAだった。って、ANA、バンガロールに飛んでないし。Cinepolisの国歌はスローペースでかつ字幕が付いていて、練習にはちょうどよい。しないけど。
#24「Hebbuli」S. Krishna/2017/インド/Feb. 26/Siddeshwara Theatre○
Amala Paulの初Sandalwood出演作。主役Sudeepの自宅に近いローカル劇場での鑑賞。指定席80ルピー。シネコンに来る客とは雰囲気がまったく違う。始まってからも場内の騒ぎっぷりは台詞が聞こえないほど。異国人は珍しいらしく、入場前に何度か声をかけられた。カンナダ語わかんのか?みたいな。ま、いいじゃん。わかんなくてもわかるのがSudeep映画ってもんさ。今回は兵士役で冒頭はカシミールが舞台、ヒンディー語喋ってた。殺される兄役にV. Ravichandran、敵役のひとりはいつものP. Ravi Shankar、道化役もいつものChikkannaという布陣。ストーリーは割愛して、肝腎のAmala Paulはお医者さんでなぜかカシミールに来ていて、なぜか事件に巻き込まれSudeepに助けられる。で、Sudeepがバンガロールに帰ったら、なぜかやはりそこの病院にいるんだな。ちょい役ではないが重要な役とも言い難い、インド映画ではよくある位置づけ。ただし、華やかさ創出には大きく貢献。昨夜DVDで観た『Mynaa』とのギャップを存分に愉しんだ。
#23「Rangoon」Vishal Bhardwaj/2017/インド/Feb. 24/PVR: Forum○
Bloody Hell。Shahid KapoorとKangana Ranautという若手実力派の共演は大成功。第二次大戦中のインド・ビルマ国境戦線を背景に、永遠の紋切り・三角関係と活劇、ちょっぴりミュージカルも入る一風変わったマサラムービーに仕上がっている。三角形の一角Saif Ali Khanも予想どおりの役回りをそつなくこなしてて悪くなかったよ。人気女優Miss Julia(Kangana Ranaut)が劇中ヒロインさながらにINA戦士(Shahid Kapoor)を救いに行く場面にはワクワクしたね。この二人に捕らえられる皇軍兵士に川口覚という日本人俳優。自然な日本語が聞けてホッとした。Shahid Kapoorの日本語にはニッとした。さて、懸念していた国歌(というか国歌になる前のタゴールの歌)は抑制され、“起立せんかい”という圧力は感じなかった。周囲も起立している気配は感じず。でも三度もかけなくてもいいと思う。歌詞、元々は“Jaya Hai”じゃなくて“Jaya Ho”だったのか。映画の序盤の舞台はボンベイ。Eros Theatre(もちろんセット)が出てきた。
#22「Silence」Martin Scorsese/2016/米/Feb. 19/PVR: Market City○
遠藤周作の小説『沈黙』をスコセッシが映画化。重い。鎖国(という言葉はなくなるの?)中の江戸時代初期におけるキリスト教禁止に伴う隠れキリシタンの苦難と密入国した宣教師の苦悩が、なかなかきつい拷問の描写とともに描かれる。踏み絵か。熱心な信者だとやはり踏めないものだろうか。僕ならキチジローみたく方便として踏んじゃいそうだ。心の問題だからね。日本と同じく多神教のヒンドゥー教が主流のインド人はどう感じたんだろう。みんな静かに観てたけど、どちらかというと日本寄りかもな。(そういえばアメリカ人らしき家族が観客にいたが、ちゃんと上映前の国歌で子供まで起立してた。) ロドリゴとフェレイラが会うお寺で流れていたのは仏説阿弥陀経のように聞こえた。ロケ地は台湾とのこと。確かに日本にしては緑が深すぎるし、エキストラの顔が日本人にしては濃いのがいた。長崎奉行役のイッセー尾形がうまかった。篠田版(1971)が猛烈に観たい。フェレイラ神父が丹波哲郎だと。
#21「Ezra」Jay K/2017/インド/Feb. 19/PVR: VR
『Chowka』を観ようと思ってたのに、騙されてホラー。ホラーは嫌いだって。なんでお気に入り女優も出ないのにホラーを観なきゃいかんのだ。舞台はFort Kochi。シナゴーグからDybukkなる謎の箱が盗み出され、中に潜んでいた霊が主人公(Prithviraj Sukumaran)の妻(Priya Anand; Katrina Kaifを南インド化したような感じでなかなかセクシー)に取り憑いて怪奇現象が起きる。エクソシストの出番である。うーん、最初の犠牲者であるアンティーク屋の従業員が殺される理由がわからないし、何度か見られる少女霊の意味も不明。アラビア海に棄てられたDybukkはラストシーンでなぜかMumbaiの海岸に流れ着く。怨念が消えたんなら無害のはずだが続篇やるの?など、謎多すぎ。核廃棄物運輸業の話も取って付けたようで弱い。せめてもう少しFort Kochiを堪能させてくれてもよかったのでは? Old Thoppumpady Bridgeだけはたびたび出てきた。英語字幕あり。マラヤラム語とヘブライ語で字体を分けてほしかった。
