[↓2018年][↑2020年]

2019年に観た映画の一覧です

星の見方(以前観たものには付いてません)
★★…生きててよかった。
★…なかなかやるじゃん。
○…観て損はないね。
無印…観なくてもよかったな。
▽…お金を返してください。
凡例
#通し番号「邦題」監督/製作年/製作国/鑑賞日/会場[星]

#105「Avane Srimannarayana」Sachin Ravi/2019/インド/Dec. 28/PVR: Forum Mall○
全インド(?)公開のRakshith Shetty主演、時代不詳Sandalwoodアクション・コメディー。オープニングに出てくるDr. Rajkumarはやはり全国的に知られているのだろうか? 映画は西部劇調で始まり、途中からマサラ色が出てくる。酒場の主はRishab Shetty。かっこよすぎ。Rakshith Shettyは凄腕で策士の保安官、ではなく警官。奪われた金銀を捜す異母兄弟を手玉に取り『野獣の青春』の宍戸錠のごとく…、あれ?結局彼の目的は何だったんだろう。兄弟それぞれのやくざ集団に加え、途中から『Tarak』のShanvi Srivastavaを頭とする演劇団が加わり、金銀捜しは混沌さを増す。なんだかんだで金銀が見つかり、Rakshith ShettyとShanvi Srivastavaはくっつき、兄は死に、弟は生き延びて、見つかった金銀はどこ行った? ちと難解で、これで国内制覇はむずかしいんじゃないかな。 3時間超えてるし。Achyuth KumarがRakshith Shettyの子分みたいな警官で出てたほか、知ってる顔がたくさん出てたな。字幕も出てた。
#104「Sarvajanikarige Suvarnavakaasha」Anoop Ramaswamy Kashyap/2019/インド/Dec. 22/PVR: Forum Mall○
Rishi主演のヒューマニズム・ファミリードラマ・コメディー。字幕があったので、危惧するほど置いてきぼりは食わなかったが、おもしろいわけではなかった。Rishiの幼なじみで恋人のDhanya Balakrishnanはてんかん持ち。彼女の誕生日に家族に隠れてふたりで遠出した際、彼女の母親がとても大切にしている金のチェーンをなくしてしまい、それを巡るトラブルを前景に家族のつながりを描く。Dhanya Balakrishnanが僕にはだめだ(彼女を予告篇で見て、この映画は“ない”と確信した)。Rishiは背も高いし男前なんだろうけど、Dhanushのような憂いもなく、アクションもリアリティーがなく、カンナダ映画界でスターになれるかどうか疑問。今回確認したのは、Sunny Leoneというひとはアイテムナンバーで出演したり、本作のように登場人物の口から名前が出るだけのことが多いのだが、それだけでインドでは絶大な唯一無二の存在感があるということ。ところで、Mylariのドーサ、おいしいよ。CTRのとは別の方向だけど。
#103「Dabangg 3」Prabhu Deva/2019/インド/Dec. 22/INOX: Mantri Square
『Dabangg』シリーズを劇場で観るのは初めて。わかっちゃいたけど、やはり観なけりゃよかったよ。Salman Khan作品独特のギャグとダンスと力学の法則を無視したアクションが繰り返し繰り出されてうんざりする。Makkhi(という名前の男)が登場するときハエの飛ぶ音が聞こえるとこだけ笑えた。奥さん役のSonakshi Sinhaの肌はありゃ絶対フォトショかかってるな。パート3ということで、話はSalman KhanがSonakshi Sinhaと結婚する前まで遡り、そこでSaiee Manjrekar演じる元恋人(Sonakshi Sinhaの姉?妹?)が登場する。彼女の方がSonakshi Sinhaよりいいよ。彼女を殺した残忍な敵役としてSudeepが出演。これ観にきたんだ。カンナダ映画のヒーローがボリウッドでどう活躍してるか確認しにね。実際、Sudeepは頑張ってた。普段彼を知らないボリウッドの観客にも一定の印象を与えたろう。Salman Khanのムキムキぶりは異常じゃない? あれ維持するのは大変だろうなぁ。観たのはヒンディー語版。字幕は普通になかった。
#102「Thambi」Jeethu Joseph/2019/インド/Dec. 21/PVR: Vega City○
同日公開のSivakarthikeyan主演『Hero』と予告篇を比較して選択したKarthiの新作。政治家Sathyarajの行方不明だった息子(Karthi)がGoaで見つかるが、そいつは偽物で詐欺師だったという、設定としては紋切り話。最初からThambi(弟)を疑う姉(Jyothika)がこわい。姉の若い頃は『Asuran』のAmmu Abhiramiが演じていて豪華。弟の元ガールフレンドは『Oru Yamandan Prema Kadha』のNikhila Vimalだった。ここから思い切りスポイラー。家族全員Karthiが偽物だと知っていて、なぜ解放しようとするんだろう。本物はまだあの場所に埋まったままなんである。そしてそれなのになぜKarthiは最後に残ることにしたのだろう。字幕があったらわかったんだろうな。みんな悪いやつという意味では面白かったけど、釈然としないよ。最近のタミル映画でよく見る“Child Super Star” Master Ashwanth Ashokkumarが本作にも出てた。こいつ『Kaaka Muttai』の勇ちゃんに似てるけど別人だよね。
#101「Mardaani 2」Gopi Puthran/2019/インド/Dec. 15/INOX: Mantri Square○
Rani Mukerjiふたたび。『Mardaani』の続編である。RajasthanのKotaという街にSPとして着任したShivani (Rani Mukerji)が今回立ち向かうのはレイプ犯。現実世界でも最近特に問題になっているが、本作も実話ベースらしい。犯人は若く、しかも殺し屋でもある。そのため凄腕捜査官対猟奇的殺人者みたいな構図になってしまい、巷で起きているカーストの絡んだ普通のろくでなしによるレイプ犯罪から離れ(逃げ?)、エンタメ度高めになっているのはある意味残念かな。それをさておくと、この犯人逮捕に向けひたすらハードに突き進むShivaniは相変わらずかっこいい。そして、追い込んだ犯人をベルトの鞭でむちゃくちゃにしながらも、殺さない。感情はどうあれ、法治国家はそうでなくてはならない。前作もそうだけど、この国で虐げられている女性という存在全体を救いたいのがテーマだからして、その辺りのメッセージは、演説なくともしっかり入っていた。なんと、ヒンディー語なのに字幕あった。
#100「Champion」Suseenthiran/2019/インド/Dec. 14/Cinepolis: Binnypet Mall○
サッカーの巧手だった父親の血を引いた息子が、Government School出という差別を乗り越えインド代表をめざして練習に勤しむスポ根ドラマ、ではない。謎だった父親の死の真相を知り、一度は復讐を誓うが、コーチの思い入れにより無傷で大会に向かう(あらすじ終わり)。息子役(Vishwa)もその2番目の恋人役(Mirnalini)も新人かな?と思ったけど、Mirnaliniは少しキャリアがあるようだ。Vishwaは本当にサッカーうまそうだったので、本作のために出演を依頼した素人かも。ヒンドゥー教徒が出てこなくて、キリスト教徒とイスラム教徒ってとこがタミル映画だな。というか、途中まではマレーシア映画のような雰囲気さえ感じさせた。上に書いた通り、主人公を助けるのはコーチ(Narain)。真の主役である。ちょいと高橋英樹似の不死身人間だった。草サッカーはみんな裸足。あれでボール蹴って痛くないのかな。突き指しそう。タミル映画は字幕ない確率高し。今回もこれにやられた。Cinepolisは国歌がまだあって、こっちもやられた。
#99「Miss Match」Nirmal Kumar/2019/インド/Dec. 7/PVR: Vega City○
題名でググると、アメリカのテレビシリーズとマラーティー映画が出てくる。確かにありそうな題名である。“Chennai Ponnu” Aishwarya Rajesh主演の本作は特に前出の2作と関連はなさそう。クリケッターに続き、今度はレスラーである。このままスポーツウーマン役専門にならないでほしい。テルグ映画なので、話はもちろんファミリーもの。ワイルドなレスラー肉食一家で育ち自分もレスラーのAishu (Aish? 母音で終わる方が南インドっぽいよね)が、Youth Summitなるイベントで知り合ったIIT Kharagpurの秀才Uday Shankarに一目ぼれするが、彼の家はインテリのヴェジタリアンだった。あとは推して知るべし。主役の男がかっこよくなくAishuと釣り合ってない。なぜかこいつも下側に同じように変な歯が生えてた。なぜかヒーローみたいに強かった。いろんな要素が乱雑に詰まった映画。ま、ハッピーエンドでよかったね。しかし、本物のAishuはもっと繊細なはず。字幕なかった。なんで?
#98「Alidu Ulidavaru」Arvind Sastry/2019/インド/Dec. 7/PVR: Vega City○
えらく評判いいみたいなんだけど、なんでかな。僕にはおもしろくなかった。ジャンルとしてはホラー。悪魔のいないことを証明するため、世の中の怪奇話の裏を暴くテレビ番組をもつ男(Ashu Bedra)が主人公。問題の場所にたくさんGoProを設置して謎を解く。で、100話目に選んだ、ひとが次々に死ぬという館で彼は死んでしまう。ここまでが前半。前半で主人公が死ぬってところは斬新でよかったのだが…。後半はいつのまにか白髪頭のインスペクターAtul Kulkarniが出てきてこの変死事件を捜査する。そしたらAshu Bedraが蘇生して、なんじゃそりゃ。じゃあもうAtul Kulkarniの出番ないじゃん。死にかけたのはLSDが原因だってさ。で、主人公による最後の悪魔についてのモノローグが、これまたなんじゃそりゃ。これに納得したひといるのかな。そもそも視聴率を第一に考えるテレビって、いつの時代だ。ところでPawan Kumarが出てたはずだけど、どれだったのかわからず。あはは。字幕はあった。
#97「Katha Sangama」Kiranraj K, Chandrajith Belliappa, Shashi Kumar P, Rahul PK, Jamadagni Manoj, Karan Ananth, Jayshankar A/2019/インド/Dec. 7/PVR: Forum Mall○
Naagarahaavu』の監督Puttanna Kanagalへのオマージュで、7人の監督による7作品のオムニバス。出演陣が地味に豪華。Kishore、Prakash Belawadi、Raj B. Shetty、Avinash、Hariprriya、Rishab Shetty…。面白かったのはAvinashのやつと、最終話。Avinashのは、英国に反抗しているゲリラ組織に通じる床屋に、ゲリラ討伐の命を受けた軍隊長Avinashが髭を剃りに訪れ、床屋がAvinashを殺そうかと葛藤する。髭剃りに対する床屋のプロフェッショナルなところがシャープ。最終話は、夫を亡くしHubliで一人になったお母さんが息子が働くBangaloreに出てくる。冷たい息子よりその友人のHarishを気に入ったお母さんは彼の誕生日にお菓子を買うため不慣れな外出をし、うちに帰れなくなってしまう。お母さん役の女性は素人だと思うが、行く先々でのエピソードがキラキラしてる。映画館で『Naagarahaavu』を観たりする。これを除くと、どのあたりがPuttanna Kanagal関連なのか、僕にはよくわからず残念。字幕あった。
#96「Hotel Mumbai」Anthony Maras/2019/豪=インド=米/Dec. 1/PVR: Forum Mall○
以降、国内でヒンドゥー教徒のイスラム教徒への憎悪が増したと思われる、2008年に発生したムンバイの連続テロ事件。なかでもTaj Mahal Palace Hotelへの襲撃を中心としたドラマ。まだインドに来ていなかった時代なのでよくは知らないのだけど、ジハードとしてパキスタンから潜入した10人組のうち6人が該ホテルに入り、従業員、宿泊客を銃撃し、ホテルに放火するなどした。ドラマなので、わかりやすくするため何人かにフォーカスをあて、ひとりを除き犯人を射殺しひとが全員ホテル外に脱出するまでを描写している。ただしヒューマンドラマは控えめで、ホテルの豪奢さと犯人の残虐性を強調している感。しかし発生から半日近く救出部隊がやって来ないなんて。すぐそこに海軍あるじゃん。海軍じゃ役にたたないのかね。えーと女優では、宿泊客としてイラン出身のNazanin Boniadiと、彼女の赤ちゃんのベビーシッターとしてTilda Cobham-Herveyが出色。Tilda Cobham-Herveyの方がタイプだな。ヒンディー語パートに字幕ついてた。
#95「Mundina Nildana」Vinay Bharadwaj/2019/インド/Dec. 1/PVR: Vega City○
これまたこれまでのカンナダ映画とは印象の異なるスタイルの作品。ふたりの女と出会う男の自分探しの物語。映像はかなりファッショナブルさを狙って撮っている。女はRadhika ChetanとAnanya Kashyap、男はPraveen Tej。Radhika Chetanは『U Turn』のひとだけど、Ananrya Kashyapは新人かな。ちあきなおみを若くしたような感じ。フォトグラファーのPraveen TejがキュレーターのRadhika Chetanと深い関係になるのだけど両親の離婚がトラウマで結婚には踏み切れず、一方で彼のモデルで医者志望の元気なAnanya Kashyapから慕われるという構図。Radhika Chetanが途中で癌とわかり、おや難病ものに移行かと思いきや、あっさり完治。じゃあ、ふたりはやはり結婚するのかと思ったらエンディングは、あらーの微笑みがえし。舞台はおもにバンガロール。Lavonneが出てきた。上映時間が2時間弱で短い。そして前半が1時間半、後半が30分の変則ぶり。なら休憩なしにしてもらいたいよね。字幕がスクリーン外で見えず。なんてことかしら♪
#94「Enai Noki Paayum Thota」Gautham Menon/2019/インド/Nov. 30/INOX Lido○
Asuran』からまだ2ヶ月足らずなのに、外さないDhanushの新作がまた公開。豪気だね。ラブストーリー基調のアクションで、歌もダンスも盛り沢山の『Dhanushは二度死ぬ』である。CS学生Dhanushが通う大学のキャンパスで映画撮影していた女優Megha Akashと恋に落ちるが彼女の養父が極悪でやくざに狙われるようになる。舞台はチェンナイからムンバイへ。そこに失踪中の兄が現れる。せっかくCS専攻なんだし事件を解く鍵にもう少し捻りが欲しかったところ。シナリオは監督が書いているようで、上述のラブストーリー基調もそうだけど凝っているというか変態的で、Dhanushのモノローグで進む時間の入れ替えと引き伸ばし方が興味深かった。Megha Akashは『Petta』にも出てたけど、横顔がAishwarya Rajeshを思わせる(というか彼女より美人)。正面顔が好みじゃないのでまあどうでもいいんだけど。字幕あった。字幕あるんだから“なに観るの?”としつこく聞くな→セキュリティーのあんちゃん。
