[↓2023年]
2024年に観た映画の一覧です
- 星の見方(以前観たものには付いてません)
- ★★…生きててよかった。
- ★…なかなかやるじゃん。
- ○…観て損はないね。
- 無印…観なくてもよかったな。
- ▽…お金を返してください。
- 凡例
- #通し番号「邦題」監督/製作年/製作国/鑑賞日/会場[星]
- #70「Caught by the Tides」贾樟柯/2024/中国/Nov. 23/丸の内TOEI (FILMeX)◯
- メモはのちほど。
- #69「DIAMONDS IN THE SAND」Janus Victoria/2024/日=マレーシア=フィリピン/Nov. 23/丸の内TOEI (FILMeX)◯
- メモはのちほど。
- #68「チネチッタで会いましょう」ナンニ・モレッティ/2023/伊=仏/Nov. 23/ヒューマントラストシネマ有楽町◯
- メモはのちほど。
- #67「続・決着」石井輝男/1968/東映/Nov. 9/シネマヴェーラ渋谷◯
- 『決着(おとしまえ)』シリーズ第2弾。こちらも、主演・梅宮辰夫、真の主役・吉田輝雄で、これに耐えられなくなった梅宮が降りて、シリーズは打ち切りとなったらしい。ちなみに本作は前作の続篇ではない。残念ながら本作には丹波哲郎は招聘されておらず、代わりに『骨まで愛して』の城卓矢が使われている。むっちゃかわいい大原麗子のボディガードという扱いで、とてもいい役なのに演技がダメダメだった。大原麗子はボス・安部徹の娘。その安部徹と悪役コンビを組む田崎潤は吉田がかつて殺した元組長の娘・宮園純子(『水戸黄門』のお新だ)にぞっこんで、前作よりは華やかさがあった。映画は大したことない。打ち切りでよかったんじゃないかな。終映後、吉田輝雄トークショー。体調はよくないということだったが、88歳、よく喋って、見た目はお元気そうだった。“石井監督は梅宮辰夫が嫌いだった”とか“石井監督と飲んだことは二度しかない”とか、面白い話がたくさん聴けて楽しかった。
- #66「決着」石井輝男/1967/東映/Nov. 9/シネマヴェーラ渋谷◯
- 石井輝男が異常性愛路線に移行する直前、『網走番外地』を撮っていたころの作品。主演としては梅宮辰夫がクレジットされているが、実質の主役はテルテルコンビの吉田輝雄である。ギャングものではなく、組を解散した後その縄張りを奪った山本麟一・河津清三郎の悪行に対し文句を言って殺された元親分・嵐寛寿郎の仇撃ちのため、吉田輝雄と梅宮で殴り込みをかけるという、王道(というか二番煎じ)の仁侠もの。女優陣がしょぼいし、梅宮もそうだがアラカンの片腕役の大木実の扱いもぞんざいで、なんか気の毒な感じだったが、映画自体は面白かった。ギャングを引きずる丹波哲郎の存在が出色。一匹狼の殺し屋で、スーツに帽子に拳銃。ヤマリンに雇われているのだが、お約束通り、吉田輝雄を助ける。笑いを取りながら極めてかっこいいのはタンバならではである。“主演”梅宮は3曲を披露。なかでは“刺せば監獄、刺されりゃ地獄♪”というフレーズが印象深かったな。
- #65「フルムーン・イン・ニューヨーク」關錦鵬/1989/香港/Nov. 4/YEBISUガーデンシネマ◯
- 場所を移して香港映画祭。本作は30年ぶりの鑑賞(→初回)のようだ。全然憶えてないし、観始めても記憶は蘇らなかった。それぞれ異なる立場でニューヨークに住む香港出身の張曼玉、台湾出身の張艾嘉、大陸出身の斯琴高娃が知り合い、仲よくなり、最後にみんなで酔っ払って摩天楼の谷間に満月を見る女性万歳映画。厳密に言えば、満月を見るのは観客であって、満月自体は三人のアバターである。立場は違っても、誰もがある意味孤独で、寄りかかる場所を求めていたのが、出逢いによって吹っ切れたというわけだ。ちょっぴりLGBTQ入っているのは關錦鵬ならでは。なんてことは、当時は気がつかなかったろう。肩パッドが80年代だ。安全剃刀ですね毛剃ってる。聳え立つWTCが眩しい。三人とも若いし、本当に時代を感じるね。アメリカはきのう再び暗黒時代に入った。
- #64「チャオ・イェンの思い」赵德胤/2024/中国/Nov. 4/ヒューマントラストシネマ有楽町(TIFF)◯
- 『The Road to Mandalay』ではタイだったが、本作では中国への不法入国者(というのは不適切か?)が主人公。北京語と雲南語が入り乱れる点が楽しめないのは外国人の悲しさだ。とはいえ、単語は似ていて声調が違うように聞こえた。雲南生まれの姉妹に戸籍がひとつ。それを妹に譲り、姉はミャンマーに駆け落ちして借金生活。妹は姉の名前を名乗り、北京で人気女優となりセレブな暮らし。そこに突然姉が、そして駆け落ち相手もやってきて、アイデンティティと金をめぐる事件が勃発する。なかなかおもしろかった。エンディングが好き。趙麗穎と辛芷蕾の美人姉妹は、どっちかといえばお姉さんの方がいいな。スタッフに林強など何人か台湾人が入っていたのだが、いちいち“中国台湾”とクレジットされていて、なんだかなあ。中国の一部だというなら何も書かなきゃいいのにね。
- #63「お父さん」翁子光/2024/香港/Nov. 3/ヒューマントラストシネマ有楽町(TIFF)◯
- 劉青雲主演の『父ありき』。妻と二人の子供をもつ24時間営業の茶餐庁を経営していた男が、一夜にして独りになる。しかも、息子が妻と娘を“世界の人口が増えすぎているから”という理由で殺して、という悲惨なシチュエーション。店を譲り、猫と静かに暮らしながら、息子の裁判を傍聴したり塀の中にいる息子に面会に行く父親。その複雑な心境を絶妙な演技で表現する劉青雲。熟練だな。回想シーンで息子が父親はMr. Beanに似ていると言う。なるほど。でもMr. Beanよりカープの秋山に似ていると思うな。シナリオは時間構成が複雑で、劉青雲は顔はそのままで、ヘアスタイルというか髪量で時々を表現しているのだが、とてもわかりにくかった。んで、全裸ベッドシーンまであってご苦労さん。ひとつの時点が1997年夏。微妙なセリフもあって、これくらいなら検閲通るんだ、と認識。骨抜きになったと思っていた香港電影だが、まだ捨てたものではないな。
- #62「冷たい風」モハッマド・エスマイリ/2024/イラン/Nov. 3/TOHOシネマズ・シャンテ(TIFF)◯
- 有給休暇取って行くなんてことはしなくなって久しい東京国際映画祭。37年目ですか。よく続いてるね。雪山で起こった殺人事件を題材とするイランのクライムサスペンスは実にユニークなつくり。全編モノクロームに、変動するアスペクト比。大部分が正面を向いて供述する関係者のショットで、画面が事件を担当する警部の目線になっている。警部は声だけ。複数の証言から事件の全体像と真相を観客に推論させるしかけ。『羅生門』とは違い、証言を重ねることによって収束するようになっている。凝ったね、監督。ペルシャ語は、結構ヒンディーと単語を共有しているな。“ジンダギ”とか“パーンチ”とか聞こえた。まあアーリア人が持ち込んだといえば納得か。終映後、監督(と俳優)を迎えてのQ&A。監督は『クローズ・アップ』が大好きだそうだ。通訳のショーレ・ゴルパリアンさんは約30年この映画祭で働いている。それにしては日本語が…
- #61「ジョイランド わたしの願い」サーイム・サーディク/2022/パキスタン/Oct. 26/ヒューマントラストシネマ渋谷◯
- パキスタンのクィア映画。インドより進んでるね、パキスタン。とはいえ公開までには結構苦労があったようだ。兄弟2家族と父親が同居するラホールの封建的家庭で起こる崩壊の物語。働く妻に対し無職の夫(次男)は父親のプレッシャーがありながらも均衡を保っていたが、夫がヒジュラ※・ダンサーのバックダンサーとして雇われ、妻が在宅を強要されたときからそれぞれが別のベクトルを向き始める。父親を含め、登場人物が少しずつ変わっていく描写がなかなかよかった。題名のJoylandは仲よくなった妻と嫂が息苦しい家庭を抜け出し遊びに行く遊園地。後に次男が転職する先でもあるこの空間が示すものは何か。次男、妻、ダンサー、そして映画も何も主張しないまま、悲しく終わり、あとは観客に委ねられる。ダンサーのカットアウト(といっても3mくらい?)を注文してた。カットアウト作りはなかなか楽しそうな職業だな。
※セリフは“ヒジュラ”とは言っていなかった気がするが、字幕がそうなっていた。
- #60「プリンセス・シシー」エルンスト・マリシュカ/1955/オーストリア/Oct. 26/ル・シネマ渋谷宮下◯
- どこまでもおめでたい映画。ロミー・シュナイダーの出世作にして、本作で演じた役のイメージをいつまでも引きずることになった問題作でもあるようだ。バイエルン公の次女シシーである童顔のロミー・シュナイダーが、そのお転婆ぶりで図らずもオーストリア皇帝(カールハインツ・ベーム)を彼女に一目惚れさせる一種のシンデレラストーリー。アイドル映画だな。残念ながら映画としての面白みはほとんどない。ひたすらロミー・シュナイダーの当時の可愛さを楽しみ、大自然を含め背景の豪華さにため息をつくのが正しい鑑賞姿勢。挿入されるしょうもないギャグにも大きな心で笑ってあげよう。童顔と書いたが、実際彼女の目は顔の中心より下にあり、その上は広い額なんである。ハイティーンでこの顔かあ。プリンセスといえばNHKで『プリンプリン物語』の再放送が最近始まった。懐かしいが、いま見るには本作以上に寛容な心が必要である。中国とソ連は仲が悪いそうです。
- #59「画家ボナール ピエールとマルト」マルタン・プロヴォ/2023/仏/Oct. 20/横浜シネマリン◯
- ヴァンサン・マケーニュといえばギヨーム・ブラック作品でのシルヴァンの印象しかないのだが、その後、着々とキャリアを積んでいるらしい。たまたま見た予告篇で見つけたのだが、ナビ派画家のピエール・ボナールを演じているらしく、ブラック作品以外ではどんな感じなのか本篇を観に行った。あと、『恋する惑星』前半で使われていた曲(『Baroque』by Michael Galasso)がその予告篇で流れていたのも印象に残った。観る映画を決める理由なんてそんなものである。さて、ボナールと生涯の伴侶であったマルトとの年月が語られる大河ドラマは見応えがあったというか、あと先考えない浮気な登場人物がいかにもフランス映画っぽかった。フランス人がみんなそうだから、と言うと怒られるな。ヴァンサン・マケーニュにも違和感なし。喘息にもかかわらずいつも(しかもときどき裸で)走っているマルト役のセシル・ドゥ・フランスは熱演だった。ふたりが晩年を過ごしたLe Cannet (Canneの隣)にはボナール美術館があるらしい。アーモンドの樹もあるかな?