#20「The Ghazi Attack」Sankalp Reddy/2017/インド/Feb. 18/INOX Lido○
1971年の第三次印パ戦争のきっかけとなった事件をベースとした潜水艦もの、インド版『Uボート』である。パキスタンの潜水艦Ghaziとインドの潜水艦S21の水面下の戦い。S21は当然ソ連製。内部の表示がキリル文字だ。インド海軍がベンガル湾に派遣したS21は、Ghaziが撃沈したインドの商船にいた女性(Taapsee Pannu)と少女を助け、ふたりを乗せたままGhaziとの戦闘に入る。史実だろうか?このふたりの映画における存在意義が希薄だ。S21の艦長はKai Kai Menonで、できない上司の典型みたいな描き方でドラマを生みながら、敵の機雷に触れ殉死する際に艦員を身を張って助けたことがわかり“みんないいひと”化してしまう残念なシナリオ。当然悪者はパキスタンで、劇中に国歌が二度も流される“いい加減にしろ”愛国映画になってしまったのであった。上映前のはちゃんと起立したのだがこの二回は静観。周りのインド人は“ほとんど”二度とも自動起立していた。恐るべしインドの愛国教育。確か来週末も国歌が流れる映画を観るはず…。
#19「Si3」Hari/2017/インド/Feb. 12/PVR: Pepsi IMAX○
IMAX作品じゃないのに420ルピーは高いぞ。Surya主演のスーパーコップもの第3作である。前2作はもちろん未見。うーん、これなら『Bogan』に負けている。やたらとテンションが高く、“俺が法律だ”的なSingam(Surya)は強すぎで面白味に欠ける。自動車より速く走れる人間って、いくらライオンだからってむりでしょ。随所に挟まれるSooriやShruti Haasanのギャグも寒いし。Shruti Haasanのハスキーな生声を聞けたのはうれしいけど、ちょっとこの役は安売りしすぎだな。道にゴミを捨てたり道ばたでおしっこしたりするんだから外国から産業廃棄物輸入して棄てても構わんだろという悪役の言うロジックに納得しかけたことに反省。みんなもゴミを捨てることを反省してほしい。Singamの奥さん役のAnushka Shettyは、前作はどうだったか知らないけど、こりゃ太りすぎでしょう。この体でItem Numberはきびしい。Singamシリーズ、あといくつ続くのか不安だ。本人も不安に違いない。メモ:英語ときどきタミル語字幕あった。
#18「Bogan」Lakshman/2017/インド/Feb. 12/PVR: Forum○
フェイス/オフ』に似ていると聞いていたがそうでもなく、これなら『君の名は。』の方が近いかも、とまで思った。“入れ替わってる”ってね。Jayam RaviとArvind Swamyの『Thani Oruvan』コンビ。Jayam Raviの奥さん役Hansika MotwaniがNayantharaだったらなあ、と思うのは僕だけではあるまい。Hansika Motwaniの酔っ払い姿もなかなかキュートだったけど。映画はおもしろかった。製作側も自信があるらしく続篇を予告。中味はサイキックというかファンタジーというか空想的(荒唐無稽と書き換えても可)なファクターが強いのだがそれを許容できる出来。主演のふたり、特にArvind Swamyがうまいんだと思う。入れ替わった演技も達者。しかし『君の名は。』のように男女が入れ替わるならともかく、男同士はいやだよな。トイレが最高にいやだ。そういうところも描いてくれなくちゃ。Jayam Ravi登場時のタミル映画オマージュダンスはなかなかよかったな。“だめだだめだ”ダンスも(違ったかな?)。
#17「Jolly LL.B 2」Subhash Kapoor/2017/インド/Feb. 11/Rex Theatre○