#93「Aayushmanbhava」P. Vasu/2019/インド/Nov. 23/PVR: Vega City○
Dr. Shivarajkumarが例によって万能でいいひとを演じるホームドラマ。ただし、彼は家族の一員ではない。裕福な一家の主人はAnanth Nagで、列車で一緒に旅行中両親を亡くした孫娘(Rachita Ram)は発狂して隣に隔離中だが、他の大家族と一緒にMysoreの豪邸に住んでいる。孫娘の両親死亡に関係していたのがShivarajkumarで、一家にAnanth Nagの世話係として侵入し孫娘を正気に戻そうとするというお話。ShivarajkumarはKrishna、Rachita RamはLakshmiで、名前からふたりが結ばれることは示唆されるのだが、彼の正体が終盤まで明かされない。CBIあたりだろうと睨んだが、答はあまり納得いくものではなかった。しかしあの顔で、と言ったら失礼だけど、優しくてあらゆる女性にモテたりピアノが弾けたり料理が絶品だったりもちろん無敵だったり、Rajkumar家じゃなけりゃあり得ないだろ、と毎回思ってしまう。Rachita Ramを見るのは初めてかな? 頻繁にParvathyに見えてしかたなかった。ここのPVRでも国歌なし。字幕はあった。
#92「Mane Maratakkide」Manju Swaraj/2019/インド/Nov. 23/INOX: Mantri Square○
BookMyShowをチラッと見たらカンナダ映画界のコメディアン勢揃いだったので退散しようとしたら右端の方にSruthi Hariharanが。Arjun Sarjaとの#MeToo係争や出産で最近オファーが激減しているとのことで心配してた。明らかにバリバリの商業映画だし、どんな役かと思ったら幽霊。コメディー・ホラーだったのだ。ケララの豪邸で知らない間に死んだ4人が、豪邸に幽霊がいないことを証明にやってきたコメディアン4人(Chikkanna, Sadhu Kokila, Kuri Prathap, Ravishankar Gowda)を追い出そうとするのだがそれぞれの個性が災いしてうまくいかない。たわいもないギャグが続く。しかもときどき脅かされて、とても疲れたよ。コメディアン4人を紹介する意味なく長いエピソード。幽霊といえば、これ、という感じの風貌と行動。Sruthi Hariharanはそんな役を意外に楽しそうに演じていてひと安心した。バリバリのダンスも見られる。2週目で劇場は閑散。デートで来ているらしいカップルがいた。いいセンスだ。INOXにはまだ国歌がある。字幕もあった。
#91「Bigil」Atlee/2019/インド/Nov. 17/PVR: Forum Mall○
ヒットしたおかげで間に合ったNayantharaの新作はVijay主演。First halfは面白かったがSecond halfで失速。ヤクザなにいちゃん(もちろんVijay)が色々なバックグラウンドをもつメンバーからなる女性サッカーチーム(TN州代表)をインド一にする、ある意味単調なプロットに陥っている。ゲーム(インドではやはり“マッチ”)の描写はCGバリバリだし。メッセージは“女性みんな頑張れ”なのに、パワハラ、セクハラ爆発で、ここにいまの国際スタンダードに合わないコンサバなインドの葛藤がある。それに対しての前半は、Vijayの登場シーンもいいし、タミルダンスが炸裂、Nayanのワイルドぶりも最高だったよ。冒頭、古校舎の閉鎖に抗議する学生が邪魔な政治家(?)が配下に指令し、暴徒を抗議デモに紛れ込ませそれをきっかけに学生を排除するという最近どこかで聞いたような話があって暗い気持ちになった。ひと月ぶりにインドのシネコンに来たら開映前の国歌がなくなっていて拍子抜け。字幕があってラッキー。
#90「象は静かに座っている」胡波/2018/中国/Nov. 15/シアター・イメージフォーラム★
満州里のサーカスにずっと座っている象がいるらしいから見にいく。酔狂に聞こえるが、行き場をなくした人間がふと頭に浮かんだ記憶からその場所にとりあえず行くことにするのは、確かにありそうだ。ひとり残らず陰鬱な群像劇。暗い結末へ観客をゆっくり案内するために必然の長回し(現実には撮影期間の制約もあったらしいが)。ぼかした背景でのできごとが重要な特徴的な構図。もはやカラー作品だったことが思い出せないくらい、モノトーンな映像。ワンカット、ワンカットを食い入るように観た。監督が自殺したのは本作を完成してまもなくだったという。プロデューサーだった王小帥夫妻との本作をめぐる争いが背景にあったらしい。王小帥、この中国の『人情紙風船』を生んだ才能を失わせた責任は重大だ。学校の副主任と援交してた女の子(黄玲)のストレートヘアからちょこんと覗く耳がキュートだった。大象といえば『ラブ・ゴーゴー』。今年リバイバルしたの?も一度観たい。
#89「主戦場」ミキ・デザキ/2019/米/Nov. 13/シアター・イメージフォーラム○
公開から半年以上たってようやく観られた。半年たっても上映しているのがすばらしい。日本国内でいろいろ問題にされている作品だが、問題なのは出演している“歴史修正主義者”たちなんである。“公平じゃない”という意見もあるらしいが、民間がつくる一般映画に公平性は不要だ。あとは観るか観ないかの判断、そして観たひと個人の評価。編集の問題もあろうが、彼らの主張はやはりおかしい。日本の製品はすばらしく、韓国や中国には絶対につくれないそうだ。笑止。従軍慰安婦については証拠がないから強制連行はなかったという、間違ったいつものロジック。これも含めなぜ先の戦争を心から反省できないのかな。そこが前提。選民思想が強烈。みんな同じでしょ。純血にこだわり人口どんどん減らして日本がふたたび繁栄するとでも思ってるのかな? 日本会議って得体が知れない。不思議なのは男女平等に反対するこの団体を支持する女性がいることだ。…話が映画から逸れちゃった。
#88「WASP ネットワーク」オリヴィエ・アサイヤス/2019/仏=スペイン=ブラジル/Nov. 3/EX THEATER六本木(TIFF)★
アサイヤスの新作は、ソ連崩壊後、キューバへの波及を期待したアメリカとアメリカへ亡命しキューバの民主化を狙う組織に対抗して、カストロ体制を守るためにアメリカに渡った5人の工作員(ロス・シンコ)を描く実録物。ミッションを果たすため家族も欺き亡命者となるパイロット・レネーが中心。時折リアル映像を交えながら、大迫力かつスリリングな展開が続く。撮影にはキューバ側が全面協力したという。アサイヤスだからとはいえ、こういう作品をかける東京国際映画祭、まだまだ捨てたものではないな。WASPといえばWhite Anglo-Saxon Protestantだと思っていた僕には、本来の意味(スズメバチ)で使われていたとは、つまりWASPネットワークとは何かを知らなかったことが恥ずかしかったことは内緒。キューバに残された奥さんを演じていたPenélope Cruzはどこかで見た顔。でもフィルモグラフィーを見る限り、初めてだなあ。『Yesterday』のLily Jamesにちょいと似てる?
#87「ある妊婦の秘密の日記」陸以心/2019/香港/Nov. 3/TOHOシネマズ六本木ヒルズ(TIFF)○
原題は『Baby復仇記』。大変な状況にある香港のスローガン『香港人報仇』を思い浮かべるが、本作はコメディー。しかも鉄板の赤ちゃんものである。やはり政治ネタや警察ネタは避けた方が無難だよな。既婚でバリバリのキャリアウーマンが妊娠。海外勤務を諦め、出産に向け準備開始。姑がつけたコンサルの指導に四苦八苦。一方でプロバスケット選手の夫はこれを機会に普通のサラリーマンになると決意するも、よい職は見つからない。そのうちに誘われた秘密クラブ爸爸會は育児に疲れた夫たちの集まりで例のコンサルが名誉会長だった…。どこぞの国で出産時に妻が夫のキ●タマに紐を結びつけ妻が踏ん張るごとにそれを引っ張ることによって痛みを共有するという慣習をもとにある会員がつくった人形に爆笑。なるほどね。舞台は香港だけでなく、主人公の故郷として澳門も。この赤ちゃんが20代後半に成長したとき、香港も澳門も完全に大陸に吸収されてしまう、のか。香港争乱の行く末に目が離せない。
#86「ミンダナオ」ブリランテ・メンドーサ/2019/フィリピン/Nov. 2/TOHOシネマズ六本木ヒルズ(TIFF)○
東京国際映画祭だ。去年より地味に感じた。一本目はフィリピン映画。ゲリラと戦うためなかなかうちに戻れない夫をもつ女性が小児癌を患う子供のケアに全力を尽くす話。子供に話して聞かせるフィリピンの昔話がアニメーションで、ときどきAR(?)で並行して語られる。龍退治の話で『まんが日本むかし話』を思い出させる。なぜ子供が癌にかかったのか、聞き逃したのか、よくわからず。つまり本作のテーマが一般の小児癌ケアに置かれているのか、小児癌を発症させる環境問題に置かれているのかが僕にははっきりしなかった。子供は右眼のところに腫瘍ができているらしくとても痛そうで、鎮痛のためモルヒネらしきものが打たれる。とてもリアルなので本物かと思ったら、子役の子のピンピンしている写真がWebにあった。まあそれで安心しても現実はちっとも変わらないのだけど。アニメーションとのかけ合わせの効果は、うーん、どうだろう。映像からすると龍はゲリラらしいが…
#85「真実」是枝裕和/2019/仏=日本/Nov. 2/TOHOシネマズ日本橋○
最近は政治姿勢を鮮明にして保守層(←上品な表現)から距離を置かれている是枝監督のカンヌ後第一作。Catherine DeneuveとJuliette Binocheが母娘として共演するという、いかにも大物になった感。Ethan HawkeもJuliette Binocheの旦那役で地味に出てる。『恋人までの距離』から幾星霜、もはや老人(言い過ぎ)でいい味出してた。毒舌の老大女優(Catherine Deneuve)が出版する自伝が身内から見れば嘘だらけでそれがひき起こす波風と母娘の和解を描いている。早逝したした女優に関する記述がないことが慕っていたJuliette Binocheを激怒させるのだけど、その女優の再来と言われる新進女優(Manon Clavel)が主演するSF映画にCatherine Deneuveも出演依頼され、設定上歳の逆転した母娘を演じることになって…、とまあ先の読めないシナリオで面白かった。Manon Clavelがかわいいぞ。このSF映画を次回作にしてください、監督。きっと『惑星ソラリス』みたいな異色作。えーと、“La vérité”といえば僕には『地下鉄のザジ』だな。
#84「ザ・レセプショニスト」Jenny Lu/2016/英=台湾/Oct. 26/K's Cinema○
原題(?)は『接線員』。へー。法線員ってのもいるかな? バカな話はさておき、ロンドンに住む無職の若い台湾女性が他に選択肢なく中国系のおばさんが営む秘密売春宿の受付として働き始めるというなかなか厳しいシチュエーションの映画。この監督も女性目線でかなり細かい描写をしている。主演は紀培慧。父親がアメリカ人とのことで顔立ちが台湾人っぽくないが、なかなかいい。でも目玉は売春婦のひとりを演じる陳湘琪。彼女もいい歳だけど、最初登場したときは彼女と気づけないほど妖艶な雰囲気を出していた。もう大女優だね。お話は受付とそこで働く三人の売春婦との触れ合い。最初は売春婦を蔑んでいた彼女もそれぞれの事情を知り仲間意識をもつようになる。みんなで火鍋食べるのがいい。そしてお決まりの破滅。外国でお金がないなんて最悪である。そんなときには金子光晴みたく絵が描けるといいかなあ。屋外シーンで、街を行く車の中にFiat Pandaがいるのを見逃さなかった元オーナーであった。
#83「第三夫人と髪飾り」Ash Mayfair/2018/ベトナム/Oct. 26/ル・シネマ○
トラン・アン・ユンが美術を監修、第一夫人としてトラン・ヌー・イェン・ケーも出てる、ラッキーな新人監督の作品。主役は14歳の第三夫人。19世紀の話らしいのでまあ普通だったんだろうな。産む子供は男の子でなくては祝福されない。これがどれだけ女性にとってプレッシャーか、また男の子を産んだときにはいかに高慢になるか。このあたりを監督は訴えたいのだろう。社会主義のベトナムもそうなのかな。そんな社会はいまだにたくさんありそうだ。インドはそうだし、日本の皇室だってそうだ。多妻制はどうかな。貧乏だと無理だし、金持ちで教育を受けると避けそうだし、格差社会には存在しにくい制度だよ。みんなスマホいじるのに忙しいしね。トラン・アン・ユンらしく全体としてしっとりした印象で、しかも多分にエロティックである。蚕までエロい。監督が女性だから、そういう目線。トラン・ヌー・イェン・ケーは相変わらずスレンダーだけど、立派なおばさんになっていた。
#82「Once Upon A Time In The West」Sergio Leone/1968/伊=米/Oct. 22/立川シネマシティ○
バーンとシネスコ画面に広がる砂漠。そこに敷かれるGO WESTな鉄道。巷にあふれる『Once Upon A Time In ××』の原点、マカロニ・ウエスタンの名作『ウエスタン』である。音楽はもちろんEnnio Morricone。Henry Fonda、Charles Bronson、そしてClaudia Cardinaleという豪華キャスト。Henry Fondaは悪役で、ヒーローはCharles Bronsonがいただいている。この役は元々はClint Eastwoodを予定していたらしい。CCはまだ30歳のはずだが貫禄たっぷりに若い未亡人を演じていた。『市民ケーン 』を連想させるエピソードが根底にあって、単なるドンパチでないのが名作たる所以のひとつか。西部劇ではいつも拳銃の達人が出てくるわけだけど、彼らは相当な距離から正確にターゲットを仕留める。あれはどこまでリアルなんだろう? あんないい加減な撃ち方で遠くのロープを切ったりできるとは思えない。CCの淹れるコーヒーは美味しいらしい。蜂大のコーヒーが飲みたくなった。
#81「あなたの名前を呼べたなら」Rohena Gera/2018/インド=仏/Oct. 22/UPLINK吉祥寺○
一時帰国の最初がインド映画ってどうなの? 原題は『Sir』。ムンバイの高級マンションで住込メイドをしている女性とその部屋にひとりで暮らす主人のデリケートな関係を描く。主人は結婚をドタキャンされた若い男で、メイドは若い未亡人。そこには絶対的な貧富の差というか階級差があって、一線を越えることはインドでは死を覚悟しなくてはいけないほどである。アメリカ帰りでそんなことに頓着しない男の態度に女は恐怖するが、次第に…という次第。ただし、周りの反応は当然冷たく、男はアメリカに去っていく。このメイドさん、少なくとも見かけ上は料理のレパートリーが広くおいしそう。他の家事も完璧で、一体いくらもらってるんだろう。きっとびっくりするくらい安いんだろうな。ラストシーンで女性が電話越しに男をとうとう名前(Ashwin)で呼ぶ。インドを出れば彼女もしあわせになれるだろう。というわけで、インドを変えようとか大それたことは考えずに女性を応援する映画でした。