- #58「国境ナイトクルージング」陳哲藝/2023/中国=シンガポール/Oct. 18/新宿ピカデリー◯
- てっきり、シンガポール〜マレーシアのロードムービーみたいなものと思っていたら、いきなり川か湖の氷を切っているシーンで始まって、おや?と初めて違うことを認識した。原題見てればわかったんだが、中国映画。簡体字を採用しているシンガポールだけあって、やはり大陸とは比較的近いんだろうな。主演は周冬雨。華奢な体に童顔の組み合わせに鞏俐や章子怡のような別格感はないが、いまや大女優だね。劉昊然(知らん。ちょいと金城武)と屈楚蕭(知らん。ちょいと香取慎吾)という中国俳優との三角関係が、北朝鮮との国境にある極寒の延辺朝鮮族自治州で燃え上がる話。それぞれが過去を捨て、将来が見えない状況での出会い。お互いのバックグラウンドはシェアされない。この状況からそれぞれが未来に向かって動き出す。バリバリの国策映画に海外から有名監督呼んできた、とはまったく異なる、個人向けの良質な作家映画に仕上がっている。自治区での話でもあるし、中国政府とか張芸謀とかがどう見ているかちょいと気になるところ。
- #57「Kishkindha Kandam」Dinjith Ayyathan/2024/インド/Oct. 13/SKIPシティ映像ホール◯
- 一見地味なので気にしていなかったのだが、評判がいいらしいので川口までドライブ。半分ほど埋まった座席はマラヤ-リで盛り上がっていた。物語の構造というか、背景がとても面白い。これをどう映像化、映画化するかが監督の腕の見せどころだ(書いたひとは撮影を担当)。ところが残念なことに、肝腎のところを夫(Asif Ali)がすべて説明していて、もう少しなんとかならなかったのかと思う。インドで野生動物を殺すのは重罪である。かつてSaif Ali Khanがシカかなんかを密猟したとかで大騒ぎになったことがあったよね。猿が拳銃をもっている写真なんかを持ち出すのは、いま風。これとか、Naxaliteの話も絡んで、そういう点でも材料は豊富にあったので、惜しい。タイムトラベルものにもできたのに(まあ、それはちょっと、だけど)。主人公のAsif Aliの後妻で、義父(Vijayaraghavan)の奇怪な行動を探るAparna Balamuraliの扱いも中途半端だったと思う(そもそも映画中の役名もAparnaで適当)。
- #56「花嫁はどこへ?」Kiran Rao/2023/インド/Oct. 6/新宿ピカデリー◯
- この日本(2024年ジェンダーギャップ指数118位)よりも女性にやさしくない国インド(同129位)。Aamir Khanプロデュースの本作品は、ここに焦点を当て、徹底的な男性・家社会の農村部で育った対照的なふたりの女性が自立していくさまを描く。うん、都市部では受けそうだが、農村部での反応はどうだったんだろうね。少なくとも政治家のウケは悪かったろう。『虎に翼』の寅ちゃんほどではないが、スマートなJayaが頑張って自分の道を探し当てていく気持ちよいドラマ。サスペンス調なのが効いている。一方のPhoolは無抵抗な農村女性で、新郎とはぐれてゼロからのスタートで最後には旦那の名前を人前で叫べるように成長する。いかにも悪徳のPolice Officerが最後にはJayaの味方になるのは現実味がなく、Aamir Khanの甘さが出ているように思う。Jaya役のPratibha RantaはSonam Kapoorを賢くしたような美人だったなあ(決してSonam Kapoorが賢くないという意味ではない)。
- #55「東京流れ者」鈴木清順/1966/日活/Oct. 6/ル・シネマ渋谷宮下★
- 突然4Kレストアされた、鈴木清順の傑作のひとつ。1990年に大井町で観たのが最初かな。以降、DVDとかで何度も観ている、渡哲也の『東京流れ者』のほか、鹿乃侑子(松原智恵子にあらず)の『ブルーナイト・イン・アカサカ』と二谷英明の『男のエレジー』(これはひどかった)をフィーチャーした歌謡映画である。とにかく鈴木清順の様式美に酔う。ナイトクラブ最高(美術は木村威夫)。渡哲也のキザなセリフに酔う。俺を怒らせないでくれ。流れ者に女は要らねえんだ。また、流れますよ。兄貴、ライトパンチ使ってるんですか(コレハキザジャナイカ)。雪景色のセットに映る渡哲也の影、ターゲットからの射程距離10mのとこに引かれた赤い線、緑色のブルゾンを着た二谷英明、半分小津調の北竜二、と笑いの要素もふんだんである。佐世保のキャバレーでのドリフギャグはいつ観ても、どこまでシナリオにあったのか首をかしげるね。
- #54「SALAAR/サラール」Prashanth Neel/2023/インド/Sep. 28/シネマネコ◯
- わざわざ青梅まで行って観なくてもいいのだが、この映画館に行ってみたくなったので三度目の鑑賞(→前回)。いうまでもなく『K.G.F』との類似性は大きいが、決定的に違うのは主人公ふたりの生まれである。Rockyは相当貧乏な家庭の出なのに対し、DevaはShouryaanga族の王子。とはいえ、ジェノサイドを生き延びた後は市井の母子家庭の子だ。この母子の真の関係は待ち望まれるPart 2で明らかにされるのではないかと思う。そしてこの出生が本作を『K.G.F』とは異なる展開と結末に導くと期待する。女性を虐げる者を徹底的に叩きのめす(果ては殺す) Devaの狂気は、母親が襲われそうになったから、だけでは説明できないしね。とにかくPart 2を観ないと何もわからないこの映画の構造はずるい。『K.G.F』も『Ugramm』も観ていないひとは絶望するか、ひたすらPrabhasのアクションを堪能するしかない。再度、Part 2の割引制度を要求する。“Childrens”というインド英語聞いた。
- #53「ヒットマン」リチャード・リンクレーター/2023/米/Sep. 23/横浜ブルク13◯
- 『恋人までの距離<ディスタンス>』に始まる、いわゆる“Before Trilogy”は僕の大好物。その監督も30年経てば巨匠である。(Julie Deplyはおばさんである) 予告篇を観て、監督の名前を見て、これは観なくてはと感じた次第。実在した大学教授兼おとり捜査官のGary Johnson氏の話をベースとした、どっちかというとラブコメ。Gary Johnson役はGlen Powell、恋人役にAdria Arjona。どちらも僕には馴染みがないが、どこかで見たような顔でもあった。 プエルトリコ人らしいAdria Arjonaは、Winona Ryder似かな。殺し屋を装って、近づいてくる依頼主を逮捕するというえげつない捜査(?)方法で犯人(?)を逮捕していく。こんなことやってるのか、警察。Gary Johnsonはヒーローなのか? 映画は史実に対してかなり盛っているようなので即断はできないがモヤモヤした。ま、話が面白いからいいか。殺し屋を説明するシーンでいろいろ映画がコラージュされるのだが、その中に『殺しの烙印』が。さすが巨匠。
- #52「本日公休」傅天余/2023/台湾/Sep. 23/kino cinema横浜みなとみらい◯
- ほんわかで、登場人物みんないいひとな呉念真プロデュースのファミリードラマ。主演は陸小芬。『看海的日子』(あれ?観てない?)のひとだ。もちろん、いまはおばあさん。舞台は台中で、車站近くで理容室をひとりで営む陸小芬が、常連客とのつながりを大事にしながらコツコツ生きていくさまを、彼女の娘、息子、元娘婿のくらしと対比させながら描く。ハイライトは、彰化にいる元常連客の髪を切りにひとり車で出かけるロードムービーパート。いやあ、高齢者の運転は危ないが、ボルボならぶつかってもだいじょうぶか。途中、農業を営む若者(?)役で陳柏霖が出てくるというおまけ付き。おおむね何も起こらず、ただ時間は進み、それぞれはそれぞれの暮らしを続けていく。そんなストーリーは嫌いではないし、むしろ好きなのだが、なんだろ。わかりやす過ぎ。スマホバンバン使っているので現在だとして、Volvo 240が娘婿がいう通り30年物だとすると、買ったのは1993年ころ。Wikiでみると240の生産終了は1993年。時代考証はばっちりだね。
- #51「ヒューマン・ポジション」アンダース・エンブレム/2021/ノルウェー/Sep. 14/シアター・イメージフォーラム◯
- 海の見える坂道の町。女性の息遣いが聞こえ、やがて坂を登ってくる彼女が現れる。固定ショットのみでつながっていく静かな映画。これは、と思っていると、フレーム外のテレビから、聴き慣れた『すみれの花の咲く頃』が…。というわけで久しぶりに小津ファンと思しき監督の作品を観た。北欧らしい街並みにある古アパートに、ガールフレンドと暮らす椅子マニアの彼女は、ローカル新聞の記者。大きな病気からしごとに復帰したばかりの彼女が、ふとしたことから移民問題に注目していく。喪失感から徐々に(ほんとに少しずつ)人生への推進力が付いていく感じがいい。登場人物は限られており、当の移民もひとりとして出てはこない。小津映画を観る日のふたりが、柔道着と着物もどきを着て、つくった日本食(玉ねぎを大量に使ったなにか)を中華箸で不器用に食べていたのはご愛嬌。永遠にリノベが終わりそうにない彼女の部屋にはよさそうな椅子が点在してた。猫もインテリアみたいに自然にそこらにいた。