Arshad Warsiだった主演を大スターAkshay Kumarに置き換えての続篇。前作は観ていたと思っていたが、単にArshad Warsiの別作品と勘違いしているだけだった。裁判ものはやはり字幕なしでは辛い。単館で観たため場内はとても盛り上がっていて蚊帳の外状態。どうやら前作とのつながりは大きいらしく、裁判官役のSaurabh Shuklaやグル役のSanjay Mishraが登場する際も場内ヒューヒュー。ふむむ。それでも、Akshay KumarがBig Bossのランニングシャツでガンガに飛び込むとか、Saurabh Shuklaの部屋にAlia Bhattの写真がかかっているとか、わかるところでは笑わせてもらった。Akshay Kumarの奥さん役にNo-problem-na姐さんHuma Qureshi。健康優良児のお母さんにしては色っぽすぎる。事件の被害者の自殺しちゃう奥さん役のSayani Gupta(『Parched』に出てた)はなかなかよかった。それにしてもあらすじは把握できてもキーポイントがわからないのは無念だ。なぜカシミール? 開映前に国歌がなかったのが驚き。必須じゃなかったのか。
#16「The Narrow Path」Satish Babusenan/2016/インド/Feb. 5/PVR Orion Mall (BIFFES)○
韓国映画『Wailing』に並んでたら400席の劇場が満席で入れず、急遽駆け込んだマラヤラム語作品。こちらも満席寸前で席がなんとか確保できた。よかった。スラムに住むダリットの父子の“最後の一日”をつぶさに描く。全篇ビデオ撮影で、おそらくカメラは1台だが、カットの多さにびっくりする。その上での最後の長廻しはインパクト大。互いに冗談を言いながらもややぎくしゃくする父子のやりとりは端から見ても愛情が感じられる。糖尿病により脚が不自由で介護の必要な父親を残してバンガロールにカースト違いの恋人と移住しようとする息子は、ギリギリのラインで父親の元に留まることにする。それを知った父親は…。バンガロールについて厳しい評価を下す件には場内から笑い。そうだ、バンガロールに住んでもいいことはないぞ。リッチな恋人はあまり魅力的な容姿ではなかったが、青年の住まいを見ても動じないし、お手伝いにきている女性との間をすかさず疑う鋭さもあって、青年より二枚は上手って感じだった。
#15「Maj Rati Keteki」Santwana Bardoloi/2016/インド/Feb. 5/PVR Orion Mall (BIFFES)★
記憶に関する映画。自伝的作品は書くが自伝は書かない、とは主人公である10年ぶりに故郷のアッサムを訪れた作家の弁。いやな思い出は普段忘れているし、憶えていても自伝的作品には(いやおそらく自伝にも)書かないものである。この作家(Adil Hussain)がGuwahatiで作家の卵の女の子、自分が強く影響を受けた老作家に会いながら、自分の子供時代の記憶を追う。高くないカーストの家に生まれた3人兄弟(作家は真ん中)と、近所の家の丁稚でほとんど奴隷か家畜のように扱われるある低カーストの青木放屁みたいな男の子。ふたりはともだち。最初はよいエピソードが並ぶが、深く思い出すうち、最後には丁稚の死に際し何もしなかった自分が浮き彫りになる。監督が女性だからというのではなかろうが、ヤスミン・アフマドを思わせるやさしい視線の作品だった。ま、基本、子供映画には弱い。作家の卵の女の子は、漫画みたいな鼻ペチャ顔でかわいかった。国際映画祭は、なんといっても全作英語字幕付なのがありがたい。
#14「The Road to Mandalay」Midi Z/2016/台湾=ミャンマー=仏=独/Feb. 5/PVR Orion Mall (BIFFES)○
原題は『再見瓦城』。また再見映画である。タイに不法入国した華人系ミャンマー人の女性がバンコクで苦闘するさまを描いた力作。不美人ゆえに風俗には誘われず皿洗いや工場勤め。その間に身分証(ID)を取得しようと奔走する。夢は台湾への移住、って台湾が出てくるのはそこだけ。できたボーイフレンド(同じく華人系ミャンマー人)は現状に満足しIDに興味がない。どうしてもIDが欲しい彼女はとうとう体を売って金をつくり、IDを手に入れて収入のよい職を得る。かくして、経緯を知ったらしいボーイフレンド(この時点では元カレ、おそらく)はアパートに引っ越した彼女を殺しに行く。描写が興味深い。彼女が売春するホテルの部屋にやってくる客は巨大蜥蜴だし、彼女を殺した元カレはその場で頸動脈を切って自殺するのだがその血の噴き出し方が加藤泰も感心するほどどぎつかった。タイもインドと同じく、警察はとことん腐敗した組織として描かれてるなあ。ところでSouth Mandarinって何語?