#80「The Sky Is Pink」Shonali Bose/2019/インド/Oct. 12/INOX Lido○
実話の映画化。先天的に肺に問題のある娘とそれを見守る家族の物語。母親にPriyanka Chopra、父親にFarhan Akhtar、そして娘に『Dangal』のZaira Wasimという“美化”が施されているが、エンディングで紹介される本物を見るとそちらもなかなかの容姿だったので、ある程度リアリズムを追求していたといえる。笑ってはいけないのだけど父親の名前がPandaで、Panda、Pandaと呼ばれるたび、でんぐり返りするFarhan Akhtarを想像してしまうのであった。舞台はLondonとNew Delhi。日本人の目からすればサラリーマンがとても住めないような豪邸で、インドのエグゼクティブのレベルが窺えた。本物の家でロケしたのではないとは思うけど、New Delhiのは階段のモザイクタイルがよかったな。やたらと時間を弄るシナリオはいまひとつ。時々でみんなのヘアスタイルやファッション、そして携帯電話などの持ち物が変わりその時代を認識するのだけど、そういうのはもうお腹いっぱいだよ。ボリウッドはアルコールの扱いが緩いね。字幕なかった。
#79「Asuran」Vetrimaaran/2019/インド/Oct. 6/Carnival Cinemas Golden Mile Tower (Singapore)○
シンガポールでタミル映画を観る。主演はDhanush。土地問題を抱えながらも家族と慎ましく農業を営んでいた男(Dhanush)が、血気盛んな息子の行動が引き起こした受難をきっかけに、過去の姿を見せる。つまり阿修羅になるのである。もはや李小龍の真似をするDhanushは存在せず、ひたすらDhanushとして強い、かっこいい。ルンギ姿でハチマキしててもだ(いや「してるから」かもしれない)。我慢→爆発の構図は健さんである。女っ気はほとんどなく、奥さんを演じるManju Warrierくらい。このおばさんは南インド的にきれいだけどどちらかというと逞しさの方が際立っていた。Prakash Rajがフィクサー兼弁護士みたいな役で出てたな。もう政治家は諦めたんだろうか? Kamal Haasan同様、知名度があってもいまBJPに対抗するのはむずかしいよね、残念だけど。シンガポールでの上映だからか、エグいシーンにもぼかしがなかった。斬り落とした腕とかね。犬が咥えて逃げたりしなかったな。字幕あった。
#78「花椒之味」麥曦茵/2019/香港/Oct. 5/The Projector (Singapore)○
シンガポールで香港電影を観る。主演は鄭秀文。彼女のキャリアもずいぶん長いけど、歳を取るにつれどんどんよくなっている&可愛くなっている気がする。物語は火鍋屋を営んでいた父親、鍾鎭濤が急死し、現れたふたりの異母姉妹から自分の知らない父親像を獲得しつつ、火鍋屋を引き継いで切り盛りしていくというもの。父親の秘蔵レシピ再現に成功し再び大繁盛して万歳とかではなく、亡くした父親を軸に繋がる姉妹のファミリードラマとしてまとめてある。借金が返しきれず店をたたんだ鄭秀文が取ったばかりの免許で乗るクルマがMiniってのは納得いかないな。それにしても、阿B、劉徳華、任賢齊、どれもいいおっさんになった。任賢齊はおっさんになっても同じようなキャラを演じているけどね。三姉妹は三人とも魅力的だった。特に次女役のスレンダーな賴雅妍はいいね。いかにもモデルっぽいけど『流星花園II』に出てたのか。ヒェー、何もかも懐かしい。英語字幕あった。
#77「Sye Raa Narasimha Reddy」Surender Reddy/2019/インド/Oct. 2/INOX: Garuda Mall○
国祖Mahatma Gandhiの誕生日Gandhi Jayanti公開の、インドを侵略する英東インド会社に立ち向かう19世紀の偉人Narasimha Reddyを主人公とする(あの頃に汎インドのアイデアがあったか知らないが)愛国アクション。敵を国外に置くと、インド人みんな団結みたいな話になってわかりやすい反面ストーリーも単調になるが、主演のMega Star Chiranjeeviが強引に話を進めた。こないだ強かったSudeepも出てるけど、Chiranjeeviはもっと強い。そのSandalwoodからのSudeepのほか、BollywoodからAmitabh Bachchan 、KollywoodからVijay Sethupathi、お膝元からダンディーJagapathi Babuと豪華俳優陣。そして…、個人的な目玉はNayantharaとTamannaahという大物女優の共演である。Nayanは許嫁〜奥さん、タマちゃんは結婚するまでの恋人。美女ふたりが一緒のダンスシーンまである。Nayanがおとなしい妻を演じてたこともあって、正直言ってタマちゃんの方が光ってた。でも満足だ。字幕なかった。イギリス人もテルグ語喋ってて困った。
#76「Bulbul Can Sing」Rima Das/2018/インド/Sep. 29/PVR: Vega City○
Village Rockstars』の監督がまたファミリーを巻き込んで(といっても2作品ともに出演しているのはManabendra Dasさんひとり?)撮った、一応音楽もの。実のところ、アッサム州の村に住むおそらく9th〜10th gradeの少女Bulbulとその女友達、オネエ友だちを中心とした青春映画である。tiff出品かつNational Film Awardももらっているという作品で上映時間は100分を切る。器量のよいBulbulにはボーイフレンドがいて、周囲からみれば進んでいる子。セクハラ教師からも一目置かれている。デート現場を狩られ、人生が早くも一転する。退学。女友達は自殺。このどん底からBulbulは再出発し、オトナになっていくのであるな。音楽映画だが音楽は最小限。Bulbulのうちは養豚業で、豚のブーブー鳴く声がBGMである。養豚は儲けがいいらしいよ。にきび顔のBulbulは確かにかわいいんだけど、女性はむだ毛皆無が普通の日本から来た目は、腕や脚や腋の毛にたじろいでしまうのであった。字幕あった。
#75「Namma Veetu Pillai」Pandiraj/2019/インド/Sep. 29/PVR: Vega City○
Sivakarthikeyanの新作のヒロインはAishwarya Rajesh。シバカリくんの(義理の)妹役である。舞台が田舎なのと、途中で結婚したりするので、基本ずっとサリー着用。準主役で結構出ずっぱり。満足だ。テルグ映画ばりのファミリー劇場であった。兄妹の回想シーンではふたりがクリケットをやるとこがあってニヤリ。そしてふたりで踊るごきげんなタミルダンスもある。シバカリくんの相手役(“Partner”と呼ばれてた)は『Thupparivaalan』以来のAnu Emmanuel。Aishuと並ぶと色白さやケララ美人さが引き立つが、僕はやはりChennai Ponnu・Aishuの方がいいな。 Samuthirakaniのうちはココナッツ油屋のようだった。タミルナドゥでもココナッツが普通なのかな。弁護士のYogi Babu以外の男はみーんなルンギあるいはムンドゥあるいはドーティを着てた。なんでみんなあんなにスマートに着られるのか。研究が必要である。今回気がついたのはAishuの下の歯。一本変なところに生えてる。女優になるときに抜かなかったのか。字幕なかった。
#74「Pailwaan」S. Krishna/2019/インド/Sep. 28/Santosh Theatre○
わざわざMajesticの単館に、字幕がないとわかってて赴く酔狂。Book My Showで165ルピーも払ったのに窓口でもらったバルコニーチケットは110ルピーで自由席だった。Sudeepの新作は複数語版があるがもちろん観るのはカンナダ語版である。前半はレスリングで後半はボクシングの話かなと思ってたら、3/4がレスリングだった。スポ根ものではない。Sudeepはふつうに強いのである。Sudeepは孤児でレスラー(Suniel Shetty)に拾われるという設定で、孤児や子供の労働問題に対するメッセージがある、のは結構だが、それがあざとく感じられるシナリオで残念。ヒンディー語版の影響なのか、ボクシングトーナメントのスポンサーがSRKのFair and Handsomeクリームで、Sudeepもデート前に塗ったりする。これ、普通なら炎上でしょ。 そのデート相手、のち奥さん役のAakanksha SinghはAditi Rao Hydariの顔を縦長にして目と目の間を狭くしたような顔立ちだった。顔をひっぱたくシーンがひんぱんにあるのに閉口した。苦言ばかりだが、普通に面白いよ。
#73「Kaappaan」K. V. Anand/2019/インド/Sep. 21/PVR: Forum Mall○
Suriyaが首相付のシークレットサービスを3種類のヘアスタイルで演じるアクション。首相にMohanlal、その息子にArya、首相秘書でSuryaの恋人役にSayyeshaaという布陣。SamuthirakaniもSuryaの上司でかっこいい役だった。首相を暗殺しようとする一味(テロリストとは目的が違うが、手段は似ている)とSPの戦いは結構面白かったよ。タミルダンスも楽しめたし。首相が出るのでメイン舞台はデリーなのだが、みんなタミル語喋ってるし、出てくる地方はタミルナドゥだし、都合のよい話ではある。ロンドンに飛ぶのはAir IndiaのB747。本物の政府専用機もそうなのかな? MohanlalはNaMoを意識した格好だった。最近はみんなそうで、ある意味嘆かわしい。AryaはRahul Gandhiに一瞬見えた。こうしてみるとSuriyaって背低いね。シークレットサービスにはシークレットブーツが必要だ。Sayyeshaaは美人なんだけど、クセがなさ過ぎるのか、やはり魅力に欠ける。字幕なかった。まあこの劇場では元々期待できないけどね。
#72「The Zoya Factor」Abhishek Sharma/2019/インド/Sep. 21/INOX: Garuda Mall○
Sonam Kapoorの新作はラブコメ。相手役にMollywoodからDulquer Salmaanを招いている。話はクリケットのインドナショナルチームが、なかなか勝てなかったのにSonam演じるZoyaという広告会社社員がチームに近づいたことで勝ち始め、彼女がインドのLucky Charmとして崇められるようになる。その一方でキャプテンのNikhil Khoda (Dulquer Salmaan)とZoyaが恋人になり、運を信じないKhodaとの仲が脅かされる。で、結局ZoyaなしでチームがWorld Cupで優勝し丸く収まるというおめでたいお話。KhodaというのはもちろんKholiのもじりで、他にも何人か実際のプレイヤーを明らかに模したメンバーがいて楽しかった。Sri LankaチームにもMalingaがいたし。なら、ZoyaはAnushka Sharmaなのかもしれない。Pepsiなど会社も実在のものが出てきてチームのスポンサーをやっていた。インドに来て最初にファンになったSonam Kapoorは相変わらず美しい。細い声が弱点で大女優にはなれないけど、歳をとってどうなるか注目だな。なんと字幕あった。
#71「Gang Leader」Vikram Kumar/2019/インド/Sep. 15/INOX: Mantri Square○
Jersey』のNani新作。年に二度も観るとは、このムサいあんちゃん人気あるんだな。冒頭のプロフェッショナルな銀行強盗シークエンスがかっこいいが、これとのギャップを楽しむのが本作の肝。コメディーなんである。銀行強盗は6人組で、強盗成功後1人が残り5人を射殺し逃亡。殺された5人に関係する老若5人の女性が集まっての復讐劇である。で、5人に雇われるリーダーがNaniというわけ。Pencilという名前からして観客をおちょくっている。5人のうちのひとりPriyanka Arul Mohanが一応ヒロイン相当でNaniが恋するラブコメ要素もある。なんだかんだで犯人を突き止め、復讐完了(アクションシーンはほどほど)。途中で5人の素性に関するドラマがあって、一種のどんでん返しになっているが、そこ弱い。銀行強盗に向かう際に犬をひき殺す(このシーンが映画中もっとも残酷)。犬には首輪が付いていて終盤にそれが出てくるのだけど、ストーリーにどう絡んでいたのかノーアイデアである。つまり、字幕がなくて、辛くて眠気が出たのです。
#70「Section 375」Ajay Bahl/2019/インド/Sep. 14/INOX: Garuda Mall○
裁判ものは字幕がないと最悪で何が何やらわからなくなるという先入観が鑑賞前のプチ鬱を呼ぶ。しかもきょうのはちと苦手な女優Richa Chaddaである。長引く風邪対策で厚手のコットン長袖Tを着込み臨んだ本作はしかし、字幕はやはりなかったものの見応えのある佳作であった。パワハラまがいのレイプ事件裁判を題材とし、法治主義の限界を晒すと同時に、昨今のSNSを通じた群衆行動にも警鐘を鳴らす。法と正義のギャップを十分心得た上でどう見ても有罪の被告を弁護するAkshaye Khannaがかっこいい。シナリオもよく、予備知識のない観客はほぼ全員が、あっと思ったはずである。被害者を演じる女優はどこかで見たことあると確信したのだけど、調べたらそれは間違いで、Meera ChopraというPriyanka Chopraのいとこ。PC似の顔立ちがそう思わせたのだった。字幕なしでついて行けたのは裁判外の描写もあったこととヒンディー語だけでなく結構英語も混じっていたことが効いてると思う。
#69「Brother's Day」Kalabhavan Shajohn/2019/インド/Sep. 8/PVR: Forum Mall○
登場すると場内歓声。なんでそんなに人気があるんだろうと疑問のPrithvirajの新作。単に女優が4人くらい共演ということくらいで、予備知識ほとんどゼロで観たら、字幕がなくて撃沈されそうに。たまたまOnam前公開になっただけでおめでた映画ではなく、サスペンス。冒頭、父親に虐待される妹を救うため父親を殺す兄。彼らが成長してからの話がメインで、誰が兄で誰が妹かを観客に推量させる筋立て。その辺りはまあ面白かった。女優は前半Madonna Sebastianが目立ち、中盤からようやくAishwarya Lekshmiが出てきた。つまり妹は…ですね。入院してた女性がPrithvirajの何に当たるのか最後までわからなかったのは字幕(なし)のせいだ。Aishwarya Lekshmiの父親役のVijayaraghavanはなかなか芸達者だったな。監督はよくマラヤラム映画で警官役をやってる俳優。最後にやはり警官役で自ら出てたよ。ところで“Brother”と“s”の間はバッククォートなの?単にWordあるあるのtypoじゃなくて?