- #50「リリー・マルレーン」ライナー・ベルナー・ファスビンダー/1981/西独/Sep. 14/ル・シネマ渋谷宮下◯
- ハンナ・シグラは苦手系なのでこれまで観てなかった有名作品。第二次大戦時に流行した歌『リリー・マルレーン』を歌ったドイツ人女性ララ・アンデルセン(劇中ではビリー)の波瀾万丈な半生を描く。ユダヤ人の恋人とチューリッヒで過ごしていたが、その恋人はドイツにいるユダヤ人をナチスから救出する活動に関わっていて、というスリリングな話で引き込まれた。スイスを追放され、ドイツ軍内で大ヒットし、ゲッペルスに睨まれながらもヒットラーに気に入られて面会したり、逆鉤十字のかかる大会場で歌ったり。大会場の様子は特殊撮影でそのモンタージュの稚拙さが時代(1980年代)を感じさせた。モンタージュといえば、歌を背景に戦場の悲惨な映像が重ねられ、ファスビンダーってこういう監督だったっけ?と思ってしまった。歳のせいか、ハンナ・シグラへの苦手感は消えた。ダニエル・シュミットが劇場の受付(?)役で出演してた。
- #49「モンキーマン」Dev Patel/2024/加=米/Sep. 1/横浜ブルク13◯
- 『きっと、うまくいく』や『スラムドッグ$ミリオネア』などの、“普段インド映画観ないけど、これ観たことある”とひとが言う作品はだいたい観ていない。なので、Dev Patelを最初に見たのはアマプラかフライトかで『Lion』ではないかと思うが、あまり印象には残っていない。で、本作は彼の初監督作品らしいのだが、そうは思えないデキのよさだった。明らかにインドではないMumbaiらしき街で、怪しいGuruとOfficerを相手にDev Patelの個人的復讐劇が展開する。イギリス人の割には流石にインドもよく勉強しているらしく、『ラーマーヤナ』を借用したシナリオ(Monkey Man=Hanumanだしね)とか、宗教とか、ディワリとか、ヒジュラとかがどーんとシナリオに投入されていて、インドでは問題になるけどインドらしい映画だった。アクションも気合い入ってた。『PS-2 大いなる船出』に出てたSobhita Dhulipalaが高級クラブのホステスとして出演。Malavika Mohananの強力ライバルだな。
- #48「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間(後編)」マルコ・ベロッキオ/2022/伊/Aug. 25/ル・シネマ渋谷宮下◯
- 無事、後半の170分を観に行けた。残りの3エピソードは、赤い旅団メンバーのアドリアーナ・ファランダ、Aldo Moro夫人のエレオノーラ・モーロ、そして結末の巻。どのエピソードもまたまた観応え120%だったが、特に幻想的な最終エピソードには震撼した。これぞ、ドキュメンタリーではなくドラマ映画である。革命の実現を信じていなかった現実的な旅団メンバーがいた。クーデターじゃないんだから、人民の理解と支援がなくては無理だよね。じゃあ、なんで極左活動をやるのか。その旅団メンバーが観に行く映画が『ワイルドバンチ』である。自分もあんなに暴れてみたいだけなのか? 一方、キリスト教民主党の連中は保身と悪巧みの塊で、なんでAldo Moroじゃなくこいつらを誘拐しなかったんだろ、と思ったよ。誘拐55日後にAldo Moroが見つかるのはルノー4車内。当たり前だけど、“Quattro”って言ってた。
- #47「ソウルの春」キム・ソンス/2023/韓国/Aug. 24/ヒューマントラストシネマ渋谷◯
- 1979年に全斗煥が起こした粛軍クーデターの一部始終を再現した骨太ドラマ。一部始終と書いたが、シナリオとしては全斗煥と首都警備司令官の対決の構図が強調されている。そして、骨太とは書いたが、国防長官や副長官などの言動に『仁義なき戦い』を観ているようなコメディー味も感じて、この辺りも韓国で大ヒットした要因ではないかと思われた。実際に韓国国民がどういう思いで本作を観たかはわからないけれども、怒りと苦笑いが複雑に絡み合った感じだろうか。全斗煥をファン・ジョンミンが、首都警備司令官イ・テシンをチョン・ウソンが演じていて、豪華。ファン・ジョンミンはハゲ頭で、のちに大統領に成り上がる極悪軍人を熱演していた。この俳優はすばらしいね。しかし、このクーデターの実働部隊として動いた、全斗煥が朴正煕と軍内で秘密裏に結成したハナ会。こわー。こんなの自衛隊にはないだろな。統一教会や日本会議を連想した。
- #46「ポライト・ソサエティ」Nida Manzoor/2023/英/Aug. 24/ヒューマントラストシネマ渋谷◯
- ロンドンに住むパキスタン系女子高生が、姉とお金持ち婦人科医の結婚の裏にある陰謀を察知し、これを阻止しようと奮闘する。シナリオはくだらないが、元気の出る映画。Eunice Huthart(Angelina Jolieのスタントを演っているひとらしい、知らん)に憧れスタントウーマンを目指す彼女の部屋にはBruce Leeのカトーのポスターもある。当人の恋愛にまつわるエピソードが皆無というのが珍しい。パキスタン人コミュニティではときどきウルドゥー語喋ってた。Eid Mubarakっ。イスラム教徒同士だと海外ではインド人とパキスタン人でも仲良いのだろうか、と本作には無関係なことが浮かんだ。実際どうなのかね。序盤で突然日本語の歌が流れる。浅川マキの『ちっちゃな時から』のようだ。なぜ、と思って調べると2015年にイギリスで企画盤が出ていたらしい。へー。と、知らないことだらけで勉強になった映画であった。主役のPriya KansaraはちょいとAmala Paul似だった。名前からするとヒンドゥー教徒だな。
- #45「夜の外側 イタリアを震撼させた55日間(前編)」マルコ・ベロッキオ/2022/伊/Aug. 19/ル・シネマ渋谷宮下◯
- 340分の大作を2部に分けて上映。6エピソードからなっていてテレビ放送もしたようなので、1時間 x 6回という構成なのだろう。1978年に起きた、元首相でありキリスト教民主党党首のAldo Moroが赤い旅団に誘拐された事件を、(おそらく) 6つの視点で順に描く。きょうは、Aldo Moro、内務大臣Cossiga、法王Paolo VIの巻だった。そういうわけで、1時間ごとに切れているので長さは感じない。そして、それぞれのエピソードが骨太で面白いし、同じ事件を別の視点で見ているのでエピソード間のつながりもあって相乗効果もある。シリアスなシーンで突然『Porque te vas?』がかかってびっくりした。(いや、実は予告篇で聴いていたのだが…) 『インターナショナル』はそれなりのところで出たな。アメリカ人のコンサルタントが怪しかったが、Cossigaへのアドバイスは的確に聞こえた。これ、前編だけ観て満足するひとはいないね。なぜセット券にしないの? 今週末、観られるかな。
- #44「Raayan」Dhanush/2024/インド/Aug. 3/SKIPシティ映像ホール◯
- D50を観に、ひさびさに川口へ遠征。最近のDhanush作品はどれも血生臭い。で、本作はDhanushの監督としての二作目で脚本も書いている。監督としてもこういう路線で行きたいのかな。四兄弟の数奇な半生を描くストーリーには疑問が多々残るが、個々のアクションや演技はさすがのDhanushであった。アイスピックみたいな武器でやくざをつぎつぎと静かに殺していく、ギロりとした眼。そして、A.R.Rahman musicalを謳った、音楽・ダンスもよかった。中でも『Odatha Da Odatha Da』(だと思う)の大群衆によるパフォーマンスは圧巻。Dushara VijayanのDurgaがDurgaに、DhanushのRaayanがRaavanaに化身して見えるショットも震えが出るほど。Prakash Rajの言葉は続篇の計画を意味するのだろうか。Varalaximiがカメオ出演で、静かに目立ってた。妹Durgaが長兄Raayanになぜ坊主頭にしているのと尋ねると、“Style”と答えてたが、ストーリー上坊主頭にしなくてはいけない理由はないので、実生活で何かあったのか、Dhanush? タミル語版、英語字幕上映。
- #43「このろくでもない世界で」キム・チャンフン/2023/韓国/Jul. 28/TOHOシネマズ・シャンテ◯
- 最近稀に見る救いのない映画。あとで見たら英題が『Hopeless』だった。舞台は地方都市。継父からDVを受ける高校生ホン・サビン(カープの塹江似)を目にかけるやくざのソン・ジュンギ(明石家さんまをかっこよくした感じ)のきょーでー関係を軸に、それぞれの絶望的な家族関係が辛辣に描かれる。ホン・サビンの継父に対する怯え方が尋常でない。そしてこの継父を含め、各登場人物の凶暴さが尋常ではない。ホン・サビンの義妹キム・ヒョンソが一番まともに見えた。ふたりはこの地獄から抜け出せるのか…。見応えはある。しかし、何度も観たい映画ではない。この若い才能ありそうな監督の自作は思い切りハッピーなやつであって欲しい。同じキャストで撮るといいんじゃないかな。貢物の現金を入れた青い箱はリポビタンDだよな。韓国でもリポビタンなんだろうか? 箱のハングルを確認したかった。
- #42「流麻溝十五号」周美玲/2022/台湾/Jul. 28/ヒューマントラストシネマ有楽町◯
