浄智寺あたりから扇ヶ谷に徒歩で移動するには、亀ヶ谷の切通しを通ります。まず、鎌倉街道に戻ります。右折するとすぐJR横須賀線の踏切。これを渡り、道なりにしばらく歩くと“茶屋かど”というお店があり、これが亀ヶ谷切通しへの曲がり角です(案内板があります)。右折します。緑いっぱいの峠道を越え、下り坂になれば扇ヶ谷です。道をどんどん下った突き当たり、岩船地蔵堂のところで右折。扇ヶ谷ガードをくぐります。するとすぐ右手に石段があります。
JR鎌倉駅からは、裏駅(江ノ電鎌倉駅のある側)に出て、ロータリー正面の道を進むとすぐにスーパー紀ノ国屋のところに出ます。ここで右折するとその道が今小路です。あとはこれをひたすら進みます。八坂神社、寿福寺、英勝寺を過ぎ、下り坂を下りきったところが扇ヶ谷ガードです。
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ちなみに、岩船地蔵堂のところで左折するとその先に旧里見トン邸があります。小津監督も里見邸を訪ねるときは亀ヶ谷の切通しを使ったのでしょうか。
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『晩春』は、ひと言でいうと“しつこい”映画です。湘南遊歩道のサイクリング、杉村春子をやりこめる笠智衆の「いや、喰う」、能の舞、縁談が決まって最後のダダをこねる原節子を説得する笠智衆の語り、どれも永遠に続くのかと思わせるほど長い。そんな中でも、ひときわ長く感じるのが原節子と笠智衆が一緒に出京する際に乗る横須賀線のシーンです。
これらのシーンが、退屈だとか、不要だとか、そういうことではもちろんありません。また、最もしつこいのは三島雅夫ですが、それを論じるのは別の機会に。
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このシーンのしつこさは、監督のというよりも、鉄道オタクとして有名だったキャメラの厚田雄春によるところが大きいでしょう。二人は鎌倉駅で電車に乗り、東大教授である笠智衆は東京駅まで、病院に行くという原節子は新橋まで行くものと思われます。
原節子が行く病院は具体的に示されてはいませんが、のちの『彼岸花』で出てくることから聖路加病院あたりを想定しているものと想像します。ただし、実際にはまだGHQに接収されているような気もしますけど。
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シーンは、車内の様子と車外の様子を交互に見せることで進行しますが、鎌倉駅ホームのショット後、車外の様子として最初に出てくるのはトンネルです。そしていまから見ようとしている扇ヶ谷トンネルが、そのトンネルなのです。
ガード横の石段を上ります。すると線路沿いにずっと小道が続いています。雑草が繁るこの道を進むとトンネルが2つ見えてきます。左のが上り、右のが下り。左だけがレンガ造りですね。映画では、このトンネルに二人の乗った電車が吸い込まれていきます。
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