寿福寺総門の真ん前が扇ヶ谷踏切です。
JR鎌倉駅からは、裏駅(江ノ電鎌倉駅のある側)に出て、ロータリー正面の道を進むとすぐにスーパー紀ノ国屋のところに出ます。ここで右折するとその道が今小路です。あとはこれをひたすら進みます。八坂神社の先、右手です。
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『麦秋』で、原節子が子持ちの男・二本柳寛との結婚を勝手に決めた重苦しい空気の家から逃げ出すように、父親・菅井一郎はカナリヤの餌を買うと言って出かけます。庚申塔の横から踏切へ。電車が行き過ぎるのを待つ間、道端に腰を下ろして空を見上げます。遮断機が上っても彼はそこを動きません。
この庚申塔は寿福寺境内の端っこ、八坂神社との境界で今小路に接したところに、他の塔と一緒にされてひっそりと立っています。ここから右にすぐ曲がれば踏切です。菅井一郎が座っていたところは生垣が繁っていて、ちょいと座れそうにはありません。交通量も割に多いですから、車にも気をつけなくてはいけません。空を見上げるのも大変です。
実際、菅井一郎の気持ちというのはどんなものだったのでしょう。いつも「うーむ」とか「寝ようか」とか「そりゃあいいね」とか、何も考えていないように見える菅井一郎。このときも、原節子の行く末を案じているのではなく、空のうろこ雲を見ながら「腹が減ったなあ、晩ご飯は魚がいいなあ」と思っているだけかもしれません。
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