- 緑島がかつて台湾のアルカトラズだったことは知っていたが、そこに多数の女性が収監されていたことは知らなかった。いわゆる白色テロに遭い、訳もわからず政治犯あるいは共産主義者として離島に送り込まれた女性たち。蒋介石も蒋経国もひどいやつだ。なんてことが堂々と言えるようになった台湾。ずっとそうあって欲しいものだ。國語、台湾語、日本語など5, 6種類の言語が交わされるのが興味深い。冤罪メインの政治犯の集まりだからして、『女囚さそり』みたいな囚人同士の抗争などはない一方、刑務官の醜悪ぶりは同じようなものである。三人の女囚が主役。筆頭の杏子を演じる余佩真は古川琴音をちょっと老けさせたような顔立ち。右耳が変な形してた。看護師だった徐麗雯。父親役が『冬冬の夏休み』の叔父さん(陳博正)に見えたけど、違うかな。陳萍の妹は陳果で、ふたりでリンゴだな、と思った。いろんな人間模様が描かれるが、獄中出産というのはやや紋切りだね。
- #41「宝島」ギヨーム・ブラック/2018/仏/Jul. 27/ユーロスペース◯
- 夏のレジャー施設L’Ile au trésorで撮られたドキュメンタリー。ここ、『7月の物語』に出てきたとこかな? え、『友だちの恋人』に出てきたの? 全然憶えてない。まあ、観ていると完全なドキュメンタリーじゃないね。出演者はほんとにそこにいたひとかもしれないけれど、カメラの位置とか考えてもかなり演出が入っているようだ。だから面白くないと言っているのではなく、実際とても面白かった。ザ(レ?)・フランス人の集まり。進め、ナンパ少年である。ほんとの海辺じゃなく、こういう施設に来るひとってのは、やはりヴァカンスに行きそびれたのだろうか。少なくとも施設内には宿泊できそうにないので、日帰り客中心なのかもしれない。4ユーロあまりなら安いものだ。子供料金はもっと安いのだろうに、これを踏み倒そうとする少年たちが微笑ましい。周囲にフェンスは張り巡らされているが、監視カメラが極端に少なそうだった。ドローン飛ばそう。
- #40「村と爆弾」王童/1987/台湾/Jul. 20/K's Cinema◯
- 『無言の丘』、『バナナパラダイス』と本作で台湾近代史三部作。なぜか本作だけ観ていなかったので、この機会に劇場へ。『バナナパラダイス』と同じくコメディー仕立て。日本人として居心地の悪さは半端ない。出演者の日本語が怪しいからではない。日據時代、皇民化され、徴兵され、徴用される台湾人を見て、なぜそうなったのか、日本の身勝手さに対する羞恥である。それはさておき(さておいていいのかもさておき)、台湾人向けに作られた映画として、王童は何を訴えたかったのか。不遇な時代を生きた人民の逞しさを皮肉も混じえて訴え、戒厳令解除後への期待を寄せているのかもしれない。楊貴媚が貧しい主人公(弟)の若妻として色気を振りまいている(10人の子持ち)。主人公(兄)の妻で、目に障害を持ち慎ましい文英(台湾の菅井きん;菅井きんはユビキタス)とは対照的である。繰り返し歌われる『夕焼け小焼け』の歌詞が自分が知っているのと微妙に違うことに最後までモヤモヤした。
- #39「サラール」Prashanth Neel/2023/インド/Jul. 13/グランドシネマサンシャイン池袋◯
- こいつをもう一度。“チャンペスタ”がたくさん出てくる映画はやはりR15にしないと。Deva (Prabhas)はRockyと同じく究極のマザコンで、母親の言うことは神の言葉である。で、こちらの母親はカテランマ女神(カーリー系?)。神がひと声かければDevaの狂気が発動し、敵は一網打尽である。女神が浮かび上がるショットは作為的でありながら圧巻。信者の女性は皆赤い布を纏っていて、基本ダークな画面に映えていた。この辺り、ビジュアルの完成度は上がっている。Devaは腕に悪魔のような(何だろう?)刺青を入れている。『Ugramm』のSrimuraliのNarasimhaの刺青のリピートであるが、普段は隠しているあれを見せて吠えたりはDevaはしなかった(悪魔?の吠え声がわからないからかな)。悪魔といえば誰かが“ラークシャサ”と言ったのだがその字幕が“悪魔”だった。序盤の学校シーンで生徒が合唱するのは呉宇森へのオマージュの一環かも、と思ったひといるかな。
- #38「サラール」Prashanth Neel/2023/インド/Jul. 7/横浜ブルク13◯
- Prashant Neel期待の新作、せっかくなのでIMAXで観る。なんだ、Part 1は始まりと背景説明で終わりか。Part 2 (もしかしてPart 3もあり?)は割引してほしい。全編通した凄まじい暴力の連続は度を越しているように思う。インドではA ratedと聞いたが、日本ではPG12。いいのかな? Shouryaanga族の虐殺は、いまのGazaを見ているようだった。元々『K.G.F』を超えるとは思ってないのでがっかりはしていないし、それなりに楽しんだ。同作(と『Ugramm』)の各部・細部を増幅していることはわかるが、それだけじゃね。何か抜きん出たポイントが欲しいところ。それはShruti Haasanでは決してない。Jagapathi Babuにはもっと暴れて欲しかったが、その点ではBobby Simhaが頑張ってたかな。カンサールはグジャラートの先にあるんだ。じゃあ、食べ物も甘かろう。Prabhasはなぜ辛い物好きになったのだろうね。早く来い来い、Part 2。
- #37「リスト」ホン・サンス/2011/韓国/Jul. 6/Stranger◯
- 30分の短編カラー作品。チョン・ユミはホン・サンス組女優の中でキム・ミニよりお気に入りなので期待大である。韓国の菅井きん、ユン・ヨジョンとチョン・ユミの母娘がリゾートのペンションに宿泊中、暇なチョン・ユミが翌日のTO DOリストをつくる。それだけなのだが、ここからがおもしろい。リストの通りにことが運んでいく。そして常識を超えたユン・ヨジョンの言動。ユン・ヨジョンだからそんなもんかなと思っていると…。白馬に乗った王子さまとして映画監督ユ・ジュンサン登場。久しぶり。この人を初めて見たときはコメディアンになった時任三郎みたいと思ったが、いま見たら顔もだいぶ違うなあ。韓国では、酒を目上のひとの前で飲むときは脇を向いて飲まないといけないし、乾杯は盃を空けないといけない(これは中国も同じか)。モノは主に焼酎だし、僕のようにあまり飲めないひとにはきびしい国だ。タバコ吸いまくりなのは単にホン・サンス作品だからかな? チョン・ユミは吸わないけど。
- #36「草の葉」ホン・サンス/2018/韓国/Jul. 6/Stranger◯
- こちらは1時間ちょっとの短編モノクロ作品。舞台は喫茶店と食堂。喫茶店の3組の客にはどれも俳優(チョン・ジニョン、キ・ジュボン、アン・ジェホン)がいる。3組のほか、片隅の席にキム・ミニがいて周囲の会話に耳を傾けながらMacBookに思うところを入力している。それぞれ、穏やかな会話からどちらかがキレたりするいつもの展開。そのうちキム・ミニのところに弟の(さっき『WALK UP』でカフェ店員やってた)シン・ソクホがやってきて、歳上の恋人を姉に食堂で紹介する。ここでキム・ミニもキレるのである。客が突然大声でがなり出したら店は迷惑。飛んできて嗜めそうなものだが、そういう気配は一切ない。ホン・サンスの韓国ではこれが日常。キム・ミニのモノローグを境に店のBGMが変わるのがよかったな。題名になっている草なのか野菜なのか、喫茶店の前に鉢が並んでいるのが二、三度フォーカスされる。枕ショットではない。この意味を考えると夜も眠れない。てなことはないが、意味はわからずじまい。
- #35「WALK UP」ホン・サンス/2022/韓国/Jul. 6/新宿シネマカリテ◯
- サンス、サンス、ホンサーンスっ♪ 本日ホン・サンス・デー。まずは、一昨年のモノクロ作品。ある4階建ての建物(店舗兼アパート)。ここを訪れる映画監督クォン・ヘヒョが各階でそれぞれ異なる女性と会う話。オーナーのインテリアデザイナー、イ・ヘヨンと、別居中の娘のパク・ミソを連れて1Fのカフェで。そのカフェと料理教室を営むソン・ソンミと、イ・ヘヨンと2Fで。ソン・ソンミひとりと3Fで。不動産業のチョ・ユニと4Fで。時系列に順を追ってできごとが進むかと思いきや、3Fはふたりが同棲しているとか、4Fはクォン・ヘヒョが借りてるとか、思わぬところでパク・ミソが再登場するとか不思議な展開で、このホン・サンス的パラレル性がなんとも居心地がいい。イ・ヘヨンの休憩室があるらしいBFには行かなかったのはなぜかな。新旧ミニは出てくるがキム・ミニは出てこなかった。行ったことないので本当のところは不明だけど、部屋の鍵ってすべて電子錠で暗証番号で開けるタイプなのかな。それしか見ない、ハイテク?韓国。
- #34「チャーリー」Kiranraj K./2022/インド/Jun. 29/横浜ブルク13◯
- 『Neelakasham Pachakadal Chuvanna Bhoomi』(ロードムーヴィー)と『Charlie』の記憶から、なんとなくマラヤーラム語作品でDulquer Salmaan主演だと思って席に座ったら、タイトルロールにカンナダ文字が流れてきて、われに返った。主演はRakshit ShettyとラブラドールのCharlie。公開時はすでに帰国しており観ていなかったが、なんと『K.G.F』シリーズにつづくSandalwood映画の日本公開(つまり日本語字幕付き)である。ワンコものだからあたると思ったのかな? 実際、周りを見るとごく普通の観客である。インド映画とわかって来ているのだろうか。よろしい。偏屈で孤独でなぜかチャーリー・チャップリン好きな男のところに、悪徳ブリーダーから逃げ出してきたワンコが転がり込んできて男の人生が変わる話。前半の舞台はMysoreで、男がワンコを受け入れる過程の静。後半はワンコに雪を見せるため、Himachal Pradeshにバイク(もちろんBullet)で向かう動。先の読める展開だった。ワンココンテストがいきなり出てくることに観客はどう思ったかな。Idliの味をどう想像したかな。