#68「Love, Action, Drama」Dhyan Sreenivasan/2019/インド/Sep. 7/INOX: Garuda Mall○
NayantharaがNivin Paulyと共演。Onam作品なのでお気楽おめでた映画かと思って臨んだら、ちと違ってた。アタマ足りないNivin PaulyがChennaiからやって来たNayantharaに一目惚れし、インテリNayanもそれになぜか応じるものの、主にNivin Paulyのバカさから諍いが生じなかなかゴールインとならずヤキモキするラブコメ仕立て。これだけガンガン酒もタバコも呑む映画はインドではいまやマラヤラムだけだろう。結局は(Onam作品だから)ハッピーエンドであるが、ふたりの将来は明るくないぞ。謎なのがNivin Paulyのしごと。株トレーダーでリッチみたいなことを言ってたが、言動を見るかぎり信じられない。後半のキーパーソンVineeth SreenivasanがフォトショでつくるNayanとの合成写真のオリジナルは彼女が実生活でVickyと撮ったやつだった。事前のビジュアルではNayanが結構歳いって見えたので恐る恐る観たが、いつものきれいなNayanで安心した。ただし残念ながら声は吹き替えだった。字幕あった。
#67「Evaru」Venkat Ramji/2019/インド/Sep. 2/PVR: Forum Mall○
スペイン映画のリメイクらしい。『Maanagaram』とかに出てた目と目の間狭い苦手系Regina Cassandraが金のためなら何でもやる悪女を演じるサスペンス。シチュエーションに応じて次から次へと繰り出される嘘に感心する。もう今後は悪役で決まりだね。『羅生門』と違い、同一人物のある事件の回想シーンがどんどん変わっていくのが面白い。テルグ映画もなかなかようやりよる(とときどき書いている気がする)。舞台はタミルナドゥ州のCoonoor。Ootyの近くだ。リゾートなのにそれを強調するでもなくチョコも出ず、なぜここが選ばれたのか皆目検討が付かない。『Saaho』でPrabhasの相棒を演じていたMurali Sharmaが、殺される主人公の父親役、つまりいい役で登場したのは目新しい。と、ここで考えるに、本作の準主役であるふたりの俳優Adivi Sesh(『Oh! Baby』に出てた?)、Naveen Chandraはあまり印象に残っていないな。スター級が出ていなくても、いい映画ってのは客が入るもんだ。字幕あった。
#66「Saaho」Sujeeth/2019/インド/Aug. 31/PVR: Forum Mall
Baahubali』後初のPrabhas主演作。IMAX(2D)版に700ルピーも払ったのに大フロップだった。裏切りに裏切りを重ねる無意味に複雑なプロットの、これまた監督自己満足作品。もっとシンプルなのにざわつく映画が観たいんだよ、僕は。こんなCGバリバリの、劣化したハリウッドみたいなアクション映画、悪いことにテルグ映画のコメディーを引きずっていて、しかもテルグ映画のくせにファミリー前面じゃなくて、がっかりである。ヒロインがShraddha Kapoorというのも減点対象。タマちゃんじゃだめなんですか? 大予算映画だけあって、いろんなところでロケしてた。ただ、唐突に出てきた天門山はロケしたのか疑わしい。Waajiとかいう架空都市のビルはいろいろな実在都市のビルの寄せ集めに見えた。“Royの息子が来る”との日本語の自筆メモが出てきたのだけど、日本語はまともだったが筆跡は日本人のものではなかったな。Prakash Belavadiが出てたよ。観たのはテルグ語版。字幕あった。
#65「Nanna Prakara」Vinay Balaji/2019/インド/Aug. 25/INOX Lido○
昨今の映画では、これでもかと観客を混乱させあっと言わせようと複雑さを極めるシナリオが監督に人気があるようだ。こいつもそのものズバリなシナリオ。こんな映画観ても疲れるだけだぞ。個人的にはもう飽きた。しかも、そのままだと本当に観客がわからなくなる恐れがあるからか、全体としてはTVドキュメンタリー番組の体。そう、これは映画ではない。迷える視聴者をアンカーの解説によって導こうとする情けないTV番組なのだ。そう思うと気が少し楽になった。警官Kishoreと医師Priyamaniの夫婦が主人公として女性失踪事件の謎解きを進めていく。アパートの他の部屋がうるさいので警察に通報すると逆ギレした上に通報者とは違う住人を殺してしまうって、殺される方はたまったもんじゃないだろ。禿げてると思っていたKishoreの頭に結構髪あったのは新発見。珍しく主役でよかったね。初めて見たと思ったら『Chennai Express』に出てたらしいPriyamaniの付け睫毛は1970年代を連想させる不自然さだった。字幕あった。
#64「Comali」Pradeep Ranganathan/2019/インド/Aug. 25/INOX Lido○
Jayam Ravi主演のコメディーは一風変わったプロット。ガールフレンド(『Kirik Party』に出てたSamyuktha Hegde)に告白しようとしたら事件に巻き込まれ16年間も昏睡状態。目覚めたら世界が変わっていたという浦島太郎の物語。ガールフレンドは結婚してたので、新しい女性を捜し出会うのがKajal Aggarwal。Samyuktha HegdeとKajal Aggarwalというふたりの乙姫(好みではないがふたりとも美人だ)がJayam Raviを巡っていがみ合うのはなかなか楽しい。タミル映画に付き物のYogi Babuはいつものただのボケ役ではなく、なかなか思いやりのある友人(兼16年後は義弟)を演じていたよ。学生姿には相当無理があったけど。父親が息子にカーストの話をしないという、一見社会問題提起に転がりそうなエピソードが、説教じみず後半にうまく繋がっている点に感心した一方、16年の間にインターネットが発達しみんなFacebookやらWhatsAppやらに縛られた生活をしているのにJayam Raviが警鐘を鳴らすというのには、いまさら感。字幕あった。
#63「Kurukshetra」Naganna/2019/インド/Aug. 24/PVR: Forum Mall
この劇場でよく観させられたDarshanが高笑いする予告篇、の本篇がようやく公開。もたもたしている間にAmbareeshは亡くなっちゃったよ。3D・カンナダ語版。期待を裏切り字幕がなかったため、細かいところは追えず。ただし話は『マハーバーラタ』のど真ん中なので、予習・復習である程度なんとかなるのが救い。どうやら、一般に人気のあるパーンダヴァ側に付かずカウラヴァ側の視点に立っているのが目新しいらしい。というわけで主人公は一応Darshan演じるドゥルヨーダナ。ここにArjun Sarja演じるカルナとSonu Sood演じるアルジュナのライバル視とか絡んで、とにかくよく把握できない『マハーバーラタ』の世界が展開する。人気の神さまクリシュナはパーンダヴァの味方なので結構悪者っぽいし腹ボテなのが新鮮だな。クルクシェトラの戦いはもちろんCGバリバリの誇大妄想的スケール。マスゲームみたいなのがおもしろかった。Haripriyaが出てたけど何の役だろ? 『マハーバーラタ』、お腹いっぱいです。
#62「Once Upon a Time in Hollywood」Quentin Tarantino/2019/米=英/Aug. 18/PVR: Forum Mall○
タラちゃん新作は期待を裏切らなかった。1969年におきたManson FamilyによるSharon Tate殺人事件を下敷きに、Sharon Tate (Margot Robbie)の隣に住むRick Dalton (Leonardo DiCaprio)という架空の俳優(といってもSteve McQueenをモデルとしている?)とそのスタントCliff Booth (Brad Pitt)を主人公として1960年代のハリウッドを超マニアックに描写する。ナレーションはKurt Russell。実在のTVシリーズ、映画、そして俳優陣が多数出てくるので、アメリカ人には堪らないだろう。問題になっているBruce Leeの描き方は確かにネガティヴな印象ではあるが、人間だもの、まあ納得である。Racismを感じるかと問われれば、ちょっぴり感じるな。クライマックスの殺人事件部分は、タラちゃんならではのぶっ飛びで、笑った笑った。“The only good Indian is a dead Indian”のIndianはNative Americanのことだけど、インドで聞くとインド人の反応が気になるね。迫力のIMAX (2D)版。字幕あった。(イタリア語部分にはなかった。)
#61「江湖儿女」賈樟柯/2018/中国/Aug. 3/PVR: Vega City★
ようやくスクリーンで、なぜかインドで鑑賞。2001年から2018年までの中国の変化を、趙濤と廖凡が演じるやくざカップルの縁を、特に趙濤に寄り添いながら描く、賈樟柯ならではの秀作。大同の雀荘、もとい組事務所から始まりそこで終わる。始まったときのボスは廖凡、終わるときは趙濤。つまり、やくざの女に過ぎなかった彼女が江湖に自らを図らずも入り込ませ、自分を裏切った廖凡を想いながらもたくましく裏社会で地位を築く半生記である。2001年当時に撮影された映像をうまく取り入れながら、激動する中国の社会、風俗を、ときにはあざとく(WeChatの画面とか)見せながら描写していく。趙濤も20年前の映像使えばよかったのにね。さすがに無理を感じた。政治に触れないところは、監督、巧くやってるな。『站台』で使っていた葉蒨文の名曲『浅醉一生』がテーマ曲として流れ『喋血雙雄』のビデオを一家で観るシーンまであって感涙もの。カンヌのコンペに出たからインド公開されたのかな。観客はまばら。英語字幕あった。
#60「Mahira」Mahesh Gowda/2019/インド/Jul. 28/PVR: Forum Mall○
Ondu Motteya Kathe』のRaj B. ShettyがIID (そんな組織あるの?)の凄腕捜査官を演じるサンダルウッド・アクション。といっても彼は主役ではない。Virginia Rodriguesというおばさんが悪から逃れ潜伏中の元IID凄腕覆面捜査官で、娘の不注意から所在が知れ、悪とIID双方から追われることになるという話。おばさんがもう少し若いといいかな。Raj B. Shettyによるコメディー的な面が一切ない超ハードな展開にしてもいいかな。娘のChaitra Acharのもの分かりはもう少し悪くてもいいな。監督出なくていいから。てな細かいところを気にしなければ、結構おもしろい。Virginia Rodriguesは歳の割(しつこい)にアクションがキレていて、最近自分のスタミナが減っていることに気づいた身としては羨ましかった。Chaitra Acharは新人かな? タイプではないけれど、将来人気出そうな感じがする。IIDのオフィスはOuter Ring RoadのMicrosoftのビルじゃなかったかな。字幕あった。例によって英語セリフには付かないやつ。
#59「Bornoporichoy」Mainak Bhowmick/2019/インド/Jul. 27/INOX: Garuda Mall○
久しぶりの鼻毛くん(Abir Chatterjee)。彼が出てくると館内拍手。ベンガル人のアイドルか。作品は、Jisshu Sengupta (このひとも久しぶり)演じる元刑事が家族崩壊を招き自身をアル中にした未解決の事件に挑み、最後に家族との絆を回復するという、紋切り型リベンジ犯罪もの。舞台はもちろんコルカタ。短い上映時間に合わせるためか、ジグソーパズルのようにてきぱきと嵌っていくJisshu Senguptaの推理にはリアリティが皆無ではあったが、まあそれはそれでいいかと。Jisshu Senguptaに追われる鼻毛くんは、肺がんを患いながらも小学校の先生にしては妻を殺された復讐に燃えるが故か強かった。事件を解く鍵は空、風、水、火、地の五大元素。空を使った殺し方は何だったのかな。そこに到達する前に事件が終わってしまい、ある意味残念だった。Jisshu Senguptaの奥さんはPriyanka Sarkar (シャルカルと読むとベンガリっぽい)というベンガル美人だった。字幕あったけど、下半分がよく見えず、読むにも推理が必要であった。
#58「Judgementall Hai Kya」Prakash Kovelamudi/2019/インド/Jul. 27/INOX: Garuda Mall○
何かとお騒がせなKangana Ranaut、演技は巧いけど僕は結構苦手。今回はこっちも実力派のRajkummar Raoとの共演。精神異常者vsサイコパスというエキセントリックなスリラーである。少女時代のトラウマを抱え、折り鶴を折り、幻覚のゴキブリを追い続けるKangana Ranaut。とっかえひっかえ変な柄のブラウスを着ているのが印象に残るが、演技は少々神経に障る。それも演技の一部かな。一方のRajkummar Rao演じるスモーカーかつノンベジなのを隠す愛妻家は不気味で、むちゃ怖い。途中までどっちが犯人なのか確証がもてない展開が続くのは、なかなか面白いシナリオだった。後半、舞台は意味もなくロンドンに移動。そうなのだ。ムンバイもロンドンも背景としてはさして変わらない。このインド人のロンドン好きはなんだろね? Origamiも世界に知られた日本語だなあ(ティッシュペーパーの意味じゃないよ)。ボリウッドにしては珍しい2時間未満。字幕なかった。まあ、あっても追えないくらいの発話数。 
#57「Aadai」Rathna Kumar/2019/インド/Jul. 21/PVR: Vega City○
写真やティザのインパクトで去年から気になっていた待望のAmala Paul主演作品。テレビ局に勤める彼女が、オフィス引っ越し後のがらんどうビルでの乱痴気騒ぎののち、突然素っ裸の状態で目覚める。何が何だか本人も観客もわからないままどんどん時間が経過する。Rajkummar Raoの『Trapped』を思わせ、輪をかけて斬新である。終盤、トイレットペーパーで作ったビキニに身を包んだ彼女がビルの外に出てようやく監督の意図が明確になる。要は、どっきりカメラとか事件現場で撮るセルフィーとか他人の状況・気持ちをまったく無視した、ある意味典型的なインド人の姿勢への批判である。うーん、弱い。終わってみれば、各エピソードがつながっておらず裸の必然性も乏しい、細部が残念なシナリオといわざるを得ない。Amala Paulは熱演だったんだけどなあ。VSP33は降板させられたけど、その次に期待しよう。字幕なかった。おかげで冒頭のアニメーションの意味もさっぱりわからない。タミル映画は字幕率低し。
#56「Kadaram Kondan」Rajesh Selva/2019/インド/Jul. 21/INOX: Garuda Mall○
Vikramの硬派なアクションは結構気に入っている。本作はKamal Haasanプロデュースだからか娘のAkshara Haasanを起用。職権濫用だな。そもそも彼女はルックスも演技もいまひとつだと思う。もうひとりの主人公Abi Hassanも息子かと思いきや、Nassarの子供だそうだ(よく見たら綴りが違う)。舞台はKL。ペトロナスタワーの窓をぶち壊して飛び降りたり、LRTやSentral駅で追いかけっこしたり、Plaza Meldekaの前でカーチェイスして車を炎上させたり、やたらと派手である。とはいえVikram作品としては悪のスケールがやや小さい気がするな。字幕なかったのでVikramが何者なのか最後までよくわかんなかったし。Abi HassanがVikramのせいで誘拐された妻Akshara Haasanを必死で探し最後に取り戻すという筋は一貫していてよかった。観客全員(といってもガラガラだったけど)疲れたよ。みんなタミル語喋るのは変だろ、と一瞬思ったけど、マレーシアのインド言語といえばタミル語だったわ、はは。
#55「Sitara」Ashis Roy/2019/インド/Jul. 20/PVR: Phoenix Marketcity Mall○
オープニングに近いところで誰かに追われて自宅に戻りサリーをまくって太股の銃痕を確認するところから、その辺のインド映画とは違う感を発散。ベンガルのセクシー女優Raima Senが、ひどい夫によりバングラディシュからインドに密入国させられ、国境の村で金貸しを営むNassarに囲われてコルカタへ麻薬などの物資を運送しながら体も売って性病にもかかるという地獄をみながらも、そこからたくましく立ち上がっていく修羅雪姫を演じる、意外に楽しめたベンガル語作品。タイトルにつく赤い星から左翼の話かと思ったが、そちらはサイドストーリーだった。自分を捨て政治家に成り上がった男をピストルで殺しその罪を夫になすりつけるところは痛快である。最初から主人公に付いてくる“Partner”にようやく本当の愛を見つけ、ふたりでバングラディシュに帰っていく。手持ちカメラが効果的に使われていた。字幕あった。観客は実質僕らだけだった。ベンガル人も観に来ないのになぜ上映してるのか謎。(ありがたいけど)