#13「Uppina Kagada」B. Suresha/2017/インド/Feb. 4/PVR Orion Mall (BIFFES)○
Devara Nadalli』のSresha監督の新作、ワールドプレミア。上映前に監督や主演女優Apoorva Bharadwaj他のあいさつあり。隠遁に近い生活を送る彫り師(刺青のではない)、彫り師の作品を売る商売人、そして彫り師の娘を自称する若い女性というミニマルな登場人物による意欲的ドラマ。画はきれいだったのだけど、なんというか全体として優等生的でワイルドな趣がない。シナリオの練りがいまひとつだった気がする。例えば彫り師はなぜ喋らないのか、女性と自分の関係を知っていながらなぜそれを言わないのか、わからない。その女性と彫り師の関係が明らかになるのはちょっとしたミステリーなのだが、そのからくりには“なるほど”とは思うものの納得はできなかった。随所に挿入される歌は悪くないけど、取って付けた感が若干ある。そもそもなぜApoorva Bharadwajはギターを持っているのだ。渡り鳥か? 主な登場人物にはもうひとり笛吹きのじいさんがいた。これは前作と同様クリシュナだろう。監督の神様かな?
#12「Yourself and Yours」ホン・サンス/2016/韓国/Feb. 4/PVR Orion Mall (BIFFES)○
もともとダルデンヌ兄弟を観ようと思っていたのに、上映スケジュールが直前に変更された。変更後のプログラムが去年のTIFFで観た『あなた自身とあなたのこと』で、好きな作品だし(ってホン・サンス作品はどれも好きだが)せっかくなので再見することにした。男と女、酒、映画監督の3点セットで構成されるホン・サンス作品は何度観ても気持ちいいものだ。本作では、いつもの空想に加えてミンジョンの忘却(のふり、としか思えない)が作品の雰囲気を普段よりさらにおとぎ話化している。以前も書いたけど、女の子の喋る韓国語は最高にキュートに響く。この小憎らしいミンジョンでさえ。韓国人に日本語はどう響いているのか興味あるなあ。インド人、ときどき笑いが起こってたけどたいしたことなかった。終映時の拍手もまばら。やはりメンタリティが違うのだろうか。ところでBIFFES、国際映画祭なんだし国歌は必要ないんじゃないかな。インターミッションがないのはいいけど。
#11「再見女兒」陳宇詰/2016/台湾/Feb. 4/PVR Orion Mall (BIFFES)○
在印5年目にしてベンガルール国際映画祭に初参加。Web情報もようやく充実し、行き方がわかった。で、いきなりの台湾電影。シネスコでびっくり。インドだから上下勝手にトリミングしたんじゃないかと思った。北京からやってきた異母妹の死を巡り、台北に住む女子大生(林子熙)、父親(李天柱)、その現妻(大陸人)、元妻(台湾人)間の人間模様が描かれる。前半は若干ミステリーっぽく、どのように妹が死んだのか観客が興味を継続できるしくみになっていて、それがわかった後半は、死に至る背景に迫る。特に父親の心理、娘への思いを追っていて、深い。自分の娘を殺したとして林子熙を非難するビラを大学で配る元妻の行動が大陸っぽかった。林子熙ははじめて見たと思うけど、なかなかいい。インド映画ばかり観てるとこういう薄い顔が懐かしくなるよね。李天柱は小沢昭一に見えてしかたなかった。台湾の山本太郎(黃尚禾)も出てたし、変に日本と台湾の近さを感じるのであった。
#10「Bairavaa」Bharathan/2017/インド/Jan. 28/Sathyam Cinemas○