- #33「オールド・フォックス 11歳の選択」蕭雅全/2023/台湾=日/Jun. 23/新宿武蔵野館◯
- Executive producerに侯孝賢と小坂史子の名がある、侯孝賢の助監督も務めた蕭雅全作品。少年の父親の元GF役で門脇麦が出演。なぜ日本人俳優?と思うが、流暢な北京語でなんの違和感も抱かず。その分なぜ敢えて日本人俳優なのか疑問は大きくなった。時代はバブル。不動産で大儲けした老人・謝と、彼が所有するアパートに住む貧乏な少年の交流。自分本位で生きて成功するか誠実に相手を思いやって浮かび上がれないままで生きるか、少年は老人と自分の父親の間で自分のいく方向について悩むのである。老人は少年にかつての自分を見ていた、というのが物語の肝になっている。少年と父親がいかに節約してお金を貯めようとしているかは、本人たちが楽しんでやっているように見えて悲壮感はない。最後は2022年に飛び、少年の選んだポジションが判明する。感動はしないが納得した。老人の家もカーコレクションも成金のそれで、お金がもったいないと思ったな。
- #32「PS-2 大いなる船出」マニ・ラトナム/2023/インド/Jun. 16/チネチッタ◯
- タミル語最高♪。二度目の鑑賞(→初回)。先日『PS-1』を観たので記憶・連続性は良好である。さすがに、VikramとAishwarya Raiの関係、Aishwarya Raiの出生の秘密、Kishoreは結構いいやつ、など、重要事項を反芻して充実。Jayam Raviが最後にRajarajaになる。Rajaraja? これは記憶にない…。高望みしたAishwarya Lekshmiは、明らかにレベルの違う高貴なSobhita DhulipalaにJayam Raviを持っていかれて残念でした。火薬のない時代の戦闘シーンでよく見かけるのが、パチンコ式の火の玉遠投機。こう頻繁に出てくると、やはり実在したのだろうと思うようになった。さすがインド。スケールがでかい。さて、いまも続くカルナータカとタミルナードゥ間のカーヴェリ川の水争い。まあ、流しそうめんの上流対下流みたいなもので、どちらが有利かは明らか。あとはカルナータカの懐の深さが試されるのである。仲良くしようぜ。きょうはインターミッションの切れ目に気が付かなかった。
- #31「バティモン5 望まれざる者」ラジ・リ/2023/仏=ベルギー/Jun. 8/新宿武蔵野館◯
- アフリカからヨーロッパへの難民・移民問題のど真ん中を突く、パリ郊外(バンリュー)の団地を舞台としたリアリティが感じられる作品。ただ『Les Misérables』ほどのインパクトはなかった。地域の安全を建前に自分らを排除しようとする行政に立ち向かう移民たち。党の方針で動く白人の市長の下、移民ともうまくやってきた黒人の副市長。市の横暴に直接怒りをぶつける男と、民主主義を信じ冷静に政治で対抗しようとする女。法の下の平等は現在どこの国でも言われることだが、実感するのはどこの国でもむずかしい。比較的自由に声をあげることができそうなフランスでもだ。代議士と市長でトリコロールの襷の色順が違うことについての豆知識がしょうもなくも興味深かった。冒頭のアパート爆破取壊しはホンモノだよね。大迫力。そこだけIMAXで観たかった。伊仏現代劇映画の密かな愉しみ、くるまチェック。3代目Pandaを1匹確認。残念ながらTwingo見かけず。
- #30「Turbo」Vysakh/2024/インド/Jun. 1/池袋HUMAXシネマ◯
- Mammoottyの新作を本国公開とほぼ同時に英語字幕で。70歳越え。設定年齢は不明(40前後?)だが、マザコンのTurbo Joseはバリバリのカーアクションと格闘を見せる。序盤のお祭で会場のボードに“Mega Show”とあって、そこにMammoottyがやってくる演出が楽しい。大方の舞台は、ひょんなことから訪れ帰れなくなったChennaiで、Raj B. Shetty (from Sandalwood)が仕込む巨大預金不正送金+政争事件に巻き込まれる。Raj B. Shetty、忍者(?)姿は苦笑いするしかないが、黒ドーティ姿はかっこよかった。黒ドーティといえば修行中(?)のケララ人だが、Mammoottyは終始白ドーティで逆転好対照。Sunil (from Tollywood)がドン・コルレオーネ(マーロン・ブランド)のモノ真似してるのがおかしかった。役の必要性がよくわからなかったAmina Nijam (Neha Sharma似で注目) は、Chennaiでのタートルネックセーター姿も意味がよくわからなかった。最後の声はVijay Sethupathiかな? 続編あり? 残念ながら劇場は淋しかった。
- #29「PS1 黄金の河」マニ・ラトナム/2022/インド/May 18/ヒューマントラストシネマ有楽町◯
- Mani Sirの『Ponniyin Selvan』二部作が日本公開、おめでたい。去年、第2部を英語字幕を頼りにいろいろ推測しながら観たのだが、今回第1部を日本語字幕で観てだいたいクリアになった気がする。とはいえ、その記憶も薄れているので、もうすぐ公開される第2部日本語字幕付にも期待したい。音楽は例によってA. R. Rahman。豪華で楽しい音楽で作品を盛り上げている。このひとが世界的に知られるようになる日も近いかな。Chola帝国の王役はPrakash Raj。渋くなってすっかりトゲはなくなった。この二部作の根幹はVikramとAishwarya Raiの愛憎だが、第2部を観たときは細部を誤認していたようだ。まあでも、こっちのストーリーより、Karthiと“Ponniyin Selvan” Jayam Raviが繰り広げる冒険の方が楽しいよね。Aishwarya Lekshmiとスリランカ行ってKishoreに襲われたりね。ところで日本ではインド映画にインターミッションを入れないけど、理由は何かな? 入れた方が観客も助かるし劇場も物販チャンス上がって絶対いいと思うけど。
- #28「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」マルコ・ベロッキオ/2023/伊=仏=独/May 18/YEBISU GARDEN CINEMA◯
- 19世紀のイタリアで、カトリックの洗礼を受けてしまったユダヤ人の少年が教皇の命令によってローマに連れ去られ、カトリックとして育てられたという史実を描いた作品。宗教が人生のベースとなっている社会・世界はよく理解できないが、拉致事件と考えれば普遍的に理不尽だし、洗脳の絶大なる効力も伝わる。カトリックのことはよく知らないので、あの時代にはバチカン市国がまだなかったことを初めて知った次第。ピウス9世という教皇はイタリア政府と対立したりいろいろお騒がせなひとだったようだ。ところで、拉致されたエドガルドは割礼していたのではないかと思うが、それでも洗礼を受ければカトリックになるのか? 宗教の決まりも外から見たら“なんだかなー”だが、信者は大真面目だということも踏まえ、お互いをリスペクトしないといけない。僕にはカトリックと統一教会の境目がどこにあるのかははっきりしないけれども。エドガルドの子供時代と青年時代を演じた俳優の顔立ちがよく似ているのに感心した。
- #27「無名」程耳/2023/中国/May 11/横浜シネマリン◯
- 梁朝偉主演の日中戦争スパイもの。共演に中国女優私的No.1の周迅。というわけで観ないという選択肢はなかった。王一博という知らない俳優が出てる。中国製作だからして真相は見え見えなのだが、梁朝偉は汪兆銘政府の特務機関幹部という設定。ここに石原派を自称する皇軍幹部(森博之という日本人俳優が演じている)や、国民党、共産党の工作員が絡む。冒頭に広東語での会話シーンがあり、あれっ?と思うのだが、舞台は上海。このカラクリは最後に明らかになる。登場人物は多様だし、暗いし、時系列にものごとが進まないしで、ついていくのが大変だった。若いのと戦う梁朝偉。詠春拳使えば簡単に倒せるだろ、と思った。途中、唐突にヤギが出てきて、その直後に皇軍自転車部隊が鍋を食べるシーンがある。その会話でヒツジを食べるのは初めてだとかいうのだが、いや、それヤギでしょ、と心の中でツッコミを入れた。さて、肝心の周迅であるが、アラフィフの現在でも十分若々しく美しい。登場シーン、セリフがあまりなかったのが残念だった。
- #26「悪は存在しない」濱口竜介/2023/NEOPA/May 11/横浜シネマリン◯