#54「Smile Please」Vikram Phadnis/2019/インド/Jul. 20/PVR: VR GOLD○
離婚後老父と暮らすバリバリのカメラウーマン(Mukta Barve)が若年認知症にかかり、自宅に下宿中の青年(Lalit Prabhakar)との交流から、嫌われていた娘(映画監督の元夫が養育)との関係を築いていくマラーティ語作品。難病もののひとつといえるがお涙頂戴物語ではなく前向きで軽いのがよい。病気によって逆転する父娘の立場、知ることになる離婚の原因、母との相似性発見による距離の変化といったエピソードが、記憶をなくしながら青年と少女のように戯れる姿と共に描写される。大仰な個展とそれに伴う演説が入るのはご愛嬌。海に沈む夕陽を撮影するシーン。主人公の影が海に向かっているのはまずいでしょ。突っ込んでくださいと言ってるのか。彼女が使っていたのはCanon EOS 5Dだった。あんなに引き伸ばして至近での鑑賞に堪えるって1枚のファイルサイズはどれくらいなんだろ? Clinique店舗前に貼られたRadhika Apteの顔写真にくっきりヒゲが生えていたのを思い出した。ムンバイの街の景色は期待したほどはわからず。字幕あった。 
#53「Yesterday」Danny Boyle/2019/英/Jul. 14/INOX: Garuda Mall○
Himesh Patelというインド系イギリス人主演。だからインドでも公開されたのかな? 太陽フレアにより全地球が停電した際、しがない歌手の主人公がパラレルワールドに送られる。この世界には、The Beatles、Coke、Cigarette、Harry Potter等が存在しない。ビートルズの歌を披露すると主人公は天才としてみるみるうちに大スターになっていくが、本人は悩む。というお話。すべてのビートルズの楽曲を憶えていてしかも再現できるなんて、さすがミュージシャン。幼なじみで主人公をずっとサポートしてきた女の子(Lily James)がキュートでよかった。ときどき使われる固定ショットもよかった。パラレルワールドに行った理由もわからないし、元の世界に戻ることもない思い切りのよさは、少しだけモヤモヤするな。John Lennonが生きていて、オノ・ヨーコはいなかったよ。こうして聴くと、やはりビートルズはいいよね。ひさしぶりに聴きたくなった。マシンガントークに字幕なしはしんどかった。
#52「Oh! Baby」B. V. Nandini Reddy/2019/インド/Jul. 13/PVR: VR Bengaluru○
韓国映画のリメイクらしい。夫を戦争で亡くし女手一つで息子を育てた剛腕嫁いびりばあちゃんがある日突然24歳に若返り夢だった歌手として人気を得る一方で嫁の気持ちもわかるようになりばあちゃんに戻って家庭円満になるという、Samantha主演のファミリーコメディー。前にも書いたけどSamanthaは結婚後、単なるほっぺたぷにゅぷにゅ女優ではなくなり演技の幅が広がってとてもよくなった。本作でも弾けていて、外見は24歳(?)、心はばあちゃんという女性をかわいく演じている。ストーリー上ふんだんにある歌・ダンスシーンもご機嫌だった。Jagapathi "Dandy" Babuが特別出演。Samanthaを若返らせる謎の人物(神さま?)で、いつもとはまったく違うコミカルな雰囲気を出していた。若返って別人になったように見えたけど魔法が解ける(?)と元のばあちゃんに戻るのおかしくない? 戻ったら歯が全部抜けてまた元の総入れ歯入れたのか? なんてツッコミはやめておこうね。字幕あった。
#51「Agent Sai Srinivasa Athreya」Swaroop RSJ/2019/インド/Jul. 13/PVR: Phoenix Marketcity Mall○
インドの悪習、土着宗教の慣習、ヒンドゥー教徒の信心、宗教犯罪、指紋偽造ビジネス等、シナリオは若干盛りすぎな気はするが、途中もうひとりの探偵が現れるとことか、とても楽しめた私立探偵コメディー。だいぶ前に予告篇を見て、舞台が行ったことのあるNelloreなので気になっていた。母親の危篤(?)の知らせで故郷のNelloreに戻ったAgent (Naveen Polishetty)がなぜ探偵になったのかは最後までわからず。とにかく、探偵映画を観まくりシャーロック・ホームズを気取る完璧な私立探偵になっている。事件解決時に犯人と一緒にセルフィーを撮るのが今風。 ワトソンくんがかわいい女性(Shruti Sharma)なのがいいね。田舎町の割に頻繁に身元不明の死体が出るところから、その原因を突き止めると同時に母親の死について真実を知ることになる、テルグ映画お決まりのファミリー案件でもあった。評判いいみたいなのでシリーズ化なるか? 字幕あったが、会話が多いため追うのが大変で、普通にしてると半分くらいしか読めないのでとても疲れた。
#50「Devaki」Lohith H/2019/インド/Jul. 7/PVR: Forum Mall○
Uppiの奥さんPriyanka Upendraと娘Aishwarya Upendraが母娘として共演するスリラー。舞台はオールKolkataのカンナダ語作品という異色作品。失踪した娘を探す母親をKishore演じる警官が助けようとする。観ていると異様に感じるのだが、原因は途中で明らかに。その点を含め凝ったシナリオで、これでもかと『君の名は』的すれ違いの連続に観客はヤキモキするよう仕向けられる。すべてが終わったときの空疎感に娘のくさいセリフが勿体なく、そういう意味で残念なエンディング。Priyanka Upendraはずっと同じサリーを着ていて、しかもそれで走ったりして、汗臭くなってそうだったな。Howrah Bridgeが何度も出てくるほか、イエローキャブが走り回りトラムが行くなじみのあるKolkataの風景が展開するのが楽しい。裏社会はまったくわかんないけど。素焼きカップで飲むチャイがおいしそうだった。音楽は過剰で煩く感じた。英語字幕はあったが、これもヒンディー語、ベンガル語にはカンナダ語字幕の困った版。
#49「Rustum」Ravi Varma/2019/インド/Jul. 6/SPI: The Cinema-GT World Mall○
お、神さま絵画の巨匠が映画も監督か、なわけない。Dr. Shiva Rajkumar主演の、法治主義に対する痛烈なアンチテーゼとなっている暴力作品。悪いやつを逮捕せずにバンバン殺してしまうIPSオフィサーは観客に爽快感を与えるかもしれないが、これが現実になるといまのフィリピンみたく無実の者まで殺してもお咎めなしになってしまう。そこが冤罪を極力防ぎたい法治国家のもつジレンマ。かくして本当に悪いやつはのさばるばかりで、一般庶民はこんな映画で憂さを晴らすしかないのである。そういう意味では面白かった。Dr. Shiva Rajkumarの奥さん役はShraddha Srinath。あまり活躍なし。最近そういう役が多いね。流行らない妙なダンスシーンが二度もあったし、アクションシーンも大げさで、ちょっと前までの典型的なカンナダ映画の印象。ロケでは劇場に来るとき前を通ったKSR駅とか出てきたよ。字幕はあったが、ヒンディー語部分にはカンナダ語字幕で役立たず。“Kutta”だけわかった。
#48「Sindhubaadh」S. U. Arun Kumar/2019/インド/Jun. 30/INOX Lido
タイトルの“シンドバッド”ってインドの風って意味なのか、初めて知ったよ。Vijay Sethupathiの冒険ってことか。インドでの舞台はTrichy。あると想定していた字幕がなかったので想像だけど、耳の遠いVSPと声のでかいAnjaliが一緒になるというバカバカしいエピソードに始まり、なぜかペナンのゴム園に行ってしまい騙されてタイ→カンボジアと流れていくAnjaliを追い、凄腕スリのVSPが偽造パスポートで相棒と彼の地に向かい技術を活かして人身(皮膚、臓器)売買の悪党を倒してAnjaliを救うというやっぱりかなりバカバカしい冒険(?)の話。ただ特筆すべきは、相棒を実子のSuryaが演じていたこと。俳優にしたいのかな。お父さん似で体格がよかった。そのお父さんは少し痩せたのかアクションはまあサマになっていた。でも結局は海外ロケで豪華な割に地味な出演者でよくわからない作品だったな。Trichyには5年くらい前に行ったことがある。そのとき登った丘の上のお寺出てきた。
#47「Article 15」Anubhav Sinha/2019/インド/Jun. 29/INOX Lido★
主人公が任地に向かう車を追うスクリーンに流れるのはBob Dylan (Blowing in the Wind)。何だこのボリウッドらしからぬセンスは? 摑みは良好である。IPS Officerになった帰国子女Ayushmann Khurranaが、着任したUP州の田舎で少女失踪事件を追う。広場にDr. Ambedkarの像が立っていることからダリットの村であることがわかる。タイトルのインド憲法第15条は国民の平等を謳ったもの。事件にはいまだに根強いカースト差別という闇があからさまに絡んでいる。悪事はなんでもイスラム教(徒)のせいにするヒンドゥー教徒はこの映画を正視しなくてはいけない。海外育ちで偏見のない主人公の正義は何層もの障壁を破りながら先に進んでいく。プチ・ハッピーエンドで終わるものの、連日メディアを賑わす現実を考えれば観客の誰もハッピーにはなれないだろう。『Bangalore Days』のスッチー、Isha Talwarが出てた。Amliを演じてたSumbul Touqeerちゃんがかわいかったよ。Ayushmann Khurranaはいい作品に立て続けに出てるな。字幕あった。
#46「The Extraordinary Journey of the Fakir」Ken Scott/2018/仏=インド=ベルギー/Jun. 23/PVR: VR Bengaluru○
DhanushがMumbai→パリ→ロンドン→バルセロナ→ローマ→トリポリ→パリ→Mumbaiと旅し、アメリカ女性やアフリカ難民、フランス人富豪女子らと意外なところで遭遇する奇想天外な半生を送った手品師を演じるファンタジー。手品師だけに、彼が語る内容をすべて信じてはいけない。ほんとはインドから一歩も出ていないのかも。IKEAに行きたいならHyderabadにあるしね。(明らかにIKEAなのにどこにもそのロゴが見つからなかったのはIKEA側のOKが取れなかった?) 監督の趣味なのかどこか『アメリ』を思わせる雰囲気が漂っていた。パリのDhanushはパリのVijay Sethupathiより似合ってる気がするな。相手役のErin MoriartyはアメリカのKareena Kapoorって感じで残念だった。Wikiでは92minとなっているが、今回のは100minだった。どこが足されたんだろうね。全篇ほぼ英語で、ヒンディー語のパートにも字幕が付かなかった。タミル語版は英語の部分だけタミル語なんだろうか?
#45「Unda」Khalid Rahman/2019/インド/Jun. 22/PVR: Forum Mall○
3週間ぶりの映画館。Mammoottyのコップもの、といっても犯罪捜査や交通整理ではなく、他州の選挙への警備協力で派遣されるKerala警察チームの話。序盤はメガスターらしからぬ情けなさでやや心配したが、終盤にいつもの強いMammoottyに戻る。派遣先はChhattisgarh州(え、どこ?)の山奥で、選挙妨害を狙うマオイストから投票所を守るのが任務。実話に基づいているらしい。だからか、たいしたドラマもないし、ヒーローもいない、かわい子ちゃんも出てこないという華のない作品であった。普段平和な街で勤務している警官を共産ゲリラの牙城にまともな装備なしで派遣する神経がよくわからないな。言葉も通じないし。Kerala州でも学校でヒンディー語は教えないんだろうか。確かに、うちのKerala出身者でヒンディー語喋るのはひとりだけだ。両隣の観客がどちらも僕の側に向けて脚を組んで、僕はエコノミークラス症候群になった。映画館で脚組むな。組むなら連れの方向にやれ。ぷんぷんっ。字幕あった。
#44「De De Pyaar De」Akiv Ali/2019/インド/Jun. 2/INOX: Garuda Mall○
今週末はなぜかRakul Preet Singh出演作を2本。きのうはSai Pallaviがライバルだったが、きょうはTabuである。そりゃTabuが圧倒的に強いと思いきや、本作のTabuはお歳がルックスに結構出てて若いRakul Preet Singhに正直押されていた。(Rakul Preet Singhはまったくタイプではない。でもインド女優には珍しくスレンダーである。) 主役はAjay Devgn。LondonとHimachal Pradeshが舞台。話は妻Tabuと長く別居しているAjay DevgnがLondonでRakul Preet Singhと知り合い24歳の年の差を乗り越えて結婚しようとHimachal Predeshの実家に一緒に行って大騒ぎ、という展開。田舎暮らしとは思えないおしゃれなTabuだったけど、Rakul Preet Singhがいなくてもちょいと冴えなかったな。エンドクレジットのダンスシーンでは打って変わってきれいだった。ボリウッドのダンスシーンは華やか。でもやはりダンスはタミルだよ。Ajay Devgn、重要会議中にGFとチャットしたり電話に出たり。あんたクビ。字幕なかった。
#43「NGK」Selvaraghavan/2019/インド/Jun. 1/Swagath ShankarNag (ONYX) LED Cinema
映画久しぶり。いつの間にか復活していたShankar Nag劇場へ初見参。予告篇のダンスシーンを見て、そうだタミル映画観よう、と思ったのだけど、なんだSai Pallavi踊らないじゃないか。『Maari 2』みたいなのを期待してたのに。強力なやきもち焼き奥さんを演じてて、らしくなかった。そのダンナが主役Suriyaである。M.Techから政治家へ、そのよく働く頭と適応力で瞬く間に党の重要人物になっていく。共感を呼ばないキャラクター。納得いかない展開。変なカメラワークと構図。カメラ目線やめろ。(一度は観客に語りかけてた。あんたクロサワか。)  Rakul Preet Singhももっとかわいい役がいいと思うよ。ダンスシーンでは服を取っ替え引っ替えしてたけど。CBIがCMの手先だというのは本当なら怖いが、中央機関が地方の一政治家に仕えたりはさすがにしないだろう。インドの政治(社会)を皮肉りたい気持ちはわかるが、結果は落第だな。英語字幕あった。でも“ワナッカム”は“Vanakkam”だった。
#42「Maharshi」Vamsi Paidipally/2019/インド/May 11/PVR: Forum Mall○
絶壁プリンスMaheshの25作目。ほぼ3時間と、うんざりするほど長い。青年Rishiの成り上がり半生記、といっても10年間もないな。カレッジでトッパー、アメリカで就職し数年でGAFAを凌ぐ企業にした功績でCEOになる。はあ。で、なってほどなくHyderabadに戻ってきて、親友の住む村へ。広場の木陰に臨時オフィスを構え執務すると同時に、その村では例によって開発地上げ問題が起きており反対する親友を助けるという次第。いろいろお馴染みの顔が見られるが、悪役はダンディーJagapathi Babu、人生のアンチロールモデルとされる不幸な父親(でもいいひと)はPrakash Raj、相手役はPooja Hegdeという美人(例によってタイプじゃないが)。無敵、天才の、まあいつものMaheshだ。インドの農家がいかに大変かを説き、尊敬しようというのがメッセージ。プリンスの田植えシーンあり。皇居か。ダンスシーンではMaheshがPooja Hegdeのお腹を触ってた。英語には付かない字幕で、英語からテルグ語に変わるとこで字幕を追うのにとまどった。
#41「Uyare」Manu Ashokan/2019/インド/May 6/PVR: Gold, Vega City★
戦う女優ParvathyがAcid Attackの被害者を演じる意欲的作品。異常性格の恋人(Asif Ali; いやな役を好演)に顔左半分に酸をかけられ、夢だったパイロットの資格を失い、世間の目を気にして一生隠遁生活を送る、わけがない。Cloud 9なる航空会社の社長の息子Tovino Thomas (最近よく見るな)と知り合い、そこのCAに採用。堂々と顔を見せ乗客へのサービスに努める。そして、乗務中の便のパイロットが倒れ、同機を緊急着陸させるため彼女はコックピットへ。この手のインド映画にありがちな社会的ムーブメントに発展するとか、街角のテレビがすべて同じニュース(Breaking News)を流すとか、終盤に主役が演説するとか、そういうシーンが一切ないのに拍手。終わり方もいい。この主役を張れるのはParvathyしかいない気がする。C9のCAユニフォームはIndiGoのにそっくりだった。よくいるんだ、こういう体型のCAが、IndiGoには。ParvathyとNithya Menenの共通項は何か、おわかりですね。英語のところには付かない英語字幕あった。