Vijay 60は、あまりヒネリのないアクション。相手役にKeerthy Sureshというおしん(←『水戸黄門』の方)みたいな女優、敵役PKに渋いJagapathi Babu、相棒にSathishという布陣。タミル映画といえばそのダンスシーンの楽しさだが、本作では期待したようなルンギダンスやサリーダンスはなかった。終盤の法律無視のハチャメチャな死闘(といってもVijayはぴんぴんなのだが)のあとで、VijayとKeerthy Sureshはくっついたのかな? とすると腕を切られた若いのはどうなったんだろう。そのあたりがモヤ〜。まあそれなりに楽しめたからよかったとしよう。Nayantharaも一瞬出たしね。写真だけど。チェンナイの劇場の雰囲気はバンガロールのシネコンとはやや違って、盛り上がってた。予告篇でもヒューヒューやってたし。大型の革張りシートで120ルピーという値段は満足度高し。上映前の国歌は威勢がいいし、インターミッションにはJayaさん追悼ビデオがかかってたのがタミル・ナドゥらしいところ。
#9「Jomonte Suviseshangal」Sathyan Anthikkad/2017/インド/Jan. 22/PVR: Forum○
Dulquer Salmaan主演のダブルヒロインもの。ヒロインの一人目は多髪テロリストAnupama Parameswaran、二人目はわれらのAishwarya Rajesh。マラヤラム映画にも出るんだ。実業家Mukeshの息子Dulquer Salmaanは気ままな学生暮らしで同じく裕福なAnupama Parameswaranと恋人になるものの父親の会社が倒産。豪邸を手放しTamil Nadu州Tiruppurに父親と引っ越す。恋人とは離別。Tiruppurでは繊維業で働き、そこで得意先で働く平民のAishwarya Rajeshに出会い、しごとは順調、一家を立て直す、というお話。Aishwarya Rajeshがなかなか出てこず、隣の子供からのアタックにも辟易し(他人の袖を掴むわ、脚は蹴るわ)、イライラしてたら後半の途中から登場。ようやくしあわせになれた。ヘンなフランス人のおばさんが突然現れ、突然ふたりがこのおばさんをインド観光に連れて行くシーンが変だ。序盤にMukeshに小切手を切るおっちゃんはあとで鍵を握ると思っていたのだが、結局最後まで出てこなかった(と思う)。おかしいな。字幕が欲しかった。
#8「Beautiful Manasugalu」Jayatheertha/2017/インド/Jan. 22/PVR: Forum○
Breaking News.『Lucia』のSathish NinasamとSruthi Hariharanの共演ふたたび。警察の腐敗とマスメディアの下劣さを痛烈に批判する佳作。2013年に実際に起きた事件がベースらしいが、扱いが小さかったのか記憶にない。Sandalwoodには欠かせないAchyuth Kumarが無実の美容師Sruthi Hariharanを貶める悪徳警官を演じる。Sathish NinasamがSruthi Hariharanに猛烈アタックをかける前半と“事件”が起こってからの後半の落差が大きい。みんなが恐れていた結末を避けている点は賛否あるかもしれないけど、僕はあれでよかったと思う。見どころはもちろんSruthi Hariharan。月8000ルピーの給料で一家を支える健気な女性を健気に演じている。あいかわらず美しい。序盤に毛穴まで見える顔の超アップがあってびびった。いつも鼻ピアスしてるけど、あれって取るとそこから鼻水が漏れたりしないんだろうか、と余計な心配。大衆のいやらしさに迎合するマスメディアは政府に迎合するマスメディアよりはマシと言えるだろうか。英語字幕あった。
#7「Khaidi No. 150」V. V. Vinayak/2017/インド/Jan. 21/PVR: Forum○
役者兼政治家の“MEGA STAR” Chiranjeeviの第150回出演作品。Vijayのタミル語作品『Kaththi』(2014)のテルグ語リメイクである。あの頃流行った(いや、いまでもか)二役もの。オリジナルは劇場ではなく飛行機で観たんだった。村の水問題とMNCによる暴力的開発問題が主題。プロデューサは“MEGA POWER STAR” Ram Charan。本作4本目のItem numberでカメオ出演もしてた。オリジナルではSamanthaだった相手役はKajal Aggarwalに。ダンス中にChiranjeeviが彼女の腰のあたりをやたらと触るのが気になった。オリジナルではChennaiだった舞台はもちろんHyderabadに。でも冒頭の刑務所はやはりKolkataなのだった。うーん、実際Vijayの演技をよく憶えていないのだけど、役どころからするとChiranjeeviの方が向いているような気はするな。メガネをかけてもインテリには見えないのが問題だけど。Brahmanandamが出てきて0.5秒で場内がざわめいた。そんなに面白いかね、あのおっさん。