- ベネツィアで銀獅子賞の濱口作品。安易な性善説のようなタイトルだが、もちろんそんな単純ではない。冒頭から観客を不安にさせる空気で、僕の場合それが中盤まで続いたのだが、その後不思議な映画体験にどんどん惹き込まれていった。エンディングは残念ながら消化できていない。解釈はいろいろ可能だろうが自分なりの確信は持てないままである。長野県の静かな山中にグランピング施設開発の話が持ち込まれ、住民説明会にやってきた担当が集中砲火を浴びる構図は現実によくある話。映画では住民と担当双方をていねいに描いている。出演者はほとんどが素人と思われた。森を歩く父娘の会話など至福。しかし、それより感心したのは担当ふたりが長野に向かう車中での会話。とてもリアルだった。予告篇でしか見ない最近の若いひとが撮る映画はどれもこんな感じなのだろうか。ちなみに、悪はふたりいた。
- #25「Crew」Rajesh A Krishnan/2024/インド/May 5/Metro INOX Cinema◯
- インド最終日午後に急遽映画鑑賞を決めた。Tabu主演ということでちょっぴり気になっていたボリウッド作品をチョイス。字幕はあり得ないので直前にWikiで予習した。Tabuのほか、Kareena Kapoor KhanとKriti Sanon演じる倒産寸前の航空会社に勤めるFlight attendantトリオが金の密輸に手を染める。密輸先はAl Burjという中東の架空都市で雇い主は所属航空会社のオーナーという臭う設定。リアリティなさすぎなのが気になったけど、娯楽作品だからまあいいか。それより気になったのはTabuの劣化。こちらはリアリティ。きれいではあるが、まあもう50歳越えてるしね。苦手なKareena Kapoorと併せ、過剰なセクシーファッションが観客が求めているのはそこじゃないと思わせた。ターバンDiljit DosanjhがKriti Sanonの元カレで税関の幹部役として特別出演してた。豪華リクライナー座席のINOX Insigniaはなんと1,000ルピー以上した。びっくりだけど、それでも日本の普通席並みか。
- #24「Rathnam」Hari/2024/インド/Apr. 28/Urvashi Cinema◯
- せっかくバンガロールなのでカンナダ映画がよかったのだけど面白そうなのがなく、一方、このタミル映画がVishal主演、共演にPriya Bhavani Shankarということでセレクト。(この単館でオンライン予約が必要かどうかはおいておいて) BookMyShowがまだ使えることを確認。ちょっぴり期待したが英語字幕なしだった。舞台はTN州とAP州の州界あたりで、ありがちな開発計画(と政治家≒Rowdy)が絡む話。Vishalは育ての親のMLAの用心棒で、えらく凶暴である。のだが、カタギで開発計画の被害者側である看護師Priyaは、好意を寄せているVishalがひとを何人殺しても平気そうなのだ。相手もRowdyとはいえ何人殺しても捕まらないのも変だが。いくつかのシーンではVishalの後頭部が薄いのが見えた。インド人あるあるである。Priyaの顔は今回よく見て、つり目なんだと気づき妙に感心した。劇場はガラガラだったけど、Yogi BabuやRajendranが出てくるとえらく盛り上がっていたのが楽しかった。
- #23「パリでかくれんぼ」ジャック・リヴェット/1995/仏=スイス/Apr. 21/ヒューマントラストシネマ渋谷◯
- 三人の女の子がそれぞれの事情で悩みながらパリて生きていくミュージカル仕立てのドラマ。いかにものリヴェット映画で観ていてとても楽しい。ただし、3時間は長いな。まあ、三人いるので3つのストーリーが必要ではある。そして、どの子の話もおわらない。公開当時は、デプレシャンの『そして僕は恋をする』の前。マリアンヌ・ドニクールは本作の方がわずかに若い。かわいい。『彼女たちの舞台』にも出ているナタリー・リシャールとロランス・コートもとてもいい。脇も豪華で、エンゾ・エンゾがクラブ歌手で参加している。そして、アンナ・カリーナ。部屋に若い頃の写真や『はなればなれに』のときと思われる絵などあったりして泣かせる。監督自身も出演。間違えていなければ、公園のホットドッグ屋台でナタリー・リシャールに話しかける老人がそうだと思う。Renault 5やFiat Pandaが街中を元気に走っているのもグッド。どのあたりが『完全版』だったのかは皆目わからず。
- #22「貴公子」パク・フンジョン/2023/韓国/Apr. 14/新宿ピカデリー◯
- フィリピン人(女性)と韓国人(男性)の混血はKopinoと呼ぶらしい。なら日本人(男性)との混血は、というとやはりJapinoと呼び、どうやらKopinoよりもずっと多いらしい。そういう社会問題にスポットライトを直接当てているのではない。あるKopinoが韓国にいる会ったことのない父親に突然呼ばれて大ごとに巻き込まれるのであるが、それを殺し屋“貴公子”が阻む(助けるのとは少し違う)バイオレンス・アクション。Kopinoをカン・テジュ、貴公子をキム・ソンホ、極悪の敵(?)をキム・ガンウ(こいつだけ観たことある気がする)が演じている。マセラティとベントレーとベンツのカーチェイスは迫力あった。キム・ガンウの義妹(こいつも邪悪)役はコ・アラという女優だったのだが、気象予報士の晴山さんに似てた。先が読めないなかなかおもしろい話だったのだが、オチは読めた。が、最後のギャグは余計だったな。そりゃないだろ。シリーズ化でもする気かね。
- #21「オッペンハイマー」クリストファー・ノーラン/2023/米/Apr. 7/新宿ピカデリー◯
- “原爆の父”を主役に据え否が応でも話題にならざるを得ない作品をクリストファー・ノーランが撮った。当然ストレートな映画ではなかろう。観るしかない。広島や長崎が出てこないことは聞いていた。そういうクライマックスを避けるのはよくある演出で別に違和感はないし、そんなことをこの監督に望んではいない。と思って臨んだら、少しだけ描写があってモヤモヤした。アインシュタインとかローレンスとかボーアとかフレミングとか教科書ものの科学者がバンバン出てくる超・現実的な世界。核分裂の連鎖反応が空気にまで及ぶかもしれないという中でトリニティ実験を実行したのはオッペンハイマーが科学者だったからだろうか。ユダヤ人というからには神を信じていたのだろうに。周りに共産主義者が何人もいたというのは時代だね。UC Berkeleyのシーンでは懐かしのSather Towerが出てきたよ。核ですっかり変わってしまった世界に住むわれわれがつぎに迎えるのは間違いなく量子×AIだ。感情を持ったAIは核ボタンを押すときに苦悩するだろうか。
- #20「パスト ライブス 再会」セリーヌ・ソン/2023/米=韓/Apr. 7/TOHOシネマズ新宿◯
- 『恋人までの距離』シリーズのような『96』のような大人の純愛ストーリー。ときどきある、予告篇観て絶対観ようと思った作品。ソウルで育った幼馴染みの男女(ユ・テオとグレタ・リー)が、小学生で別れ(女が家族でカナダに移住)、12年後にFacebookで繋がったものの連絡を取らなくなり、さらに12年後に女の住むNYCで再会する。その間に女は結婚しているのに会いに行く男。節目節目で男が仲間とサムギョプサルを食べ焼酎を呑んだくるのが男の変わらなさを表していて切ない。望遠レンズを多用した撮影が映像の肌触りを柔らかくして効果的だった。時の流れに沿って使うツール(ガジェット)が変わっていくのはお約束。Skype、どこ行った? ところで、原題は“前世”なのにこの副題はダイレクトすぎない? “いにょん” (因縁)も多用してたね。韓国(儒教)でもそういう考え方は普通なんだろうか(無知丸出し)。
- #19「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗」セルジオ・レオーネ/1966/伊=西独=スペイン=米/Mar. 30/丸の内TOEI◯
- Bangaloreで住んでいたアパート近くのVasudev Adiga'sという食堂(現存せず)に“The Good, the Bad and the Idli”というポスターがあって、クリント・イーストウッドの似顔絵が描いてあった。インド人も大好き、マカロニ・ウエスタンである。本作は観た記憶があるのだけど、どうやら映画館ではないらしく、記録がない。The Good=イーストウッド、The Bad=リー・ヴァン・クリーフ、The Ugly (≠The Idli)=イーライ・ウォラック (ダスティン・ホフマン似)は、実際にはどいつもワルである。まあ、ラストシーンからするとイーストウッドはちょっぴりいいやつかな。製作にUAが入ったからか舞台が単なる擬似西部から南北戦争へ変わり、その分ストーリーに奥行きがある。(狙われる金も大きい) 一説によると本作が前作よりも時間的には前だろうとのこと。ドル箱三部作でイーストウッドのトレードマークとなっているポンチョは確かに本作中に手に入れるシーンがある。なるほどねー。でも10万ドルも手に入れたら、その後小さい賞金を狙って命かけたりしないよな。
- #18「ラーマーヤナ ラーマ王子伝説」酒向雄豪,佐々木皓一,ラーム・モハン/1992/日本ラーマーヤナフィルム/Mar. 24/シネマベティ◯