#40「Oru Yamandan Prema Kadha」B. C. Noufal/2019/インド/Apr. 28/PVR: Gold, Vega City○
Dulquer Salmaan主演の大仰なラブストーリー。まず驚いたのは、しょうもないコメディーベースの展開で主人公はハイソでもなくインテリでもなくペンキ塗り職人であったこと。そして、“Spark” (これ絶対コンマリの影響)を求めてひたすらまだ見ぬ彼女を探すというトチ狂った行動。MollywoodのプリンスDulquer Salmaanだからこそ許される冒険的映画であった。Lalluと呼ばれる彼の本名は最後になって観客に知らされるのだけど、まあMalayaliなら誰でもあの名前が浮かぶだろう。また、“彼女”があの彼女だろうという予感も観客の誰にもあっただろうな。ハッピーエンドにしなかったのはなぜだろう? 毎度思うけど、Mollywood映画って“Kerala Love”常に全開だよね。水郷を愛し、雨を愛し、ムンドゥを愛し、マラヤラム語を愛し、Mollywoodスターを愛し、文化を愛す。キリストとチェ・ゲバラが同格のGod Own Countryは、インド共和国の中の異境である。字幕あった。5連勝。
#39「Jersey」Gowtham Tinnanuri/2019/インド/Apr. 27/PVR: Orion Mall○
突如現れたTollywoodのクリケットもの。評判いいみたいなのでチェック。主演はNani。何?誰?見たことある気がしない。奥さん役は最近Sandalwood外で活躍中のShraddha Srinath。コーチに“Kattappa”Sathyaraj。大活躍しながら結婚後突如引退した元クリケットプレーヤーの復活劇。引退理由が不明なままことが進むため消化不良ながら、家庭外では大きな躓きもなくのし上がっていくところはいまのカープみたいで気持ちいい。倒れるところをスクリーンには映さないのも新鮮。で、引退理由は最後に息子によって明かされる。ここまで引っ張る必要あるかね。タイトルのジャージーの演出するしかけはイージーだな。Shraddha SrinathはTaj Banjaraに勤めてたけど、ほんとはTaj Krishnaじゃないかな。サリーに見覚えがあるような…。しかし300点を逆転する試合ってのは辛い。やっぱ、クリケットより野球だよねー。あ、でもAishの『Kanaa』がテルグ語でリメイクされるらしいのでまた観なきゃ。字幕あった。
#38「Kavaludaari」Hemanth M Rao/2019/インド/Apr. 21/INOX: Garuda Mall○
Hemanth Rao監督2作目はコップもの。アクション映画ではない。Inspector志望のまじめなTraffic Police Officer (Rishi)が偶然出くわした白骨死体発見を機に、お蔵入りになっていた40年前の殺人事件を独自に捜査する話。この捜査にAnant Nag演じる40年前に事件を捜査した元Inspectorと売れない新聞を出しているAchyuth KumarというSandalwoodの性格俳優大御所ふたりが協力する。そのうちAchyuth Kumarも40年前の事件に絡んでいたことがわかり、果てはChief Minister候補の政治家が絡んで来て、やばいことになる。なかなか面白かった。でもRishiまで40年前の事件に因縁がなくてもよかった気がするな。バンガロール市内が舞台だったけど、どこか全然わからなかった(会話ではHebbalとか出てきたけど)。Traffic PoliceはみなCIDに憧れるのだろうか。晴れてInspectorになったRishiはAchyuth Kumarの娘と結婚したかな? 字幕あった。車の中での会話は、ドライバーさんにはわからないよう慎重にね。
#37「Kalank」Abhishek Varman/2019/インド/Apr. 18/INOX Lido○
Alia BhattとVarun Dhawan主演の、印パ分断前の現パキスタンを舞台とした派手なボリウッドもの。もっと政治的あるいは社会的な話を期待していたのだが、主演のふたりに、Madhuri DixitとSanjay Dutt、Sonakshi SinhaとAditya Roy Kapurという二組も絡む大がかりなメロドラマだった。例によってAlia Bhattはヒンドゥー、Varun Dhawanはムスリム。その紋切りな対立の構図は背景に過ぎず、本質はVarun Dhawanの出生にあるという愛憎入り混じる韓国映画みたいな話で、異母兄弟でAlia Bhattを取り合うのだった。冒頭、ダサラでラーマーヤナの世界が大がかりに演じられる。ここ、ムスリムの街だと思うのだけど、ムスリムはダサラ祝わないよね。どういうことなんだろう? Kiara AdvaniがVarun Dhawanの元カノ(?)役で出てた。テルグ女優じゃなかったのか。あとKriti Sanonがアイテムナンバーのみのゲスト出演。そんなに人気あるのこのひと? どうでもいいや。本上映も字幕あった。ボリウッド映画も字幕付けるようにしたのかな? ありがたいこと。
#36「Super Deluxe」Thiagarajan Kumararaja/2019/インド/Apr. 7/PVR: Forum Mall○
ヒジュラ姿のVijay Sethupathiが強烈なインパクトを残す予告篇を見れば誰もが“何だこの映画は?”と思うだろう。Vijay Sethupathiのほか、Samantha、Fahadh Faasil、Ramya KrishnanあたりがSuper Deluxeな面子。Vijay Sethupathiの奥さんを演じていたGayathrieもよかったよ。最近の流行である、複数の独立したストーリーが並行しながら徐々にそれらの関係が見えてくる構図に本作も当てはまる(スレッドは4つ)ものの、監督が好きそうなSFものも練り込んだ奇抜な(一部ハチャメチャな)ストーリーはそれなりに面白かった。SamanthaとFahadh Faasilの会話も笑っちゃう。死体が入っている冷蔵庫に“non-vegアイテムは入れるな”とかね(これは親戚のセリフ)。しかし、注目はビジュアル。固定カメラのショットの単純切り換えでの進行をベースに、Wendersを想起させるような色調の画面が続く。ロードムーヴィーの要素もある。監督か撮影か、かなり他国の映画を観ているとみた。思いがけず見やすい字幕があって助かった。
#35「Airaa」KM Sarjun/2019/インド/Apr. 6/Vinayaka Multiplex○
最近のNayanthara主演作品は“Starring NAYANTHARA”とかっこよくオープニングに出る。スターの風格である。でも残念ながらこれはダメ作品でした。二週目にしてこの場末映画館しかやってないのもわからんでもない。お金には困ってないだろうから、ちゃんとシナリオとか監督とか吟味して受けた方がいいね。Nayanは二役(現在の彼女のイメージそのもののYamuna役と肌黒の田舎娘Bhavani役)でふたりは同世代なのだけど、似ている必然性がまったくない。CG低質。ホラー要素も子供だまし。またYamunaの些細ないじわるがBhavaniを死なせ、それをBhavaniが恨むという本筋も納得いかない。Yogi Babuがまた出てたけど、なんのためかよくわからず。とりあえず出しとけば客が増えるのかな? でも観客は笑ってなかったよ。BhavaniのNayanはなかなか雰囲気あった。字幕はなかった。シートに番号もなく、座席指定も意味なかった。それにしてもNayan作品はホラーが多くて、ホラー嫌いには辛いなあ。
#34「Lucifer」Prithviraj Sukumaran/2019/インド/Apr. 6/PVR: Vega City○
ケララ映画界最強のおっさんスターMohanlal主演作品を、なんとPrithvirajが監督。そして、なんと面白かった。しかも、なんとPrithvirajがむっちゃかっこいいときた。背景はケララの政界。CMのPKRが死に、その後釜を狙う娘婿にPKRの隠し子(?)Mohanlalが立ち向かう。というかMohanlalは無敵なので相手にならない。例によって白あるいは黒シャツにmundu姿で、それをまくって悪いやつをどんどん片付けていく。(囚人服も同じだったのにびっくり。) PrithvirajはMohanlalの手下で指令に従い鮮やかに敵を殲滅する。おしまいのロシアの凍てつく空港にMohanlalがヘリコプターでやってくる。ここもぜひmunduで降り立ったもらいたかったが、さすがにスラックスだった。『Maari 2』で悪役だったTovino Thomasがいい役で出てた。その姉役のManju Warrierという中年女優がなかなかよかったよ。ケララあるいはインドの政治を痛烈に皮肉っているが、これくらいでは本物の黒幕は動じないらしい。字幕あった。
#33「男なら夢をみろ」牛原陽一/1959/日活/Mar. 31/神保町シアター○
インドに来た後、この小屋はいづみさま特集を4回も組んでいる。まったく残念なのだが、今回はたまたま日本にいたので、いまのいづみさまの音声メッセージを聴きたい一心で出かけた。作品自体も映画館では観ていなかった。いづみさま#47。主役は裕次郎で、ほぼ通しでやくざ役なのは珍しい。裕次郎といづみさまを争うのは兄弟分(といってもこちらはカタギの検事)の葉山良二。純真ないづみさまは悪徳刑事滝沢修の娘で、やくざな裕次郎に惹かれていくのだけど結局葉山良二と結婚するというところが、ありがちなシナリオと違う。まあ映画としては凡作だけど、冒頭の記録映像を交えた終戦後の描写はなかなかよかった。脇に清水まゆみ、川地民夫、三島雅夫、草薙幸二郎など、あの頃の常連。三島、草薙はまじめな演技をやっていても、見てるとつい笑ってしまうな。ともかく、絶頂期に入ったいづみさまを堪能。そして、現在のいづみさまの声は、おばあちゃんのそれではあるが品があって痺れた。
#32「Naanu Nammudgi Kharchgond Mafia」Amar Saalva/2019/インド/Mar. 24/Menaka Talkies○
妖しいポスターに惹かれてMajesticへ。先週公開だったのにやってるのはもうここだけって、そんなにひどいのかなと訝しんだが、なんのなんの面白かった。ただし、映像はチープだし、出演者も冴えない(憶えてるひと出ない)。時折挟まれるやや時代遅れのアイテムナンバーも長すぎ。無関係な二組のカップルのパラレルストーリーがポルノを撮影してインターネットで売るならず者グループにより繋がる前半から、片方のカップルの男とならず者に囚われたもう片方のカップルの女の子が救えるのか緊迫の後半へ。このハラハラ感覚を劇場で共有…、って観客は僕を含めて5,6人だった。とにかくわれわれ外国人にはわからないバンガロールの裏社会は興味深かったな。インドではポルノは禁止だけど、8億人いるインターネットユーザの半分近くがポルノを観てるってお巡りさんが言ってたけどほんとかね? ちっちゃくて読むのが大変な字幕あった。初めて中に入ったこの劇場は、外目に反し、ちゃんと風格があった。
#31「Kesari」Anurag Singh/2019/インド/Mar. 23/PVR: Vega City○
Holiシーズンのイロモノ。Kesari(サフラン)といえばインドのシンボルカラーだけど、あれはヒンドゥー教とつながってるんだと思ってた。シーク教との関係はよくわからない。しかしKesariならAjay Devgnじゃないのか?という冗談はさておき、主演はAkshay Kumar。むりやり出てくる空想の奥さんにParineeti Chopra。1897年に起きたBattle of Saragarhiの話。史実ベースなのか。(Parineetiは史実じゃないと思う。) 1万人対21人というまったく勝ち目のない戦いにシーク教徒の誇りだけで立ち向かったって、特攻とちゃうのん? まあとにかく砦の親分Ishar Singh (=Akshay)は英雄らしい。というわけで、いかに彼ら(もちろんみんなSinghさん)が勇敢に死んでいったかを描いている。敵(アフガン人=ムスリム)の残酷ぶりとか、英軍人の威張りぶりとか、何かと観客を煽るようにできていて、そういうところは退いた。ターバンに付けてた輪っかは何かな? アイスラッガーかと思った。昼ごはんにKesari Bath食べればよかったな。驚きの英語字幕付上映。
#30「Hamid」Aijaz Khan/2019/インド/Mar. 17/PVR: Forum Mall○
Kashmirを舞台にした、インド治安部隊に連行された父親の帰りを待つムスリムの男の子Hamidの物語。アラーの番号(?) 786を手がかりに、9786786786に電話をかけ、相手に父親のことをいろいろ喋る。この相手が当地の治安部隊にいる兵士で、最初は相手にしていなかったがHamidの純粋さに打たれ、父親の行方を捜したりするようになる。ハッピーエンドではない。インド人同士で対立する、これが彼の地の現実だろう。Hamid (役の子)は健気とか無邪気という風情ではなく、ハキハキしててなんだか怖い気がした。この子が電話をかけるとき、例のムスリムニット帽を必ず被る。話す相手をアラーだと思っている訳じゃなかろうが礼儀正しいね。兵士はHamidが“アサラーム・アライクム”とあいさつしても応じなかったのに、疑わなかったのだろうか。なんてところが、字幕がなかったので掴めなかったのは大いに残念。監督はもちろんムスリム。こういう作品はヒンドゥー教徒にもよく観てもらいたい。
#29「Milan Talkies」Tigmanshu Dhulia/2019/インド/Mar. 16/Cinepolis: Forum Shantiniketan○
舞台はUP州のAllahabad。何度も出てくるトラス橋(Old Naini Bridge)が印象的な、いかにもムガールな街である。主演はAli Fazal。相手役にBangaloreからShraddha Srinathが招かれた。彼女のヒンディー語は他人の吹替え? 話はこいつも宗教、カーストが絡んだ悲恋もの。Shraddha Srinathはブラミン家庭の女学生、一方のAli Fazalはムスリム家庭出の映画監督。恋におちたふたりは当然ブラミン家庭から猛反発を受け駆け落ちを試み失敗、負傷したAli Fazalは行方不明、残されたShraddha SrinathはDV男と強制結婚。ここから彼女を奪い返すのが後半。Sanjay Mishraが営む映画館Milan Talkiesの映写室がふたりを結ぶ空間となる。古い映画をいろいろオマージュしているらしいが、僕にはわからず。館内にはAshok Kumarの『Howrah Bridge』やら『DDLJ』やらのポスターがあって、こっちはわかりやすかった。まあ映画ファン(つまりインド人全員?)には楽しめる仕掛けだ。Ali Fazalは80%の確率で花柄シャツ(クルタ)を着てた。字幕なし。
#28「Photograph」Ritesh Batra/2019/インド=米/Mar. 16/INOX: Garuda Mall○
The Lunchbox』に続き、静かな性格俳優としてのNawazuddin Siddiqui採用。監督はもしかしたらSanya Malhotra (前2作からは一転して穏やか)の父親役にはIrrfanを使いたかったかも。The gateway of Indiaの広場で写真屋をやって生活しているNawaちゃん(ムスリム)が、たまたまそこに母親とやって来ていたSanya Malhotra (マネジメントスクールのトッパー; ヒンドゥー)に声をかけ写真を撮ったのをきっかけに始まる、やや年の離れた、しかも社会階層、宗教の異なるふたりの恋を静かに描く。Sanya Malhotraは親に話せず、住み込みのメイドにそれとなく相談しようとするが、一方でインド社会の、つまりインド映画の必然として親から見合いの話が来る。どうすんだ?と思っていたら、なんとなくの方向を匂わせ、映画は終わった。田舎から出てきたNawaちゃんのお母さん(Daddyと呼ばれていた)がいい味出していた。黒タクシーを多用。モンスーンの時季なのか、雨も時折。カフェも何度も出てきて、画面いっぱいMumbaiを終始満喫した。字幕なし。
#27「Ammana Mane」Nikhil Manjoo/2019/インド/Mar. 10/PVR: Forum Mall