#6「Dhuruvangal Pathinaaru」Karthick Naren/2016/インド/Jan. 15/PVR: Forum○
タミル語、字幕なしで撃沈。若干21歳の監督のデビュー作で『D16』とか呼ばれて高い評価を得ているミステリー作品なのだけど、自分の中で謎は解けずモヤモヤしたまま劇場を後にした。回想形式で進むストーリーは目まぐるしく時制を変える。シーンの冒頭に時期、時刻が(英語で)示されるのだけど、おもしろいのは事件が起こったのが2016年で、現在がその5年後というところ。容疑者追跡中の事故で片脚をなくした元MPS捜査官の主人公Deepak(Rahman)が引退後の“現在”暮らしているのがOotyで、事件が起こったのがCoimbatoreという舞台設定である。Deepakのスマホ充電と相棒Gauthamのおっちょこちょいさがキーポイントだろうと目星を付けたのだが、一向に話が見えてこないうちに、DeepakをOotyに訪ねる男(Ashwin Kumar)が自分の正体を明かし(ここ、納得いかない)てDeepakを射殺、なに〜と思う間に終わっちゃった。情報武装後、リベンジが必要であるが、やはり字幕が欲しい。
#5「xXx: Return Of Xander Cage」D. J. Caruso/2017/米/Jan. 14/PVR: Pepsi IMAX○
Vin Dieselってよく知らないし『xXx』も初耳だし、本来ならどうでもいい作品なのだけど、Deepika Padukoneが出るというのでインドで話題だし、キャストを見ると甄子丹やTony Jaaの名前があって、格闘系ならずともこりゃ観た方がよかろうと思った次第。IMAX 3D。IMAXの大画面と音響は好き。でも3Dはね、いまひとつだと思うし、本作も3Dを活かしているとはいえなかったな。3Dメガネが重くて頭痛くなった。映画はタイトルクレジットから“HUA HUA”だの“Shanghai”だの出てきて、中国資本に気づく。が、さいわいなことに文化工作的な面は最後まで認められなかった。不条理なアクション虚篇の物語には触れる気にならない。CIA本部でのDeepika Padukoneの登場のしかたはかっこよかった。場内歓声。甄子丹のときにはなかったのが不満だ。Tony Jaaのキャラがよかったな。上映前の国歌謹聴時、国旗もIMAXの大スクリーンで見せたわけだが、どうせなら3Dにして欲しかった。そいや、なぜかサッカーのNeymarが出てた。意味不明。
#4「Haraamkhor」Shlok Sharma/2017/インド/Jan. 14/PVR: Forum○
Nawazuddin Siddiquiが学校の先生だというので、いつもと違うNawaちゃんが見られるのかと思ったら、いつもと同じだった。自分の生徒の女の子の脚にムラムラっときちゃって不適切な関係になってしまう話。この女の子を演じたShweta Tripathiがまた驚きの30歳越え。年齢半分以上サバ読んでるよ。もちろん不適切なシーンはそれを暗示するシーンしかないのだが、いちいち“子供との不適切な行為は犯罪です”(意訳)という字幕が出ていた。この女の子を好きな同級生の男の子とその友達の行動がむちゃくちゃで子供っぽくておもしろかった。しかし子供って同じ歳だと女の子が成長早いのはわかるけど、これは段違いだなー。Nawaちゃんちの台所の棚が銀色の食器で圧巻。これがインドの普通の家庭の台所だろうか。奥さんと2人暮らしなのに10枚以上ターリーがあったぞ。舞台であるUP州の田舎は風力発電所。何もないところに回るプロペラが不思議な雰囲気を出していた。インドの大部分の土地はこんな感じだよね。