- 『ラーマーヤナ』は去年ようやく読んだばかり。復習も兼ねて鑑賞。日本製作なのに言語は英語で日本語字幕付。エンドロールを見ると国内の色々なプロダクションが協力したようだ。そして多数のインド人スタッフも。どうやらインド側に宗教的な問題があって共同製作という形態にはできなかったらしい(そんなとこはいまも昔も変わらないインド)。インド神話に出てくるエピソードの実写はむずかしいし円谷プロも絡んでいないので、アニメである(というわけで久しぶりのアニメ鑑賞@映画館)。いまならVFXでいけそう。で、『ラーマーヤナ』が135分に収まるはずもなくかなり端折られている。特にお子様向けではない部分。その分、猿のアイドル・ハヌマーンの活躍はバンバン描かれている。大きさを自由に変えるハヌマーンが出てくると、インド神話のスケール感と相まって脳がバグるよね。ヒマラヤから運んだ山を戻したとは知らなかった。そんなの書いてあったかな。
- #17「夕陽のガンマン」セルジオ・レオーネ/1965/伊=西独=スペイン/Mar. 23/新宿ピカデリー◯
- 続けてこいつも鑑賞。こっちの方が好きかも。クリント・イーストウッドとリー・ヴァン・クリーフのふたりの賞金稼ぎが、獲物を求めて街から街へ。競合であるが出会ったエル・パソで協定を結び、お互いを騙しながらも助け合う。イーストウッドは本作でもただの(凄腕の)渡り鳥だが、リー・ヴァン・クリーフは実は賞金稼ぎとは異なる目的があったという設定。リー・ヴァン・クリーフの悪役っぽい顔が作品に緊張感を与えていると思う。日活アクション、あるいは東映任俠のごとく、同じ脇役陣が出てくるのが楽しいが、クラウス・キンスキーが前作に出ていないことは、誰にでも認識されるだろう。エル・パソのセットはいまでもスペインに残っていて観光地らしい。行かないけど。今回の上映は『ドル箱三部作』としての特集。残る『続』も観なくては。ところで本作のイーストウッドにはあだ名があって“Manco”というのだが字幕では“モンコ”となっていて、翻訳(?)の苦労が偲ばれた。
- #16「荒野の用心棒」セルジオ・レオーネ/1964/伊=西独=スペイン/Mar. 23/新宿ピカデリー◯
- いわゆるマカロニ・ウエスタンの代表作のひとつ。おそらく大昔にテレビで観ているが、まったく記憶にない。今回上映されるのは4K復元版。アメリカ国境そばのメキシコの村でクリント・イーストウッド演じる渡り鳥が村内で対峙するふたつのファミリー(ギャング)を両天秤にかけながら退治する。要はクロサワの『用心棒』のパクリで、当時は東宝が訴えて勝ったらしい。そんなエピソードは残念ではあるが、作品自体は元ネタに勝るとも劣らずおもしろい。エンニオ・モリコーネのよく知られた音楽もごきげんである。ロケはスペインらしいが、こんな荒涼とした土地があるんだね。アンダルシアはそんなとこなのか。イーストウッド以外の俳優はみなヨーロッパ人だろうか。明らかにアメリカ英語ではないのが、それっぽいといえばそうかも。もしかしたらスペイン語もメキシコっぽくはないのかもしれない。
- #15「ならず者」石井輝男/1964/東映/Mar. 20/ラピュタ阿佐ヶ谷★★
- ボロボロのプリントをスクリーンで観てからは何度もDVDで観直しているが、改めてスクリーンで観るとこいつは確かに『東京ギャング対香港ギャング』を凌ぐ魅力がぎゅうぎゅうに詰まった傑作だ。なんといっても高倉健と丹波哲郎の雙雄のスーツ姿、立ち振る舞いが無茶苦茶かっこいい。三原葉子、南田洋子、加賀まりこ、赤木春恵ら女優陣も高レベル。そして1960年代の香港と澳門の街の雰囲気が最高だ。ここを舞台に二人がジャズをBGMに、蛋巻の缶に仕込まれた麻薬をめぐり、会話し、走り、殴り合う。登場人物は全面的に妙な北京語を操る。ある意味感心するが、なぜ広東語じゃない。ビクトリア港に空母がいたね。ギャンブラー江原真二郎の存在は『欲望の翼』の梁朝偉を生み出した(たぶん嘘)。嘘と言えば、タンバ、澳門は島じゃないよ。製作から60年経っても映画の中に見える風景の片鱗を多く残す、香港、澳門。また行きたい。
- #14「ファルハ」ダリン・J・サラム/2021/ヨルダン=スウェーデン=サウジアラビア/Mar. 17/ユーロライブ○
- これは観とかなきゃ、と思いイスラーム映画祭に参戦。1948年のパレスチナを舞台とした、ナクバ、すなわちイスラエル建国のためユダヤ軍が進めた民族浄化のためのパレスチナ住民大虐殺の話。実話ベースである。そして、この75年前に起きたことが現在のガザに続いている。主人公の少女ファルハの視点(つまりはこれを体験した女性の語り)のため、ナクバの全体像は見えないし、それを直接糾弾しているわけでもない。平和な日々から一転して地獄となった村の自宅倉庫に身を潜め、すべてが終わったのちにいちじくを齧りながら変わり果てた村を後にする。こういう描き方は一部で批判されている『オッペンハイマー』に似ているのではないかな。想像だけど。終映後、早大の岡真理氏の熱く濃い映画解説&トークがあった。恥ずかしながら僕も、結構最近までユダヤ人とは人種と勘違いしてた。どうしてあの狂った国家を誰も止められないのか。
- #13「砂漠を渡る太陽」佐伯清/1960/東映/Feb. 25/ラピュタ阿佐ヶ谷○
- ノンちゃん(鶴田浩二)が東映に移籍しての第一作だそうで、舞台は満洲。北支との密貿易の拠点となっている村に住む志の高い日本人医師がノンちゃんの役。満人姑娘・佐久間良子となんとなくいい仲、というのは佐久間良子を出すという口実でしかなく、周囲の人物がとにかく濃くてデラックス。伊藤雄之助(意外にいい役)、山村聰(意外にいい役)、山形勲(期待通り)、山茶花究(期待通り)、久保菜穂子(印象薄)、岡田真澄(露助)、曽根晴美(早死に)。そして、ほぼカメオ出演の馬賊の頭目・高倉健。終戦直前、伝染病でロックダウンされる村で、関東軍特務と延安のスパイ合戦が繰り広げられる。コロナ禍のあとでは、この背景にリアリティがある。エンディングには迫り来るソ連軍の影。いや、面白かった。そしてそれ以上に、終戦後15年経った当時、歴史を正しく認識し反省する映画があの東映で撮られていたことに感動した。
- #12「Jigarthanda DoubleX」Karthik Subbaraj/2023/インド/Feb. 24/シネ・リーブル池袋○
- 『Jigarthanda』の続篇ではなく、Spiritual successorだそうだ。確かにこちらもRowdyの映画を撮る話だ。タミル語版『カメラを止めるな』だな。劇中の監督役はS. J. Suryah。サタジット・レイの弟子を名乗る怪しいやつ。いや、いつも怪しい役を演じているという印象だけど、本作ではヒーローだ。メガネ姿がユキヒロさん。で、劇中映画の主役、つまりRowdyはRaghava Lawrence。幼い頃にClint Eastwoodがやってきて西部劇を撮影し、記念に8mmカメラをもらったという。その影響で地元の映画館にはClint Eastwoodのカットアウトを建てるというファンぶり。この超凶暴な男が村を救うため象狩りの山賊と腐敗した警察に立ち向かうようになっていく。というのが映画のプロットでもある。実はRowdyを殺す計画のS. J. Suryah。インドで初めてのDark skinが主役のPan India映画を撮るとRowdyをおだてる。舞台は1975年。撮影中にRajinikanth登場の噂が…。面白いながら、どう終わらせるのかと興味津々で観ていたが、終り方は割と普通。で、エンディングには“XXX”の文字がドーン。なんだ、あんたもか。(英語字幕での鑑賞)
- #11「ゴースト・トロピック」バス・ドゥボス/2019/ベルギー/Feb. 12/ル・シネマ渋谷宮下○
- 暗くなっていく無人の部屋に始まり、夜が明け明るくなりながらやはり無人の同じ部屋に終わる、やさしいアラブ系の中年女性が過ごす静かな一夜の物語。企業の清掃員として働く彼女が、疲れた帰りの地下鉄で乗り過ごし終着駅。すでに電車はなく、タクシーに乗るお金もなく、徒歩での帰宅を決意する。具合の悪い路上生活者を助けたり、昔家政婦として住み込んでいた邸宅を覗いたり、ガソリンスタンドでお茶を飲み冷えた体を癒したり、出会った人びととの触れあい。決して温かいものだけではない。深夜の街で男友達と過ごす実娘を思いがけず見つけたり。そんな彼女をカメラは黙々と追い続ける。彼女も動揺しながらも現実を淡々と受け入れる。『Here』もそうだがこちらも雨が印象的。いやあ、本作もいいね。中年女性の声が若く、最初は吹き替えかと思った。ショッピングモールの警備員役で『Here』の青年役Stefan Gotaが出演。監督の分身かな?
- #10「Here」バス・ドゥボス/2023/ベルギー/Feb. 12/ル・シネマ渋谷宮下★
- 注目監督がベルギーから登場。『COLUMBUS』(これはコロナ禍中にOTTで観たんだっけ)のような感覚。小津に学んだのか、カウリスマキに学んだのか。スタンダード画面に固定ショット。植物、音、光に満たされる。(この点は前述のふたりとはまったく異なる。ここが新鮮) 舞台はブリュッセル。オーストリアあたりに帰国することになった物静かな青年が得意料理のスープをお世話になった人たちに配る。道中、いろいろな景色、人びとと触れあう。中国あたりからやってきて定住しているらしい苔研究者の女性に出会う。長距離ドライブに備えガレージに預けているくるまを受け取りに行く途中、青年はふたたび女性に出くわし、ふたりで苔観察して過ごす。すっかり片付いていたはずの部屋で、青年は新しいスープをつくる。女性とその叔母が交わす北京語での会話が自然。部分的にしか見えなかったけど、青年のくるまはシトロエンのようだった。違うかな?