Dr. Rajkumarの次男Raghavendra Rajkumar主演の強い母礼賛映画。字幕がなかったため話にはほとんどついて行けず。次男を見るのは初めて。2013年に脳卒中で倒れ、障害を残しながら復帰したらしい。映画では、障害をもつ息子をひとりで育て上げた母親が脳卒中で倒れ揺れる家庭内と、教職を得た息子が何か金銭的なトラブル(ここんとこがまったく掴めず)に陥り裁判で奮闘する(使えない弁護士に代わり自分で証人に質問する)さまが描かれる。祖母に理解を示せない孫娘、自分を育ててくれた母親があくまで第一の息子、それぞれの想いが伝わってはきたが、そこまで。最近のカンナダ映画には必ず字幕が付けてありそうなので、映画館はちゃんとそれを表示してほしい。話が話だけに観客はまばら。一般大衆は映画にはエンターテイメントを求めているのである。一応ハッピーエンドの体だったのだけどね。終盤にでてきた介護施設は郵便番号がうちの近くのようだった。実在するところかな? まだまだ未知のご近所。
#26「June」Ahammed Khabeer/2019/インド/Mar. 9/PVR: Vega City○
5年前なら絶対にNazriyaちゃんが主役を張っただろう、女の子の成長物語。11th gradeの16歳から飛び飛びに10年間が描かれ、その間、ふたりのBFとひとりの夫が現れ、背景には仲のよいクラスがある。観ていて“痛い”場面はひとつもない、可もなく不可もなく、そして同窓による懐かし感から生じる安易な感動が残念な作品と思う。ムンバイに働きに行く動機が単純すぎる(あの年頃の女の子はそうなんだ、と言われると返答のしようがないが)。主人公Juneを演じるのはRajisha Vijayanというまあ典型的なケララ女性。女子高生が花嫁になるまでの変貌ぶりにはなかなか感心した。中身は変わらずとも、化粧とかで見た目がずいぶん変わるものだな。ビリヤニ屋BBCは実在するんだろうか? サンダースおじさんに怒られそうだけど。おおらかで娘をかわいがる、Juneのお父さんがよかった。でも女子高生の自分の娘にビール呑ませちゃいかんだろ。演じている女優は21歳以上だろうが、ここに映倫(?)のツッコミが入らないのはおかしいよね。字幕あった。
#25「Thadam」Magizh Thirumeni/2019/インド/Mar. 3/INOX Lido
タミル映画界第三のVijay、Arun Vijayの二役サスペンス。事前知識なしで観始めたため、同時進行で進むふたつの人格によるふたつのストーリーの関係がわからず、置いてけぼり。というのも字幕がなかったから。字幕なしで一卵性双生児ものは辛い。まあ途中からそれがわかるのだが、だからといってストーリーの巧妙さとか斬新さとかは最後まで掴めず、撃沈。凶悪に仲が悪そうだった二人が実は共謀していたというのがミソなのだろう、とは思うけど。というわけで恒例の女優評価。Arun Vijayのスター度を僕は知らないのだが、別嬪さんが三人も出てた。まずArun Vijayの恋人役Tanya HopeはPriyanka ChopraをよくしたようなMiss India Kolkata 2015。つぎにもうひとりのArun VijayのGF役Smruthi Venkatはときどきいるお目々パッチリのかわい子ちゃん。そしてインスペクター役のVidya Pradeepはタイプじゃないけどまあ美人。何度も書いてる気がするけど、今回もArun VijayはHrithik Roshanに似ていると思った。
#24「Kumbalangi Nights」Madhu C. Narayanan/2019/インド/Mar. 2/PVR: Forum Mall○
Kochi近郊の美しい水郷地帯Kumbalangiに住む親なし兄弟の複雑な関係とそれぞれの交友関係が絡むユニークなドラマ。殺伐とした序盤から兄弟が“家族”に戻る中盤、そしてホラーに変貌する驚きの終盤。後に正体を現す偏屈者の理容師を演じていたFahadh Faasilはその風貌を生かしてか、(異常)性格俳優の道を選んでいるのかもしれない。Nazriyaちゃん、だいじょうぶだろか。次男BobbyのShane NigamはRanbir Kapoorみたいだった。その相手役BabyのAnna Benはこれまで見たことないタイプのファニーフェイス。長兄Sajiの親友(タミル人)の奥さん(もタミル人)役のSheela Rajkumarがなかなかよかったよ。ちょいAish似に見えたのは彼女もChennai Ponnuだからか。上映開始時刻は10:20amだったのだが、“Technical issue”発生でちゃんと始まったのは11:40am。その間観客は騒ぐがスタッフは動じず。お詫びもFree poppornもなし。ひどいねPVR。でも終映時には誰も騒いでなかったし。字幕あったけど、前半の途中で消えた。(後半に復活)
#23「Roma」Alfonso Cuarón/2018/メキシコ=米/Feb. 24/PVR: Orion Mall (BIFF)★
Oscar候補最右翼のひとつがBIFFに。もちろん満員御礼。集まっている観客も、誰かがケータイで喋る(そういう普通のひともいる)と“Silence”とか言っちゃう、いつもと違う人たちであった。1970〜71年のモノクロームなメキシコを舞台とする、ある白人家庭とそこに住み込みで働くネイティブなメイドが主人公。その時代に起こったさまざまなできごと、地震、学生デモ、宇宙ブームなどを背景に家族とメイドの苦境からのメタモルフォーゼを描く。観客をのっけから画面に引きこむ、床掃除のオープニングがすばらしい。あの飛行機、チャーター便?(あるいはCGか) それが終わってのメイドCleoの移動シーン、大画面のパンにいささか気持ち悪くなったのは僕だけだったろうか。シナリオもさることながら、出てきた映画館の立派なこと。つぎつぎと繰り出される大時代的な自動車もすばらしかった。疑問はガレージに常に散らばる犬のうんこ。あれ本物かね? だとしても人工物だとしても、小道具さんの苦労が忍ばれます。作品賞逃して残念でした。
#22「Tashi」Shilpa Krishnan Shukla/2018/シンガポール/Feb. 24/PVR: Orion Mall (BIFF)○
5日で撮ったという、シンガポールのNRI母娘、そのインド人家政婦、ロンドンから訪ねてくる息子、B&B客として滞在するバンガロールからの旅行者、この5人だけが登場する小さな佳作。あいさつで監督は自分はプロではないと言っていたけど、とんでもない。望遠レンズを多用した手持ちカメラによる撮影のセンスとかアマチュアでは決してなく、実際これが3作目だそうだ。老いた親の面倒を誰が看るのかという、国、世代を問わない刺さるテーマ。時間が経過するにつれ、各人の抱える問題が明らかになっていく。最後にハッピーエンドを迎える点が、上映後のQ&Aセッションで多くの賞賛が寄せられていた一因かな。小津などはそういう終わり方を絶対に選ばないだろう。疑似Diwali翌々日のクリスマス、5人がプレゼント交換をする。息子よ、なぜ旅行者には高価なポラロイドカメラで老母には本一冊なのだ? おかしくないか? シンガポールのインド人ならタミル語だろうと思うが、みんなヒンディー語を喋っていたのも、あれっ?と思った。
#21「Burning」イ・チャンドン/2018/韓国/Feb. 23/PVR: Orion Mall (BIFF)○
ベンガルール国際映画祭に今年もやってきた。800ルピーで観放題なのだけど今回はあまり観られそうにない。賈樟柯が観たかった。せめてもの本作は村上春樹の短篇小説『納屋を焼く』をベースとしたサスペンス。30年以上も前に読んだ話ですっかり忘れていた。“僕”はユ・アイン、“彼女”はチョン・ジョンソ。舞台は38度線の町パジュとソウル。パジュにある“僕”の家に国旗が掲揚してあるのはそういう意味か。“彼女”の新しい恋人、つまり納屋(本作ではビニルハウス)焼きが趣味という男を演じていたSteven Yeunは鶴見辰吾にしか見えなかった。“僕”の家の庭で、大麻を吸った“彼女”が夕陽を背景に上半身裸になりMiles DavisをBGMに踊るシーンの長廻しがよかった。居酒屋シーンでおそらく本当に酔っていたであろう“彼女”というかチョン・ジョンソはかわいく見えた。しかし、井戸か。村上春樹の穴(あるいはアンダーグラウンド)へのこだわりは一貫してるよなあ。この後の上映作『万引き家族』は、夜遅くなるので観なかった。飛行機で見たしね。
#20「Chambal」Jacob Verghese/2019/インド/Feb. 23/INOX: Mantri Square○
Lucia』のSathish Ninasamが正義の役人を演じる、不条理なインド社会糾弾映画。このテーマはよくあるのだが、本作はいつものよりもインパクトがある。理由は主人公が死んでしまうこと、そしてその主人公とは、僕がいま住んでいるアパートで起こった“自殺”事件(死んだ役人は清廉として知られていたらしく、事後のCBIの捜査に対して抗議デモとか起こった)の主らしいことである。『U Turn』でインスペクターをやっていたRoger Narayanやカンナダ映画に付き物のAchyuth Kumarほか、多数の悪人(実業家、やくざ、政治家、警察ら)が登場。悪事を摘発し、彼らに敢然と立ち向かう主人公だが、一度は高度な政治判断でKolarから配置転換され、そしてBangaloreで殺され自殺事件として処理される。不本意にもSathish Ninasamの死に加担してしまうハッカーを『U Turn』などの監督Pawan Kumarが演じていた。あまりうまくないね。冒頭、Sathish Ninasamが小さい頃に聴くビシュヌの神話の話、僕も知ってるよん。字幕あった。
#19「Gully Boy」Zoya Akhtar/2019/インド/Feb. 17/INOX Lido○
Ranveer Singh主演のラッパー成長物語。ヒンディー語でのラップはメジャーなんだろうか。まったくの無知。舞台はMumbaiのイスラムコミュニティーで、Ranveer SinghのうちもDharaviのスラムにある。芸名となるGully Boyはスラムを流れる(いやスラムでなくともインドではどこでも)臭い排水路からきていると思われ、実際、彼と恋人のAlia Bhattはよく排水路にかかる橋で落ち合い話をする。Ranveer Singhがエキセントリックな演技をしない映画は『Dil Dhadakne Do』を最後に観ていなかった気がする。こうしてみるとやはり巧い。Alia Bhattはあいかわらずストレートで元気。ライバル(?)のKalki Koechlinは年季が入ってきた感。主役のそういうキャラだけで映画は結構もつが、インド人大好きなコンテストものに結局堕ちてしまっているのは残念なところ。当然だが電車とかMumbaiの街がたくさん写されていて観ていて楽しい。Goregaon Socialには行ったことない。字幕はもちろん、なひーん。
#18「Bell Bottom」Jayathirtha/2019/インド/Feb. 17/INOX Lido○
時代設定がよくわからないけど、ベルボトムが流行ったのは1970年代だよな。田舎町を舞台にした、なかなか凝った探偵もの。基本的にはコメディー。子供の頃から探偵に憧れていたRishab Shettyが、夢破れて父親Achyuth Kumarと同じ警官になるが、警察署内で起きた盗難を公にしないため特命で捜査する“探偵”に署長から指名され、活動を開始する。ベルボトムに襟の長いシャツ、ハンチング。ファッションがいかしている。これらを田舎(のくせにピンク映画館がある)で入手するのはむずかしかったろう。インドの探偵だから、銃は保持せず。恋人(?)役はHaripriya。こちらは終始Desiなクルタ姿。あ、一部サリーも着用。彼女を見るのはひさしぶりだ。こんなに太ってたかな? ルパンを捜す単純な窃盗事件と思いきや、かなり複雑かつ大がかりな背景があって、感心した。字幕があったらもっと感心したかもしれない。“ベルボトム”にも二重の意味が隠されている。にんじんが好きなことには何の意味もない、たぶん。
#17「Oru Adaar Love」Omar Lulu/2019/インド/Feb. 16/PVR: Forum Mall
“ウィンク女子”で去年お騒がせの映画がようやく公開。始まりから軽薄な学園ラブコメのノリがつづき、ああこれはいかん、と思っていたら、もっといかん結末が待っていた。ストーリーは、高校生男子Roshan (Roshan Abdul Rahoof)と、同級生女子Priya (Priya Prakash Varrier←ウィンク女子)、Gadha (Noorin Shereef←元気いっぱい)との恋愛と、周囲の学園内のドタバタ。校内演芸イベントがあったりしてなんとなく『タレンタイム』を思わせるが、品格はずっと下である。ずっと下でもいいから学園ラブコメで通した方がよほどよかったのに、あの結末。監督は何がしたかったのだろう? この高校の制服はかっこいい。女子もスラックス。インドの学校の制服ってなかなかいいと思うな。そうだ、序盤に出てきたムスリム女子のSanaちゃんが主演のふたりよりかわいかったのに、中盤からまったく出なくなって憤慨した。Roshanのお父さんはGulfにいると言っていた。Keralaってほんとにあっちにひとがたくさん行ってるんだな。字幕あった。
#16「The Fakir Of Venice」Anand Surapur/2009/インド/Feb. 10/Cinepolis: Binnypet Mall○
舞台がパニの都ベネチアってんで観たいと思っていたFarhan Akhtar初主演作品。10年前の作品で、映画祭で上映された後はもめてお蔵入りになっていたらしい。実話ベースということだが、ほろ苦いコメディーに仕上げてある。ベネチアのギャラリーで開かれる怪しい芸術展に神秘の国インドからファキルが招かれる。これをひょんなことから猿専門の密輸入者Farhan Akhtarが手配を引き受ける。バラナシに探しに行くもイタリアまで行ってくれるような本物は見つからず、普通のひとAnnu Kapoorを代わりに連れて行ってのドタバタ。イタリアで、肉食べない、酒飲まない、あり得ないでしょう。ふたりに近づく女性ジャーナリストはインド系だったのか。英語がイタリア人っぽくないからアメリカ人かと思ってたよ、Kamal Sidhu。揺れるゴンドラのような手持ちカメラの映像がなかなかよかった。巷の評価がいまひとつなのは、Farhan Akhtarの変なヘアスタイルのせいかもしれない。国際映画祭上映作品のくせに字幕がなかったのは解せん。
#15「Yatra」Mahi V. Raghav/2019/インド/Feb. 9/PVR: Vega City○
Mega Star MammoottyがAPの元CMで2009年のヘリコプター事故で亡くなったYSRを熱演(インドって略称大好き)。政治の季節だ。声が本人のものに聞こえたけど、テルグ語も喋れるのかな。残念ながら字幕がなかったので、細かいところはまったくわからず。ただ、YSRが党中央に盲従せず人民に寄り添う人気の高い政治家だったこと(を伝えたいこと)は伝わってきた。父親役(回想シーンに登場)がダンディーJagapathi Babuだった。この父親からあの息子が生まれるとは思えんな(あの息子からDulquer Salmaanが生まれたってのも信じがたいのだが)。妹にSuhasini Maniratnam。奥さんを演じたAshrita Vemugantiは、エンディングの記録映像で出てきた本人によく似てた。病院で幼い姉妹がじゃんけんで遊んでた。Congのマークはパーだけど、映画ではグーだった。チョキ(ピースマーク)の方がよかったんじゃないかな。Yatraはヒンディー語でも旅行の意味だ。その辺をよく走ってるYatra Genieという長距離バスを思い浮かべた。
#14「Ek Ladki Ko Dekha Toh Aisa Laga」Shelly Chopra Dhar/2019/インド/Feb. 3/INOX: Garuda Mall○
“ボリウッドの原節子” Sonam K Ahujaとその実父Anil Kapoor初共演のLGBTもの。こういう主題がインドでも語られるようになってきた。物言う女優Sonam Kが率先してレズビアンを演じたことは想像に難くない。とはいえいまだに男女差別さえ激しいお国柄ゆえ、タッチはソフト、大スター出演のエンタメ映画として作られている。Sonam Kにデリーで一目惚れしたRajkummar Raoが彼女を追ってPunjab州のMogaで俳優学校を開設、彼女が男性に興味のないことを知って一旦は落胆するも、理解し応援するようになる。100%ハッピーではないが十分に希望を残す終わり方だった。Anil KapoorとJuhi Chawlaの(懐かしいらしい)カップリングがよかったな。ちなみに、最近はもっぱら南インド女優をフォローしているので、たまにSonam Kを見るともう雲上のひと(女神?)みたいな感覚になってきた。英語字幕はあるらしかったが表示されず残念。でもヒンディーも端々の単語が少し聞き取れるようになってきた、気がする。