#3「Dangal」Nitesh Tiwari/2016/インド/Jan. 8/PVR: Forum○
Aamir Khanの新作はえらく評判がよくロングランの兆し。優先順位は低かったが他に観るものもないので出かけた。レスラーの父と娘の物語で、モデルが実在する。こういう国威昂揚もの、インド人好きだよねー。スポ根ものなら『Bhaag Milkha Bhaag』が僕はいいな。あ、見方を変えると、最近国がキャンペーンしている“女の子をちゃんと育てよう”運動の応援作品といえるかもしれない。生まれるのが女の子で心底残念そうなAamir Khanとか、幼い頃からトレーニングを強制し髪もバッサリ切るAamir Khanとか。もしかしたら国を代表するアスリートになるかもしれないからね。結果オーライの世界。さて映画では、恐れていたとおり最後に娘がCommonwealth大会で優勝し国歌拝聴。国歌に機械的に反応するインド国民、なんとかならんかな。きょう2度目だよ。Aamir Khanのたぷたぷのお腹は実物だろうか。確か6パックだったような。特報:姉妹を応援する近所のひとに三井弘次がいた。
#2「Kirik Party」Rishab Shetty/2016/インド/Jan. 7/INOX: Garuda Mall○
Rakshit Shetty主演のSandalwood版『Premam』。リメイクではないのでストーリーは異なるが、印象はかなり近い。1人目のGFであるRashmika Mandanna(彼女が『Premam』でのSai Pallaviに相当)がきれい。まだ20歳、ってRakshit Shettyより一回り年下じゃん。というかRakshit Shettyが大学生を演じるのがムリなのだ。カレッジで仲間を率いて青春の暴走の限り(とはいえ健全なものだ)を尽くす青年像はインド人には響くのか、隣席の女の子のダイナミックな鑑賞ぶりに(やや鬱陶しかったが)感心した。些細なギャグで大笑いし、Rashmika Mandannaの父親に会うシーンでは泣いていた。その間は電話したり席を外したり、アイスクリームを2つ同時に食べたり。売春婦のエピソードにはかなり唐突感あり。Rashmika Mandannaが肩入れする背景がよくわからなかった。とはいえ、全体としてシナリオはうまくまとめてあった。2人目のGFであるSamyuktha HegdeもRashmika Mandannaと同じく新人らしいが、こちらはどこかで見たような子だったな。
#1「擺渡人」張嘉佳/2016/中国/Jan. 1/Shaw Theatres Lido (Singapore)
王家衛の澤東電影有限公司創立25周年(だったかな?)作品ということで梁朝偉、金城武主演。残念ながら王菲も林青霞も出てこないが、脇にAngelababy(楊穎)←ここ重要。この3人の恋愛話が軸で、上海のバー店主である梁朝偉が周囲の人間の人生相談を受けるエピソードの積層。なぜか梁朝偉の恋人の杜鵑がなかなか出てこず、これが下らない話にも拘わらず観客をおしまいまで惹きつけておくポイントになっている。下らないといえば金城武と張榕容(お、ひさしぶり)のエピソードはどうしようもないギャグの連打で疲れた。楊穎の、相手が陳奕迅のは結構よかったよ。ただし、熊黛林との9ホール・バーゴルフ(?)対決は×。楊穎はどう撮影してもかわいいけど、本作では杜鵑のエキゾティックな魅力に負けていたな。それにしても、梁朝偉にはこんな悲惨なコメディーでなく、もっと渋い作品に出ていただきたいものだ。公開後日がたっていたからか、小さなスクリーンで観客もまばら。新年にしてはちと淋しかった。

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Updated: 12/26/2017

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