- #9「瞳をとじて」ヴィクトル・エリセ/2023/スペイン/Feb. 11/TOHOシネマズ・シャンテ○
- いまや80歳越えのエリセの31年ぶりの長編新作が観られるとはそれだけで至福である。しかも『ミツバチのささやき』のアナ・トレントが出演。元映画監督(マノロ・ソロ)が自作の撮影中に失踪した友人でもある主演俳優(ホセ・コロナド)とTV番組出演をきっかけに再会する話、と書くと陳腐に聞こえるが、これがエリセ作であることを忘れてはいけない。映画中映画は、男(ホセ・コロナド)が男に依頼され上海から娘を探しフランスに連れてくるもの。記憶をなくし海辺の高齢者施設で働く元俳優に、元監督が町の閉館した映画館でこの映画を見せる。元俳優に記憶は戻るのかは観客の想像に委ねられている。アナ・トレントの役名がやはりアナで、“Soy Ana”と言わせる、しかも同じような構図で。観る方は感激すると同時にちょっと苦笑い。映画中映画で喋られる北京語がわかるのが楽しかった。元俳優の所持品にあった三段峡ホテルのマッチ。そんな広島の山奥のもの、どこで入手したんだろうね。
- #8「白日青春 生きてこそ」劉國瑞/2022/香港=シンガポール/Jan. 27/新宿シネマカリテ○
- 香港を舞台とした、マレイシア華人監督による、善悪の彼岸映画。全盛期の香港電影で悪役といえば、の黄秋生主演。老いたタクシードライバー陳白日(黄秋生)とパキスタン難民(厳密には不法滞在者)の少年・莫青春(香港名; 本名Hassan)との複雑な背景を持つ交流。祖国では弁護士だったという父親の不運な人生は、少年に遺伝する。少年のやることは見事なまでに何の共感も呼ばないのだけど、この呪われた少年を助けるべく自分を犠牲にする黄秋生。少年の父親を死なせてしまった罪滅ぼしだけでなく、大陸から泳いで香港にやって来た過去の自分の境遇を少年に重ねているのか。想像の余地を大きく残して映画は終わる。逃げ込む地から逃げ出す地へ。香港の未来は見えない。検閲通っているから美化が入っている可能性はあるが、不法滞在者への待遇は日本よりもずっとまともそう。あー、サンミゲル呑みたい。
- #7「ノスタルジア」アンドレイ・タルコフスキー/1983/伊=ソ連/Jan. 27/ル・シネマ渋谷宮下★
- 流行りの4Kレストア版。ロシア人音楽家の足跡を追ってイタリア・トスカーナの温泉地バーニョ・ヴィニョーニにやってきた病身のロシア人詩人(オレーグ・ヤンコフスキー)が、故郷への強烈なノスタルジーを感じながら、世界の終わりを信じる狂信者(エルランド・ヨセフソン)に出会う。水と火で語られるタルちゃんの映像詩に酔うべし。狂信者の演説、そして焼身シーンは強烈である。好きなミニチュアを使ったラストシーンは『惑星ソラリス』のそれに完全に対応している。勘違い女ドミツィアナ・ジョルダーノがうざったいのが本作の唯一残念なところ。Google Mapsで見ると、あの温泉池はほぼそのままいまもあるようだ。入湯もできるのかな? ところで、4KってDVDや地デジ放送に比較すると圧倒的に高画質で、スクリーン鑑賞に耐えられる。と思えるのは、いまだけかもしれないな。
- #6「ザ・ガーディアン/守護者」チョン・ウソン/2022/韓国/Jan. 26/新宿バルト9○
- 『きみに微笑む雨』に出てたチョン・ウソン主演かつ初監督作品。薄々期待はしていたが、午後半休でできた時間を使った意義は十分にあった。よくあるバイオレンスアクションもの。10年前の殺人で服役していたチョン・ウソンが出所し、黒社会と縁を切ろうとしたら、再会した妻が殺される。愛車BMWを駆り、愛娘を守るべく戦う。カーチェイスは迫力満点。敵は巨悪ではないものの、とことんワルで、対してセンチメンタルになることもない。そんなところはきわめてハリウッド的。それでも楽しめるのは韓国映画だから? 背景説明が乏しいし、奥さんをちゃんと弔ったのか心配になる。会いに行く元カタギの男もあとから出てくることもない。結局、最悪の“会長”は生きているし、もしかして、いきなり二部作構想でもしているのか? 妻役の이엘리야 (4文字は珍しくない?)はなかなかよかった。
- #5「シシリーの黒い霧」フランチェスコ・ロージ/1962/伊/Jan. 20/国立映画アーカイブ○
- シチリアの山賊、サルヴァトーレ・ジュリアーノの死を巡る闇の世界を垣間見る興味深い作品。なのだが、イタリア人の名前を憶えるのが大変で(ちょっとだけウトウトもして)、すべてを把握できなかった。現場でのジュリアーノの検死シーン(1950年)に始まり、1947年のメーデーでジュリアーノ一味が起こした虐殺事件についての捜査・裁判の様子を混じえながら、ジュリアーノが殺される経緯を観客に少しずつ示していく。(示唆的だが、それが事実かどうかはわからない) 暗躍する憲兵、警察、マフィア、そして仲間内。有罪となる片腕のピッシェッタの獄中死は、実際、マフィアの報復によるコーヒーへの毒盛りらしい。演技がわざとらしく見えて、芝居かと思った。シチリアっていまでもこんなとは思わないけど、ちょっぴりこんななのかな? ピアノを使った音楽がよかった。マイケル・チミノの『シシリアン』も観てみたい。(観てないよな?)
- #4「緑の夜」韓帥/2023/中国/Jan. 20/ヒューマントラストシネマ有楽町
- 脱税問題で姿を消していた范冰冰の復帰作。舞台は韓国、仁川とソウルで『ベイビー・ブローカー』のイ・ジュヨンとの共演。というわけで、中国語と韓国語が混在している。キム・ヨンホが范冰冰の夫役で出演。渋くなったなと『イントロダクション』のときに書いてたけど、癌だったかららしい。さて、こうして役者は揃ったのだが、映画としては麻薬、密輸、DV、LGBTQなどネタを盛り込みすぎで、題名からもわかるノワール狙いは成功しているとはいえないと思う。導入部分とかも説明を省いているのはわかるけど、唐突&ざっくりし過ぎていて納得感がない。范冰冰は、華やかな場所から一旦落ちて這い上がってきた体で熱演してたのにね。ちなみに、范冰冰は浅野ゆう子、イ・ジュヨンは鈴木奈穂子アナに見えた。范冰冰の勤務先は仁川空港の保安検査場。旅客の扱いがインドのそれによく似てた感じ。
- #3「Captain Miller」Arun Matheswaran/2024/インド/Jan. 14/SKIPシティ映像ホール★
- 4,000円は高い。高いがDhanushの新作なので泣く泣く観に行く。期待通りだった。でも、高いなぁ。ホールはスカスカ。インド人はまばら。そりゃそうだろう。庶民とギャングとゲリラ。王家と大英帝国。宝石が眠るシヴァ寺院を中心とした村で、自由への闘争がひとりの悪漢(もちろんDhanush)を先頭に炸裂するタミル西部劇である。今回は我慢を重ねた上で爆発するいつものDhanushではなく前半早々に立ち上がる分戦闘シーンが強力で、そのパワーは『ワイルドバンチ』並み。ただし、スローモーションは多用されない。Shiva Rajkumarの登場は大いに盛り上がるね(これがバンガロールで観ていたら…)。ギャングの一員の女性がかわいかったよ。Nivedhithaa Sathishだね。初めて観た気がしないが何か思い出せない。大英帝国側は徹底的に玉砕され映画は終わるのであるが、なんと三部作の一作目らしい。どういう話? さっさと二作目作ってね。タミル語作品英語字幕付でした。
- #2「ヴィクラムとヴェーダ」Pushkar–Gayathri/2022/インド/Jan. 7/K's Cinema○
- Saif Ali KhanとHrithik Roshanがメインキャラクターと聞いて気乗りしなかったのだが、R. MadhavanとVijay Sethupathiによるオリジナル(傑作)と同じ監督だし観とくか、ということで新宿まで出京。このふたりのほかShraddha Srinathの役をRadhika Apteが担当したBollywoodリメイクの舞台はLucknow。観光モードでチェイスシーンなどが撮られている。街角に映画スポンサー(mobilとか)の看板があったりするのはご愛嬌。一方、ストーリーはかなりオリジナルに忠実。注目(?)のMutton nalliとParottaの組み合わせは、NihariとKulchaに。なるほどー。でも、こっちもやはりオリジナルの方が好きだな。オリジナル版日本語字幕付鑑賞時のメモでは字幕にケチを付けてるけど、こっちの字幕についてもひとつ。“2 minutes”は“2分”ではなく“ちょっと”と訳していただきたい。今回、Hrithik Roshanの右手は六本指だということに初めて気がついた。
- #1「俺だって極道さ」Vignesh Shivan/2015/インド/Jan. 5/キネカ大森○
- 2024年の映画生活はNayantharaでスタート。本当は新作の『Annapoorani』を観たいところだけど、日本には来ないので、Nayan作品ではベストのひとつ『Naanum Rowdy Dhaan』を。これは劇場で観ていないので、インディアンムービーウィーク(のVijay Sethupathi特集)での上映(しかも日本語字幕付)はありがたい。両親の仇を取ろうとする耳の聞こえない女性を演じる“Lady Superstar”は文句なく美しい。特に怒った顔と泣き顔は特筆もので、他の女優の追随を許さない。この頃はまだ眉毛が自然だなあ。自称Rowdyで婦警の息子であるVSPがNayanに一目惚れして敵討ちの手助けをしようとする話はたわいないが、ミュージカル・コメディとしてのデキもよい。ヒットした本作が元でNayanと結婚した監督は幸せ者だよ。こうなったら『Iru Mugan』もスクリーンで観たい。SPACE BOXさんお願いします。Nayanthara特集がベストだけど、Vikram特集でもいいよ。
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Updated: 11/23/2024
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