#13「Peranbu」Ram/2018/インド/Feb. 2/INOX Lido○
霧の中のKodaikanalの風景が美しい。そこに佇むコテージはタルコフスキー映画のよう。Mammootyのタミル語作品(マラヤラム語バージョンもあるらしい)は、むずかしいテーマを扱いながらも楽しめる不思議な作品に仕上がっている。Mammootyを“Mega Star”とはじめて認識。離婚後、小児麻痺の娘Paapa(14歳には見えなかった)を引き取り、周囲の差別から逃れ大自然の中に移住、そこでPaapaの面倒をみるためメイドとして雇ったAnjaliと結婚、その後のどんでん返し、Chennaiに移りタクシードライバーとして働きながらの子育てとその生活に関わってくるヒジュラのAnjali Ameerとのふれあい。初潮を迎え女性として目覚めていくPaapaを必死でサポートしようとした末、絶望するMammootyを救ったのは…。AnjaliがMammootyを騙した理由を明らかにしないとか、元妻の顔を見せないとかの一方で、普通ならスクリーンからは遠ざけがちなものを正面から見せる、深慮ある演出が好印象だった。字幕あった。
#12「Manikarnika: The Queen of Jhansi」Krish, Kangana Ranaut/2019/インド/Jan. 27/INOX Lido
イギリス統治に反抗したRani of Jhansiの伝記(?)映画。演じるのはKangana Ranaut。監督のクレジットも彼女が最初に出て、それからKrish。Krishは撮影途中にKangana Ranautとうまくいかず降板したらしい。イギリスにおもねるSadashivも最初Sonu Soodが演じていたが自ら降板、Mohammed Zeeshan Ayyubに代わるといういわく付きの作品。当時のイギリス/東インド会社がひどいのはわかるのだけど、全面Jai Hindな映画なのでやや白けながら観てしまったのも災いしてか最後まで入り込めず。観客の感情移入を煽るようにイギリス人の居所(?)に“犬とインド人は立ち入り禁止”の貼り紙がしてあった。史実かね? バトルシーンの描写(カメラワーク含む)はテルグあるいはカンナダ映画のようだった。Rani of Jhansiは鉄砲の弾の動きが見えたらしい。ひょいひょい避けたり盾で受けたりしてたよ。Ankita Lokhandeという女優がよかったな。元カレはSushant Singh Rajputなのか。字幕なかった。
#11「Irupathiyonnaam Noottaandu」Arun Gopy/2019/インド/Jan. 27/INOX: Garuda Mall
“Mohanlal”とでっかく出てからその前に“Pranav”の文字。Mohanlalの息子、親の七光りでしか存在をアピールできないの? 題名は“21世紀”らしいけど意味不明。伝えたいことはあるみたいだったけど、いかんせん話がつまらない。特にGoaが舞台の前半はひどかった。10年に一度しか公開されないザビエルのミイラをBasilica of Bom Jesusに夜忍び込んで見に行くって、なんなの? Kochiに移る後半も、警察に追われGoaに戻ろうとする走る列車内・屋根の上での格闘の呆れるひどさ。そもそもなんで警察なのにRowdyばかりなのか。駅に向かうのに共産党の街宣車を使うところは面白かったけどね。映画中でもDulquer Salmaanのことを口にする。意識してる(周りが意識させている)のだろう。ヒーローにするにはおとなしい顔立ちだし頭もそのうち禿げそうだし、役者としてもっと相応しいあり方があるような気がする。Goaは屋外禁酒になるらしいね。観光客減ったら困るんじゃないかな。字幕あった。
#10「Thackeray」Abhijit Panse/2019/インド/Jan. 26/PVR: Forum Mall○
Republic DayにMaharashtraの右翼Balasaheb Thackerayの伝記映画を観る。別に右翼を見たいのではなく、彼を演じるのが怪優Nawazuddin Siddiquiで雰囲気が出そうだったので。Thackerayのことはまったく知らないので勉強にもなるしね。幸運にも英語字幕が付いていて話について行けた。Tamil人やParsiやらの外来人が跋扈し原住民であるMarathiが虐げられているBombay (彼はMumbaiと呼ぶ)の有様を屈辱的に思い、右翼政党Shiv Senaを立ち上げる。かなり暴力的な党らしく、外来人を排斥し国政までゆるがす存在になっていく。BelgaumなどKarnataka州との州境争いもあったんだな。Indira Gandhiがまた出てきたぞ。いつも同じ女優なのかどうかは未確認。Thackerayの奥さん役はAmrita Rao。安定の中年美人だね。EROS Theatreが内部まで出てきた。Nawaちゃんはイスラム教徒だと思うけど、俳優は自分の信条を曲げてまでいろいろやらないといけなくて大変だ。観たHindi版のほかにMarathi版があるらしい。トーンがより激しいのだろうか?
#9「K.G.F: Chapter 1」Prashanth Neel/2018/インド/Jan. 20/Narthaki Theatre○
公開からひと月でいまだ大ヒット中。いつまでやるか楽しみである。影響はバンガロール市街にも現れていて、Yashの写真が入った鉄筋の広告が道路脇に溢れたり、宝飾店BhimaがB.G.F (Bhima Grand Fest)なるセールを打ったり。今週末は他にめぼしい作品がないのと音楽聴いてたらまた観たくなったので、総本山(?)でYashの巨大カットアウトのあるNarthaki Theatreで再見した。もちろんカンナダ語版、字幕なし。少なくともバルコニー席は満席だ。観客の反応はおとなしめだった。Rockyの圧倒的強さとそれを促した母親(Archana Jois; 美人)への想いの対比が印象的。そして金山のSF的な映像美とスケールに酔う。Chapter 1はGaruda殺しを達成して終わるが、終わった感はまったくなく、“で、どうなるの?”とすぐにでもつづきを観たい状態で観客は今年中に完成・公開されると思われるChapter 2を心待ちにするわけだ。どういう展開になるのか楽しみ。冒頭でRockyの抹殺許可を出す女性首相、1981年だしIndira Gandhiだよね。最近よく見る気がする。
#8「Rosogolla」Pavel/2018/インド/Jan. 19/PVR: Phoenix Marketcity Mall○
Kolkata発の有名菓子屋K.C. Dasのオリジンにまつわる逸話。創業者Krishna Chandra Dasの父親Nobin Chandra Dasが超有名なRosogolla(ベンガル語なのでロショゴッラと読む)を発明するなかなか興味深い話。なのだが、映画としてはいささか苦しい面があった。まず19世紀後半のKolkataを再現するためCGを使っているのだが、これがかなり稚拙。それからNobin (俳優はUjaan Ganguly)。演技なのだろうがいつも口を半開きにして阿呆みたいなのだ。主役なんだしもう少しポジティブに演出してはどうか。彼の妻役の女優Abantika Biswasも役づくりのため体重爆増させたのかって感じ。よく見ると顔はAnushka Sharmaに似てなくもない。まあ勉強になったのでいいことにしよう。Nobinの相棒となるおっちゃんは遠藤辰雄みたいだったな。Rosogollaは僕に言わせればGulab Jaminと同じくらい単にむっちゃ甘くてジュワジュワしたお菓子。おいしそうに食べる人たちを見てても涎は出なかった。K.C. Dasのは格別においしいのかな? 英語字幕あった。
#7「Viswasam」Siva/2019/インド/Jan. 15/PVR: Forum Mall○
Ajithのポンガル映画はNayantharaが共演。彼女は主役も張れるが、こういうサポート役でも輝く。Madurai近くの田舎で精米所(?)を営むrowdyなAjithがその村にやってきた医師Nayantharaと結婚するがもめ事に娘を巻き込んでNayantharaの怒りを買い別居という過去の話と、Mumbaiで暮らす母娘のところへAjithがやってきて病院の重役になっているNayantharaのうちに運転手として勤めながら謎の襲撃に遭う娘を守る現在の話。この謎の襲撃の張本人はダンディーJagapathi Babuなのだが、この根拠が唐突で陳腐なことを許せば、あとはひたすらNayantharaの美しさを堪能すべし。前半に見せる超クロースアップ、後半のひっつめ髪の彼女のきりっとした表情は昇天ものだよん。字幕がなかったので、後半でNayanが頭に既婚者の印(なんて呼ぶのか知らない)を付けていて、Ajithと単に別居しているだけなのか一旦離婚して再婚したものなのかがわからずやきもきした。Mumbaiの街は行ったばかりなので、憶えている場所がいくつか出てきてそちらも楽しめた。
#6「Vinaya Vidheya Rama」Boyapati Srinu/2019/インド/Jan. 15/INOX: Garuda Mall○
コテコテ、やりすぎ、大家族、神さま、警察と政治家、強すぎるヒーロー、添えものヒロイン、“ちゃんぺすた”連発。 Ram Charan主演の典型的テルグ映画。Ram Charanの造型は神がかっていて、Krishnaあたりをモチーフとしているような。でないと、なぜあんなに無敵なのか説明が付かないし、あの養家で育ってあんな豪勢なタトゥーを彫れるわけがない。相手役のKiara Advaniは前作ではプリンスMaheshと共演していた女優だな。Kajal Aggarwal系の、特徴のない美人。Ram Charanのセクシーな隣人として出てくるEsha GuptaはItem number向けの特別出演だが、どちらかと問われれば彼女の方が魅力的に見える。字幕がなかったのでころころ変わるロケーションのつながりがうまく追えず、Webで復習する必要があった。Ram CharanはTollywood俳優のなかでは結構インテリだと思っていたが、こんな作品に出てるとキャリアに傷が付くよ。朝早かったこともあってか、場内ガラガラだった。
#5「URI: The Surgical Strike」Aditya Dhar/2019/インド/Jan. 13/INOX: Garuda Mall○
2016年に実際に起こったKashmirのインド陸軍基地への奇襲攻撃と、それに対し10倍返しの論理で実行された復讐作戦を描く愛国心昂揚映画。Jawanは国境でお国のために命を張ってがんばってるから感謝しようというわけである。とはいえ、パキスタンを貶め茶化すような描写は見られるものの、観客に対する愛国心強要は控えめであった。主役のMajorを演じるのは、こないだRanveer SinghらとModi首相に会いに行ってセルフィーに一緒に収まっていたVicky Kaushal。相手役といっていいのか、Yami Gautamが出演。彼女を見るのはひさしぶりな気がする。彼女の存在も含め実際の作戦にフィクションが振りまかれ、リアリティーは低下している。鳥形ドローンねえ。ただし、火器はどうやら本物の映像を使っているらしく迫力があった。首相とHome Ministerは現職のふたりに似せて造型されていたが迫力はなかった。襲撃時、ひとりの敵に対し数発は弾丸を撃ち込み確実に息の根を止める軍の残忍さは怖い。当然ながら字幕なし。
#4「Petta」Karthik Subbaraj/2019/インド/Jan. 13/Balaji Digital 2K Cinema○
Superstar Rajinikanthの新作がもう登場。Vijay SethupathiとNawazuddin Siddiquiが共演する豪華版である。相手役はTrishaだと思っていたら、彼女(確かにRajiniの奥さん役だったけど)の出番はわずかで、Simranと“ケララ・ビューティー” Malavika Mohananが大きな華を添えていてこちらも満足。ストーリーは身分違いの結婚が絡むやや複雑な復讐劇で、単なるヒーローではないRajiniは久しぶりに若返った感があった。なんとDhanushばりに李小龍の真似までしてしまう。でも、笠智衆を想起させるぎこちない歩き方はいつもと同じだったな。悪役のNawaちゃんはさすが。『Raman Raghav 2.0』のときみたいに変態。で、本作の目玉Vijay Sethupathi。25歳くらいの役だと思うけど、無理ありすぎで笑ってしまった。観客の声援を聞く限り、Rajiniを超えた感あり。こういう作品はやはり単館で観るのが正解。踊るやつはいなかったけど、大騒ぎで楽しかった。演出で気になったのはタミル万歳なとこ。ま、いいけど。タミル映画万歳。英語字幕あった。
#3「Maari 2」Balaji Mohan/2018/インド/Jan. 4/Aurora Talkies (Mumbai)○
ムンバイのタミル映画専門館で再見。当然タミル語版で字幕なし。何人かに“タミル語わかるの?”と突っ込まれた。映像だけでも伝わるのがよい映画というものだよ。Maariというキャラはとても魅力的で、Dhanushはそのチンピラさ+純情加減をうまく演じている(この点、Vijay Sethupatiも然り)。そしてSai Pallavi演じるArathuも表面上はカラッと内面は悩める乙女でこっちもいい。この辺りがポジティブな評価に直結していると思う。Tovino Thomasもよくやっているが、Thanathosという敵役の造型にはいささか拒絶反応。最後にはやくざとして無事(?)復活したMaari、ということは『3』もありそうな予感。それもヒットすればDhanushのはまり役定番シリーズだな。さて、Sai Pallaviの黄色いオートリキシャーはUber Autoである。ということは内部にスマホを備え、お客からの呼び出しに応える必要があると思うが、そんなシーンは一度もなかった。それでもUberには提供する意義があるのだろうね。
#2「K.G.F: Chapter 1」Prashanth Neel/2018/インド/Jan. 2/Metro INOX Cinemas (Mumbai)○
先日観たばかりの『KGF』のヒンディー語吹き替え版。単に言語が違うだけではなく、カンナダ語版ではタマちゃん(Tamannaah)だったダンスシーンがそっくりMouni Royという女優に代わっているという落とし穴があった。字幕は当然なかったがこちとら2度目、鑑賞への支障はほとんどなし。Rocky (Yash)が一目惚れするSrinidhi Shettyは2016年のMiss Divaらしい。Alia Bhattと黒木メイサを1:2で混合したようなルックス。好みじゃない。かどうかはともかく、この一目惚れの描写がいい加減でしっくり来ない。そもそもなぜRockyはあんなに酔っ払っているのか。自分を見失うほど自制できない奴じゃないだろうに。次いでの違和感は、ストーリーテリング。語り手Anant Nagが惚けているのか興奮しているのか話が飛んでしまうのは観客に先のことを気にさせる演出法なのだろうけど、ここはじっくり時系列で見せてほしかった。と、些細ないちゃもんを付けてみても全体の圧倒的パワーの前ではどうでもよくなってくるよ。早くChapter 2を。
#1「Simmba」Rohit Shetty/2018/インド/Jan. 1/Liberty Carnival Cinemas (Mumbai)○
新婚Ranveer Singh主演のコップもの。名前がSimmbaで、同じ監督の『Singham』の劣化版あるいはパロディーみたいな位置づけか(実際にはJr. NTR主演のテルグ映画『Temper』の遠いリメイク)。麻薬取引に関わり美味しい汁を吸う堕落警官の見本みたいな奴が、尊敬するある女性のレイプ死を機にようやく正義となる話で、後半まじめになるものの基本コメディーである。悪役はSonu Sood。猛烈売り出し中のSara Ali KhanはRanveer Singhの相手役で出演。何度見ても苦手だ。終盤にホンモノのSingham登場。そしてさらにAkshay Kumarまで出てくるよ。ダンスも派手な典型的Bollywoodマサラムービーといえよう。舞台はゴア。Our Lady of the Immaculate Conception Churchが何度も出てくるわかりやすさ。もちろん字幕はなかったので細部は追えずじまい。ということを考慮してさえ6つ星を付ける奴の気が知れないが、こちらとしては相変わらずゴージャスなLiberty内部が見学できたのでよしとしよう。

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Updated: 12/28//2019

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